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浅野 英之
弁護士
弁護士(第一東京弁護士会所属、登録番号44844)。東京大学法学部卒、東京大学法科大学院修了。

企業側の労働問題を扱う石嵜・山中総合法律事務所、労働者側の法律問題を扱う事務所の労働部門リーダーを経て、弁護士法人浅野総合法律事務所を設立。

不当解雇、未払残業代、セクハラ、パワハラ、労災など、注目を集める労働問題について、「泣き寝入りを許さない」姿勢で、親身に法律相談をお聞きします。

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パワハラの録音がバレたら違法?証拠として使えるおすすめの録音方法を解説

パワハラを立証する上で、パワハラの録音は最も有力な証拠の一つです。

しかし、「無断で録音したら違法なのではないか」「録音がバレたら会社に処分されるのではないか」と不安を感じ、なかなか行動に移せない人も少なくありません。労働審判や訴訟でパワハラを争う場合、証拠の有無は結果に大きく影響します。客観的な証拠がなければ、たとえ暴力や暴言を受けたのが事実でも、十分な慰謝料が認められないおそれがあります。

実際、社長や上司の発言を記録した録音データは、パワハラの事実を直接示す証拠として評価されやすく、裁判所でも頻繁に活用されています。

今回は、パワハラの録音が違法になるのか、バレたらリスクがあるのか、証拠として有効な録音方法や注意点も踏まえ、労働問題に強い弁護士が解説します。

この解説のポイント
  • パワハラの録音は、裁判や交渉で最も有力な証拠の一つとなる
  • 秘密録音も、正当な目的と相当な方法であれば、民事裁判で証拠になる
  • 有効な録音を取得するため、機器の選定や保存方法なども重要となる

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解説の執筆者

弁護士 浅野英之

弁護士(第一東京弁護士会所属、登録番号44844)。東京大学法学部卒、東京大学法科大学院修了。

企業側の労働問題を扱う石嵜・山中総合法律事務所、労働者側の法律問題を扱う事務所の労働部門リーダーを経て、弁護士法人浅野総合法律事務所を設立。

不当解雇、未払残業代、セクハラ、パワハラ、労災など、注目を集める労働問題について、「泣き寝入りを許さない」姿勢で、親身に法律相談をお聞きします。

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パワハラの録音は訴えるための重要な証拠になる

パワハラの録音は、訴えるための重要な証拠として活用できます。

パワーハラスメント(パワハラ)は密室で行われることも多く、具体的な態様を立証するためには、録音が証拠として非常に重要だからです。また、裁判における証拠としての役割だけでなく、交渉段階でも強力な武器となりますし、パワハラ防止にも役立ちます。

以下では、各場面における録音の役割や必要性について解説します。

録音は原則として裁判で証拠になる

録音があれば、パワハラの有無や内容を直接示すことができます。

ただし、裁判で問題となるのは「証拠として使えるか(証拠能力があるか)」という点です。結論として、民事の裁判手続き(労働審判や訴訟)では録音は原則として証拠になります。民事裁判における証拠能力に厳しい制限はなく、基本的にどのような資料でも証拠提出できるからです。

この原則は、相手の同意なく録音された音声データ(いわゆる「秘密録音」)にも適用されます。したがって、パワハラ・セクハラの慰謝料請求はもちろん、不当解雇や未払残業代請求など、あらゆる労働問題の裁判において、録音を証拠として活用できます。

なお、裁判所に提出する際には、録音データだけでなく音声の文字起こし(反訳書)を用意する必要があります。

パワハラの証拠の集め方」の解説

例外的に録音が証拠にならない場合

ただし、不適切な方法で収集した録音は、証拠能力を否定されることがあります。

例えば、反社会的な方法や著しく不相当な手段で取得された録音は、裁判所で証拠能力が否定される(証拠としての使用が認められない)例があります。このような録音が証拠となると、問題ある方法で集めた人が不当に有利になるおそれがあるからです。

裁判例でも、録音の証拠能力を否定したケースが存在します。

【録音の証拠能力を肯定した例】

  • 東京高裁昭和52年7月15日判決
    上司の暴言や威圧的な叱責を、通常の会話の流れの中で録音した音声データについて、違法性は低いとして証拠能力を肯定しました。パワハラの立証という正当な目的で行われた点、手段も社会通念上相当である点が重視されています。

