退職するともらえる書類のなかでも離職票はとても大切です。退職後の生活保障となる失業保険をもらうには離職票が必須だからです。
離職票は、ハローワークから会社を通じて交付されます。退職後およそ2週間で届きますが、何らかの理由で離職票が届かない例もあります(期間はあくまで円満退社の場合の目安で、揉めたときはこの限りではありません)。離職票が手元に届かないとき、理由ごとに適切な対処法を講じなければなりません。
社長と喧嘩して辞めたら離職票が届かなかった
離職票が届かないのは嫌がらせなのではないか
離職票が届かない、もらえないなどの場合、失業保険の手続きは遅れてしまいます。退職で無収入になり、離職票もないとなれば労働者の負担は増大するのです。
離職票が届かない理由は様々考えられます。本当に「遅い」のか、文句を言ってよいのか、不安な方もいるでしょう。早期に理由を特定して対処せねば、失業保険の手続きが滞ってしまいます。
今回は、離職票が届かない理由や対処法を、労働問題に強い弁護士が解説します。
離職票が届かないとどうなる?
まず、離職票が届かないとどうなるか、なにが困るかを説明します。
デメリットは多々ありますが、失業保険は転職活動中の生活の糧であり、もらえない不利益は特に甚大です。
失業保険がもらえない
離職票が届かないと失業保険を申請できず、失業手当を速やかに受給できません。なので離職票が来ないと失業期間中の収入に支障が生じます。
失業保険の受給期間は「離職日の翌日から起算して1年」が原則。その間に、離職理由に応じて法律の定める日数を限度に支給を受けます。
そのため、会社から離職票が届かないことで受給開始が遅れ、その日数だけ支給が遅れた場合もなお1年までしかもらえないのが基本なので、遅れた分だけ損してしまいます(1年までの残りの受給期間が給付日数を下回れば、その分はもらえません)。
すぐに転職したり独立起業したり、結婚や出産で寿退社してしばらく働かない場合、そもそも失業状態にならず失業保険がもらえる状態ではないため、離職票が届かなくても影響は少ないです。しかし、それでもなお、内定取り消しや起業失敗など不測の事態を加味すれば、離職票が早めに届くに越したことはありません。
また、転職しても、すぐまた退職せざるを得なくなるケースでは、転職後の失業保険は、前職の雇用期間を通算しないと受給要件を満たさない可能性があり、この場合は前職の離職票を用意する必要があります。
「失業保険をもらう条件と手続き」の解説
離職票が届かないことによるその他の不利益
離職票の届かないことの悪影響は、失業保険のみにとどまりません。例えば、次の不利益が派生して起こります。
- 国民年金の失業特例免除を受けられない
- 転職後に育児休業給付金を受給できない
転職後すぐ妊娠・出産する場合、育児休業給付金を受けるための雇用期間の要件について前職と通算するには、離職票を要する場合がある。 - 転職先から、離職は労働者の責任ではないかと疑われる
離職票の離職理由によって懲戒解雇など労働者に責任ある退職でないかを見定めようとする転職先が、入社時に前職の離職票を示すよう求める場合がある(示せないと問題ある退職ではないかと疑われる)。
なお、これらの不利益は、代替の書類を用意したり、説得的に説明したりすることで軽減する努力ができるので、過度に不安視する必要のないケースもあります。離職票が手元に来ないことによるトラブルをどう切り抜けるか、不安な方は弁護士に相談ください。
「離職票の受け取り方」の解説
離職票が届かない理由は?
