契約社員として働いている方の中には、期間途中で辞めたいと考える人もいます。
契約社員は、正社員とは異なり、契約期間が定められているため、原則として契約満了まで働くことが予定されます。そのため、期間中の退職は、正社員に比べると制限されます。
ただし、法律上、労働者に対する不当な拘束を防ぐため、「やむを得ない事由」がある場合は、期間中でも退職することができます。この理由に該当するのは、病気や事故で就労困難であるといった労働者側の事情や、ハラスメントや給与未払いなどの会社側の問題などがあります。また、実際は、会社との話し合いで退職が可能なケースもあります。
今回は、契約社員が退職できる条件と「やむを得ない理由」に該当する具体例、期間中に退職する方法について、労働問題に強い弁護士が解説します。
- 労働契約に期間の定めのある社員は、期間途中で辞められないのが原則
- 「やむを得ない事由」がある場合は、契約期間の途中でも退職できる
- 契約社員は退職金などの保護が薄い場合があるが、失業保険は受け取れる
\ 「今すぐ」相談予約はコチラ/
契約社員は期間途中でも退職できる?

契約社員の退職のルールは、正社員とは異なります。
正社員であれば、民法627条1項に従い、退職の意思表示から2週間の経過によって労働契約が終了するのに対し、「有期雇用契約」で働く契約社員の場合、期間途中で退職できないのが原則であり、途中退職するには「やむを得ない事由」が必要とされます(民法628条)。
以下では、契約社員の退職のルールについて、基本を解説します。
契約期間中は退職できないのが原則
契約社員は、契約期間中は原則として退職することができません。
3ヶ月、6ヶ月、1年といった契約期間を定めて雇用される契約社員は、契約満了までは勤務を継続することが予定されるからです。そして、会社も、一定期間働き続けることを前提に、人員配置や業務の計画を立てていることが多いです。逆にいえば、契約期間が満了すれば雇用は終了します(実質的に無期と同視できる場合や合理的な期待がある場合、「雇止め法理」による例外あり)。
「やむを得ない事由」があれば退職できる
契約社員でも、どのような場合でも退職できないわけではありません。
民法628条は、契約期間中であっても「やむを得ない事由」があるときは、直ちに雇用契約を解除できると定めています。例えば、次のようなケースが該当します。
- 病気やケガで働けない場合
- 家族の介護が必要になった場合
- ハラスメント被害を受けている場合
- 違法な長時間労働や未払い残業がある場合
- 配偶者の転勤で通勤できなくなった場合
「やむを得ない事由」には、労働者側の事情と会社側の問題の双方が含まれます。ただし、「やむを得ない事由」に当たるかどうかは個別事情によって判断され、単なる「職場が合わない」「仕事にやる気が沸かない」といった理由では認められない場合もあります(具体例は「契約社員が途中退職できる「やむを得ない事由」とは」参照)。
「会社の辞め方」の解説

1年を超える契約や更新後は途中退職できる
例外的に、「やむを得ない事由」がなくても退職が許される緩和措置が定められています。
労働基準法附則137条により、1年を超える期間の契約を締結した場合、契約日から1年を経過すれば、労働者はいつでも退職を申し出ることができます。また、民法629条1項では、期間満了後に労働者が就業を継続し、使用者が異議を述べない場合、従前と同一の条件で雇用されたものと推定され、その後はいつでも、2週間前の予告によって退職することが可能となります。
もっとも、実際の退職時期や引き継ぎなどをめぐって会社とトラブルになることもあるため、就業規則や契約書を確認したうえで、できるだけ早めに退職の意思を伝えることが重要です。
「労働問題に強い弁護士の選び方」の解説

