退職 雇用保険

退職理由を「自己都合退職」から「会社都合退職」に変更する方法

お問い合わせ

運営元:弁護士法人浅野総合法律事務所

会社を退職するときに「自己都合退職」「会社都合退職」という言葉を聞いたことがあるのではないでしょうか。これは退職理由についての大きな2つの分類です。

特に、「失業保険をできるだけ有利に受給することができるかどうか」という点で、「会社都合退職」であると給付制限期間(3か月間)なく失業手当をすぐに受給でき、かつ、受給額の上限も「自己都合退職」よりも高いというメリットがあります。

「自己都合」と「会社都合」では、失業手当の金額が異なり、会社に退職金がある場合にはその金額も異なるケースが多いです。そのため、労働者側としては、「会社都合」の退職という取扱いをしてもらえるよう会社に求めていくべきです。

「解雇」などのように会社側の事情によって退職せざるをえなくなったにもかかわらず、離職票に「自己都合」と書いてあり会社と争わざるを得ないといったケースもあります。

そこで今回は、退職理由を「自己都合」から「会社都合」に変更する方法について、労働問題に強い弁護士が解説します。

「雇用保険・失業保険」の法律知識まとめ

失業保険は「退職理由」によってどう違う?

退職理由には、大きく分けて「自己都合退職」と「会社都合退職」があります。

この退職理由の分類の違いが大きく影響するのは、主に次の2つの場面です。この2つの場面において、「自己都合か会社都合か」のどちらにあたるかが、労働者側にとって大きな金銭的な差を生むこととなります。

  • 失業保険の給付額
    :自己都合よりも会社都合の方が、給付制限期間(3か月)がなく、受給額の上限も高くなる
  • 退職金の支給額
    :自己都合よりも会社都合の方が、高い乗率で支給される

「自己都合」と「会社都合」にはこのような大きな違いがあることから、労働者側の立場としては、離職票に記載してもらう退職理由は「会社都合」であるほうが有利な取り扱いをうけることができます。

真実は「会社都合」の退職であるにもかかわらず、離職票に「自己都合」と書く会社には、「労働トラブルを隠ぺいしたい」「会社が責任を負いたくない」「解雇をしなことを要件とする助成金・補助金を受給している」などの理由があります。

真実は「会社都合」の退職であるにもかかわらず、離職票に「自己都合」と記載されてしまえば、失業手当をすぐに受けることができず、かつ、本来もらえるはずの失業保険や退職金が満額もらえなくなるという不利益を受けます。

参 考

労働者側の立場では、基本的には「会社都合」と離職票に書いてもらったほうがメリットが大きいと解説しました。金銭的にはそのとおりですが、必ずしもそうでないケースもあります。

「会社都合退職」の範囲はとても広く、会社に問題があることを理由とする退職や経営上の都合による退職だけでなく、「解雇」「退職勧奨」による退職もまた「会社都合退職」となります。

そのため、転職先に「会社都合退職」であることを知られると、理由をきちんと証明できないと、「問題社員だから解雇されたのではないか」というイメージが伝わってしまい、再就職の弊害となることがあります。

このような理由で、失業保険にそれほど頼っておらず、転職活動を積極的におこなう労働者の中には、「自己都合退職」となることを望む方もいます。

チェック
自己都合?会社都合?退職理由の違いと「特定受給資格者」「特定理由退職者」

「退職理由は自己都合か?会社都合か?」といわれる問題です。「自己都合」「会社都合」という言葉のイメージに振り回させることなく、あなたの退職理由に従って、あなたがどれだけの受給金額を、いつから支払ってもらえるのか、しっかり理解する必要があります。失業給付は失業中の生活を支える「命綱」です。

続きを見る

自己都合退職とは?