次に、離職票が届かない主な理由を解説します。
考えうる理由によって適切な対処は異なります。
ハローワークの離職票発行の手続きが遅れている
まず、離職票発行手続きの遅れが原因の場合です。会社が「わざと」遅らせずとも、離職票が届くには一定期間がかかります。
離職票は会社が作るのではなく、ハローワークから取得するもの。会社には、その申請手続きの期限が課されますが、その後のプロセスにどれほどかかるかはハローワークの都合にも左右され、そのことが離職票の届かない原因である例もあります。
- 会社がハローワークに対し、「雇用保険被保険者資格喪失届」と「離職証明書」を提出する
- ハローワークが会社に対し、「離職票」を送付し、会社がこれを受領する
- 受け取った「離職票」を、会社が離職者に送付する
※ 参考:離職票の発行手続き
この手順のうち①は離職日の翌日から10日以内にする義務が会社にあります(雇用保険法7条、雇用保険法施行規則7条)、この義務に違反して離職票の交付が遅滞したり、交付を拒絶したりすると6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金という罰則が科されます(雇用保険法83条4項)。
会社側の次の事情で期限を過ぎれば、雇用保険法違反です。
- 退職者への恨みから嫌がらせで手続きをしなかった
- 総務担当者が多忙で、手続きに着手できなかった
- 入退社時に必要な手続きを熟知していなかった
- 退職届を受け取った上司が、退職時期を担当者に共有しなかった
同様の理由で③の手続きを失念し、既に会社に届いていた離職票を労働者に送付しなかった場合もまた、会社に責任ありと考えます。
一方で「ハローワークが忙しく離職票が届かない状態となっていた」ケースもあります。ボーナス支給直後や3月、4月は退職者も多く、また3月や9月など年度終わりも混雑しがちなハローワークの繁忙期であり、事務手続きに遅れが生じることがあります。
「会社の辞め方」の解説
交付を希望しない旨の届出をされた
雇用保険被保険者資格喪失届に、離職票を希望するかを記載する欄があります。すぐ再就職する、もう働く気がないなど、離職票が不要な人もいるからです。そして、「交付を希望しない」旨を届け出れば当然、離職票は手元に届きません。
労務管理の整備された会社なら、離職票の要否を退職前に確認してくれるのが通常。しかし実際は、法律知識に乏しく、離職者が積極的に交付を希望しない限り「交付希望なし」として扱ってしまう会社も少なくありません。
退職した会社が嫌がらせ目的で手続きを進めてくれない
最悪なのは、会社が嫌がらせで手続きを進めていないことが理由のケースです。このような問題ある会社とは、徹底して戦わねばなりません。この種の不当な嫌がらせは、労働者の経済的なダメージに直結するからです。
離職票を受領するだけでも一苦労ですが、退職者に嫌がらせをするブラック企業だと、次のように他の労働問題も、退職時に一緒に起こることもあります。
- 在職強要ともいえる強い引き止め
- 退職強要によって無理に辞めさせられた
- 退職前の有給消化を拒否された
- 退職後に損害賠償請求すると脅された
- 退職金が払われない
- 退職予定を理由にボーナスを減らされた
(参考:労働問題の種類と解決方法)
退職時のトラブルが退職後も続き、嫌がらせから逃れられないケースもあります。その不利益を少しでも小さくするには、弁護士に依頼して窓口とし、離職票の請求はもちろんのこと退職手続きを全て任せる「退職代行サービス」がお勧めです。
★ 退職代行の労働問題まとめ
嫌がらせで離職票を渡さないような会社では、パワハラも横行していることが多いものです。直接離職票を請求しても誠意ない対応をされ、相手にしてもらえないとき、弁護士に相談し、代わりに離職票を請求してもらうのがお勧めです。
「パワハラの相談窓口」の解説
雇用保険に加入していなかった
雇用保険に未加入だった場合も離職票は届きません。この場合そもそも、雇用保険の被保険者資格を喪失する手続きも発生しません。ゆえに、会社がハローワークの手続きをすることはなく、離職票ももらえません。
会社は、加入要件を満たす労働者を雇用保険に加入させる義務があります。短時間のパートやバイトなど、要件を満たさないなら未加入なら問題ありませんが、加入が必要にもかかわらず要件を知らなかったり、会社が保険料を免れるため意図的に加入させなかったりするケースは、労働者がその損を押し付けられる羽目になります。
「雇用保険に未加入だったときの対応」の解説
離職者の住所が不明で交付できない
稀なケースですが、ハローワークであなたの住所がわからないなどの理由があると、例外的に離職届を交付しないことがあります(雇用保険法施行規則第17条第1項ただし書)。