契約社員が途中退職できる「やむを得ない事由」とは

では、契約社員が途中退職できる「やむを得ない事由」とはどのようなものでしょうか。
労使双方の雇用継続への期待を保護するため、「やむを得ない事由」には一定の重大性が求められます。具体的には、期間満了を待たずに直ちに契約を終了させざるを得ない事由を指し、無期契約の解雇における「客観的に合理的な理由」より厳格で重大なものが必要とされています。
もっとも、「やむを得ない事由」に該当するかどうかは、労働者側の事情や会社側の対応などを踏まえて個別に判断されます。
以下では、実務上「やむを得ない事由」として認められやすい具体例を解説します。
労働者の健康や心身の状況
労働者の健康や心身の状況は、「やむを得ない事由」として認められる典型例です。就労の継続が困難になった場合、契約を打ち切らざるを得ないと考えられるからです。
例えば、以下のようなケースが該当します。
- 病気の療養が必要である。
- ケガで業務を遂行することができない。
- 加齢による体力不足で勤務を継続できなくなった。
- 視力や聴力といった身体的な機能低下により仕事が満足にできない。
病気やケガは、身体的なものだけでなく、うつ病や適応障害などの精神疾患も含まれます。特に、医師から療養を勧められている場合、退職の必要性を裏付ける事情となります。したがって、健康状態を理由に退職を申し出る際は、診断書を提出するとスムーズに進みます。
なお、健康状態の悪化やケガが業務に起因するものである場合は、労災として保護されるべきです。長時間労働やハラスメントなど、職場環境に問題がある場合、労災の疑いがあります。
「労災認定基準」の解説

家族の介護
両親の死亡や病気、親族の介護を要する状況なども、「やむを得ない事由」となります。
例えば、親の介護、配偶者や子供の看病が継続的に発生するケースがあります。特に、介護サービスの利用や親族の協力などでは対応しきない場合、退職の必要性が認められやすいです。家庭の事情を考慮して正社員ではなく非正規として働く人もいるため、重要性が高いと考えられます。
妊娠・出産・育児
妊娠・出産・育児によって従前の業務を遂行できなくなる人もいます。
妊娠中の体調の悪化や、医師から安静を指示されているケースなどは、退職の必要性を基礎づける事情となるため、「やむを得ない事由」として認められます。当初は仕事と両立する予定であっても、離婚してひとり親家庭となったり、保育園が見つからなかったりといった事情により、どうしても契約継続が難しくなってしまうケースもあります。
「育休が取れないのは違法?」の解説

家庭環境や生活の変化
生活環境が大きく変化し、契約期間中の勤務継続が困難になるケースもあります。
例えば、配偶者の転勤や、転居への同行によって通勤が困難となるケースが典型例であり、現実的に通勤できなくなる場合、「やむを得ない事由」として認められます。一方で、通勤の事情が退職理由として認められるものには、事業所の移転によって通勤が困難になるケースもあります。
なお、期間を定めて雇用される契約社員の場合、長期雇用は予定しておらず、転勤して働くまでの義務はないと判断されることが多いと考えられます。
「転勤を拒否するには?」の解説

会社の違法行為
会社側に重大な法令違反がある場合も、「やむを得ない事由」として認められます。
職場環境が劣悪であったり、違法行為があったりするとき、契約社員といえども期間途中で退職することが正当化されるからです。よくあるケースは、給与や残業代の未払い、違法な長時間労働、セクハラやパワハラなどのハラスメント被害といった例です。これらの場合、我慢して働き続ける必要はなく、速やかに退職して距離を置き、被害の拡大を防ぐべきです。
会社は、辞めてほしくないなら、違法行為を是正する必要があります。是正や改善をせずに放置している会社で、期間まで働き続けなければならないのは、労働者にとってあまりに酷です。
なお、採用時に示された労働条件との相違が大きい場合、労働基準法15条2項に基づき、即時に労働契約を解除することができます。
「労働基準法違反」の解説

