ワンマン社長とは、自身の価値観に固執して、無理に意見を押し通そうとする経営者のことを指します。ワンマン社長には、よく見られる特徴があります。
- 社員が言う通りに動かないと気に食わない
- 自分の間違いを絶対に認めない
- 従わせるときは法律ではなくパワハラを手段とする
このような性質、性格の経営者は「ワンマン社長」です。勤務先の社長がワンマンだと、働くのが辛く「ついていけない」と感じるのも当然です。仕事は人生の大部分を占めるため、ワンマン社長との距離が近く、一緒に過ごす時間が長いと、ストレスは計り知れません。
ワンマン社長は、人の意見に聞く耳を持ちません。自身を否定する発言を聞かないのは当然、労働環境を改善し、業務を効率化するなど、会社に必要な提案すら無視します。ワンマン社長のプレッシャーに萎縮し、業務に支障が生じれば、仕事のモチベーションを失ってしまいます。
今回は、ワンマン社長についていけないときの対処法を解説します。ワンマン社長と同じ土俵で言い争うのは無益であり、ハラスメント被害があるときは法律知識で対抗すべきです。
- ワンマン社長は、意思決定が早いというメリットもあるがデメリットも大きい
- ワンマン社長についていけないなら、うまくやりすごして転職を検討する
- 社長といえど自由ではなく、勝手な都合でハラスメントするのは違法になる
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ワンマン社長とは
ワンマン社長とは、自身の価値観に固執して、無理に意見を押し通そうとする経営者のこと。「パワハラ社長」とほぼ同義といってよいでしょう。ワンマン社長の由来は「One man」にあり、つまり、社長が単独で、企業経営を支配している状態を表します。中小企業やベンチャー、スタートアップなど、企業規模が小さいほど、社長がワンマンになりやすい傾向があります。
ワンマン社長と、そうでない社長の違いは、その支配権の強さにあります。ワンマン社長は、経営を「単独で」支配しているのに対し、そうでない社長は、株主や役員、社員などの利害関係者の意見を聞きながら経営を進めていきます。
上場企業など規模の大きい会社では、必ずしも社長の一存では決められないことがあります。経営の実権は、社長ではなく株主にあり、株主でない「雇われ社長」だと、社内の影響力が小さいこともあります。複数の取締役が相互に監視し、牽制し合いながら経営している会社もあります。
ワンマン社長は、オーナー企業、つまり「社長=株主」の会社に多く存在します。オーナー企業では、ワンマン社長に忠告し、暴走を止める人はいません。社長以外の株主が家族・親族である、家族経営の会社でも同じことが起こります。ワンマン社長による弊害は、単独支配の歪みだといえます。経営権を単独で有しているなら、会社経営をワンマン社長が決めるのは仕方ないですが、働く人の不利益は非常に大きくなってしまいます。
また、社長個人の性格がそもそもワンマンなこともあります。経営者になる人は、我が強い性格なことが多く、「組織に馴染めないから起業した」という人もいるくらいです。
企業経営にはリーダーシップが必要で、少なくとも起業当初は、ワンマン経営にならざるを得ない側面もあります。ワンマン経営には、単独で意思決定し、スピード感を生かせるメリットもあります。しかし、労働者を雇って組織を拡大するなら、社長も成長する必要があり、ワンマンなままでは違法になってしまう危険があります。ブラック企業となれば、社員から訴えられたり、社会的な信用を失ったりといった取り返しの付かない事態に直面してしまいます。
「ブラック企業の特徴と見分け方」の解説
ワンマン社長によくある特徴
次に、ワンマン社長のよくある特徴を解説します。特徴を掴めば、ワンマン社長と適度に距離を取り、接し方や対処法を検討することができます。苦手なタイプであることに採用選考の段階で気付ければ、入社を回避することも可能です。
ワンマン社長の特徴として、サイコパス傾向が挙げられます。自分に都合よく物事を考え、自身の価値観に従って行動するのがサイコパスの特徴です。言動が、感情によって大きく左右されたり、他人の意見を尊重することができなかったりします。
