労働問題弁護士ガイドとは?

年賀状がハラスメントにならないため注意すべき4つのポイント

セクハラやパワハラなど、企業内のハラスメントに対する認識は、年々高まっています。
ただ、なかには言いがかりや過剰反応といえる被害の訴えもあります。

「さすがにハラスメントにならないだろう」と思っても、加害者といわれてしまうことも。
「年賀状がハラスメントだ」という訴えも、その1つです。
自分では常識の範囲内と思っても、ハラスメントといわれないよう注意が必要。

年配の方ほど「社会人なら年賀状を出すのは当然だ」と考える方も多いでしょう。
しかし、最近の世代では、年賀状を出さない人も増えています。
社内のマナーとして自分の常識を押し付けると、不幸なハラスメント加害者を生む原因になります。

今回は、年賀状にまつわるハラスメントの問題と、注意点について、労働問題に強い弁護士が解説します。

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解説の執筆者

弁護士 浅野英之

弁護士(第一東京弁護士会所属、登録番号44844)。
東京大学法学部卒、東京大学法科大学院修了。

企業側の労働問題を扱う石嵜・山中総合法律事務所、労働者側の法律問題を扱う事務所の労働部門リーダーを経て、弁護士法人浅野総合法律事務所を設立。

不当解雇、未払残業代、セクハラ、パワハラ、労災など、注目を集める労働問題について、「泣き寝入りを許さない」姿勢で、親身に法律相談をお聞きします。

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ハラスメントとは

年賀状がハラスメントになるかを知るため、まずはハラスメントがどんなものか解説します。

ハラスメントは、職場における嫌がらせのこと。
代表的なものに、セクハラ、パワハラがありますが、これに限りません。

セクハラとは、性的な言動による嫌がらせ、パワハラは、優越的な地位を利用した嫌がらせ。
嫌がらせに使う手段が違うだけで、いずれもハラスメントに変わりはなく、違法です。

ハラスメントにあたる言動が行き過ぎると、不法行為(民法709条)にあたります。
そのため、相手に与えた精神的苦痛について、慰謝料を請求されてしまいます。

違法かどうかの判断は、「相手が同意しているかどうか」が重要です。
その言動の内容、悪質さ、頻度や回数などからして、不快だと思わせる行為であれば、違法といわれてしまいます。

ハラスメント被害をはじめ、労働トラブルは弁護士に相談できます。
労働問題に強い弁護士の選び方を参考にしてください。

年賀状がハラスメントになるケースとは

次に、年賀状があたるハラスメントの種類に応じて、具体例を紹介します。

年賀状を出すこと自体は、法的な問題はありません。
しかし、そんな問題ない年賀状も、一歩間違えると、ハラスメントになるおそれあり。

違法なハラスメントだと、被害者から慰謝料請求されるリスクがあります。
場合によっては会社が責任を負わされることもあります。
年賀状をめぐる些細なトラブルで、信頼を失ったり、評価が下がって出世に響いたりする危険もあるのです。

年賀状を出す行為は、ごく何気なく行う人も多いでしょう。
しかし、セクハラ、パワハラなどハラスメント問題に発展すれば、失った信頼の回復は容易ではありません。

年賀状がセクハラになる場合

セクハラは、性的な言動により相手に不快感を与えることと説明しました。
そのなかには、労働条件の不利益などと引き換えに性的言動を強要する「対価型」と、性的な言動により職場環境を悪化させる「環境型」とがあります。

年賀状がセクハラになる場合には、次の例があります。

  • 女性社員の住所を調べあげ、年賀状を送る
  • 年賀状に「今年はもっと仲良くしたい」と親密すぎるコメントを書く
  • 年賀状でデートの誘いをする
  • 年賀状に、親密すぎるコメントを書く
  • 年賀状で、性的な不快感を与える
  • 年賀状で「キレイだね」と容姿を褒める

年賀状は、家族に関わることなので、職場の人に送っても、プライベートな部分もあります。
未婚の人で、自分が結婚していないのを気にしていて、「他人の幸せな家族の写った年賀状はもらいたくない」、「不快だ」という考えの人もいます。

年賀状がパワハラになる場合

パワハラとは、優越的な地位を利用した嫌がらせだと解説しました。
職場内の立場や、人間関係を利用して不快感を与えれば、パワハラになります。

年賀状がパワハラに当たる場合には、次の例があります。

  • 年賀状を送り、返信を強要する
  • 年賀状を送らなかった部下をしかる
  • 年賀状にお礼をいわないと「常識はずれだ」と人格否定する
  • 年賀状を送らなかったことを理由に社員の評価を下げる
  • 年賀状に、今年の目標など過剰な期待を書いてプレッシャーを与える

年賀状を送り合うのが常識かはともかく、少なくとも業務には関係がありません。
そのため、年賀状を送らなかったのはあくまでプラベートな理由であり、能力評価に影響させるのは不適切。

上司・部下だけでなく、先輩・後輩や同僚間でも、逆らえないなら年賀状はパワハラになりえます。

年賀状を出すために住所を聞くのもハラスメント?