ただし、権利保護の観点から「例外」は厳格に解釈されます。厚生労働省は具体例として「事業主が資格喪失届を提出する際、その確認に係る者が所在不明である旨の申立てを行いつつ、離職証明書を添付してきたような場合であって、安定所長がその所在不明について確信を得たとき又は離職票を郵送により送付した場合であって所在不明として返送されたとき」を挙げます(雇用保険に関する業務取扱要領)。
「労働問題に強い弁護士の選び方」の解説
離職票が届かないとき、いつまで待てばよいのか
以上の通り、離職票が届くまでには会社とハローワークの協力を要します。それぞれ郵送が主なので即日対応とはいかず、どうしてもある程度の期間がかかります。
円満退職なら、退職前から配慮して手続きを進めてくれる会社も多いでしょう。しかし、揉めて退職したり、ましてや解雇されたりする場合、そうもいきません。
届かなかったり遅れたりすると受給期間が短くなるおそれがあり不利益は大きく、労働者としてもいつまでも待ち続けるというわけにはいきません。そのため、手続きに通常要する期間を待っても届かなければ、対応を要します。
離職票について、会社がハローワークに申請する期限が、退職日の翌日から10日。そこからハローワークの準備が終わり、離職票が届くまで全部で10日〜14日ほどが目安です。したがって、退職日から2週間を過ぎて届かないとき次章のアクションを検討します。
「退職したらやることの順番」の解説
離職票が届かない場合の対処法
次に、離職票が届かない場合の対処法を解説します。
退職日から2週間が目安と解説しましたが、3週間、1ヶ月、2ヶ月と待っても離職票が届かないなら、失業保険をもらえない損失を軽減するために速やかにご対処ください。
手続きの進捗を確認する
離職票が届かないとして、手続きがどの段階でストップしたか知る必要があります。会社が止めているのか、ハローワークの遅れなのか、理由により対応が異なります。
まず会社に連絡し、ハローワークに資格喪失届、離職証明書を提出したか確認します。辞めた会社に連絡したくない場合は、事務担当者に問い合わせるのがよいでしょう。事務担当者や、委託先の社労士に直接聞ければ、社長や上司とやり取りするストレスが避けられます。
2週間経過したらメールで催促する(例文付)
退職から離職票が届くまでの目安は、前章の通り、おおむね10日〜14日程度のため、2週間を過ぎても離職票をもらえない場合には、メールで催促しましょう。会社に離職票を催促するメールの例文は、次の書式を利用してみてください。
株式会社XXXX
総務担当者様
平素より大変お世話になっております。20XX年XX月XX日付で貴社を退職しました◯◯でございます。在職中には大変お世話になり、感謝しております。
さて、退職に際して、まだ離職票をいただいておりません。つきましては、ご多用のところ誠に恐縮ではございますが、離職票の手続きについて、現在の進捗状況と、私にお送りいただける日程の目安をご教示いただけますと幸いです。
メールを送ることで証拠を残すとともに、あわせて電話でも問い合わせをすることによって、「もう既に送っているはず」「調べて回答するが今はわからない」といった不当な言い逃れを防げます。
必要書類が未提出だった場合の対応
次に、必要書類の未提出が判明したら、会社に催促します(ハローワークに雇用保険被保険者資格喪失届と離職証明書を出したか確認し、催促してください)。退職日の翌日から10日過ぎても出さないなら雇用保険法違反であり、強く警告します。ハローワークに相談すれば、会社に提出を促してもらえることもあります。
それでも提出しない悪質な会社の場合は、自身で手続きする方針に切り替えます。つまり、ハローワークで被保険者資格喪失の確認請求を行います(雇用保険法8条)。
この際、離職証明書は必要となる(雇用保険法施行規則17条1項3号)ので、前提として会社に交付を求めておかねばなりませんが、もしそれすら交付されない場合は「やむを得ない事由」(同規則17条3項)があると説明すれば、離職証明書なしに手続きを進められます。
関連する雇用保険法、同法施行規則の条文は次の通りです。
雇用保険法8条(確認の請求)
被保険者又は被保険者であつた者は、いつでも、次条の規定による確認を請求することができる。
雇用保険法9条(確認)
1. 厚生労働大臣は、第七条の規定による届出若しくは前条の規定による請求により、又は職権で、労働者が被保険者となつたこと又は被保険者でなくなつたことの確認を行うものとする。
2. 前項の確認については、行政手続法(平成五年法律第八十八号)第三章(第十二条及び第十四条を除く。)の規定は、適用しない。
雇用保険法(e-Gov法令検索)
雇用保険法施行規則17条(離職票の交付)