このようなワンマン社長の判断の仕方は、外から見ると、事実を都合よく解釈し、社員に責任転嫁しているように見えることもあります。「社長が好き勝手に経営を進めている」と感じてしまえば、もはやついていけないのも当然です。ついていけない人は退職する結果、周りはイエスマンばかりとなり、ますます加速していくのです。
ワンマン社長は、創業社長やオーナー社長に多い傾向があります。ワンマン社長の特徴は、一概に年齢によるとも言い切れず、若い社長にも年配の社長にも、ワンマン社長は存在します。
【若いワンマン社長の特徴の例】
- 全て自分でコントロールしたがり、社員の自主性を奪う
- 勢い任せでパワハラする
- 無知を棚にあげて自分の価値観を押し付ける
- 経験不足で、他社への共感力が欠如している
【年配のワンマン社長の特徴の例】
- 昔ながらの古臭い価値観が捨てられない
- 時代遅れの考え方を押し付ける
- 「昔は許された」とパワハラ、セクハラのハードルが低い
- 他人を信用して任せることができない
ワンマン社長の特徴は多々ありますが、異常な自己愛の強さが根底にあります。自分のことばかりで他人の都合を考えられず、自分第一で行動します。社員の事情を考えられないワンマン社長は、次のような法違反を起こしてしまうことがあります。
- 無理を強いてサービス残業をさせる
- 会社の利益を優先し、違法な減給をする
- 能力不足と評価して不当解雇する
ワンマン社長を原因とする労働問題は数多くあります。現場のことを考えない業務命令を出すこともしばしばで、社長に信用されず、責任ある仕事を任されず、全てパワハラで管理されているような状態では、もはやついていけないのも当然です。あまりに酷いワンマン社長は、自己愛性パーソナリティ障害など精神疾患を疑われる例もあります。
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ワンマン社長はデメリットが大きい
ワンマン社長がいると、取引先や株主だけでなく社内にも弊害が及びます。特に、規模の小さい会社で働く場合には、従業員はワンマン社長の被害を直接受けてしまいます。ワンマン社長のデメリットを具体的に理解すれば、対処をしやすくなります。
ワンマン社長の暴言は違法
ワンマン社長は、暴言を吐くことがよくあります。社員の不利益を一切考えておらず、パワハラ気質で感情のままに発言するからです。
暴言の態様にもよりますが、違法なパワハラとして不法行為(民法709条)に該当すれば、慰謝料を請求することができます。刑法に違反した犯罪となることもあり、例えば、暴行罪(刑法208条)や脅迫罪(刑法222条)、名誉毀損罪(刑法230条)が成立するケースもあります。
ワンマン社長は共感力が弱く、悪気がなくても日常的に社員の人格を否定し、名誉を毀損する発言をすることが多いです。自身の意に沿わない社員には、報復目的でハラスメントをすることもあります。
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ワンマン社長のパワハラは許されない
ワンマン社長だと、社員の気持ちや職場の空気を読めずにパワハラが横行します。社内のパワハラが多いと、社員は萎縮し、ますますワンマン社長が増長してしまいます。被害にあった労働者は、うつ病や適応障害などの精神疾患にかかってしまうことも少なくありません。
社長がいじめに加担すれば、会社全体の空気が悪くなります。ワンマン社長の振る舞いは、直接の加害となるだけでなく、追随する他の社員による職場いじめやモラハラを助長することもあるのです。創業者のカリスマ社長ほど、企業風土や慣行を形作っており、ワンマンな傾向があると全社に及ぼす影響は非常に大きくなってしまいます。
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ワンマン社長の理不尽は会社を潰す可能性あり
ワンマン社長がいる最大の弊害は、理不尽さによって会社がつぶれることです。従業員が増え、組織が拡大しているのに社長がワンマンなままだと、会社の破滅は近いと言わざるを得ません。
ワンマンでパワハラ気質な社長だと、文句を言わずに服従するイエスマンのみ残り、そうでない人はあきらめて退職する結果、離職率が高まってしまいます。社員を大切にしない会社では、離職が相次ぎ、評判が広まれば採用もうまくいかなくなるでしょう。人手が不足すると、仕事の質も担保できず、新しい業務やサービスを拡大することもできません。
「不当解雇に強い弁護士への相談方法」の解説
