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浅野 英之
弁護士
弁護士(第一東京弁護士会所属、登録番号44844)。東京大学法学部卒、東京大学法科大学院修了。

企業側の労働問題を扱う石嵜・山中総合法律事務所、労働者側の法律問題を扱う事務所の労働部門リーダーを経て、弁護士法人浅野総合法律事務所を設立。

不当解雇、未払残業代、セクハラ、パワハラ、労災など、注目を集める労働問題について、「泣き寝入りを許さない」姿勢で、親身に法律相談をお聞きします。

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プレミアムフライデーが終了した理由を、労働問題の観点から説明

政府と経済界のタッグで、平成29年2月からスタートしたプレミアムフライデー。当初は話題になったものの、今ではその名を聞くことはありません。

ふと「プレミアムフライデーってどうなったんだろう」と思い、調べても情報も少なくなりました。プレミアムフライデーは終了したと考えてよいでしょう。プレミアムフライデー推進協議会のサイトも2023年6月に閉鎖されました「プレミアムフライデー推進協議会」のサイト閉鎖について)。

プレミアムフライデーは、長時間労働の是正、個人消費拡大による景気回復を目的に始まりました。しかし、労働法の観点からいえばメリット・デメリットの双方があり、有効活用できれば一定の効果はあるものの、法的には難しい問題が生じていました。

今回は、プレミアムフライデーが終了してしまった理由を、法律的な観点から検討します。

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解説の執筆者

弁護士 浅野英之

弁護士(第一東京弁護士会所属、登録番号44844)。東京大学法学部卒、東京大学法科大学院修了。

企業側の労働問題を扱う石嵜・山中総合法律事務所、労働者側の法律問題を扱う事務所の労働部門リーダーを経て、弁護士法人浅野総合法律事務所を設立。

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プレミアムフライデーとは

プレミアムフライデーは、平成29年2月から政府主導ではじまった取り組みです。長時間労働の是正、個人消費拡大による景気回復などが目的とされていました。

「花金(はなきん・ハナキン)」という言葉のとおり、金曜日は労働者にとって特別な曜日。週休二日制だと土日休みが多く、週末直前の金曜夜は、仕事を気にせず飲んだり遊んだりできるからです。プレミアムフライデーの概要は、次の通りです。

  • 毎月、最終の金曜は、終業時刻を15時(午後3時)とする
  • 長時間労働の是正、停滞する個人消費の拡大が目的
  • 平成29年2月24日(金)よりスタート
  • 強制ではなく、あくまでも政府からの呼びかけ

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プレミアムフライデーの現状としては、終わったといってよい

現在、プレミアムフライデーを導入している会社の例はあまり聞きません。友人や同僚との話題でも、プレミアムフライデーという単語を使用すること自体、もうあまりないのではないでしょうか。

プレミアムフライデーは、法律上の定めではなく、政府からの呼びかけにすぎないため、明確な終わりがあるわけではありませんが、現状を見れば、プレミアムフライデーは終わったといっても差し支えないのではないかと思います。プレミアムフライデー推進協議会のサイトも2023年6月に閉鎖されました(参考:「プレミアムフライデー推進協議会」のサイト閉鎖について)。

プレミアムフライデーが終わった理由

プレミアムフライデーが終わった理由は、様々な角度から考察できますが、本解説では法的観点から説明します。なお、法的な問題以外にも、社会情勢の変化が影響していると考えられます。

リモートワークが進んだ

プレミアムフライデーで早く会社から帰れると、リモートワークが普及に役立つのではないかと、当初は考えられていました。しかしその後に、コロナ禍の影響という別の理由で、リモートワークが急速に普及しました。

その結果、オフィスに出社して仕事をする人は以前よりも少なくなりました。必ずしもオフィスにいる時間を短くすることだけが、労働時間の削減になるとは限らない状況となりました。したがって、毎月、最終金曜のオフィスにいる時間だけを減らすにすぎないプレミアムフライデーは、役目を終えたのではないかと考えられます。

なお、リモートワークでは「労働時間」に該当する時間が見逃されがちですが、オフィスで働いていなくても、使用者の指揮命令下にある時間については残業代が請求できます。

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長時間労働の対策ができた

プレミアムフライデーが開始された当初、大手広告代理店である電通で起こった過労死事件など、長時間労働によるトラブルが相次いでいました。

長時間労働をはじめとした労働問題はなくなったわけでは決してありませんが、その後の多くの法改正や裁判例の登場によって長時間労働の対策は進み、プレミアムフライデーの効果が薄くなったと考えられます。

一方で、速やかに対策する必要のある本当にブラックな会社は、そもそもプレミアムフライデーの呼びかけに聞く耳など持ちません。つまり、対策が必須である深刻な長時間労働ほど、プレミアムフライデーでは解消できないのです。深刻な長時間労働に悩まされている方は、速やかに、労働問題を得意とする弁護士に相談しましょう。

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プレミアムフライデーのデメリットが顕在化した

プレミアムフライデーには多くのデメリットがあると当初から指摘されていました。プレミアムフライデーを実際に導入した結果、デメリットが顕在化して労働者側からも不満が出たのが、プレミアムフライデーの終わった要因の一つです(「プレミアムフライデーのデメリット3つ」で後述)。

