労働問題弁護士ガイドとは?

「明日から来なくていい」と言われたらクビ?会社に行かないとどうなる?

今回は、「明日から来なくていい」と言われたとき適切な対処を、労働問題に強い弁護士が解説します。

ある日突然「明日から来なくていい」といわれたとき、その意味がわからず、どうしてよいか迷うでしょう。
会社に行けないということは、解雇、すなわち、クビを意味する場合もあります。
一方で、注意指導して、あなたを試しているのかもしれません。

相談者

明日から来るなといわれて、会社に行けない

相談者

働きたいのに働けないのはクビではないのか

こんな疑問で考え込んでしまうでしょうが、まずは出社する意欲を見せるのが基本です。
「明日から来なくていい」といった上司にも、解雇する権限がないこともあります。
翌日以降も出勤する意欲を見せることは、不当解雇の撤回を求めて会社と争うときにも有効です。

社長から直接「明日から来なくていい」といわれたなら、もはや解雇と同義と考えるべき。
このときは、解雇の理由がないときは、不当解雇として争うのがおすすめです。

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解説の執筆者

弁護士 浅野英之

弁護士(第一東京弁護士会所属、登録番号44844)。
東京大学法学部卒、東京大学法科大学院修了。

企業側の労働問題を扱う石嵜・山中総合法律事務所、労働者側の法律問題を扱う事務所の労働部門リーダーを経て、弁護士法人浅野総合法律事務所を設立。

不当解雇、未払残業代、セクハラ、パワハラ、労災など、注目を集める労働問題について、「泣き寝入りを許さない」姿勢で、親身に法律相談をお聞きします。

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「明日から来なくていい」の法的な意味とは

「明日から来なくていい」という言葉を法的に整理すれば、次の5つのいずれかに分類されます。

冒頭で紹介したように、高圧的な上司や先輩から「明日から来なくていいよ」などと怒鳴られたとき、労働者としては、まずはその発言が、法的にどんな意味なのかを考える必要があります。

というのも「明日から来なくていい」という発言はさまざまな意味にとれるからです。
最悪なケースととらえれば解雇、つまりクビを意味するように聞こえますが、上司や先輩からの叱責の場合には、そもそも独断で解雇する権限まであるとも限りません。
(なお、解雇だとすれば不当解雇として争うべきケースが多いでしょう。)

注意指導を意味するケース

「明日から来なくていい」という発言が、注意指導を意味する場合があります。
業務でミスしたり、遅刻・無断欠勤したりしたとき、叱責としてこんな発言をされる例です。
こんな発言には法的な意味はなく、「これからは注意しろよ」といった程度の意味合いです。

ただし、あなたに反省すべき点があれど「明日から来なくていい」という発言は過激すぎます。
悪い点を注意するなら、改善をうながすべきで、もっと良い伝え方があるはず。
言い方によって解雇、つまりクビともとれる暴言は、相当な配慮のないかぎり違法なパワハラです。

パワハラと注意指導の境目はあいまいです。
区別のしかたについて、次の解説をご覧ください。

休職を意味するケース

「明日から来なくていい」という発言が、法的には休職を意味する場合があります。
休職は、体調不良やケガなどによって業務をするのが難しい人に、休むよう伝える命令。

就業規則における休職の要件にあてはまり、医師の診断などをもとに、適切な休職命令として「明日から来なくていい」と言われたのであれば、それにしたがって休むのがよいでしょう。

自宅待機命令を意味するケース

「明日から来なくていい」の発言の意味が、自宅待機の命令を意味するケースもあります。
自宅待機命令は、業務命令の一種であり、オフィスに来ずに自宅にいるよう命じるものです。
自宅待機命令を受けたときは、翌日以降、会社に出勤してはなりません。

懲戒解雇となるような重大な問題を起こし、出社させるのが適切ではないケースでこんな発言を受けたときは、自宅待機命令を意味する可能性があります。

退職勧奨を意味するケース

「明日から来なくていい」という発言が、退職勧奨の一環としてされる例もあります。

退職勧奨とは、会社が労働者に、自主的に会社をやめるようはたらきかける行為。
退職勧奨でも、労働者の同意なく会社をやめさせることはできません。
そのため、会社をやめるよう強要されたら、それは違法な退職強要だといえます。

退職強要になってしまう行為は、違法なパワハラにあたります。
「明日から来なくていい」という強い発言で、事実上会社にいけなくなったなら、それは退職勧奨ではなく違法な退職強要の程度に至っていると判断できます。