「自己都合退職」とは、労働者が、自身の真意から、退職の意思表示をして退職をすることをいいます。

家族の都合、自身のキャリアプランなど、その理由はさまざまですが、いわゆる「一身上の都合」という言葉でまとめられるのが自己都合退職だと思っていただければわかりやすいかと思います。

ただし、あくまでも労働者が「真意から」退職の意思表示をする必要がありますから、「会社が退職強要をした結果やむを得ず退職届を出した」というのは自己都合退職とはなりません。

自己都合退職のメリット

自己都合退職となると、失業保険や退職金支給額の増額などのメリットを受けることはできず、金銭的には会社都合退職よりも劣ることとなります。

自己都合退職のメリットは、「解雇」などの処分を受けた「問題社員」であると、転職先や再就職先にレッテルを貼られない、という点です。

「一身上の都合」による自己都合退職であれば、転職先も、退職理由について採用面接で深堀りして聞いてくるようなことはほとんどありませんし、万が一聞かれたとしても理由付けも用意です。

チェック
「自己都合退職」といわれても失業保険をすぐにもらう4つの方法

会社を退職することを決意した労働者が気になるのが、「自己都合なのか、会社都合なのか」という点です。特に、会社とトラブルになったり、労働問題により会社に居続けられなくなったりといった場合には、「自己都合 ...

続きを見る

会社都合退職とは?

「会社都合退職」とは、解雇(普通解雇、整理解雇、リストラ、雇止め)や退職勧奨による退職など、会社が労働者に対して働きかけることによって行われた退職のことをいいます。

労使関係において、どうしても労働者が会社(使用者)よりも弱い地位に立たされていることから、会社都合の退職は、基本的には法律や裁判例で厳しく制限されています。

注意ポイント

会社は労働者を一方的に辞めさせることはできません。解雇の場合、解雇に「合理的な理由」があり、「社会通念上相当」でない限り、「解雇権濫用法理」により、権利濫用として違法、無効となります。

退職勧奨についても同様で、会社が一方的な意思によって退職を強要することは違法なパワハラと言わざるを得ません。

会社都合退職のメリット

「会社都合退職」は、以上のように、「労働者保護」の点から厳しい制限がされているほか、いざ会社都合により退職となった場合、労働者は、さまざまなメリットを享受することができます。

そのうち特に大きいメリットが、失業手当(失業給付)を給付制限期間なくすぐに受給できることと、失業保険、退職金が増額されるケースが多いことです。

なお、退職金は、支払が法律上義務付けられているものではありません。そのため、就業規則、退職金規程、雇用契約書などで約束していなければ、退職金を受け取ることができません。会社都合と自己都合とで、どれほど退職金額がことなるかも、会社ごとの退職金規程などによって決まります。

なぜ離職票の退職理由に争いが生じるのか

ここまでの解説で、自己都合退職と会社都合退職という離職票の記載によってどのような違いが生じるのかを説明しました。

離職票は会社と労働者が協力してつくるものですから、離職票の退職理由は、事実にしたがって記載すれば争いなどおこらないはずです。しかし実際には、労使間で「離職理由」をめぐる争いが多くおこっています。

そこで次に、なぜ離職票の退職理由に争いが生じるのかについて、弁護士が解説します。

退職強要があったケース

労働者側では「会社都合だから有利な取扱いをうけることができる」と考えているケースでは、その労働者の気持ちとしては「退職せざるをえなかった」と考えているわけです。

一方で、会社側としては、明示的に「解雇」としない限り会社都合とはならないのではないかと考えているケースがあります。このような場合、労使間のトラブルは激化します。

その典型例が、会社が労働者に対して退職を強要しているケースです。

会社側としては、労働者が自主退職したわけですから「自己都合退職」と考えるのですが、労働者側としては、会社から強要を受けて退職をしたのだから「解雇」と同様に「会社都合退職」ではないか、と考えるわけです。

離職票に虚偽の記載をするケース

さきほどのケースは、そもそも事実関係について自己都合なのか会社都合なのかの評価の争いがあるケースでした。しかし、これ以外にも労働トラブルとなるケースがあります。

それは、会社が勝手な判断で「自己都合退職」と離職票に記入してしまったことが原因で争いとなるケースです。なかには、虚偽であることを知りながら、悪意をもって離職票に記載する会社もあります。

特に、「解雇をしない」ことを条件とする助成金・補助金を受給している場合には、会社としては「自己都合退職」にせざるを得ない、という事情があるケースも少なくありません。

不当な「自己都合退職」を争う方法

最後に、本来は離職票に「会社都合」と記載しなければならないケースで、ブラック企業から「自己都合」という取扱いを受けてしまったときの対処法について、弁護士が解説します。