【録音の証拠能力を否定した例】

  • 東京高裁平成28年5月19日判決
    ハラスメント防止委員会での無断録音について、非公開の審議を保護する必要性があり、違法性が高いとし、証拠能力を否定しました。
  • 大分地裁昭和46年11月8日判決
    不法な手段で得た録音テープを証拠として許容することは、人格権侵害の不法行為を助長し、法廷における公正の原則や信義則にも反するとして、証拠能力を否定しました。

以上のように、裁判所は、①録音の目的が正当か、②録音方法が社会通念上相当か、③相手の権利を過度に侵害していないか、といった点を基準に証拠能力の有無を判断しています。パワハラ被害の立証という正当な目的のもと、通常の業務会話を録音したにとどまる場合には、相手の同意を得ていない秘密録音だとしても、証拠として認められる可能性は高いです。

なお、刑事裁判は民事裁判と異なり、「違法収集証拠排除法則」が適用され、違法な方法で集めた証拠は使用できません。重度のパワハラが暴行罪・脅迫罪などに該当し、刑事事件化を視野に入れる場合、録音方法には特に慎重な配慮が必要です。

録音は交渉でも強力な武器になる

パワハラの録音は、裁判だけでなく、その前の交渉においても価値があります。

パワハラについて慰謝料を請求する場合、いきなり労働審判や訴訟を起こすのではなく、まずは交渉での解決を目指すのが通常です。この交渉の場面でも、会社や加害者は「裁判になったら不利になるかどうか」を重視して判断します。

そのため、パワハラの録音という重要な証拠があることを示せば、「裁判になれば慰謝料の支払いを命じられる可能性が高い」と相手に認識させることができ、交渉を有利に進められます。

録音を残せばパワハラ対策になる

パワハラの録音が活躍するのは、責任を追及する場面に限りません。

本来最も望ましいのは「被害回復」よりも「そもそも被害が生じないこと」、つまり、パワハラ自体が止まることです。日頃から録音の準備をし、パワハラがあれば記録に残す姿勢を示すことで、「後で責任を問われるかもしれない」と加害者に意識させる効果が期待できます。

結果として、パワハラ気質の社長や上司が言動を控えるようになり、パワハラの抑止につながるケースも少なくありません。

パワハラの証拠として録音するおすすめの方法

パワハラを録音して証拠を確保する際は、その方法にも注意してください。録音方法が不適切だと、パワハラの証拠として活用できないおそれがあります。

録音すべき発言を事前に理解する

漫然と録音するのではなく、どのような発言がパワハラに該当するかを理解しておく必要があります。録音すべき対象を知れば、狙って録音することが可能です。

実際に、証拠として有効な録音は、次のような音声です。

  • 大声や怒鳴り声
  • 人格を否定する発言、執拗な叱責
  • 業務とは無関係な侮辱
  • 物を投げる音、机を叩く音、備品を壊す音など
  • 長時間にわたり陰湿に続く面談や叱責

録音の強みは、発言内容だけでなく、その態様(例:声の大きさ、威圧的か、同じ言葉を繰り返されたかなど)を記録できる点にあります。また、単発の強い言葉だけでなく、継続性や前後の流れも重要になるため、できる限り会話全体を録音するように心がけてください。

パワハラにあたる言葉一覧」の解説

ボイスレコーダーは事前に選んでおく

パワハラを録音するために、事前に適切なボイスレコーダーを選んでおきましょう。

スマートフォンでの録音も証拠になりますが、通知音が出たり着信で中断されたりするリスクがあり、実用性や安全性の観点から、性能の良い録音機器を用意するのが無難です(高価である必要はありません)。弁護士としておすすめできるボイスレコーダーの条件は、次の通りです。

  • 集音性が高い
    ポケットやバッグの中でも明瞭に録音できる必要があります。音が不鮮明だったりノイズが入っていたりすると、証拠としての価値が下がるおそれがあります。
  • 録音データをパソコンに取り込める
    裁判所に提出する場合、録音データの保存や書き起こし(反訳)が必要なので、USB接続やクラウド上でのデータ管理ができる機種を選びましょう。
  • 小型で常に携帯できる
    パワハラは突発的に行われることが多く、持ち運びやすく、すぐに録音できるサイズでなければ実用的とはいえません。
  • 録音機器だと分かりにくいデザイン
    ペン型のICレコーダーなど、一見して録音していると気付かれにくい機材の方が、発覚してトラブルになるリスクを減らせます。

