入社や転職の際、給料や残業時間と並んで気になるのが「年間休日数」。年間休日が何日あるかによって働き方は大きく変わります。ライフスタイルに直結する問題であり、関心は高いでしょう。
年間休日の数は、ブラック企業かどうかを判断する重要な指標となります。一般に「年間休日120日」以上ならホワイトと言ってよいです。これに対して、本解説のように「年間休日100日」だと、週2日も休めない週があるイメージです。このラインより少ないと、状況によっては労働基準法違反の可能性があります。つまり、違法の可能性があるほど年間休日が少ない状況を意味します。
年間休日100日がどれほど大変かをイメージし、実際の状況と照らし合わせてみてください。年間休日が100日の会社で働き、辛さを感じる場合、違法なら対策が必要です。今回は、年間休日100日の実態や違法性について、労働問題に強い弁護士が解説します。
- 年間休日数は重要な労働条件なので、入社前に確認できる必要がある
- 年間休日100日しかなく、1日8時間労働だと、残業代・給料の未払いという違法性がある可能性が高い
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そもそも年間休日とは?
年間休日とは、会社で働く上で1年に休める「休日」の数のことです。
この場合の「休日」とは、もともと労働義務のない日という意味です。次の通り、休暇や欠勤、休業などは、休日とは区別しなければなりません。
- 休日
もともと労働義務のない日 - 休暇
労働義務のある日について、会社がその義務を免除する日
(有給休暇、夏季休暇、冬季休暇、特別休暇など) - 欠勤
労働を義務付けられた日に、労働者側の都合で休むこと - 休業
労働義務のある日に、会社側の事情で業務を中止すること
「休日と休暇の違い」の解説
休日以外の制度は、法律上の権利だったり労使それぞれの都合だったりなど、様々な理由で本来働くべき日に会社を休むことを意味するのに対し、休日は、元から働く必要のない日です。そのため年間休日が何日あるかは、労働者がどのような働き方をするかに直結します。
なお、休暇や休業があったり欠勤が認められたりする場合、本解説の「年間休日100日」でも、実際に働かなくてよい日はもう少し多くなります。逆に、休日出勤があれば、実際に休息に充てられる日は少なくなってしまいます。年間休日はあくまで、会社の用意する業務カレンダー上の休日と考えておいてください。
年間休日数は、重要な労働条件なので、労働者に知らせる必要があります。遅くとも入社までには、会社は書面などを交付して労働者に通知せねばなりません(労働基準法15条、労働基準法施行規則5条)。
したがって、労働者は、採用面接時に直接聞いたり、労働条件通知書、雇用契約書を見たりすることで年間休日数を知ることができます。ただ、会社によっては上記の違いを理解せず、年間休日に有給休暇を含んで表記するなどといった誤りをして、年間休日が把握できなくなってしまっていることもあるので注意してください。
「労働問題に強い弁護士の選び方」の解説
年間休日ごとの働き方のイメージ
どれほど忙しいかを理解すべく、年間休日数ごとの働き方のイメージを解説します。
ただし、いずれも労働時間や休日数から算出した仮定に過ぎません。会社がどの程度の配慮をしているか、繁閑の差が激しいかといった事情によって、同じ年間休日数の会社も、働き方には差がある点には留意してください。
年間休日120日以上:土日祝にしっかり休める
土・日・祝日をすべて合計すると、年間の休日数は約120日になります。したがって、年間休日120日の会社ならほぼカレンダー通りの生活が望めます。副業や趣味の余裕があり、家族と過ごす時間も十分に確保できるでしょう。
これ以上は、休日が増えるごとにホワイトになっていくので、年間休日が120日、140日といった会社は1年間の休日が相当多いということになります(休日数の多い社員のなかには、週3勤務のシフト制など、フルタイムの正社員でない方が含まれます)。
年間休日110日:土日は休みだが祝日休みが少ない
年間休日110日だと、土日は休みですが祝日に出社を要する場合があります。法律は祝日を休日と定めますが、必ずしも労働義務が免除されるとは限りません。休日は少なすぎるわけではないですが、多いともいえないラインです。
週休2日は取れても、世間が休みの祝日に働かなければならないことがあると、不満を感じる方もいるでしょう。
年間休日105日:休みは土日のみ
休日が土日のみだと、年間休日は105日ほどになります。祝日の休みはなく、年末年始やお盆などの長期休暇も休みでない可能性があります。
週末が休みでも、年を通じて仕事の疲れが取れず「もう少し休みたい」と感じる方も多いはず。連休を利用した外出、旅行の機会も減ってしまいます。
