IT業界は、残業が多いといわれることがありますが、本当でしょうか。
ITと一言でいっても、さまざまな業態、業種があります。
いまや、情報技術を扱っていない会社のほうが少ないほどです。
そんなIT業界のなかで、プログラマ、エンジニアなどの職種で、長時間労働が蔓延しています。
これらITの一部で、残業が多くなるのは、性質上の理由があります。
IT企業では、「24時間保守対応」といった、労働者に無理をさせるサービスがよくあります。
零細な企業ほど、内部では労働者を酷使し、便利なサービスを提供しようとします。
「IT土方」という言葉もあるように、便利なサービスの裏に、違法な長時間労働、残業代未払いがあります。
今回は、IT業界によくある「残業が多すぎる」ケースの違法性を、労働問題に強い弁護士が解説します。
IT企業ほどスピードで競合と争いがちですが、労働者として疲弊してはなりません。
- IT業界は残業が多い上、ベンチャーなど期の浅い会社では残業代未払いもありうる
- 「IT企業だから」という理由でされる残業代未払いの理由は、違法の可能性あり
- IT業界の残業代は、平均60時間を超えており、かなり長時間の業種だといえる
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★ ベンチャーの労働問題まとめ
IT業界での残業の問題点
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IT業界に限らず、日本では「長時間働くほうが偉い」という文化が続いてきました。
しかし、働き方改革をきっかけに、残業時間を削減する動きが見られています。
こういった状況にもかかわらず、最先端のはずのIT企業でも、残業はなくなりません。
情報技術の発展にともない、必要性の増したIT業界は、さらに激務となっているのが現状です。
プログラマの残業
プログラマは、他の業種に比べて残業時間が多くなりがち。
プログラマの業務は、顧客の要望に左右されやすく、業務量も膨大です。
顧客に振り回される原因は、納品間際にシステム改修の要望が出るのが大きいでしょう。
システムを動かせるようにならないと業務で使うイメージが沸かないからです。
予算が潤沢なら、プログラマにも残業代金が払えますし、無理なく対応できるでしょう。
しかし多くの場合、ライバル企業との競争もあり、同じ人数、同じ納期で対応することとなります。
エンジニアの残業
エンジニアの残業の原因は、納期を厳守するのが重要な点にあることが多いです。
どんな仕事にも納期はありますが、特にエンジニアの仕事では、納期優先とされがちです。
顧客のシステム稼働日以降の予定に隙がなく、過ぎると機会損失が出てしまうからです。
納期を後ろにずらすのは、IT業界では難しいでしょう。
納期直前のエンジニアは、毎日家に帰れないほど残業をしてでも仕上げねばならなないのが実態です。
仕事で終電に間に合わないときの対応は、次に解説します。
ITコンサルタントの残業
残業時間が多いイメージを持たれることの多いITコンサルタント。
その背景には、年収の高さが関係しています。
ITコンサルタントは、高年収である反面「残業して当然」という発想がつきものです。
予期せぬトラブルが発生すると、場合によっては深夜や休日に対応しなければなりません。
IT企業のように、機械相手の仕事に、休みはありません。
なかでも、システムの開発や保守、運用などの業務を担当すると、さらに残業時間が長くなります。
システムトラブルが多いほど、残業が増えるのは当然のこと。
長時間の残業で、ITコンサルタントは生活のリズムが安定しにくいのが現状です。
休日出勤の拒否について、次の解説をご覧ください。
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IT業界の残業が長時間となる理由
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なぜIT業界の残業は長時間になるのでしょうか。
IT業界の残業が、長時間となってしまうのには、理由があります。
大きく分けると、その原因は、業務そのものにあるケースと、社員の経験にある場合があります。
前者は、IT業界という業務の性質上、残業が多くなってしまうということ。
後者は、未経験からIT企業に飛び込む人も多く、経験が足りないために残業時間が長くなるということです。
IT企業はリモート作業が多い
IT企業は、業務の性質上、勤務時間を超えて業務が継続してしまうことが多くあります。
パソコンで作業するため、クラウドサービスを利用すれば、自宅でも作業は容易。
もともとリモートワークが標準となっているIT企業も少なくありません。