プレミアムフライデーは、当初よりあまり浸透しませんでした。

繁忙期となりやすい月末金曜を短時間にするデメリットが大きいため、「プレミアムフライデー推進協議会」も、翌平成30年に方針転換。一律に月末金曜に導入するのでなく、柔軟に運用し、どこかの金曜の早帰りを推奨する「振替プレミアムフライデー」の導入を呼びかけましたが、功を奏したとはいえません。

現場の実態に配慮せずに、休みを与えることのみを目的とした制度を導入すると、弊害が生じる可能性があります。忙しい現状の対策をせずに休ませようとしても、一部の労働者に仕事が押し付けられてしわ寄せがいって不公平感を生むなど、労働者の不満の種となってしまいます。

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プレミアムフライデーのデメリット3つ

プレミアムフライデーには、法的にいくつかのデメリットがありました。

当初は、政府主導で開始されたため、デメリットは黙認されていました。しかし実際にプレミアムフライデーが始まると、これらのデメリットがじわじわ効いてきて、結果、徐々に導入する企業が減り、現在のように誰も話題にしない状態を生んだと考えられます。

給料が減らされるおそれがある

働く時間が減れば、給料が減るのが、「ノーワーク・ノーペイの原則」の帰結です。「余暇を満喫したいがお金がない」というのは、プレミアムフライデーに対する大きな不満となりました。

プレミアムフライデーで労働時間が減れば、それだけ給料も減るおそれがあります。もちろん「完全月給制」で、遅刻・欠勤しても給料を控除しない会社であれば給料は減りませんが、そのようなホワイトな会社ばかりではありません。特に、時給制ではたらく労働者だと、プレミアムフライデーで如実に給料が減ります。

プレミアムフライデーを口実に、不当に給料を減らしてくる会社もありました。理由なく給料を減らすことが違法であるのは明らかで、減らされた分、未払いとなった給料は請求すべきです。

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残業時間が増えるおそれがある

プレミアムフライデーの実施を優先するあまり、早く帰れるとしても他の曜日にしわ寄せがいくという点も、労働者の大きな不満となりました。プレミアムフライデーを導入したからといって仕事量そのものが減るわけではありません。業務効率を上げるのにも限界があります。すると、プレミアムフライデーの結果、残業が増えたり、休日出勤が増えたりといったデメリットが生じます。

プレミアムフライデーに「早く終わる分だけ早く出てこい」と早朝出社を命じる会社も話題になりました。このとき、早出残業の対価が得られるならまだしも、プレミアムフライデーで早上がりできれば、早出を強要されたのに残業代がもらえない結果となりかねません。

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不公平感が広がり、格差が生まれる

プレミアムフライデーは、毎月最終金曜に導入されていました。これにより、オフィスで働くサラリーマンは楽になるかもしれませんが、飲食業や旅行業、レジャー業界など、プレミアムフライデーで消費拡大される業種では、むしろ毎月最終金曜が忙しくなり、残業になってしまいました。

飲食業の残業代請求の問題は、とても起きやすく、ブラック企業の多い業界。プレミアムフライデーの導入により、悪質な会社ほど、さらにサービス残業が増えてしまいます。

また、社内でも全社員がメリットを受けられるわけではありません。例えば、月末が繁忙期の経理社員など、プレミアムフライデーが導入されても結局は忙殺され、早帰りができない労働者もいるため、このような格差が不公平感に繋がりました。

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プレミアムフライデーのメリット3つ

ここまで、プレミアムフライデーが終わった理由を説明してきました。一方で、当然ながら、よく考えて導入された制度ですから、メリットも多くありました。

ただ、これらのメリットはプレミアムフライデーの導入でなく、その他のやり方でも実現可能です。近年普及するリモートワークや、労働法の制度であるフレックスタイム制変形労働時間制などを活用して柔軟な労働時間制をすれば、プレミアムフライデーと同じメリットが実現できます。

業務効率が上昇する

「月末金曜は早帰り」と決まると、その分だけ早く仕事を終わらせようというやる気がわきます。仕事が減るわけではありませんが、安心して余暇を楽しむために業務効率をあげるからです。これまでダラダラ残業が広まっていた会社では、業務効率を上げ、スピーディに仕事を片付けられる効果が、プレミアムフライデーにはありました。

労働者のストレス解消になる

長時間労働が続くとストレスがたまります。プレミアムフライデーによって1ヶ月区切りで早帰りできる日を設けることで、ガス抜きできます。これにより、ストレス解消、リフレッシュ効果がありました。「上司が帰らないと帰宅できない」といった付き合い残業が根強く残る会社も、プレミアムフライデーによって早帰りをルールとすれば、休息を取りやすくなるメリットがあります。

楽しい企画、イベントが生まれる

プレミアムフライデーをイベントと捉え、政府主導で始めれば、企画、イベントが生まれやすくなります。消費拡大のために、いわば「お祭り」としての拡散を狙ったものといえます。普段は仕事している時間に帰れるから、さまざまなイベントに参加できる楽しさもありました。ただ、現在、プレミアムフライデーを狙ったセールなど、企画、イベントは終了しているものばかりです。

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まとめ

弁護士法人浅野総合法律事務所
弁護士法人浅野総合法律事務所

プレミアムフライデーは、平成29年2月に政府主導ではじまりましたが、現状、もはや話題になることはなく、終わったと考えてもよい状態になっています。

しかし、長時間労働の問題はまだまだ残ります。プレミアムフライデーの制度趣旨だった、つらい労働、残業代の未払いに苦しむ労働者が減ったわけではありません。ブラック企業に勤め、労働問題に悩む方は、ぜひ弁護士にご相談ください。

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