退職勧奨がパワハラになるケースの対処法は、次の解説をご覧ください。

解雇を意味するケース

「明日から来なくていい」という発言を素直にとらえれば、それは解雇、すなわちクビという意味です。
言葉の意味からして、一番自然な解釈だといってよいでしょう。

会社が、労働者との雇用契約を、一方的に解約するのが「解雇」です。
解雇されると労働者は会社に出社できませんが、不当解雇として違法になる可能性も高いです。

「明日から来なくていい」という発言が、解雇を意味するように聞こえやすいからこそ、上記で解説する他の意味のときには、そのことが労働者にわかりやすいようきちんと説明しなければなりません。
説明なく、解雇と聞こえるようなプレッシャーをかけること自体、違法の可能性が高いといえます。

「明日から来なくていい」は違法な可能性が高い

「明日から来なくていい」という発言は、違法となる可能性が高いです。
言い方がやわらかだったり、発言の態度が問題なかったりすることもありますが、文字にすればとても過激な内容であることをよく理解いただけるでしょう。

この発言について、どの点に違法性があるかを解説します。

違法なパワハラになるケース

注意指導や休職、自宅待機といった、労働契約を終了させるわけではない意味で「明日から来なくていい」といわれた例を考えてみましょう。
その意味合いや意図にもかかわらず、「明日から来なくていい」といえば「労働契約を終了されるのではないか」と労働者に不安を抱かせて当然です。

この発言による労働者へのプレッシャーは相当大きくで、違法なパワハラになる可能性が高いです。
このとき、業務上必要かつ相当な範囲を超えれば、パワハラといってよいでしょう。

注意指導とパワハラの区別
注意指導とパワハラの区別

もし、会社にパワハラの意図がないならば、次の伝え方が適切です。

  • 改善点を具体的に伝えて、注意指導する
  • 休職要件に該当すること、休職期間を伝えて、休職命令を発する
  • 今後の懲戒処分のスケジュールを伝え、自宅待機命令を発する

そして、上記の例なら、書面で伝えるのが適切な場合が多いです。
にもかかわらず、「明日から来なくていい」という発言だけで済ませるなら、やはり違法なパワハラだといえます。
違法なパワハラを受けた被害者は、直接の加害者と会社に対し、慰謝料を請求できます。

不当解雇になるケース

「明日から来なくていい」という発言が、その言葉どおり、退職勧奨や解雇といった労働契約の終了を意図してされたケースも、違法の疑いが強いといわざるをえません。
解雇は、「解雇権濫用法理」のルールにより、客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当でなければ、不当解雇として違法、無効だからです(労働契約法16条)。

解雇権濫用法理とは
解雇権濫用法理とは

このとき、「明日から来なくていい」という発言だけで労働者をやめさせようとするのは乱暴そのもの。
不当解雇になる可能性がとても高いです。
適切に解雇しようとするなら、解雇理由書を渡すなどしてその理由を具体的に告げ、労働者側の弁明をしっかり聞いて、プロセスを踏んで進めなければならないからです。

明確に「解雇」といわずとも、一方的に言い渡せば解雇と同じ意味になる言葉は多いです。

  • 明日から来なくていい
  • もう会社に来るな
  • やる気ないなら来なくていいよ
  • お前みたいな社員に明日はない
  • 邪魔なのでもう会社に来ないでもらいたい

こんな発言はいずれも、会社にいけなくなって当然。
退職強要もまた解雇と同じであり、正当な理由のないかぎり、不当解雇です。

「明日から来なくていい」と言われたときの適切な対処

「明日から来なくていい」という発言は、違法の可能性がとても高いため、労働者側で対処するときには、細心の注意を払わなければなりません。
具体的な対応のポイントを、順に解説していきます。

とりあえず出社すべき

「明日から来なくていい」発言の意味がわからず、どうしてよいか迷うなら、まず出社するのが基本です。

「明日から来なくていい」というのが解雇でも、不当解雇なら無効です。
退職勧奨だとしても、労働者の同意なく、雇用契約は解消できません。

そのため、雇用契約は続いており、会社に出勤する義務は残っていると考えるのが安全です。
まずは、出社してみるのがおすすめです。
出社したら同じく「来るなといっただろう」などといわれ追い返されるなら、違法性がより明らかになります。

出社できなくても、出社の意思は示しておく

「明日から来なくていい」といわれても、出社せず休めば「無断欠勤」といわれる危険もあります。
欠勤の事実があって、「明日から来なくていい」発言が口頭でしかされていないと、あなたにとって不利に扱われ、最悪の場合、無断欠勤を理由にクビにされるおそれもあります。