1. 公共職業安定所長は、次の各号に掲げる場合においては、離職票を、離職したことにより被保険者でなくなつた者に交付しなければならない。ただし、その者の住所又は居所が明らかでないためその他やむを得ない理由のため離職票を交付することができないときは、この限りでない。
一 資格喪失届により被保険者でなくなつたことの確認をした場合であつて、事業主が当該資格喪失届に離職証明書を添えたとき。
二 資格喪失届により被保険者でなくなつたことの確認をした場合であつて、当該被保険者であつた者から前条の規定による離職証明書を添えて請求があつたとき。
三 第八条の規定による確認の請求により、又は職権で被保険者でなくなつたことの確認をした場合であつて、当該被保険者であつた者から前条の規定による離職証明書を添えて請求があつたとき。2. 前項第一号の場合においては、離職票の交付は、当該被保険者でなくなつた者が当該離職の際雇用されていた事業主を通じて行うことができる。
3. 第一項第二号又は第三号の請求をしようとする者は、その者を雇用していた事業主の所在が明らかでないことその他やむを得ない理由があるときは、離職証明書を添えないことができる。
4. 離職票を滅失し、又は損傷した者は、次の各号に掲げる事項を記載した申請書に運転免許証その他の離職票の再交付を申請しようとする者が本人であることを確認することができる書類を添えて、当該離職票を交付した公共職業安定所長に提出し、離職票の再交付を申請することができる。
一 申請者の氏名、性別、住所又は居所及び生年月日
二 離職前の事業所の名称及び所在地
三 滅失又は損傷の理由5. 離職票を損傷したことにより前項の規定による再交付を申請しようとする者は、同項に規定する書類のほか、同項の申請書にその損傷した離職票を添えなければならない。
6. 公共職業安定所長は、離職票を再交付するときは、その離職票に再交付の旨及び再交付の年月日を記載しなければならない。
7. 離職票の再交付があつたときは、当該滅失し、又は損傷した離職票は、再交付の日以後その効力を失う。
雇用保険法施行規則(e-Gov法令検索)
交付拒否の事実を証明するため、請求は書面で行うことで証拠化すべきです。会社が頑なに拒む場合、弁護士名義で警告を送ってもらう方法も有効です。
雇用保険に未加入だった場合の対応
そもそも雇用保険の加入は、会社が義務として行うべきこと。未加入が判明したら、遡って加入するよう手続きを求めてください(遡及しての雇用保険の加入は、過去2年まで可能です)。会社が求めに応じないなら、ハローワークに対し、雇用保険の被保険者であったことの確認請求を行い、手続きを進めてください。
「雇用保険に未加入だったときの対応」の解説
ハローワークで失業給付の仮手続きをする
離職票が届かず、このままでは給付日数分が満額もらえない場合は、大至急ハローワークに行って、失業給付の仮手続きを行いましょう。離職票がもらえない状態でもなおハローワークで求職の申込みを進めます。離職票の交付遅延で提出できない場合、仮の受給資格決定により救済される可能性があるからです。このとき、退職証明書など、会社を退職したことを示す書類を離職票の代わりに提出します。
離職票が届いた後に追完し、正式な決定を得れば、仮決定の日から受給資格があったと扱われ、失業保険が満額もらえないリスクを回避できます(あくまで仮の手続きなので、実際の受給は離職票を出さないと開始されず、遅くとも認定日から7日間の給付制限期間内に離職票を用意しておくのが望ましいです)。
それでも離職票をもらえない場合は労働問題に強い弁護士に相談する
離職票が届かない問題は、数ある労働問題の1つに過ぎません。ここまでやっても離職票がもらえない場合、悪質な会社であり、他にも多くの違法な労働問題が潜んでいると考えるべきです。企業側に違法があり、被害に遭ったなら弁護士にご相談ください。
離職票の手続きを進めない時点で、遵法意識の低いブラック企業と言ってよいでしょう。残業代未払いやハラスメントなど、他の問題にも早く気づくべきです。「きちんと払っている」など反論されても、そんな会社は信用できません。残業代の時効は3年、遡って請求できるので退職後でも速やかに請求してください。
このように多くのトラブルの起こる退職時には、勤務先との交渉を弁護士に任せ、対立を未然に防ぎ、転職活動に集中できる環境を手に入れるのがお勧めです。心配ごとやお悩みがある場合は早めにご相談ください。
なお、離職票がもらえても、その離職理由が実態に沿っていないトラブルもあります。
よくあるのが、会社都合なのに自己都合扱いされているケースであり、この場合、不当に自己都合扱いされると受給開始までに7日の待機期間と2ヶ月の支給制限期間をおかねばならず、受給額の上限も少なくなってしまいます。
(参考:自己都合と会社都合の違い)
「残業代請求に強い弁護士への無料相談」の解説
離職票が届かないとき損害賠償請求できる?