労働者側にとって「会社都合」の方がメリットが大きいことから、真実は「会社都合」であるのに「自己都合」とされてしまった場合、不当な取り扱いに甘んじるべきではありません。

「会社都合」と記載されることで「問題社員だから解雇されたのではないか」というイメージを抱かれて就職に不利だと考える方もいますが、「会社都合退職」はかならずしも「問題社員」であることを意味するわけではありません。

退職届を出さない

会社側からどれほど強く退職を迫られたとしても、退職届を出してしまえば「自主退職」といわれてしまうおそれがあります。悪質な会社のなかには、「自己都合で退職します」と書かれた退職届を差し出し、署名するよう迫る会社もあります。

「会社をやめてほしい」とお勧めをすることは、退職勧奨といって適法におこなえる行為ですが、労働者が「退職せざるを得ない」と考えるほどにまで強く説得を重ねた場合には違法な「退職強要」となります。

そのため、自分の意思で辞めるのでない限り、会社から強く求められたとしても決して退職届を出さないことが、「会社都合退職」となる近道です。

退職届の撤回・取消し

万が一、会社の強いプレッシャー、脅しに応じて退職届を出してしまった場合には、すぐに撤回、取消しをしなければなりません。

時間が経過してしまえば、退職届の撤回、取消しは、より困難となります。また、撤回、取消しするためには、退職届を要求する際に、会社側に脅し、強要などの不適切な点があったことを証明できるとよいでしょう。

そのため、会社側から違法な退職強要を受けたら、ボイスレコーダーで録音するなどの方法で、証拠収集をすべきです。

離職票の記載を争う

以上のように会社から不当に強要されて退職したケースでなくても、会社の判断によって離職票に「自己都合退職」と記載されてしまうケースが、労働トラブルに繋がります。

そこで、真実の退職理由とは異なる退職理由を記載されてしまったときは、ハローワーク(公共職業安定所)に対して「異議申立」をすることができます。

また、「会社都合退職」であるのに「自己都合」とされたことによって退職金を不当に減額されたときは、労働審判や訴訟などの方法で退職金請求をすることができます。

チェック
離職票の発行までの全ての手続と、かかる期間【弁護士解説】

会社に雇われている間に雇用保険料を支払っていれば、万が一解雇をされてしまったり、急に会社を退職せざるをえない事態となったとき、ハローワークで手続きをすることで失業保険を受け取ることができます。 失業保 ...

続きを見る

「労働問題」は、弁護士にお任せください!

今回は、実際には解雇、退職勧奨、退職強要などの「会社都合」による退職であるにもかかわらず、会社の一方的な考えで「自己都合退職」とされてしまうケースで、退職理由の訂正を求める方法について弁護士が解説しました。

会社側のミスや誤記であれば訂正することは簡単です。しかし、なかには労働者に嫌がらせをしてやろうという悪意のあるブラック企業もいます。このような場合、「自己都合」を「会社都合」にあらためさせるためには、会社との争いが必要なこともあります。

会社が退職理由の修正を拒否する場合に、正当な権利を実現したいと考える方は、労働問題に強い弁護士に、お早目に法律相談ください。

「雇用保険・失業保険」の法律知識まとめ

お問い合わせ

運営元:弁護士法人浅野総合法律事務所
  • この記事を書いた人
  • 最新記事
弁護士法人浅野総合法律事務所

弁護士法人浅野総合法律事務所

弁護士法人浅野総合法律事務所(東京都中央区銀座)は、代表弁護士浅野英之(日本弁護士連合会・第一東京弁護士会所属)をはじめ弁護士5名が在籍する弁護士法人。 不当解雇、未払残業代、セクハラ、パワハラ、労災など、近年ニュースでも多く報道される労働問題について、「泣き寝入りを許さない」姿勢で、親身に法律相談をお聞きします。 「労働問題弁護士ガイド」は、弁護士法人浅野総合法律事務所が運営し、弁護士が全解説を作成する公式ホームページです。

-退職, 雇用保険
-, , , , , , , , , , , ,

お問い合わせ

© 2020 労働問題の法律相談は弁護士法人浅野総合法律事務所【労働問題弁護士ガイド】