悪質な、違法インターンが横行しています。
「インターンだから」との理由で、無給でコキ使われたら、給料を請求し、適正な対価を得ましょう。
インターンは「修行」のイメージが強いですが、「給料が出なくて当然」というのは大きな誤解。
インターンはさまざま種類があり、単なる社会人体験、職業体験を超えるものもあります。
インターンが長期になるほど、業務を遂行する「労働力」と見られます。
実態としては、アルバイトと同視されるでしょう。
実際に業務をする長期インターンなのに給料が出ないなら、労働基準法違反のブラック企業です。
大学生のインターン生などには、会社への文句が言いづらいかもしれません。
しかし、「インターンで優秀な人材を青田買いしよう」「インターンを無給や最低賃金以下で長時間働かせ、人件費を節約しよう」といった悪質な目的は、断固として拒絶しなければなりません。
今回は、インターンに給料を出さず、無給で働かせる違法な会社への対応を、労働問題に強い弁護士が解説します。
- インターンにも労働基準法が適用され、労働者としての保護を受けられる
- 労働基準法の「労働者」なのに無給で働かされるインターンは違法
- 違法なインターンだと明らかになったら、給料、残業代を請求し、退職する
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★ ベンチャーの労働問題まとめ
インターンでも労働基準法が適用される

たとえインターンでも、労働基準法が適用されないわけではありません。
インターン生でも、労働基準法の「労働者」に該当する例は多いです。
このとき、働いた時間に応じて給料、残業代がもらえます。
一方で、無給のインターンだからといって、必ず違法とは限りません。
無給インターンでも「経験」に重きを置き、業務をさせないなら違法ではないから。
「無給で業務をさせ、貢献させる」という違法な発想ではなく、あくまで「社会人体験」「職業体験」にとどまるインターンなら、無給でも適法に実施できます。
労働基準法が適用されるか、言い換えると、「労働者」にあたるかどうかの判断が重要。
この判断は、つまり、指揮命令があるかどうか、という点がポイントになります。
事細かに、業務の内容に指示を受けるなら、インターンといえど労働者といってよいでしょう。
こんな風に、無給のインターンを「労働力」ないし「戦力」と見る会社は、ブラック企業です。
インターン生が、労働基準法の「労働者」なら、次の労働法が適用されます。
- 労働基準法
指揮命令下に置かれた「労働時間」につき、給料、残業代が払われる。
有給休暇を取得する権利がある。 - 労働契約法
正当な理由のない解雇は、「不当解雇」として無効になる。 - 最低賃金法
時間に対して払う対価が、最低賃金以上でなければならない。
ブラック企業に無給でこき使われている方は、「経験をさせてもらっているのだから、給料がもらえないのは仕方ない」という理屈に納得してしまっていることもあるでしょう。
しかし、インターンには、業務遂行以外の大きなメリットが会社にはあります。
それが、「優秀な人材を、学生のうちから確保できる」という点。
そのため、無給で業務させる違法インターンでなくても、大きな経営上のメリットがあるのです。
無給インターンを「労働力」「戦力」としてみる会社は「ブラック企業」といって差し支えありません。
無給インターンが、無給で、かつ、「労働力」として役立つのであれば、会社になってこの上ないことですが、このような悪質な目論みで無給インターンを行う会社は、労働法違反となります。その理由は、「インターンでも労働法が適用される」からです。
指揮命令下に置かれ、業務をしているのに無給なら、違法インターン。
このとき、インターンとは名ばかりで、実態はアルバイトとまったく変わりありません。
労働トラブルは、弁護士に相談ください。
労働問題に強い弁護士の選び方は、次の解説をご覧ください。