会社の嫌がらせやパワハラで事実上出社できなくても、「出社する意思がある」と示しておくのが大切。
内容証明によって、出社する意思を示した事実を証拠化するのがよいでしょう。
通知書のテンプレートは、次の例を参考にしてください。

通知書

貴社の、20XX年XX月XX日付「明日から来なくていい」という発言ついて、通知します。

私は、発言の意味を明らかにするよう求めていますが今のところ貴社から説明はありません。
貴社社長から「来なくていいといったのになぜ来る」、「もういらないんだ、わかるだろ」などの発言もありましたが、その意味も不明なままです。

したがって、雇用契約は存続しますから、本日以降も業務命令にしたがい労働する意思があります。
なお、一連の発言が解雇を意味するなら、不当解雇なのは明らかであり、強く撤回を求めます。

発言の証拠を残す

「明日から来なくていい」という発言の意味を明らかにし、責任追及する前提として、そんな発言があったことを証拠に残さなければなりません。

一番よいのは、発言の録音がとれることです。
発言の録音がとれれば、発言の内容だけでなく、その言い方や語気の強さも証拠に残せます。
なお、すぐには録音がとれなくても、「明日から来なくていいといわれましたが、納得いきません」とメールするなど、証拠に残す努力をしましょう。

パワハラ発言を録音する方法は、次の解説をご覧ください。

発言の意味を確認する

次に、「明日から来なくていい」という発言をした趣旨を確認します。

「明日から来なくていい」という発言で、暗にあなたをやめさせようとしてくる会社の場合には、まともな理由の説明は聞けない可能性が高いでしょう。
このとき「発言の意味を聞いた」という証拠を残すために、確認についても書面で行うのが大切です。

発言の意味を問いただすのは勇気がいるでしょうが、指示、命令の意味がわからないこと自体が問題です。
あなたの態度が悪いと責めてこれば、会社の違法性がさらに強まります。
「こわくて聞きづらい」と我慢すれば、退職勧奨に同意したと評価されるおそれもあるため注意してください。

不当解雇なら撤回を求める

「明日から来なくていい」という発言の意味が解雇のとき、不当解雇なら撤回を求めましょう。
仮に会社が解雇通知を渡してきても、労働者に問題のないかぎり、解雇は無効です。

不当解雇の判断はとても難しい問題ですが、少なくとも「明日から来なくていい」のように中途半端であいまいな言葉で解雇しようとする時点で、大した解雇理由がないのではないかと予想できます。
きちんと解雇理由があるなら、こんな発言で終わらせるのではなく、適切な解雇手続きを踏めばよいからです。

この場合、撤回が受け入れられなければ労働審判や裁判で争い、解雇を取り消してもらえます。

あわせて、「明日から来なくていい」というパワハラ発言による精神的苦痛は、不法行為(民法709条)による慰謝料を請求して補填を求めましょう。

不法行為となる要件
不法行為となる要件

解雇が有効なら、解雇予告手当を請求する

「明日から来なくていい」という発言が解雇のとき、残念ながら、解雇が有効なケースもあります。
つまり、労働者側に問題があって、解雇されてもしかたないといえる場合です。

このとき、解雇によって労働契約がなくなるため、会社にはいけなくなります。
ただし、それでもなお、即日解雇されてしまうとはかぎりません。
解雇するときは30日前に予告するか、不足する日数分の平均賃金に相当する「解雇予告手当」を払う必要があるからです(労働基準法20条)。

解雇予告のルール
解雇予告のルール

そのため「明日から会社に来なくていい」という即日解雇なら、解雇予告手当を請求できます。
この手当を払わないためには、会社は労働基準監督署の除外認定を得なければなりませんが、重度の懲戒解雇のケースなどでしか認められず、ハードルはかなり高いものとなっています。

解雇予告手当の請求方法と、即日解雇への対応は、次の解説をご覧ください。

「明日から来なくていい」と言われたら、その後はどうなるか

「明日から来なくていい」と、出社を拒否されてしまうと、その後どうなるのか不安が募るでしょう。
どう過ごせばよいのか、といった点について解説します。

会社にいかなくても給料は請求できる

「明日から来なくていい」といわれて会社にいけなくても、雇用関係はなくなりません。

「明日から来なくていいといわれたから行かない」、「帰れといわれたから帰る」というのは、むしろ業務命令にしたがった正しい対応といえます。
業務命令にしたがっており、かつ、雇用契約もなくなっていないのですから、給料がもらえるのは当然。

