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浅野 英之
弁護士
弁護士(第一東京弁護士会所属、登録番号44844)。東京大学法学部卒、東京大学法科大学院修了。

企業側の労働問題を扱う石嵜・山中総合法律事務所、労働者側の法律問題を扱う事務所の労働部門リーダーを経て、弁護士法人浅野総合法律事務所を設立。

不当解雇、未払残業代、セクハラ、パワハラ、労災など、注目を集める労働問題について、「泣き寝入りを許さない」姿勢で、親身に法律相談をお聞きします。

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看護師のセクハラ被害への対処法は?患者・医師からの事例と相談先

看護師として働く中で、患者や医師、同僚からのセクハラ被害に悩むことがあるでしょう。

医療現場では、身体的な接触や密なコミュニケーションが不可欠である一方、病院の閉鎖的な環境、医師や患者との立場の違いなどが理由で、セクハラが悪化しやすい特徴があります。「自分が我慢するしかない」「指摘したら働きづらくなる」と抱え込んでいる人も少なくありません。

しかし、看護師であってもセクハラは違法であり、被害を見逃すべきではありません。早期に対処しなければ職場環境が悪化し、被害が拡大します。場合によっては、加害者である医師や患者だけでなく、防止しなかった病院の責任を問うべきケースもあります。

今回は、看護師が直面しやすいセクハラの具体例を、患者、医師、同僚などの加害者別に整理し、具体的な対処法や相談窓口について、労働問題に強い弁護士が解説します。

この解説のポイント
  • 看護師のセクハラは、医師との上下関係や閉鎖的な環境が原因となる
  • 医療現場では、患者から看護師に対するセクハラが起こることもある
  • 看護師は、セクハラ被害に対して拒絶の意思を明らかにし、責任追及を行う

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解説の執筆者

弁護士 浅野英之

弁護士(第一東京弁護士会所属、登録番号44844)。東京大学法学部卒、東京大学法科大学院修了。

企業側の労働問題を扱う石嵜・山中総合法律事務所、労働者側の法律問題を扱う事務所の労働部門リーダーを経て、弁護士法人浅野総合法律事務所を設立。

不当解雇、未払残業代、セクハラ、パワハラ、労災など、注目を集める労働問題について、「泣き寝入りを許さない」姿勢で、親身に法律相談をお聞きします。

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看護師が受けるセクハラ被害の実態

はじめに、看護師が受けるセクハラ被害の実態を解説します。

看護師のセクハラ被害は、医療現場でよく発生している深刻な問題です。一般的なセクハラの問題点に加え、患者との距離が近いという業務の性質や、医師との上下関係、病院の閉鎖的な環境などが、その被害を増大させる理由になっています。

セクハラの定義

セクハラ(セクシュアルハラスメント)とは、意に反した性的言動によって労働者の就業環境を害したり、労働条件について不利益を与えたりする行為を指し、事業主には防止措置が義務付けられています(男女雇用機会均等法11条)。

具体的には、性的な言動、不必要な身体接触、性的行為や交際の強要などが該当しますが、医療現場では、業務上の身体接触と区別が難しいケースもあります。そのため、「看護師のセクハラ被害の具体例」を参考に、「業務に必要か」「被害者が不快と感じたか」といった判断が必要です。

看護師にセクハラ被害が多い理由

看護師は、他の職種と比べてセクハラ被害に遭いやすい傾向があります。その背景には、以下のように業務や職場環境に関する理由があります。

患者との身体的接触が多い

入浴介助や身体清拭、排泄ケアなど、患者の身体に直接触れる看護は、不必要な接触との区別が難しいため、看護師が違和感を覚えても指摘しにくい状況になりがちです。

医師や上司との間に上下関係がある

医療現場では、医師と看護師、上司と部下といった明確な上下関係が存在します。

患者の生命を守るためには明確な上下関係が役立つ一方、業務外に持ち込まれると、不適切な言動を拒否しにくくなります。人事評価権を有する相手からのセクハラは、特に心理的な圧力が強く、被害が長期化・深刻化する傾向があります。

閉鎖的な職場環境がある

病院は、外部との関わりが限定され、独特の人間関係が形成されやすい環境です。そのため、問題が内部で処理され、セクハラが表面化しにくい傾向があります。「人手不足で人間関係を悪化させたくない」「相談しても改善されないのではないか」といった不安から、被害を訴えずに我慢してしまうケースも少なくありません。