パワハラの録音は、裁判における証拠という重要な役割を果たすので、ボイスレコーダーについても「録れれば何でもよい」というものではありません。証拠を確実に残すためにも、録音を始める前に、自分の職場環境に合った機材を慎重に選定しておくことが重要です。

ためしに録音をしてみる

パワハラは突発的に起こることが多いので、いざという場面で失敗しないよう、事前の録音テストは欠かせません。特に、秘密録音となるケースでは、音量が十分に拾えるか、ポケットやバッグの中でも発言を正確に録音できるかを確認しておきましょう。

実際にパワハラに遭った場面では冷静に操作できないことも多いため、「ボタンを押すだけでワンタッチで録音できる状態」を作っておきましょう。

常にボイスレコーダーを携帯する

パワハラは、予告なく行われることがほとんどなので、「起こったら録音しよう」という考えではチャンスを失いかねません。

そのため、録音機器は常に携帯し、すぐに録音できる状態を保つ必要があります。特に、パワハラが日常的に繰り返されている場合や、面談やヒアリングに呼び出されてパワハラが起こる可能性が高い場面などでは、必ず録音できる準備をしておきましょう。

会社から呼び出しを受けたときの対策」の解説

承諾を得ずに秘密録音する

パワハラの証拠収集においては、相手の承諾を得ずに行う秘密録音が現実的です。

事前に「録音します」と伝えれば、発言を控えられたり、パワハラ自体が行われなくなったりして、証拠が残らなくなるおそれがあります。

録音は原則として裁判で証拠になる」で解説した通り、パワハラ被害の立証という正当な目的がある限り、通常の業務会話を秘密録音することは直ちに違法とはなりません。むしろ、パワハラの証拠を確実に残すには、相手に気付かれないよう、自然な形で録音することが重要です。

録音の日時と状況を合わせて記録する

パワハラの証拠収集では、録音だけでなく、記録をセットで残すことを意識しましょう。

パワハラの録音とあわせて、いつ・どこで・どのような状況でパワハラを受けたかを記録しておくことも大切です。録音は重要な証拠ですが、日時や状況が整理して記録されていれば、証拠としての信用性をさらに高めることができます。

具体的には、発言があった日時、場所、同席者や目撃者の有無、その前後の業務内容や経緯などを、メモや日記の形で残しておきます。

パワハラのメモの作り方」の解説

録音が消えないよう確実に保存する

重要な録音を取得しても、音声データが消えてしまっては意味がありません。

保存方法にも注意が必要で、録音後は、できるだけ早くクラウド上や外部ストレージにバックアップを取り、録音機器本体だけで管理しないよう注意してください。また、会社に確認されたり削除されたりしないよう、会社のパソコンに保存するのも避けてください。紛失や削除のリスクを極力抑えるため、自分だけが管理できる状態を保つようにしましょう。

なぜ会社はパワハラの録音を禁止しようとするのか

パワハラの録音は極めて重要であるがゆえに、会社が録音を禁止してくるケースがあります。

その最大の理由は、録音が、会社に不都合な証拠となる危険があるからです。社長や上司の発言がそのまま記録されれば、言い逃れは困難です。

実際、「会社に録音をやめるよう指示された」「本当に録音してよいのか」といった相談が数多く寄せられます。注意・禁止だけでなく、懲戒処分を示唆して思いとどまらせる会社もあります。しかし、その理由が「会社に不利な証拠になるから」だとすれば、録音をやめることは被害者にとって大きな不利益があることは理解できるでしょう。

そもそもパワハラがないなら録音を恐れる必要はないはずです。会社から圧力をかけられても、実際にパワハラ被害に遭ってしまうのであれば記録を残すことが非常に重要です。

パワハラの録音がバレたときの対応

次に、パワハラの録音がバレた場合の適切な対応について解説します。

録音は重要ですが、発覚すると注意されたり、叱責を受けたりするケースがあります。バレた後の対応を誤ると、証拠収集が困難になったり、不当な処分を受けたりするおそれがあります。

バレてもパワハラの録音はやめない

パワハラの録音が、裁判で救済を受けるための唯一の武器となる場面があります。

二人きりの場面や密室で行われるパワハラは、第三者の目撃証言を得ることが難しく、同席者がいても、職場での立場や人間関係を理由に、被害者のために証言してくれるとも限りません。