ワンマン社長についていけないときの対策
次に、ワンマン社長についていけないときの対策を解説します。方針を大きく分けると、会社に在籍して共存を図る方法、距離を取る方法、そして、退職して関係を終了する方法の3つです。
ワンマン社長の弊害が明らかになった際、労働者として大切なことは、社長の特性や気質を理解して、自身の被害を拡大してしまわないよう、早期に適切な対処法を取ることです。
ワンマン社長との付き合い方を理解する
ワンマン社長とのうまい付き合い方には、独特のルールがあります。全く関わらないのは、社長と社員である以上難しいでしょうが、付き合い方を変えれば幾分かはましになります。
ワンマン社長についていけないと感じたら、接し方に注意してください。ワンマン社長は基本的に自分優先ですから、気に入られるのは難しい場合も、うまくかわすことが重要であり、刺激して嫌われないよう注意しましょう。「否定しない」という消極的な努力によって、ハラスメントの対象となってしまうことを回避できる場合が多いです。
完全なイエスマンに徹しなくても、嫌われるリスクを減らせば被害は軽減できます。全く反省のないワンマン社長の経営する企業は、長く続きはしません。適度に距離をとり、無理をせず、その場をしのぐ気持ちが大切です。会社に残るために一旦は我慢したとしても、将来争う可能性がある場合には、パワハラの証拠を集めておくようにしてください。
「パワハラの証拠の集め方」の解説
パワハラだと指摘する
思い切ってパワハラだと指摘するのも一つの手です。
ワンマン社長は、自分が不利な立場に立つのを極端に嫌がります。証拠によってパワハラを証明できれば、慰謝料請求などといった交渉のカードを手に入れることができます。嫌がらせに耐えるだけではなく、いざというときは戦う姿勢を示して牽制するわけです。
本気で訴える姿勢を見せれば、ワンマン社長といえども自分の不利益が気になることでしょう。リスクを恐れ、嫌がらせを止めてくれる可能性は大いにあります。それでもなおヒートアップするほど問題が根深いなら、速やかに弁護士に相談ください。
「パワハラの相談先」の解説
社員全員で対抗する
ワンマン社長は、企業全体を支配する権力を持っていますから、立ち向かうにも相当な覚悟を要します。一人で対抗するのが現実的に難しい場合、社員全員で対処する手が有効です。
全社員が業務をボイコットすれば、企業の運営は停止してしまいます。会社の存続に関わるとなれば、ワンマン社長といえども要求を飲まざるを得ません。団結して争うならば、労働組合に加入して団体交渉をする方法があります。労働組合は、憲法と労働組合法によって手厚く保護されており、労働三権(団結権、団体行動権、団体交渉権)を保障されています。労働者が団結すれば、ワンマン社長との交渉を対等な立場で進めることができます。
「労働組合がない会社での相談先」の解説
仕事を減らしてプライベートを充実させる
ワンマン社長についていけないとき、仕事の充実を手放すことも大切です。プライベートを充実させ、ストレスを軽減する努力をしましょう。私生活が充実していれば、「人生の価値は仕事での活躍だけではない」と気付けるはずです。
現在の仕事にやりがいを感じないなら、並行して転職活動を進めてください。ワンマン社長が、社員の事情を考えずに残業命令をしてきたり、やりたくない仕事を押し付けてきたりすると、逃げられないこともあります。このとき、残業命令や仕事の押し付けが違法なら、拒否するのが適切です。
「違法な残業の断り方」「仕事を押し付けられた時の断り方」の解説
社外で活用できる能力を向上させる
社外でも活用できる能力を磨けば、転職市場でもあなたの価値はあがります。ワンマン社長についていけず限界が来ても、「いつでも他社で働ける」という安心感があります。
そのため、すぐには退職する決断ができない方は、社外でも活かせる能力を身に着けてください。ワンマン社長の経営する会社に長くいると、社長の価値観が浸透し、視野が狭くなってしまっている危険があります。見切り発車で退職し、予想外の不利益を受けるのは避けたいところです。
ワンマン社長との共存をあきらめるなら、限界よりは一歩手前で決断しなければなりません。社内にいながら、資格取得やスキルアップなど、将来の準備を進めれば、すぐに退職する場合に比べて十分な時間を確保することができます。
「能力不足を理由とする解雇」の解説