また、患者のプライバシーを守るため、セクハラの起こりやすい個室や浴室、トイレなどに監視カメラを付けるなどの対策が講じにくいのも難点となっています。

セクハラ問題に強い弁護士」の解説

看護師のセクハラ被害の具体例

次に、看護師によく起こるセクハラ被害の事例について、具体的に解説します。

患者からのセクハラ被害

患者からのセクハラは、看護業務の特性上、特に発生しやすいです。

ケアの際に身体に触れる機会も多いため、不適切な接触や発言が「業務の延長」として見過ごされることも少なくありません。また、高年齢で認知機能が低下していると、対応が難しく、看護師が一方的に我慢を強いられることもあります。

しかし、どのような事情があってもセクハラは違法であり、許されません。「患者さんだから」といって我慢すれば、深刻なハラスメント問題に発展してしまいます。

不必要な身体接触

ケアに不必要な身体接触は、患者と看護師の間で起こる典型的なセクハラです。

例えば、手を握られる、抱きつかれる、胸や尻を触られるなどの性的言動はセクハラです。明確に拒否したにもかかわらず繰り返される場合、悪質性が高いといえます。患者側の力が強いと、暴力や暴言に発展してしまう危険もあります。

性的な発言や質問

容姿に関する執拗な言及や、恋愛や性的内容に関する質問などもセクハラです。

看護師は、ケアを提供する立場であるため、患者からの質問に断りにくさを感じてしまうと、被害が深刻化しがちです。

患者家族からの嫌がらせ

セクハラは患者本人に限らず、その家族から行われるケースもあります。

例えば、個人的な連絡先を聞かれる、業務外で会うことを求められる、不適切な発言をされるといった事例です。患者対応の一環として家族との関係性を保とうとすると、境界線が曖昧になり、被害を拡大されてしまいます。

医師からのセクハラ被害

医師からのセクハラは、職場内の上下関係を背景に発生するのが特徴です。

業務上の指示や評価をする権限を持つ医師からのセクハラは、関係性の悪化を恐れて声を上げにくく、被害が長期化する傾向があります。

上下関係を利用した性的行為の強要

上下関係を利用し、性的関係を断りにくくする行為は、重大なセクハラに該当します。

強要されれば、不同意わいせつ罪、不同意性交等罪といった犯罪行為として刑事責任を問われる可能性もあります。「断ったら院内で不利益を受けるのではないか」と感じさせる状況は、事実上強要に等しいと考えられます。

執拗な食事の誘いやプライベートの詮索

業務と無関係の食事や飲み会への執拗な誘い、私生活への過度な干渉もセクハラに含まれます。断っているにもかかわらず繰り返される場合、違法性が強いと考えられます。このようなセクハラは無自覚から起こることもあるため、加害者にならないための配慮も大切です。

人事評価をちらつかせた圧力

医師は、看護師の評価や配属に影響を与える立場にあることもあります。

「評価に影響する」「配属を変えることもできる」などと示唆し、性的な関係を求めるケースは極めて悪質です。職場内の優位な地位を濫用する点で、パワハラの要素も含みます。

セクハラで訴えられたら?」の解説

同僚や上司からのセクハラ被害

同僚や上司の看護師からセクハラを受けるケースもあります。

同僚や上司によるセクハラは、日常的に繰り返され、関係性が近い分、「冗談」や「ノリ」として処理されやすい点が特徴です。看護師だけでなく、事務長や医局長、施設長といった責任者が、権限を悪用してセクハラを行うケースもあります。

しかし、たとえ軽い発言でも、受け手にとって不快であればセクハラに該当する可能性があります。看護師は女性の多い職場ですが、男性看護師も少数派であるがゆえに軽視され、「ジェンダーハラスメント」や「逆セクハラ」に遭う被害もあります。

セクハラ発言の一覧」の解説

看護師がセクハラを受けたときの対処法

次に、セクハラ被害を受けた看護師がどのように対処すべきかを解説します。

毅然とした態度で拒否する

セクハラ被害を受けた看護師にとって最も重要なのは、拒絶の意思を示すことです。

毅然とした態度で接しなければ、加害者の無自覚によるセクハラを止めることはできません。特に、患者や医師という立場にあると、セクハラの認識がない加害者もいます。たとえ相手が患者でも、違法なセクハラは明確に拒絶すべきです。