違法なインターンの具体例

次に、違法インターンでよくあるケースを解説します。
「違法インターンの疑いがあるが、判断がつかない」という学生の方は、ぜひ参考にしてください。
違法インターンの悪質さは、給料面にとどまらず、長時間労働など、他の労働問題に発展します。
無給で働かせる違法インターン
無給のインターンは、あくまで「労働」でなく「体験」が目的。
「労働力」と考えてしまえば、違法なインターンだと解説しました。
労働をさせたいのなら、給料を払って有給のインターンとすべきです。
ブラック企業では、学生は「安い労働力」と見られています。
最低賃金以下で働かせたり、無給のインターンをさせられたりして酷使されています。
このように、無給なのに働かせるインターンは、違法インターンの典型例です。
適正な給料が払われないとき、請求方法は次に解説しています。
給料の出ない長期インターン
長期のインターン、例えば、3ヶ月や、場合によっては1年を超えるインターンもあります。
インターン期間が長期になるほど、労働力としてカウントされがちで、バイトとあまり変わりません。
それなのに給料が出ないなら、その無給のインターンは、違法といってよいでしょう。
基本給が低いときの対処法も参考にしてください。
精神論を強要する違法インターン
違法インターンをする会社では、精神論、根性論が横行しています。
ベンチャー、スタートアップの起業が当たり前になり、学生起業も増えています。
「将来は上場したい」など夢見る学生を食い物にするのが、違法インターンのやり口です。
起業は、成功する例もあれば、失敗する例もあります。
憧れが強すぎる学生は、無給の違法インターンの餌食になるおそれがあります。
「ベンチャーだから」という精神論を理由に、無給での労働を強要するのは、よくあるやり方。
- ベンチャーでお金がないから給料は出せない
- ベンチャーなら無給で貢献するのが当然
- 成果を出してから給料をもらうべき
責任感の強い学生ほど、ベンチャー精神に共感しがち。
しかし、たとえベンチャーのインターンでも、労働基準法は適用されます。
このような扱いに我慢すると、得するのは会社(経営者)だけです。
内定者の無給インターン
内定者は、近いうちに入社し、社員として働くことになります。
このとき、社員として働くなら、当然ながら給料をもらえます。
なのに、入社よりも前に働かせようと、名目はインターンとしているのは、違法のおそれがあります。
入社を早めて働かせたいだけなのに、「経験」を餌にして無給で働かせるのは、違法です。
このようなブラックな会社だと発覚したら、入社辞退も検討したほうがよいでしょう。
入社辞退について詳しくは次に解説しています。
長時間労働の違法インターン
「インターンが『労働』にあたるか」の問題で、重要な判断基準は、「労働時間かどうか」です。
労働時間とは、つまり、使用者の指揮命令下に置かれた時間です。
この労働時間が長すぎると、違法な長時間労働となります。
長時間労働が許されないのは、インターンだろうが、正社員だろうが同じこと。
ましてや、指揮命令下に置かれ「労働者」と評価されるインターンなら、違法性はさらに顕著です。
違法な長時間労働の結果、うつ病や適応障害など精神疾患にかかったり、過労死したりすれば、インターンでも違法なのは当然で、会社に責任あるのは明らかです。
学生のやる気につけ込み、「社会人になったら長時間労働するのは当たり前」という雰囲気を作ろうとする会社もありますが、ブラック企業に従う必要はありません。
「労働時間」の考え方は、次に解説しています。
成果を求める違法インターン
インターン生を「労働力」として見てはいけないのは、「給料」「時間」の面に限りません。
「貢献」という面でも、インターン生に多くを求めすぎるのは、違法の可能性があります。
インターン生が無給なら、労働させてはならず、当然ながら成果を求められません。
仮に有給だったとしても、インターン生はまだ未熟で、経験も満足に積んでいません。
新入社員以下だと考えられるインターン生に過剰な成果を求めるのは、違法インターンです。
厳しいノルマを課し、事実上、無償・無給の長時間労働を強制するようなインターンもあります。
しかし、無給のインターンに、労働力としての貢献を求めるのは不適切で、ノルマを課してはいけません。
過剰なノルマの違法性は、次の解説をご覧ください。

歩合制の違法インターン
違法なインターンのなかには、給料は払うものの歩合給だというケースもあります。
歩合給こそ、成果主義の最たるもの。
歩合給で給料を払うというのはつまり、インターンにも成果を求めているのに他なりません。
歩合給そのものが悪ではないものの、インターンに適用するのは、ブラックな可能性が高いでしょう。
給料なしでも適法なインターンもある

