不当解雇をされてしまった場合に、会社と争う方法を、労働法の専門用語で、「地位確認」といいます。
これは、「不当解雇は無効なので、私はまだ解雇されておらず、労働者です。」という意味です。「労働者として扱ってくれ!」という請求内容です。
このように言うと、「不当解雇が無効となった場合には、復職して働かなければならないのか。」と理解される労働者の方も多いことでしょう。
実際、法律の建前は、そのようになっています。したがって、不当解雇の争いで勝てば、会社で働かなければならないこととなります。
しかし、「解雇されてまで、その会社に居続けたくはない。」というのが本音ではないでしょうか。
今回は、このような労働者のお悩みを解決するため、「不当解雇が無効となっても、復職する必要はない。」という理由について、労働問題に強い弁護士が解説していきます。
1. 「復職する意思」を示さなければいけない
不当解雇を争って、労働者(社員)側に有利な解決を勝ち取るためには、会社に「復職する意思」を示さなければなりません。
というのも、労働者が退職に同意しているという場合には、そもそも、
- 解雇ではなく、合意退職であった。
- 労働者も、解雇されることには同意していた。
という、ブラック企業側の反論を正当化してしまうおそれがあるためです。
そこで、解雇をされ、「不当解雇だ!」と主張して争うのであれば、「解雇を撤回し、復職させろ!」と主張しなければいけない。これが、労働審判や訴訟など、裁判所での建前です。
2. 実際に復職するかどうかは別
以上のとおり、弁護士に依頼して、労働審判や裁判で「不当解雇」トラブルを解決するためには、「復職する意思」を示すことになります。
しかし、争いの中で「復職する意思」を強く示したとしても、「実際に復職するかどうか。」はまた別問題であると考えてよいのです。
というのも、労働者の多くは、「不当」とはいえ一度解雇をされたような会社で、二度と働きたくないという方が非常に多いからです。
争い方と解決方法が「矛盾」してしまっているようにも見えますが、「本音と建て前」であると考えて頂いて構いません。
3. 再就職・転職してしまったら?
次に、「復職する意思」を示さなければ不利な解決となるおそれがあることを理解していただいた上で、既に再就職、転職をしてしまったケースについて解説します。
結論からいうと、再就職、転職してしまった場合であっても、不当解雇について会社と争うことは全く問題ありません。
というのも、再就職、転職をしたとしても、「復職する意思」を示すことは可能であるためです。
生きていくためのお金が必要ですから、解雇されてしまった後に仕事をしたからといって、復職する意思が否定されるわけではないからです。
したがって、不当解雇の無効を主張して争うような場合であっても、安心して再就職、転職先を探して頂いて構いません。
4. 復職を希望する場合は?
以上のとおり、労働問題のうち、不当解雇のトラブルを有利に解決するためには、「復職するかどうか。」という点についての、「本音と建て前」の使い分けが重要となります。
最後に、本心から復職を希望するような場合にはどうしたらよいかについて、弁護士が解説します。
本心から復職を希望されて相談にくるケースは、次のような場合があります。
- 上場企業、優良企業など、在職自体がステータスとなるケース
- 他にない好待遇、高賃金を受けているケース
- 在職期間が短すぎ、経歴に傷がつきかねないケース
- 年齢的に高齢で、再就職・転職の検討ができないケース
本心から復職を希望する場合には、不当解雇の撤回を求め、訴訟で徹底的に争う必要があります。
5. まとめ
不当解雇トラブルでは、たとえ「不当だ!」と争ったとしても、ひとたび解雇された会社に二度と勤めたくないという労働者のご相談が後を断ちません。
法律上の建前では、不当解雇トラブルを有利に解決するためには、復職する意思を示し「解雇の無効」を望まなければなりません。
そこで、「本音と建て前」が矛盾します。
労働問題に強い弁護士は、労働者の希望を実現するために、金銭解決に向けた交渉を有利に進めていくことができます。不当解雇を受けて不安、疑問がある場合は、お気軽にご相談ください。