詳細な記録と証拠を残す

セクハラ被害を訴える際は、その事実を証明する証拠を準備しましょう。

医療現場はセクハラが起こりやすい環境にあるため、どのタイミングで被害が発生するかを予測しにくいことも多いものです。セクハラを直接に示す証拠を収集するため、密室や周囲から見えない場所で二人きりになるなら、録画・録音をする努力をしておいてください。

セクハラが日常的に起こっている場合、継続的にメモや日記を付けるのも有効です。

セクハラの証拠」の解説

信頼できる同僚や先輩に現状を打ち明ける

セクハラ被害に遭ったら、一人で抱え込まず、周囲に打ち明けることが重要です。

特に、患者からのセクハラは個人での解決が難しく、男性の看護師に担当を変わってもらったり、複数人で看護を行ったりといった組織全体としてのハラスメント対策が効果的です。経験や勤続の浅い看護師は、信頼できる同僚や先輩に相談することで解決できるケースもあります。

医師や上司、患者との相性が合わないときは、異動や担当変更を願い出るという解決策もあります。病院として対策を講じてくれれば、軽度のうちに解決することができます。

法的な責任を追及する

セクハラ被害が悪質な場合は、法的責任の追及も検討しましょう。加害者への責任追及の方法には、以下の3つがあります。

  • 民事責任
    加害者に対し、不法行為(民法709条)を理由に慰謝料や損害賠償を請求できます。セクハラを防止しない病院にも、安全配慮義務違反を理由とした責任追及が可能です。
  • 刑事責任
    悪質なセクハラは犯罪であり、不同意わいせつ罪、不同意性交等罪といった刑事責任を追及できます。
  • 雇用関係上の責任
    セクハラ行為が常態化し、職場の就業環境を著しく害している場合、加害者に対して懲戒処分や解雇といった処分が検討されます。

法的責任を追及するケースでは、転職して仕事を変える人も少なくないでしょう。これらの責任追及は、退職後でも行うことが可能です。

看護師のセクハラ問題の相談先一覧

次に、看護師のセクハラ問題の具体的な相談先について解説します。

セクハラ被害は、一人で抱え込んでいると深刻化しやすいため、まずは院内の相談窓口に伝え、解決しない場合には院外の窓口を検討しましょう。

看護師長や院内のハラスメント相談窓口

まずは、院内での解決を試みる方法から進めましょう。

看護師間の軽度のセクハラなら、看護師長からの注意指導による改善が期待できます。一方、医師や事務長など、看護師の枠を超える問題は、院内のハラスメント窓口の活用がおすすめです。

使用者(病院)には、労働者の健康と安全に配慮する義務 (安全配慮義務)があり、その一環としてセクハラ防止が求められます。コンプライアンス意識の高い病院やクリニックであれば、ハラスメント窓口に相談することで、組織全体の問題として対処してもらうことができます。

セクハラの相談窓口」の解説

労働局の総合労働相談コーナー

一方で、院長が加害者の場合や、誠実に対応しない病院の場合など、院内で解決できない問題は、院外の相談窓口を活用することが重要です。ハラスメントについての法律知識や対応策を知るには、各都道府県の労働局に設置された総合労働相談コーナーへの相談がおすすめです。

日本看護協会が設ける看護職の相談窓口

看護師特有の悩みは、業界に特化した相談窓口も有効で、代表的なものとして、日本看護協会が設置している相談窓口があります。看護協会では、職場環境や人間関係に関する相談を受け付けており、医療現場の実情を理解した立場から助言を受けられる点がメリットです。ハラスメント問題について、まずは第三者に話を聞いてほしいときに利用しやすい窓口です。

弁護士や法テラスへの相談

被害が深刻な場合や、病院が適切に対応しない場合、弁護士への相談が有効です。

弁護士に相談することで、患者や医師からのグレーゾーンの行為について、違法なセクハラかどうかのアドバイスを受けられます。また、慰謝料や損害賠償を請求する際は、交渉や法的手続きを代わりにサポートしてもらうことが可能です。すぐに争う状況でなくても、セクハラの被害の最中であれば、どのような証拠を収集すべきか、助言を受けることができます。費用に不安がある場合、無料相談や法テラスなども活用してください。

