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浅野 英之
弁護士
弁護士(第一東京弁護士会所属、登録番号44844)。
東京大学法学部卒、東京大学法科大学院修了。

企業側の労働問題を扱う石嵜・山中総合法律事務所、労働者側の法律問題を扱う事務所の労働部門リーダーを経て、弁護士法人浅野総合法律事務所を設立。

不当解雇、未払残業代、セクハラ、パワハラ、労災など、注目を集める労働問題について、「泣き寝入りを許さない」姿勢で、親身に法律相談をお聞きします。

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プレミアムフライデーが終了した理由を、労働問題の観点から説明

政府と経済界のタッグで、平成29年2月からスタートしたプレミアムフライデー。
はじめは話題になったものの、今ではもうその名を聞くことはありません。

ふと「プレミアムフライデーってどうなったんだろう」と思い、調べても情報すら出てこなくなりました。
プレミアムフライデーは、現状、終了したと考えてよいでしょう。

プレミアムフライデーは、長時間労働の是正、個人消費拡大による景気回復を目的に始まりました。
しかし、労働法の観点からいえばメリット・デメリットの双方があり、有効活用できればよいですが、法的には難しい面もありました。

今回は、プレミアムフライデーが、現状、終了してしまった理由を、法律的な観点から検討します。

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解説の執筆者

弁護士 浅野英之

弁護士(第一東京弁護士会所属、登録番号44844)。
東京大学法学部卒、東京大学法科大学院修了。

企業側の労働問題を扱う石嵜・山中総合法律事務所、労働者側の法律問題を扱う事務所の労働部門リーダーを経て、弁護士法人浅野総合法律事務所を設立。

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プレミアムフライデーとは

プレミアムフライデーは、平成29年2月から政府主導ではじまった取り組みです。
長時間労働の是正、個人消費拡大による景気回復などが目的とされていました。

「花金(はなきん・ハナキン)」という言葉のとおり、金曜日は労働者にとって特別な曜日。
週休二日制だと土日休みが多く、週末直前の金曜夜は、仕事を気にせず飲んだり遊んだりできるからです。

プレミアムフライデーの概要は、次のとおりです。

  • 毎月、最終の金曜は、終業時刻を15時(午後3時)とする
  • 長時間労働の是正、停滞する個人消費の拡大が目的
  • 平成29年2月24日(金)よりスタート
  • 強制ではなく、あくまでも政府からの呼びかけ

プレミアムフライデーの現状としては、終わったといってよい

現在、プレミアムフライデーを導入している会社の例はあまり聞きません。
友人や同僚との話題でも、プレミアムフライデーという単語を使用すること自体、もうあまりないのではないでしょうか。

プレミアムフライデーは、政府からの呼びかけにすぎないため、明確な終わりがあるわけではありませんが、現状を見れば、プレミアムフライデーは終わったといっても差し支えないのではないかと思います。

公式サイトの更新も、2020年10月でストップしています。

プレミアムフライデーが終わった理由

プレミアムフライデーが終わった理由には、いろいろなものがあるでしょう。
ここでは、法律的な観点から検討します。

なお、当然ながら、法的な問題以外に、さまざまな社会情勢の変化が、影響していると考えられます。

リモートワークが進んだ

プレミアムフライデーで早く会社から帰れると、リモートワークが普及するのではと考えられていました。
しかし一方で、コロナ禍の影響という別の理由で、近年リモートワークが急速に普及しました。

その結果、オフィスに出社して仕事をする人がとても少なくなりました。
必ずしもオフィスにいる時間を短くするのだけが、労働時間の削減になるとは限らない状況となりました。

したがって、毎月、最終金曜のオフィスにいる時間だけを減らすにすぎないプレミアムフライデーは、役目を終えたのではないかと考えられます。

なお、リモートワークでも労働時間にあたり、残業代請求ができます。
詳しくは、次の解説をご覧ください。

長時間労働の対策ができた

プレミアムフライデーが開始された当初、大手広告代理店である電通でおこった過労死事件など、長時間労働によるトラブルが相次いでいました。

まだまだ労働問題はなくなりませんが、その後のさまざまな法改正、裁判例により、長時間労働の対策は進み、プレミアムフライデーの効果が薄くなったと考えられます。

一方、本当にブラックな会社はそもそもプレミアムフライデーの呼びかけなど、聞く耳もちません。
対策が必須な、深刻な長時間労働ほど、プレミアムフライデーでは解消できません。

深刻な長時間労働に悩まされている方は、ぜひ労働問題を弁護士に相談ください。

プレミアムフライデーのデメリットが顕在化した

プレミアムフライデーには多くのデメリットがあると、当初から指摘されていました。
プレミアムフライデーを実際に導入してみた結果、これらのデメリットが顕在化して労働者側からも不満が出たのが、プレミアムフライデーの終わった1つの要因です。

プレミアムフライデーは、当初よりあまり浸透しませんでした。

繁忙期となりやすい月末金曜を短時間にするデメリットが大きいため、「プレミアムフライデー推進協議会」も、翌平成30年に方針転換。
一律に月末金曜に導入するのでなく、柔軟に運用し、どこかの金曜の早帰りを推奨する「振替プレミアムフライデー」の導入を呼びかけましたが、功を奏したとはいえません。