違法インターンの具体例について解説しました。
インターン生が苦痛を感じれば、違法なのではないか、疑いましょう。
しかし、すべてのインターンが違法なわけではないのは当然で、適法なインターンも存在します。
適法なインターンであれば、十分な経験が得られ、とても有意義な時間の使い方です。
短期のインターン
短期のインターンのなかには、適法なものも多くあります。
短期だと、会社としても「労働力」と見づらく、違法も起こりにくいです。
体験ないし見学といった、インターン本来の意味があるケースも少なくありません。
労働をさせないインターンなら、無給でも違法ではありません。
適法なインターンには、次のようにいろいろな種類があります。
- サマーインターン
- ウィンターインターン
- 1Dayインターン
- 1Weekインターン
- プロジェクト限定のインターン
- 企業ワークショップ
業務を行わせ、会社に貢献させることは目的でないことも。
むしろ、会社を知ってもらい、将来応募してもらうことに主眼がある場合がほとんどです。
なかには「インターン」という名称でも、就職説明会程度のものもあります。
短期で、かつ、適法なインターンだと、活動内容は次のようなものとなります。
- 社員が業務を行う姿を、見学する
- 通常業務とは異なる「課題」を与えられる
- 模擬ケースに即した業務の体験を行う
- 売上に直結しない活動を行う
- 会社の業務説明会や社内見学をする
- セミナールームなど社員と別の場所で課題をこなす
有給のインターン
給料を適正な額だけ払うならば、インターンとして正しい処遇を受けているといえます。
有給ならば、短期でも長期でも、適法なインターンです。
会社側も、給料を払うだけのメリットがあるでしょう。
タダ働きで貢献させようとする違法インターンとは違い、ホワイトな会社だといえます。
給料が出るならば、業務をさせられ、指揮命令下で働かされても適法となります。
ただし、このときにも違法な長時間労働やハラスメントは許されません。
給料を払っているからといってインターンになんでも言うことを聞かせようとする会社には問題があります。
パワハラが起こる会社なら、相談窓口を知っておいてください。

違法インターンに無給でこき使われた時の対処法

参加したインターンが、無給でこき使う違法インターンだったら、対処法を知ってください。
インターンに給料や残業代を払わない理由は、そのほうが得だから。
逆に、労働させられた分だけインターンから給料を請求されれば、搾取は止まるはずです。
インターンにタダ働きさせる会社は、他にも労働問題を抱えるブラック企業です。
少なくとも、法令遵守(コンプライアンス)の意識の低い会社でしょう。
そんな会社での「体験」や「経験」に大きな価値はなく、従う必要もありません。
インターンの違法性を検討する
まず、インターンの違法性を検討しましょう。
「違法インターンかどうか」の判断は、次の手順で検討します。
- 労働基準法の「労働者」にあたるか
- 「労働者」に適用される法律が守られているか
以上の要件からすると、労働基準法の「労働者」にあたらないなら、違法ではありません。
労働者としての権利が保障されなくてもしかたないからです。
例えば、見学や説明会に類するインターンなら、無給とすることも許されます。
インターンが「労働者」かどうかは、会社の本来の業務をしているか、指揮命令下に置かれているか、といった点がポイントとなります。
インターン中の給料を請求する
労働基準法の「労働者」なのに、給料が払われないのは違法なインターンです。
これを改善するためには、給料を請求する手が有効です。
ただ、給料を払わないという違法な扱いをするインターンだと、給料がそもそも決まっていないことも。
このとき、少なくとも最低賃金を超える給料となります。
無給のインターンで、給料額の約束がなくても、最低賃金の補償は受けられるのです。
自分のもらっている金額を、働いている時間で割ると最低賃金を下回るときにも、差額を請求できます。
給料が未払いのときは、内容証明による請求から交渉、労働審判、訴訟という順で請求を進めます。
労働問題の種類と、その解決方法は、次に解説しています。
インターン中の残業代を請求する
さらに、給料だけでなく、残業代を支払ってもらうことも可能です。
インターンでも、労働基準法の「労働者」なら、長く働けば残業代を払う義務があるからです。
給料が出るインターンや、長期のインターンは特に、アルバイトと同じ性質があります。
「1日8時間、1週40時間」の法定労働時間を超えて働けば、通常の賃金の1.25倍の割増賃金がもらえます。
インターンであっても、残業代請求は可能。
このとき、残業代は、正しい計算方法にしたがって算出し、未払い額を要求しましょう。
インターン先を退職する
インターンが違法だと指摘し、給料や残業代を請求しても改善されないなら、ブラック企業でしょう。
さらなる精神論で押しつぶされたり、「社会人として常識がない」とパワハラする社長もいます。
ブラック企業のインターンを経験し続けても、意味はありません。
その後にその会社に採用されたり入社されたりするのは不幸であり、避けるべきです。
違法インターンによる被害をこれ以上受けないよう、一刻も早くインターン先を退職しましょう。
長く酷使されると、学業に悪影響が出るおそれもあります。
他に、給料が出て、有意義な経験のできるインターン先やアルバイトは、いくらでもあります。
退職届の書き方、出し方について、次に解説しています。