このとき、時間内に業務が終わらないと、持ち帰って仕事をするケースが多くあります。
結果、残業のハードルが低くなり、歯止めがなくなってしまうのが、残業が増える理由となっています。
リモート作業が多いと企業は残業時間を把握しづらくなります。
そのため、会社としても残業を把握しきれず、残業代の未払いも発生してしまいます。
(参考:持ち帰り残業の違法性)
リモートワークで起こりがちなハラスメント問題も参考にしてください。
納期がタイトである
納期がタイトな仕事が多いことも、IT業界の残業を増やしている原因です。
急な変更で納期が早まったり、無理難題を押し付けられたりすることが、IT業界ではよくあります。
納期がタイトなほど、その分一日あたりの業務量は増加するもの。
勤務時間内に終わらければ、残業をする必要がでてきます。
仕事を押し付けられた時の断り方は、次に解説しています。
IT業界が未経験だと勉強が必要
IT業界に未経験の社員は、業務遂行のため、覚えなければならない事項がたくさんあります。
そのため、勉強からはじめて仕事が終わるころには、残業になってしまっています。
IT業界は、新しい業界であり、未経験者でも飛び込みやすい風土があります。
しかし、その分、転職後に、必要な知識を基礎から学ぶ必要があります。
十分に勉強しなければスムーズに業務をこなせない結果、残業時間が長くなってしまいます。
残業代の悩みも、弁護士に相談できます。
労働問題に強い弁護士の選び方は、次に解説しています。
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IT業界によく起こる違法な残業代未払い
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IT業界は、新しい業界で、ベンチャーやスタートアップ企業が多くあります。
その分、法令遵守(コンプライアンス)が徹底されないIT企業も、残念ながら少なくありません。
残業して働いても、残業代がもらえないなら、IT企業といえど違法に違いありません。
IT企業側からも、残業代を払わないさまざまな反論がされますが、認められないケースが多いでしょう。
「IT企業だから残業代なし」は違法
残業代請求に対して、「IT企業だから残業代なし」と反論してくる経営者もいます。
しかし、IT業界にも、当然に労働基準法は適用されます。
IT企業にありがちなベンチャー経営者は、ベンチャースピリットなどの根性論を、社員に押し付ける人もいます。
しかし、労働者はあくまで、働いた時間で評価されますから、残業代をもらうのは大切なことです。
ベンチャー企業の残業の実情も参考にしてみてください。
IT企業の違法なみなし残業
もう一つの違法な残業代未払いの典型例が、みなし残業を悪用してくるケース。
みなし残業は、固定残業代とも呼ばれ、IT企業ではよく使われます。
実労働時間に関わらず、毎月一定の残業をしたものとして残業代をまとめ払いするものです。
「固定給に残業代が含まれるから、残業代はない」という主張の多くが、これにあたります。
しかし、この制度はあくまで、一定時間の残業があったとみなして払っているに過ぎません。
みなされた残業時間を超えて残業すれば、当然にその分の残業代を請求できます。
固定残業代の違法性について、次に解説しています。
違法な裁量労働制
「裁量労働制なので、残業代は不要だ」と反論を受けることもあります。
裁量労働制は、一定の専門性ある業種について、定められた時間だけ働いたとみなす制度。
エンジニア、プログラマなど、IT企業の職種は、労働基準法で、裁量労働制の対象とされます。
しかし、裁量労働制の対象とされる職種だからといって、安易な適用はできません。
裁量労働制を正しく運用するためには、働き方に裁量がなければ違法だからです。
裁量労働制の違法性について、次に解説しています。
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IT業界の残業時間はどれくらい?長すぎると違法です
では、IT業界全体の残業時間はどれくらいでしょうか。
IT業界の違法な残業について解説すると、これから転職したい方は不安が募るでしょう。
就職・転職口コミサイト「Vorkers」が2018年に発表した「業界別残業時間(月間)ランキングTOP30」によれば、「インターネット」(IT・通信・インターネット)は6位、平均残業時間は、63.36時間となっています。
より長い残業をしている業界もありますが、上位のほうだといってよいでしょう。
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そして、「1日8時間、1週40時間」の法定労働時間を超えて働くと、通常の給料の1.25倍の残業代を払う義務があるところ、月60時間を超えて残業すると、割増率は1.5倍とされ、強く保護されています。