退職する
ワンマン社長への対処法として、いっそ退職する手もあります。ワンマン社長には、社内の権力が強く集まる構造にあります。社内にいながら対抗するには限界があり、どうしても我慢せざるを得なくなってしまうことも多いものです。
そもそも、ワンマン社長は「会社を自分で作り上げた」という意識が強いもので、そう簡単には退任してはくれません。年配のワンマン社長でも、世代交代が進まず居座る人も多いものです。社長がワンマンでないホワイトな会社でも活躍の機会はあるはずです。心身を疲弊させてまで、ブラック企業での労働を続ける意味はありません。
「会社の辞め方」の解説
ワンマン社長の解任を求める
自分が退職するのでなく、ワンマン社長に辞めてもらう対策もあります。他にも取締役や株主がいるなら、社長の問題点を指摘しましょう。社長のワンマンが無視できないレベルなら、株主の過半数の決議を得ることができれば社長(代表取締役)を退任させることができます。
とはいえ、社長が全株式を保有するオーナー企業では、この解決策はとれません。ひどいパワハラなど社会問題となる事情があるなら、内部告発して社会に信を問うのもよいでしょう。
「取締役の辞任勧告」「取締役の責任を追及する方法」の解説
ワンマン社長にはメリットもある
本解説では、ワンマン社長のデメリットや弊害をもとに、対処法を解説しました。一方で、ワンマン社長にはメリットもあることを最後に解説しておきます。
「ワンマン(One man)」は「単独で」という意味で、ネガティブな趣旨は元々ありません。「ワンマン」に「独裁的な」といった悪いイメージが付いたのは、企業内の権力を独占する経営者には、パワハラをはじめとした違法行為に手を染める人が多いからです。したがって、次のようなメリットを生かすなら、ワンマン社長であることがプラスとなる側面もあります。
- 意思決定のスピードが早い
株主や他の取締役など、利害関係者が多いほど意思決定の速度は遅くなります。独断の方が早く決断できる結果、ビジネスチャンスを逃さないメリットがあります。 - 緊急事態に対処できる
意思決定が早いため、緊急事態にスピーディな対処をするのに向いています。取引先への損害や顧客のクレームに素早く対応できることはメリットとなります。 - 指揮系統がわかりやすく混乱を生じない
複数人の決済を要するなど、指揮系統が複雑だと、誰の命令を聞いて良いのか混乱してしまいます。ワンマン経営なら社長の決定が全てなので、社員の混乱は生じません。 - 責任の所在が明らかである
決定権を有する者が複数いると、責任の所在が不明確となり、決断を誤った場合の事後対応に失敗して信頼を失ってしまう危険があります。
ワンマン社長のメリット、デメリットを比較して今後の対応を検討するとき、「ワンマン社長が労働者の法的な権利が侵害しているか」を判断基準とするのがポイントです。一人で判断するのが難しいなら、労働法に精通した弁護士のアドバイスが役立ちます。
「労働問題に強い弁護士の選び方」の解説
まとめ
今回は、ワンマン社長に負けないための対処法を解説しました。
ワンマン社長に付き合っていると、業務に悪影響なだけでなく、パワハラ被害に遭って精神的に疲弊してしまいます。ひいては、個人の生活にしわ寄せが来て、家族も不幸になるでしょう。
ワンマン社長に屈してはならず、かといって面と向かってやり合うのもお勧めできません。ワンマン社長に対抗するには、法律知識を理解し、その責任を追及するのが重要なポイントです。ワンマン社長の嫌がらせやパワハラが違法なのは当然で、執拗に繰り返されれば犯罪となることもあります。法的な権利を正しく行使すれば、ワンマン社長に対抗することができます。
ワンマンであることにはメリットもありますが、少なくとも、社員として不利益を受けたなら、その責任は追及すべきです。ワンマン社長についていけないと感じるなら、我慢せず、逃げるのも大切です。「会社を辞めたい」「法的に責任をとらせたい」という方は、弁護士に相談ください。
- ワンマン社長は、意思決定が早いというメリットもあるがデメリットも大きい
- ワンマン社長についていけないなら、うまくやりすごして転職を検討する
- 社長といえど自由ではなく、勝手な都合でハラスメントするのは違法になる
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