このとき「明日から来なくていい」発言の意味がいずれでも、給料は発生するのが基本です。

  • 注意指導の場合
    注意指導するだけで雇用契約はなくならないなら、給料がもらえるのは当然です。
  • 休職を意味するケース
    「休職は無給」と定める会社が多いですが、業務による災害(労災)なら、労災保険の給付をもらえます。
  • 自宅待機命令を意味するケース
    責任が明らかになっていないうちに自宅待機命令とするとき、給料は発生するのが原則です。
  • 退職勧奨を意味するケース
    退職勧奨が違法なパワハラになるとき、会社の行為によって出社できないなら給料は生じます。
  • 解雇を意味するケース
    不当解雇なら、解雇の無効を争って、勝訴すれば解雇期間中の給料をあわせて請求できます。

給料の未払いがあるとき、請求する方法は次の解説をご覧ください。

「会社に来なくていい」と言われて退職したら会社都合

「会社に来なくていい」と言われた結果、退職したら、失業保険は会社都合となります。
このとき、あなたをやめさせようとしてくる悪質な会社ほど、自己都合扱いとしてきがちですが、自己都合と会社都合では、失業保険をもらえるタイミング、もらえる期間に大きな差があるため、応じてはなりません。

失業保険の会社都合は、あなたがやめざるをえないときの保護。
したがって、自分から進んでやめたわけではなく、「会社に来なくていい」といわれたことをきっかけにしたときは、会社都合扱いで当然なのです。

自己都合と会社都合の違いについて、詳しくは次の解説をご覧ください。

「明日から来なくていい」発言に対応するときの注意点

最後に、「明日から来なくていい」発言に対応するとき、労働者が注意したいポイントを解説します。
出社を拒否されてしまっても、あせらず適切な対応をすれば、労働者保護を受けることができます。

言葉のニュアンスに注意する

「明日から来なくていい」という発言は、そのニュアンスにも注意が必要です。
発言としてされるときは、言い方や態度によってもその意味合いが変わってしまうからです。

例えば、社長が「明日から来なくていい」と感情的に口走ったが、法的な意味は理解していない事例もあります。
真に受けて出社をやめれば「やる気のないやつだ」と低評価を受けてしまいます。
まだ会社をやめたくないなら、発言者の意図を推察しておくのが大切です。

「(会社に)来るな」なのか「来なくてよい」なのか、といったニュアンスも微妙な差。
しかし、語尾が少し違うだけでも、実際に発言した人の意図は大きく違う可能性もあります。

人事権があるかどうかを確認する

「明日から来なくていい」という発言は、雇用契約の解消のように聞こえます。
しかし、解雇や退職勧奨は、そもそも人事権を持つ人にしかできません。
社長をはじめ、人事権を持つ人がこんな発言を直接するなら解雇の意味かもしれませんが、人事権のない上司からの発言であれば、単なる嫌がらせ、パワハラに過ぎないこともあります。

人事権のない上司から「会社に来るな」と言われても、解雇の意味はありません。
この場合には、発言した上司によく意味を確認し、納得のいかないときは、さらに上の上司や社長に、「会社に来るなといわれましたが、会社から解雇されたということでしょうか」などと確認するのがよいでしょう。

退職勧奨に同意しないように注意する

「明日から来なくていい」という発言が退職勧奨だったとき、特に注意を要します。
退職勧奨は、強要でなければ適法で、ひとたび同意してしまえば退職となり争うのは容易ではありません。
「明日から来なくていい」といわれたからといって出社せず、出社の意思すら見せなければ、「同意した」とみなされる可能性があります。

退職勧奨にしたがって合意退職すれば、即日退職。
このとき、解雇予告手当はもらえませんし、会社によっては不当に「自己都合退職」扱いにされ、失業保険すら大幅に制限される危険もあります。

いきなり雇用契約が解消されて後悔しないよう、「明日から来なくていい」といわれても、Yesととられる返事は決してしないようにしてください。

まとめ

弁護士法人浅野総合法律事務所
弁護士法人浅野総合法律事務所

今回は、「明日から来なくていい」といわれた労働者側の、適切な対応について解説しました。

多くの場合、「明日から来なくていい」という発言は不適切な場合が多いです。
なかでも、この発言が解雇を意味するときは、不当解雇となる可能性が極めて高いです。

「明日から来なくていい」発言の法的意味がどんなものでも、会社の言うなりになってはなりません。
翌日以降も出社する意思を示すことが、違法な会社側の発言への良いディフェンスになります。
解雇ないし退職強要であると明らかになり、不服のあるときには、直ちに撤回を求めて争う必要があります。

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