労働問題に強い弁護士」の解説

警察への相談が必要なケース

悪質なセクハラは、単なる職場の問題を超え、刑事事件として立件されるものもあります。抵抗できない状況で性的行為を強要されるケースなどは、警察へ相談することも可能です。被害直後は動揺して判断が難しいでしょうが、日時や状況を記録し、衣服や現場の写真など、証拠となるものを保存しておくことが望ましいです。

また、警察に一人で相談に行くのが不安な場合、弁護士に同席してもらうことで手続きのサポートを受けることもできます。

犯罪となるセクハラ」の解説

看護師のセクハラに関する裁判例

最後に、看護師のセクハラに関する裁判例を紹介します。

東京地裁平成19年9月28日判決

東京地裁平成19年9月28日判決は、医師によるセクハラ(①飲み会の解散後、医師がタクシー内で性器を握らせたこと、②看護師の自宅内で、泥酔した看護師に性交渉を迫ったこと)を不法行為と認定し、慰謝料200万円の支払いを命じました。

津地裁平成9年11月5日判決

津地裁平成9年11月5日判決は、男性上司の女性看護師に対する次の言動が不法行為に当たると判断し、注意しなかったこと、看護師からの相談に対策を講じなかったことから、病院の職場環境配慮義務違反を認め、上司と病院それぞれに55万円の損害賠償の支払いを命じました。

  • すれ違いざまに臀部をなでるように触った。
  • 勤務中「いいケツしとるな」「生理と違うか」「処女か」と発言した。
  • 2人で深夜勤をした際、休憩室内で肩から胸のあたり、大腿部を触った。
  • 被害者が休憩室で仰向けに寝転んで雑誌を読んでいたところ「夏ちゃんはバックがええんやろ」と言いながら、腰から胸にかけてなでるように触った。

千葉地裁平成12年1月24日判決

千葉地裁平成12年1月24日判決は、勤務先の病院長からわいせつ行為や発言を繰り返し受けたと主張した事案で、肩や背中への接触行為は直ちに性的な意味を有するものではないとする一方、臀部への接触行為は不法行為とし、70万円の慰謝料の支払いを命じました。

千葉地裁令和3年6月2日判決

千葉地裁令和3年6月2日判決は、個室の男性患者が看護師にわいせつな行為(片腕を引っ張ってソファーに倒れ込ませた後、両腕をつかんで動けなくする暴行を加え、着衣の上から胸を触り、ズボンの中に手を差し入れた)について、強制わいせつ罪(刑法176条、現在の不同意わいせつ罪)が成立すると判断しました。

神戸地裁令和2年2月18日判決

神戸地裁令和2年2月18日判決は、訪問看護に来訪した看護師に対する男性患者のわいせつな行為(睡眠薬を混入したスープを飲ませ、看護師の抵抗を難しくした後、口にキスし、着衣の中に手を差し入れて乳房をもみ、陰部を触った)について、準強制わいせつ罪、強制わいせつ罪(刑法176条、現在の不同意わいせつ罪)が成立すると判断しました。

患者に前科前歴はなく高齢であるものの、やめてほしいと懇願されても聞き入れず、約10分間にわたってわいせつな行為をしたことなどから、執行猶予は相当ではないとし、懲役2年6月の実刑判決が下されました。

【まとめ】看護師のセクハラ被害

弁護士法人浅野総合法律事務所
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今回は、看護師のセクハラ被害について詳しく解説しました。

セクハラは違法ですが、看護師が被害者となるケースは特に、患者や医師といった医療現場特有の人間関係から見過ごされやすい性質があります。業務の性質上、献身的に看護をするほど、身体的な接触が不可避であり、「我慢するしかない」と抱え込むうちに被害が深刻化してしまいます。

しかし、セクハラ被害を放置すると、心身に不調を来し、退職せざるを得ない状況に追い込まれるおそれもあります。大切なのは、不快に感じた時点でセクハラの可能性を疑い、早めに対処することです。明確に意思表示をし、証拠に残した上で、職場や外部の相談窓口を活用しましょう。

状況によっては、法的責任を問うべきケースもあります。セクハラが蔓延する職場では、声を上げにくい風土があることが多いため、セクハラ問題に詳しい弁護士に相談してください。

この解説のポイント
  • 看護師のセクハラは、医師との上下関係や閉鎖的な環境が原因となる
  • 医療現場では、患者から看護師に対するセクハラが起こることもある
  • 看護師は、セクハラ被害に対して拒絶の意思を明らかにし、責任追及を行う

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