年賀状を送るには、まず住所を知る必要があります。
しかし、住所は、高度な個人情報で、「知られたくない」という人もいるでしょう。

年賀状を送るために住所を聞く行為もまた、ハラスメント問題の引き金となるおそれがあります。

年賀状を出したいからと、理由を明らかにした上で住所を聞くことには問題はありません。
年賀状は、社会人のあいさつマナーとして、浸透しているからです。
これは、年賀状を出すこと自体には問題がないことでもわかります。

しかし、拒否されたら、それ以上住所を聞こうとするのはやめましょう。
年賀状を送りたいという意味であっても、住所を言うよう強制するのはハラスメントです。

同じく、上司の権限で会社の住所録を調べたり、パソコンにアクセスして調べたりするのも不適切です。

こんなケースでは、単に「年賀状を出したい」という以上の意図を疑われてもしかたありません。
つまり、嫌がらせしてやろうというならパワハラですし、「恋愛関係になりたいから、きっかけに年賀状を送りたい」など、性的な意図があって住所を聞けば、セクハラといわれてもしかたありません。
ストーカー行為など、犯罪に発展するケースもあります。

現在は、ネットやSNSが普及し、新年の挨拶もメールやLINEに置き換わりつつあります。
若い世代は、紙の年賀状のやりとりに抵抗のある人もいます。

住所を知られることには、私生活を脅かされるリスクもはらんでいますから、センシティブな問題です。

職場の年賀状がハラスメントにならないための注意点

最後に、職場での年賀状が、ハラスメントにならないために、注意すべきポイントを解説します。

年賀状を送ったり、住所を聞いたりすることが、セクハラ、パワハラに発展しないよう注意が必要。
日本では一般的な慣習だったはずの年賀状も、ハラスメントの理由となるのです。

年賀状を強制しない

まず、年賀状を強制してはいけません。
年賀状は、業務とは無関係なため、業務命令して命じるのも不適切です。

ハラスメントとは、不快に思わせてしまうこと。
そのため、とにかく無理強いしないことが、ハラスメントを避けるには大切です。

相手に「嫌だ」と思われてしまえば、ハラスメントの危険があります。
年賀状について一度でも難色を示されたなら、それ以上深追いして強制しないようにしてください。

これは、「年賀状を出す」のはもちろん、「年賀状を返す」のも同じことです。

年賀状の文面で、不適切な表現は避ける

強制的に返事させたり、挨拶させたりするのはハラスメントですが、年賀状を出すのは問題ではありません。
ただ、年賀状の文面には、くれぐれも注意が必要です。

不適切な表現や文面だと、セクハラ、パワハラなどのハラスメントにつながります。
年賀状の文面が、過剰な期待などのプレッシャーになればパワハラ。
性的な誘いであればセクハラにあたるおそれがあります。

社長や上司からの年賀状だと、それだけでもストレスを感じさせます。
さらに命令口調で書かれれば、「逆らったらまずいのでは」という印象を与え、パワハラになりかねません。

セクハラ発言となる言葉の例は、次に解説しています。

プライベートに立ち入らない

年賀状は、業務には関係ないのが原則。
今年の目標やモチベーション管理に使われる例もありますが、内容の大半はプライベートに関することでしょう。

しかし、職場の人のプライベートに、過度に干渉する行為は、ハラスメントになります。
パワハラの一種であるのは当然、性的な意図があればセクハラにもなります。

個人情報の扱いに注意する

年賀状を出すために知った住所の扱いにも注意が必要です。

仲良い関係を築けたと思っていても、相手は嫌々だったケースもあります。
また、あなたには住所を知られてもよい、年賀状を送ってもよいと考えていても、職場内の嫌いな人にはどうしても住所を知られたくないというケースもあります。

こんなとき、個人情報の扱いには注意を要します。
仮に、住所を誰かに知られたことをきっかけに、ストーカーなど犯罪被害にあってしまったら、ハラスメント問題を超えたもっと大きな問題となってしまいます。

住所などの個人情報は、不用意に漏らさないように、気を付けましょう。

労働問題について不安のあるとき、弁護士の無料相談が活用できます。

まとめ

弁護士法人浅野総合法律事務所
弁護士法人浅野総合法律事務所

今回は、年賀状にまつわるハラスメント問題と、その注意点について解説しました。

年配の世代ほど、年賀状は馴染み深く、いわば常識といえるでしょう。
しかし、上司や管理職の世代と、最近の若い世代とでは、常識が共有できていません。
年賀状文化が廃れて、社内で年賀状を出し合うのはもはや当たり前とはいえません。

むしろ、年賀状のタイミングでプライバシー侵害が起こってしまえば、ハラスメントといわれます。
無意識にハラスメント加害者とならないためにも、相手の気持ちに配慮した対応が不可欠です。

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