年間休日100日:土日でも休めない日がある
年間休日100日を下回ると、土日でも休めない日が出てきます。法律上、完全に週休二日制でなければならないわけではありませんが、土日のどちらかしか休めないとなると体が休まらず「すぐ仕事に行かなければならない」というイメージが強いでしょう。
どうしても生活は仕事中心になり、プライベートはおろそかになります。また、土日の片方しか休めないと週6日勤務となり、1日8時間労働だと週の労働時間は40時間を超え、通常の給料の1.25倍の時間外割増賃金(残業代)が発生することとなります。
このような定め方は、残業代を払わない場合に未払いの違法性があるのはもちろん、残業代を払ったとしても法定労働時間を超える定め方となり、違法です(詳しくは「年間休日100日は違法?」で後述)。
「長時間労働の相談窓口」の解説
年間休日100日の実態とは
次に、年間休日100日の場合の、実際の働き方を解説します。
日本企業の年間休日の平均は107日
厚生労働省の統計調査(令和4年就労条件総合調査)によれば、日本の1企業における年間休日総数の平均は107. 0日とされます(適用される労働者により加重平均した労働者1人あたりの平均年間休日総数は115.3日です)。
企業規模別では、1000人以上の企業の平均年間休日総数が115.5日に対し30人〜99人の企業が105.3日と、規模の大きい企業ほど、年間休日数の多い傾向が見て取れます。
いずれにせよ年間休日が100日だと平均よりも大分少ないといってよいでしょう。つまり、年間休日が100日しかなかったら、他社と比べてもブラックだといえます。
「ブラック企業の特徴と見分け方」の解説
年間休日100日の内訳
企業の休みの定め方には、様々なパターンがあります。それぞれのパターンごとに、年間休日100日だとどのような内訳になるかについて説明します。休日の種類には、次の区別があります。
- 法定休日
労働基準法35条の定める「1週1日もしくは4週4日」の休日のこと。法定休日の労働は、通常の給料に1.35倍した割増賃金の支払いを要する。 - 所定休日
法定休日以外に会社が定めた休日のこと(例えば週休2日制で、日曜日が法定休日なら土曜日を所定休日と呼ぶ)。所定休日の労働は、1週40時間を超える労働の場合には通常の給料に1.25倍した割増賃金の支払いを要する。 - 振替休日
前もって、労働日を休日とし、代わりに休日であった日の出社を命じる。この場合、事前に設定する限り、休日出勤は生じない。 - 代休
休日に働かせた代わりに、事後になって労働日を休日とする。この場合、休日出勤が発生し、休日手当の支払いを要する。
これらの用語を踏まえ、休みのパターンごとの年間休日100日の内訳は、次の通りです。
- 完全週休2日制または4週8休制のケース
→ この場合には、そもそも年間休日が100日を大きく超えるはずです。 - 隔週週休2日制または4週6休制のケース
→ 週に定められた休日を合計すると、最低でも年間休日は78日となります。したがって、これらの制度のもとで年間休日100日と定める場合、残り22日が別途休日として定められることとなります(祝日や年末年始などに充当されるのが一般的です)。 - 週休2日制または4週5休制のケース
→ 週に定められた休日を合計すると、最低でも年間休日は64日となります。したがって、これらの制度のもとで年間休日100日と定める場合、残り36日が別途休日として定められることになります。
「振替休日と代休の違い」の解説
年間休日100日はどれくらいきついのか?
年間休日の「数」だけで捉えると、年間休日100日はかなりきついといえます。実際に統計でも、年間休日が100日以上ある会社の方が多いわけです。
とはいえ、実際の働き方は、休日数だけに左右されるのではありません。例えば、1日の所定労働時間が短ければ、休日数が少なくても過酷とは言い切れません。また、会社によっては次のような配慮によって、忙しさを緩和してくれる例があります。
- 有給の特別休暇がある
- 勤続年数に応じて一定の休みをとれる
- シフトを柔軟に調整してくれる
- リモートワークを認めてくれる
- 疲れたら自己申告で欠勤できる
- 福利厚生が充実している
このような追加の要素によって、休日の少なさが気にならない配慮のある企業もあります。会社は、労働者の健康、安全に配慮する義務(安全配慮義務)があり、休日数にかかわらず、業務によって労働者の心身の健康を崩したなら、この義務に違反するおそれがあります。
実際の働き方は数字だけでは判断しにくく、一概にきついとは断定できません。次章で解説の通り、違法かどうか、争うかどうかは、個別のケースに応じて慎重に判断してください。
「安全配慮義務」の解説
年間休日100日は違法?
