退職を申し出たら、これまでの職場での扱いが突然変わって、仕事を与えられなくなってしまい、精神的に辛い思いをした労働者の方のご相談に、弁護士が回答していきます。
退職を申し出ることは、労働者の自由です。労働者は、憲法上、「職業選択の自由」をもっていますから、どこの会社で働くのも自由であって、したがって、会社を辞めることも自由にできるからです。
この解説のご相談内容は、会社が「辞めてはいけない」、「退職は禁止」と言ったわけではないものの、退職をすることでパワハラ、職場いじめの対象とし、事実上、退職を理由としたストレスをかけることもまた、退職を妨げることにつながります。
1. 法律相談の内容
まずは、会社に退職する旨を伝えたことによって、パワハラの対象となってしまった労働者のお悩みを聞いてみましょう。
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- 今年の4月から、東京都内のスーパーで契約社員として働いています。職場の雰囲気も非常によく、楽しく働いていました。
しかし、妊娠をして、家族を優先したい状況となったことから、会社を退職することを決意しました。
就業規則を確認したところ、退職するときは「2か月前」に申し出ること、との記載がありましたので、念のため余裕を、2か月半前から、直属の上司に、退職したい旨を伝えていました。
すると、私が退職することを聞きつけた社長が激怒し、ただでさえ人手不足なのに退職をするなど、会社に対する迷惑を考えないのかと、他の社員もみんないる前で怒鳴りつけられました。
この日を境に、他の従業員の方の、私を見る目が変わりました。
社長が裏から手をまわして、他の従業員に、私に対して仕事を与えないように、今与えている仕事はすべて引き上げるようにと強く指示していたのでした。仲の良い社員も、社長に嫌われないようにと、社長の指示に従っているようでした。
もう退職をする身であるとはいっても、就業規則の規定にしたがえば、あと2か月間は会社にいなければならず、強い精神的なストレスから、家に帰るとすぐに激しい動悸と吐き気が続き、食事も喉を通らなくなってしまいました。
- 今年の4月から、東京都内のスーパーで契約社員として働いています。職場の雰囲気も非常によく、楽しく働いていました。
退職をすることは自由ではあるものの、昨今の「求人難」、「人手不足」に悩んでいる中小企業は非常に多く、退職時期、退職理由によっては、パワハラによって事実上退職困難な状況となっていたり、退職を言い出しづらいという労働者の方も多くいらっしゃるようです。
自ら退職を言い出すことができず、職場環境に不満のある労働者の方は、弁護士を通じて退職の意思表示をすることを検討してもよいでしょう。
2. 労働問題に強い弁護士の回答
退職の自由があるとはいえ、会社ぐるみで嫌がらせをされると、対象となってしまった労働者の方の精神的負担、ストレスは相当なものであることが想像されます。
解決策について、労働問題に強い弁護士の回答をまとめました。
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退職届を提出して退職の意思表示をした場合には、法律上、「2週間」もしくは、月給制社員の場合には、「月の前半に申し出ればその月末、月の後半に申し出れば翌月末」に退職することができます。
そのため、退職をさせないで、残りの雇用期間中に職場いじめの標的にされてしまうようなケースでは、まずは会社にいかずに精神的苦痛を減らすことを最優先にお考えください。
会社からの嫌がらせによってメンタルヘルス、精神疾患にり患し、会社に行けなくなった場合、「労災」であり、これを理由に会社にいかなかったとしても、賃金請求権を失いません。
とはいえ、このような主張をしても、職場いじめ、パワハラの横行するブラック企業において、すぐに聞き入れてもらうのは難しいでしょうから、最終的には、労働審判や訴訟など、会社外での解決に委ねる方がよいでしょう。
労働問題に強い弁護士へ、お気軽に法律相談されてください。
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退職届を提出して退職の意思表示をした場合には、法律上、「2週間」もしくは、月給制社員の場合には、「月の前半に申し出ればその月末、月の後半に申し出れば翌月末」に退職することができます。