離職票が届かず、失業保険がもらえなくなってしまう労働者の不利益は大きいもの。
失業保険でもらえるはずだった金額を損害賠償請求したい
という気持ちもよく理解できます。しかし、残念ながら、会社への損害賠償請求はうまくいかない危険があります。
今回解説の通りに対応すれば、失業保険の手続きは最悪の場合、離職票が届かなくても進められるので「会社のせいで失業保険が全くもらえなくなった」とは言い難いと考えられているからです。裁判例でも、損害が生じたとの主張は失当とされた例、因果関係が否定された例など、結論として損害賠償請求を否定したケースが存在します。
離職証明書の交付を拒否されたことで70万円の失業保険をもらえなかったとして損害賠償請求したが、拒否の事実を認めるに足る証拠はないとして請求棄却された事案。
裁判所は「仮に本件拒否の事実があったとしても、そのことから直ちに本件損害が発生すると解する根拠は全くなく、原告の右主張は主張自体失当である」と述べた。
会社が雇用保険の加入手続きをせず、離職証明書の交付に応じなかったことで75万円の失業保険をもらえなかったとして損害賠償を請求した事案。
裁判所は、加入手続が不履行でも「公共職業安定所の長に対し、自己の被保険者資格の得喪に関し確認の請求を行うことができ、その確認を受ければ、被告が法定の手続きを履践した場合と同額の基本手当を受給することは可能」とし、加入手続の不履行により損害が生じたとの主張を認めなかった。
また、離職証明書の不交付についても「基本手当の受給資格を有する者は、失業の認定に先立ち、公共職業安定所長から、離職票の交付を受けることが必要であり、離職票の交付を請求するためには、離職証明書の添付が必要であるが(規則17条1項)、やむを得ない理由があるときは、離職証明書を添付しないで右所長に対し、離職票の交付をすることができる(規則17条3項)」とし、不交付で損害が生じたとの主張も認めなかった。
離職票の交付が遅れたことで、もっと早く受給できればもらえたはずの約56万円の損害賠償を請求した事案で、裁判所は、離職票の交付の遅れと、基本手当をすぐ受給しなかったことの間に因果関係は認められないとして請求棄却した。
この事案では、求職の申込みまでは(契約が続いているとの主張し)労働契約の終了を争い、離職票を求める行為は一切なかったため、求職の申込みより前の段階では労働契約終了を前提とした手続に着手する意思が乏しかったと評価された。
以上のように、離職票が届かないからといって、会社を訴えるのは有効でないケースもあり、対処法としては離職票が届かなくても失業保険をもらえるよう努めるべきです。
「労働問題を弁護士に無料相談する方法」の解説
まとめ
今回は、離職票が届かない理由と、その理由ごとの対処法を解説しました。
離職票が届かないと、失業保険をもらえる日が遅れかねません。失業保険は受給期間が限られ、初動の段階で出遅れるのは非常に痛いです。最悪は、所定の給付日数を使い切れず、失業保険の一部をもらい損ねてしまいます。
こうした労働者の不利益から、離職票を渡さない会社には罰則が科されます。離職票の届かない原因は、会社かハローワーク、どちらかにあります。2週間待っても届かないなら「遅い」と考えて行動を起こしましょう。
退職した会社、ハローワーク双方に問い合わせると共に、弁護士のサポートを得るなど状況に応じた対処法をとることで、離職票を速やかにもらえる努力をしましょう。万が一に離職票が届かないとしても仮手続きにより負担を軽減する方法もあります。
会社への連絡にためらいがあるとき、弁護士が代理で請求することができます。退職後の労働問題でお悩みの場合、弁護士に一括で解決してもらうのがお勧めです。
【失業保険の基本】
【離職理由について】
【失業保険をもらう手続き】
【失業保険に関する責任】