次に、年間休日100日が違法なのかどうか、解説します。
少ない年間休日数は、労働者へ悪影響を及ぼします。こうした悪影響を考え、休日と労働時間について、労働基準法は厳格な法規制を定めています。
年間休日100日は違法な可能性がある
まず、休日のルールを定める労働基準法35条は「1週1日または4週4日」の法定休日を与えなければならないと定めており、このルールに違反しないためには、少なくとも1年で52日の休日が必要となります。
労働基準法35条(休日)
1. 使用者は、労働者に対して、毎週少くとも一回の休日を与えなければならない。
2. 前項の規定は、四週間を通じ四日以上の休日を与える使用者については適用しない。
労働基準法(e-Gov法令検索)
なので年間休日が100日もあれば、1週1日または4週4日の法定休日の付与には間に合い、この条文の関連では問題になりません。
それでもなお、年間休日100日では違法な可能性が大いにあります。その理由は、年間休日が100日しかないと、1日の所定労働時間によっては1週間の労働時間が長くなりすぎるおそれがあり、その場合に、労働時間を規制する労働基準法の条文から逆算して考えると、残業代に未払いが生じたり、法定労働時間を超える定め方となったりする可能性があるからです(次章で詳しく解説します)。
1日8時間労働だと、年間休日100日以下では違法になる
労働基準法32条は、労働者の保護を目的として「1日8時間、1週40時間」という法定労働時間を超えて働かせてはならないと定め、例外的に36協定を締結した場合に限り、これを超えた残業が許されています(その場合も、原則として月45時間の残業が、36協定の上限とされます)。
労働基準法32条(労働時間)
1. 使用者は、労働者に、休憩時間を除き一週間について四十時間を超えて、労働させてはならない。
2. 使用者は、一週間の各日については、労働者に、休憩時間を除き一日について八時間を超えて、労働させてはならない。
労働基準法(e-Gov法令検索)
このルールは、働ける日数、休める日数を直接決めるわけではないものの、1週間に働かせる時間の限度が40時間と決まっていることから、会社が1日に働かせたい時間(所定労働時間)によって自ずと1週間あたりに働ける日数の限度が決まってきます。そして、この日数に年間の週数をかければ、年間の労働日の上限を逆算できます。
詳しい計算は、以下のようになります。
- 1週の労働日の限度 × 年間の週数 = 1年の労働日の限度
- 1週の労働日の限度=40時間÷所定労働時間
【1日8時間労働の場合】
多くの会社では、1日の所定労働時間を、法定労働時間と同じ1日8時間と定めています。この場合、1週の労働日の限度は5日(=40時間÷8時間)であり、週6勤務とすることはできません。
1年間は合計約52週(365÷7=52.142…)なので、1年の労働日の限度は約260日となり、すると1年の休日数は105日以上は必要であるということになります(うるう年でも、366÷7=52.285…で約52週)。
以上の通り、1日8時間労働だと、1年の労働日の限度は約260日のため、逆に、1年の年間休日は105日必要となり、したがって、年間休日が100日しかないと違法となってしまいます。
この場合、「法定労働時間を超えて働かせるのに、残業代に未払いがある」という点が労働基準法違反となり、違法性があるわけですが、それだけでなく、たとえ残業代を払っていたとしても、そもそも許される限度である法定労働時間を超える労働日を定めている点でも違法となります(なお、36協定を結び、一定の残業が許される状況だとしても、そもそも労働日が法定労働時間を超える定め方はできません)。
「残業が月100時間を超える場合の違法性」の解説
年間休日100日でも適法となるケース
これに対して、年間休日100日でも適法となるケースもあります。上記の計算は、一般的によくある1日8時間労働の会社を前提としました。これに対し、年間休日が100日未満で、適法に運営している会社は、1日の所定労働時間がそれ以下(1日7時間30分労働など)となっています。
この場合、例えば、所定労働時間が7時間ならば、1週40時間という労働時間の規制内で、1週間に約5.7日まで働かせることができ、1年では約296日まで労働させることができますから、翻って、年間休日が100日でも違法ではない制度設計も可能となる余地があります。
違法でないかと疑いを抱いたら、まずは、会社の就業規則、労働条件通知書などを確認して、勤務先の制度設計を精査するようにしてください。この際、自身では判断が難しい場合には、残業代トラブルを多く扱う弁護士に相談するのが賢明です。
「残業代請求に強い弁護士への無料相談」の解説
年間休日100日しかなくてしんどい時の対処法