「バレたから」「会社に禁止されたから」という理由だけで録音をやめてしまうと、自ら救済の道を閉ざすこととなりかねません。パワハラの性質からして、録音による証拠確保は不可欠であり、発覚を理由に安易に中断すべきではありません。

録音する正当な目的を主張する

次に、パワハラを録音する正当な目的があることを主張してください。

職場のパワハラを放置する会社は、安全配慮義務違反の責任を問われる可能性があります。録音が発覚して会社に注意されても、謝罪するのではなく、「パワハラがあるため、やむを得ず録音している」「会社としてパワハラの防止措置を講じてほしい」というように、録音の目的を明確にした上で会社に対応を求めるのが適切です。

上司への注意指導、配置転換や処分といったパワハラ対策は、本来、社員ではなく会社が講じるべきです。会社が適切に対応してパワハラが解消されれば、そもそも録音は不要なはずです。むしろ、パワハラを録音するのは自己防衛であり、将来の被害回復のための正当な行為です。

不当な業務命令や懲戒処分に注意する

会社は、企業秩序を守るためのルールを決めることができます。

指揮命令権・施設管理権に基づき、職場秩序を維持するために職場での録音を禁止したり、業務命令に違反して録音した社員に懲戒処分を下したりすることができます。

しかし、その権限も無制限ではありません。ハラスメント被害を証明するための録音であり、業務に支障がないなら、一律に禁止するのは不当です。特に、隠れて行われるパワハラは、録音しておかないと証明が著しく困難になる危険もあります。そのため、パワハラ被害が認められる事案で、証拠収集を目的として行われた録音は適法とされる可能性が高く、これを理由に懲戒処分とすることは不当処分となります。

録音しただけで重度の懲戒処分を受けた、ボイスレコーダーを所持していただけで処分されたといったケースは、処分が重すぎるとして違法、無効となる余地が大いにあります。

懲戒処分の種類と違法性」の解説

解雇された場合は不当解雇として争う

パワハラの録音を理由に解雇されるケースもありますが、解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合には無効となります(労働契約法16条)。

解雇権濫用法理とは

パワハラ防止や被害回復といった正当な目的のある録音を理由に解雇することは、解雇権の濫用に該当する可能性が高いと考えられます。この場合、労働審判や訴訟で解雇の無効を主張し、職場復帰や賃金(バックペイ)を求めることができます。

ただし、以下のように、録音方法やその後の利用が不適切な事案では、解雇が有効とされた裁判例もあるので注意しなければなりません。

大阪地裁平成21年2月26日判決

うつ病休職から復職した従業員が、事業所内において無断で撮影・録音を繰り返し、上司から繰り返し中止の命令や注意を受けたにもかかわらず従わなかった事案で、周囲の従業員にストレスを与え、正常な業務運営に支障を来したことなどから、解雇が有効と判断されました。

東京高裁令和元年11月28日判決

執務室内で録音が禁止されていたにもかかわらず、労働者が会話を無断で録音した行為について、雇止めの理由として相当であると判断された事案です。

裁判所は、録音禁止の理由として①業務上のノウハウや情報等が漏洩すること、②執務室内での自由な意見交換を妨げ、職場環境を悪化させること、③執務室内の会話をあえて秘密録音する必要性もないことを挙げ、録音禁止命令は合理的で許容されるとしました。

労働者は自己の利益を守るためと主張しましたが、録音データをマスコミ関係者に渡していたことや、交渉内容が執務室内での会話と直接関係しなかったことなどから、録音は証拠保全として不可欠とはいえないとされ、秘密録音の正当性は否定され、服務規律違反に該当すると判断されました。

解雇をめぐる裁判では、嫌がらせや盗聴ではなく、パワハラ被害の救済のためにやむを得ない録音行為であったことを丁寧に説明することが重要です。

懲戒解雇を争うときのポイント」の解説

パワハラの録音をするときの注意点

最後に、パワハラの録音をする労働者が気をつけておくべき注意点を解説します。

パワハラの録音方法を弁護士に相談する

パワハラの録音方法や証拠の集め方についても弁護士のサポートが役立ちます。

当事務所に寄せられるパワハラ相談も、その多くは、慰謝料や損害賠償の請求を考える段階にあります。しかし実際は、パワハラ被害の最中こそ、弁護士のアドバイスを受けるべきです。