「やむを得ない事由」がない場合の対処法

「やむを得ない事由」がない場合、期間途中の退職は制限されるのが原則です。
しかし、実務上は、会社との話し合いによって退職できるケースも少なくないため、合意退職を目指すべきです。一方で、無断で退職すると、損害賠償責任を負う危険があります。
実務上は退職できるケースも多い
実際のところ、契約社員でも、期間途中で退職が許されるケースは多いものです。
「やむを得ない事由」が必要なのは労働者による一方的な退職であり、会社の同意を得て合意退職する場合は、特に理由は問われず、タイミングについても即日退職が可能です。「やむを得ない事由」に該当するほど重大な事情がなくても、退職を希望するなら積極的に交渉すべきです。強い意思を示せば、無理に引き止めて働かせるのは難しいと感じさせ、同意を得やすくなります。
無理な引き止めや労働の強要によって精神的苦痛を与えた場合、安全配慮義務違反として会社の責任を問われるおそれがあります。そうでなくても、既に退職する気持ちである労働者のモチベーションを上げ、活躍してもらうことは難しいでしょう。
「安全配慮義務」の解説

会社から損害賠償請求される可能性がある
一方で、「やむを得ない事由」がないにもかかわらず一方的に退職すると、労働者にもリスクがあります。具体的には、会社から損害賠償を請求される可能性があります。
ただし、会社から労働者への損害賠償が認められるためには、具体的な損害の立証が必要です。単に「人手不足になった」「業務が混乱した」といった事情では認められにくく、途中退職したことによる損害と因果関係が具体化されなければ、労働者の責任は否定されます。
とはいえ、会社とのトラブルが深刻化するおそれがあるため、無断で退職することはおすすめできず、退職の意思表示を早めに行い、引き継ぎをして円満解決を目指すべきです。
「会社から損害賠償請求された時の対応」の解説

契約社員が退職するための方法

契約社員でも期間途中で辞められるとしても、適切な手順を踏むことが重要です。
強い引き止めが予想されるケースでは、円満退職を目指すため、早めに退職の意思を伝え、書面により証拠化するなどの配慮が必要です。期間途中で退職する場合はトラブルになりやすいため、感情的にならず、冷静に進めなければなりません。
以下では、契約社員が退職する際の具体的な進め方を解説します。
就業規則と契約書を確認する
退職を決意したら、就業規則と雇用契約書を確認しましょう。
契約社員の場合、雇用契約書で契約期間を確認し、就業規則で退職時の手続きと、会社の定める退職予告期間を確認します。前述の通り、「やむを得ない事由」がなくても合意退職できるケースは多いものの、会社の同意を得るには、「退職日の◯日前までに申し出ること」といった規定は、可能な限り守った方がスムーズに進みます。
また、途中退職について違約金を定めているケースもありますが、労働基準法16条の賠償予定の禁止に違反するため違法・無効です。
退職の意思はできる限り早く伝える
退職を決めた場合は、できる限り早めに会社へ伝えることが大切です。
突然退職を申し出ても、会社も人員の調整が付かず、退職に同意しにくく、円満退職が遠のいてしまいます。実務上は、引き継ぎ期間などを考慮して、1ヶ月前程度の猶予を設けて申し出れば、退職が認められやすい傾向があります。また、繁忙期を避けるなど、伝えるタイミングにも注意しましょう。
退職理由を必要以上に説明する必要はないものの、契約社員の場合には「やむを得ない事由」に該当する可能性があると会社に理解してもらえる程度には具体化しておいた方が、退職への同意が得やすくなります。
退職届を必ず提出する
退職の意思を口頭で伝えた後は、退職届を提出しておきましょう。
書面を提出することで退職の意思表示をした証拠を残し、「言った・言わない」のトラブルを防ぐことができます。これは、契約社員の退職でも同様です。特に、契約途中の退職は後から争いになるケースもあるため、記録に残しておきましょう。
「退職届の書き方と出し方」の解説