また、月80時間以上の残業があると「過労死ライン」といい、労災事故の原因ともなるとされます。
このことからもわかるとおり、上記表の月63.36時間の残業というのは、かなり長いといわざるをえません。
これは平均ですから、IT業界には、もっと残業の長い会社が多くあるということでしょう。
月60時間以上の残業が、毎月続き、その結果、うつ病、適応障害など精神疾患にかかったときには、業務が原因であるとして労災認定が下る可能性はかなり高いです。
労災の慰謝料について、次の解説をご覧ください。
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IT企業の残業がつらいときの対処法
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以上のように、IT企業に残業が多いのは事実です。
残業が自分の努力で解決できおるものならば、業務量を減らしたり、効率を上げたりして解決できます。
つまり、ホワイトなIT企業ならば、残業問題を解決することはできるのです。
しかし、ブラックなIT企業だと、自分の努力ではどうしようもないほどの違法な残業実態があります。
残業代が払われないと、金銭的な負担がかさんでつらいことでしょう。
このとき、IT企業のつらい残業に対処する方法を知ってください。
IT技術で業務効率化する
無駄を省き、一定時間の業務量を増やせれば、その分、残業時間を減らせます。
業務効率化は、自分一人でも実践可能で、他の方法と比べて低コストで済むメリットがあります。
IT企業に努める以上、IT技術による業務効率化は、得意なのではないでしょうか。
テンプレート作成やマニュアル化といった他業種でもできる内容から、システムに関する専門的なものまで、さまざまな方法が考えられます。
周囲に業務分担を依頼する
業務を抱え込み過ぎているのが、残業時間を増やす原因になっているケースもあります。
一生懸命に取り組む姿勢は評価すべきですが、無理して体を壊す前に業務を分担してもらいましょう。
IT企業の仕事は、細分化して、手の空いている人に割り振れるものもあります。
テンプレートやマニュアルを活用すれば属人的にならず、特定の人が残業を抱えすぎる事態を回避できます。
パソコンのログ履歴を保存する
IT企業では、パソコン作業がメインの方が多いでしょう。
残業をしたことを証拠に残さなければ、次に解説する残業代請求による解決はできません。
そのため、ITほど、パソコンのログ履歴が、残業代の重要な証拠となります。
パソコンのログが証拠になることについて、次に解説します。
未払いの残業代を請求する
長時間働いたのに、残業代が未払いのとき、必ず請求しておきましょう。
残業代の請求は、会社のタダ乗りを許さず、長時間労働をストップさせることにつながります。
パソコンのログ履歴を含め、十分に証拠を収集し、残業代を計算してください。
会社と話し合いで解決できればよいですが、そうでなければ、法的な手続きをとるようにしてください。
労働審判、訴訟など、裁判所の手続きによって、残業代を強く要求しましょう。
残業代の計算方法は、次の解説をご覧ください。
![](https://roudou-bengoshi.com/wp-content/uploads/2016/08/tokeijikan-300x169.jpg)
まとめ
![弁護士法人浅野総合法律事務所](https://roudou-bengoshi.com/wp-content/uploads/2022/03/asanosougou-zentai.jpg)
今回は、IT業界で働く労働者が特に気になる、IT企業の残業代について解説しました。
IT業界といえど、他業種と同じく、労働基準法が適用されます。
違法な長時間労働が許されないのは当然、決まった時間を超えて働けば残業代をもらえます。
ブラックなIT企業では、きつい納期を、労働者を酷使してこなそうとします。
ただ、IT業界では、リモートを含め、自由な働き方が許され、このことが残業代請求を阻んでいます。
よく注意して進めなければ、もらえるはずの残業代を損してしまうことも。
長時間労働を続けると、うつ病や過労死してしまうIT企業の労働者も少なくはありません。
- IT業界は残業が多い上、ベンチャーなど期の浅い会社では残業代未払いもありうる
- 「IT企業だから」という理由でされる残業代未払いの理由は、違法の可能性あり
- IT業界の残業代は、平均60時間を超えており、かなり長時間の業種だといえる
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