自分の判断で証拠収集を進めた結果、いざ慰謝料を請求するタイミングになって「裁判で使えるほどの資料が揃っていない」というケースは少なくありません。この段階では、過去のパワハラ行為の録音を入手するのは難しく、弁護士ができるサポートも限られてしまいます。

労働問題に精通した弁護士は、将来的に裁判で争うことも見据え、どのような録音が有効か、どのような点に注意すべきかを具体的にアドバイスできます。適切な録音を確保するためにも、できるだけ早い段階で弁護士に相談することが重要です。

労働問題に強い弁護士の選び方」の解説

無理して録音に固執しない

パワハラの録音が重要であることを意識するあまり、無理をしてまで証拠収集を続けてしまう方もいます。しかし、目的はあくまで被害回復であり、被害を拡大させてはいけません。

限界を感じる場合には、録音を取ることよりも、自身の安全と健康を最優先に考えるべきです。長期的な目線で見れば、つらい状況から距離を置く、休職を検討するといったパワハラから離れる選択肢が、録音を取ることより重要な場面もあります。

有利な録音を「作ろう」としない

有利な録音を得ようとして、意図的にパワハラを引き出す行為も避けるべきです。

例えば、上司を挑発して怒らせ、強い言葉を引き出して録音するのは、適切な方法ではありません。裁判所では、会話の自然な流れや前後関係が重視されるので、一部だけを切り取ったり、不自然に編集したりすれば、証拠としての信用性を下げる原因になります。

録音内容によっては、被害者側にも問題があったと評価されるおそれもあるため、無理に有利な録音を「作ろう」とするのではなく、事実をありのままに記録する姿勢が大切です。

情報漏洩には気をつける

秘密録音したデータを扱う際、最も注意すべきなのが情報漏洩のリスクです。

パワハラの録音が取れても、不用意に第三者に公開したり外部へ漏らしたりするのは危険です。機密情報や無関係な従業員の会話が含まれていると、SNSやネット上に公開したり友人に聞かせたりした場合にプライバシー侵害や名誉毀損、業務妨害などの責任を問われるおそれがあります。被害者の立場でも、録音の取扱いを誤れば、懲戒処分などの制裁を下す口実を会社に与えかねません。

したがって、録音の活用は、守秘義務を有する弁護士への相談や、裁判所への証拠提出に留め、安易な拡散は控えるべきです。裁判で活用する際も、長時間の録音の場合、パワハラ加害者との会話部分のみを提出するなどの工夫が必要です。

パワハラを受けた当事者が直接録音する

職場での秘密録音が許されるのも、パワハラ被害を記録するという目的があるからです。

目的の正当性が認められるには、被害を受けた当事者が、自分と加害者のやり取りを直接録音しなければなりません。あくまで被害者本人が、自身に向けられた暴言や不当な叱責の現場を、直接記録することが必要です。

例えば、職場にこっそり盗聴器を仕掛けて周囲の会話を拾い続ける、同僚に録音機材を渡して代わりに録音してもらうといった方法だと、パワハラの録音であるという目的や手段が崩れ、不適切な証拠収集と判断されるリスクが高まってしまいます。

【まとめ】パワハラの録音

弁護士法人浅野総合法律事務所
弁護士法人浅野総合法律事務所

今回は、周囲から見えにくい形で行われるパワハラについて、被害者がパワハラの録音を行う際に注意しておくべきポイントを解説しました。

「パワハラを防止したい」「被害を回復したい」といった目的がある場合、録音は極めて重要な証拠となります。そして、正当な目的のもとであれば、会社や社長、上司に知らせずに行う「秘密録音」も、直ちに違法とはなりません。

むしろ、問題のあるパワハラを録音されることを恐れ、会社が一方的に録音を禁止したり、身体検査を実施したり、録音を理由に懲戒処分を下したりすることの方が問題です。

今まさにパワハラの被害に悩んでいる方は、適切な証拠収集と早期の被害回復のためにも、できるだけ早く弁護士へ相談することをおすすめします。

この解説のポイント
  • パワハラの録音は、裁判や交渉で最も有力な証拠の一つとなる
  • 秘密録音も、正当な目的と相当な方法であれば、民事裁判で証拠になる
  • 有効な録音を取得するため、機器の選定や保存方法なども重要となる

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