違法なインターンを辞めるべき理由

最後に、違法なインターンをこれ以上続けないためにも、辞めるべき理由を解説します。
違法インターンは、適法なインターンのように価値のあるものではありません。
適法なインターンなら、学生のうちから社会人体験ができ、とても有意義です。
意味のあるインターンなら、ぜひ参加して経験を積むのもよいでしょう。
しかし、違法なインターンだと、単にタダ働きさせられ、こき使われるだけ。
良質な経験が貯まることはありません。
企業の経営者は、インターン生より年長で、経験豊富ですから、だまされてはなりません。
ベンチャー精神のような根性論をふりかざし、学生を従わせようとする経営者についていってはいけません。
ブラック企業の可能性が高い
長期インターンなのに無給だと、違法インターンの可能性は高いです。
違法インターンを労働力として活用し、利益を得ようとする会社は、社員を「駒」としか見ません。
インターン生を安い労働力として酷使する悪意があります。
インターンを悪用するのは、ブラック企業の典型です。
インターン生以外の社員にも、手厚い保護をするとも到底考えがたいです。
その経験は、価値あるものではなく、仮にインターンから正社員として入社しても、給料や残業代の未払い、長時間労働やハラスメントなどの労働トラブルに悩まされるのは必定です。
ブラックバイトの特徴について、次に解説します。
違法インターンでは成長できない
インターンに参加する学生の大きなメリットは、一足先に社会人として職業体験を得られること。
しかし、社会人として働くときは、適切な給料をもらい、責任感をもって仕事をします。
インターンで、給料が出ないと、責任をもって仕事することができません。
給料に対し、しっかり貢献して返す経験は、無償のタダ働きでは身につきません。
しかも、違法なインターンをさせる会社は、インターンに重要な仕事はさせません。
要はバイトの延長なわけですから、社会人としての職業体験の先取りにもなりません。
無給のインターンは継続しない
学生の立場では、社会人よりも時間が自由なことが多いでしょう。
それでもなお、時間は有限であり、貴重なもの。
無給で、違法なインターンに費やすのは無駄としかいえません。
業務をしているのに給料がもらえないなら、どれほど貴重な体験でも長続きはしないでしょう。
無給のインターンに、継続性はありません。
むしろそれであれば、アルバイトとして社会経験を積んだほうがましです。
労働トラブルへの疑問は、弁護士の無料相談で解消できます。

まとめ

今回は、違法インターンの実態と、その対処法について解説しました。
違法インターンは、学生を食い物にし、タダ働きさせて疲弊させます。
万が一違法インターンの会社に雇用されても、すぐ退職したほうがよいでしょう。
会社の雰囲気に飲まれ、文句のいえないまま酷使されれば、違法インターンの餌食です。
インターンでは、学生生活で得難い経験ができ、とても有意義ですが、給料は払われるべきです。
給料や残業代の未払い、長時間労働、パワハラなど、違法インターンを疑うきっかけは多いもの。
少しでも疑問に思うときは、ぜひ一度弁護士に相談ください。
- インターンにも労働基準法が適用され、労働者としての保護を受けられる
- 労働基準法の「労働者」なのに無給で働かされるインターンは違法
- 違法なインターンだと明らかになったら、給料、残業代を請求し、退職する
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