年間休日100日でしんどいなら、我慢すべきではありません。苦しい現状を変えるための具体的な対策を、労働者側の立場で解説します。
休みの取り方を工夫する
ただでさえ年間休日が少ないのに、休みにまで仕事すべきではありません。持ち帰り残業はせず、業務用スマホを切るなど、仕事から離れる手を打ちましょう。忙しすぎて健康に支障が出そうなら、休日出勤命令は拒否することもご検討ください(あまりに長時間労働になりかねない休日出勤命令は、違法の可能性があります)。
休みの日は仕事せず、心身のリフレッシュに充てましょう。万が一、仕事をせざるを得ないときは、休日手当など残業代を請求してください。なお、シフト制の社員なら、休日の取り方次第では連休を作ることができます。年間休日の総数は増えないため、抜本的な解決にならないものの、連続して休める時間は貴重です。
「休日出勤を拒否する方法」の解説
有給休暇を取得する
有給休暇を取得するのも対処法の一つです。有給休暇は、年間休日とは別に労働基準法による権利として認められた休暇です。
取得しづらい雰囲気の職場もあるものの、労働者の権利であり文句を言われる筋合いはありません。まして、年間休日100日など、少ない休日しかないなら有給休暇を活用するしかありません。たまった有給休暇をうまく消化できれば、少ない休日をつなげて連休を作ることもできます。
「有給休暇を取得する方法」「有給休暇を連休にしてつなげる方法」の解説
残業代を請求する
残業代を請求する権利は、年間休日が何日でも発生します。時間外割増賃金は「1日8時間、1週40時間」の法定労働時間を超えて働いた場合に生じ、休日割増賃金は「1週1日もしくは4週4日」の法定休日に労働した場合にもらえます。
この点で、年間休日が100日しかなく、かつ、8時間フルタイムの場合は、週の労働時間が40時間を超えるため、会社から指示された時間だけ働いても、知らずのうちに残業代が発生している可能性があります。また、そのような会社では、結局は年間100日すら休めず、休日出勤を余儀なくされることもあります(この場合、法定休日における労働なら通常の給料に1.3倍、所定休日の労働でも1.25倍の割増率をかけた残業代を請求できます)。
「残業代の計算方法」の解説
退職して転職する
年間休日が少なすぎるとき、一度退職して転職を検討する方がよい場合があります。一度契約した労働条件を、労働者に有利に変更させるのは至難の業です。特に、年間休日は全社一律の扱いでしょうから、勝手に増やすわけにもいきません。
転職の際も、年間休日が少なすぎないか、募集要項や雇用条件通知書でよくご確認ください。せっかく労働環境を変えるなら、よりホワイトな会社に転職しましょう。年間休日100日は平均以下なので、多くの会社でそれ以上の休日数が期待できます。休日数のみにこだわるのでなく、拘束時間や仕事内容も加味した総合判断が大切です。
「会社の辞め方」の解説
弁護士に相談する
弁護士に相談し、労働環境の改善を求める手も有効です。年間休日100日が少なすぎるとき、弁護士からプレッシャーをかけ、その違法性を指摘し、法律に基づいて説得的に説明してもらえば、会社が考え方を変えてくれる可能性があります。
また、企業側としても追加で残業代が生じるのが明らかになれば、人件費を増やすよりは、年間休日の面において制度設計を見直そうというモチベーションが沸くことでしょう。残業代の時効は3年のため、退職後でも請求できますが、できるだけ急ぐべきです。
「労働問題を弁護士に無料相談する方法」の解説
まとめ
今回は、年間休日100日の違法性と、働くのがきついときの対処法を解説しました。
年間休日が100日だと労働基準法の定める最低ラインを下回り違法となる可能性があります。ただ、違法かどうかは、1日の所定労働時間によっても変わります。所定労働時間が8時間より短ければ、年間休日100日でも適法なケースもあります。
とはいえ、休日数が少ないとしんどい事実に変わりはありません。仕事の辛さを緩和するには、有給休暇を取ったり無駄な残業を減らしたりといった対策を要します。また、休日労働が発生した場合は、通常よりも高い割増率の休日手当を請求できます。法律知識の不足する会社だと、休日と休暇の区別が付かないなど、誤った制度設計となり、違法な状態を放置してしまうことがあるので注意しなければなりません。
休日の少なさや長時間労働でお困りの場合、体調を崩す前に弁護士にご相談ください。
- 年間休日数は重要な労働条件なので、入社前に確認できる必要がある
- 年間休日100日しかなく、1日8時間労働だと、残業代・給料の未払いという違法性がある可能性が高い
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