プレミアムフライデーのデメリット3つ

プレミアムフライデーには、法的にさまざまなデメリットがありました。

当初は、政府主導で開始されたため、デメリットには目をつむられていました。
しかし実際にプレミアムフライデーが始まると、これらのデメリットがじわじわ効いてきて、結果、徐々に導入する企業が減り、現在のように誰も話題にしない状態を生んだと考えられます。

給料が減らされるおそれがある

働く時間が減れば、給料が減るおそれがあります。
これが、「ノーワーク・ノーペイの原則」の当然の帰結です。
「余暇を満喫したいが、お金がない」というのが、プレミアムフライデーへの不満となっていました。

プレミアムフライデーで労働時間が減れば、それだけ給料も減るおそれがあります。
もちろん「完全月給制」で、遅刻・欠勤しても給料を控除しない会社であれば給料は減りませんが、そんなホワイトな会社ばかりではありません。
特に、時給制ではたらく労働者だと、プレミアムフライデーで如実に給料が減ります。

なかには、プレミアムフライデーを口実に、不当に給料を減らしてくる会社もありました。
給料を減らすのは、違法であるに違いなく、減った分の給料は未払いとして請求できます。

残業時間が増えるおそれがある

プレミアムフライデーの実施を優先するあまりに、早く帰れるものの、その他の曜日にしわよせがいってしまうという点も、労働者の大きな不満となりました。
プレミアムフライデーを導入したからといって仕事量そのものが減りはしません。
「業務効率を上げればよい」といっても限界があります。

プレミアムフライデーの結果、残業が増えたり、休日出勤が増えたりといったデメリットが生じました。

プレミアムフライデーに「早く終わる分だけ早く出てこい」と早朝出社を命じる会社も話題になりました。
このとき、早出残業代がもらえればまだしも、プレミアムフライデーで早上がりできれば、早朝出社を強要されたのに残業代すらもらえなくなってしまいます。

不公平感が広がり、格差が生まれる

プレミアムフライデーは、毎月最終金曜に導入されていました。
これにより、オフィスで働くサラリーマンは楽できるかもしれませんが、飲食業や旅行業、レジャー業界など、プレミアムフライデーで消費拡大される業種では、むしろ毎月最終金曜が忙しくなり、残業になってしまいました。

飲食業の残業代請求の問題は、とても起きやすく、ブラック企業の多い業界。
プレミアムフライデーの導入により、悪質な会社ほど、さらにサービス残業が増えてしまいます。

さらに、1つの社内でも全社員がメリットを受けられるわけではありません。
月末が繁忙期の経理社員など、プレミアムフライデーが導入されても結局忙殺され、早帰りなどできない労働者もでてきて、これらの格差が不公平感につながりました。

プレミアムフライデーのメリット3つ

ここまで、プレミアムフライデーが終わった理由を説明してきました。
一方で、当然ながら、よく考えて導入された制度ですから、メリットも多くありました。

なお、メリットは、プレミアムフライデーの導入でなく、その他のやり方でも実現可能です。

例えば、近年普及するリモートワークや、労働法の制度であるフレックスタイム制変形労働時間制などを活用し、柔軟な労働時間とすることでも、プレミアムフライデーのメリットは実現できます。

業務効率が上昇する

「月末金曜は早帰り」と決まると、その分だけ早く仕事を終わらせようというやる気がわきます。
仕事が減るわけではありませんが、安心して余暇を楽しむために業務効率をあげるからです。

これまでダラダラ残業が広まっていた会社では、業務効率を上げ、スピーディに仕事を片付けられる効果が、プレミアムフライデーにはありました。

労働者のストレス解消になる

長時間労働が続くと、ストレスがたまります。
プレミアムフライデーによって1ヶ月区切りで早帰りできる日を設けることで、ガス抜きできます。
これにより、ストレス解消、リフレッシュ効果がありました。

「上司が帰らないと帰宅できない」お付き合い残業が根強く残る会社でも、プレミアムフライデーによって早帰りを全社のルールとし、休息を取りやすくなるメリットがあります。

楽しい企画、イベントが生まれる

プレミアムフライデーをイベントと捉え、政府主導で始めれば、企画、イベントが生まれやすくなります。
消費拡大のために、いわば「お祭り」としての拡散を狙ったものといえます。
普段は仕事している時間に帰れるから、さまざまなイベントに参加できる楽しさもありました。

ただ、現在、プレミアムフライデーを狙ったセールなど、企画、イベントは終了しているものばかりです。

まとめ

弁護士法人浅野総合法律事務所
弁護士法人浅野総合法律事務所

プレミアムフライデーは、平成29年2月に政府主導ではじまりましたが、現状、もはや話題になることはなく、終わったと考えてもよい状態になっています。

しかし、長時間労働の問題はまだまだ残ります。
プレミアムフライデーの制度趣旨だった、つらい労働、残業代の未払いに苦しむ労働者が減ったわけではありません。
ブラック企業に勤め、労働問題に悩む方は、ぜひ弁護士にご相談ください。

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