辞めさせてくれない場合は内容証明で退職の意思を通知する
会社が辞めさせてくれない場合、内容証明で退職の意思を通知しましょう。
本解説の通り、契約社員の場合、途中退職は認められないのが原則であり、「やむを得ない事由」がある場合に例外的に認められます。そのため、内容証明では、「やむを得ない事由」として認められる事情があることを説得的に記載する必要があります。
特に、未払い残業代やハラスメント被害など、職場に法令違反がある場合には、その責任追及も含めて内容証明で通知するのが有効です。
「残業代請求に強い弁護士とは?」の解説

弁護士へ相談する
話し合いで解決できない場合には、弁護士への相談も検討しましょう。
特に相談すべきなのは、強引な引き止めを受けているケースや、損害賠償請求すると言われているケースです。これらの場合に放置しておくと、被害が拡大してしまいます。また、残業代や慰謝料を請求すべきケースでも、弁護士に相談し、交渉を任せたり、労働審判や訴訟といった裁判手続きの代理人となってもらったりする方法が有効です。
精神的苦痛が大きい事案では、連絡窓口となってもらうことでストレスを軽減できます。まずは無料相談から、気軽にご活用ください。
「労働問題を弁護士に無料相談できる?」の解説

契約社員が途中退職する際の注意点
最後に、契約社員が期間途中で退職する際に注意すべきポイントを解説します。
「やむを得ない事由」があって退職が可能なケースでも、注意深く進めないと、思わぬ不利益が生じるおそれがあります。
退職金規程がないと退職金は支払われない
契約社員が退職時に退職金を受け取れるかどうかは、会社の制度によって異なります。
退職金は法的な義務ではないため、退職制度が整備されていなければ受け取れません。退職金を長期勤続の功労に対する報償であると位置付け、正社員のみを支給対象とする企業もあります。したがって、退職金規程が存在しない場合や、存在していても契約社員が対象とされていない場合には、退職金を請求することはできません。
なお、契約期間満了まで勤め上げた場合、「契約満了金」の支給を定める企業がありますが、期間途中の退職では要件を満たさず、受け取ることはできません。
「退職金がもらえないケース」の解説

契約社員でも失業保険は受け取れる
失業保険は、退職後の生活の安定を保障し、転職活動を支援するためのものです。
失業保険の対象は、正社員に限定されておらず、契約社員であっても要件を満たせば給付を受けることができます。ただし、雇用保険に加入していることが前提なので、正社員よりも労働時間が短い場合は、「1週間の所定労働時間が20時間以上であること」「31日以上引き続き雇用されることが見込まれること」といった要件を満たす必要があります。
なお、離職前2年間に12ヶ月以上の被保険者期間が必要ですが、更新の期待が侵害されて雇い止めされた場合や正当な理由がある場合は、「特定受給資格者」(会社都合)、「特定理由離職者」(正当な理由のある自己都合など)となり、「離職前1年間に6ヶ月以上」へ緩和されます。
「失業保険の手続きと条件」「アルバイトの雇用保険」の解説


【まとめ】契約社員の退職

今回は、会社を辞めたい契約社員に向けて、退職する条件や方法を解説しました。
雇用契約に期間の定めがあると、正社員と異なり、原則として期間満了までは働くことが前提とされます。しかし、病気やケガ、ハラスメントや賃金未払いといった「やむを得ない事由」がある場合、契約期間の途中でも退職が可能です。実際は、会社と話し合って合意退職に至るケースも少なくなく、「期間満了までは辞めることができない」とあきらめる必要はありません。
一方で、無断で退職したり、突然音信不通になったりすると、単なる退職の問題にとどまらず、会社から損害賠償請求を受けるなどのトラブルに発展するおそれがあります。
退職を決意したら、雇用契約書や就業規則を確認し、できる限り早めに意思を伝えることで円満退職を目指しましょう。職場に違法があるのに辞められない場合や、強引な引き止めを受ける場合などは、弁護士に相談するのがおすすめです。
- 労働契約に期間の定めのある社員は、期間途中で辞められないのが原則
- 「やむを得ない事由」がある場合は、契約期間の途中でも退職できる
- 契約社員は退職金などの保護が薄い場合があるが、失業保険は受け取れる
\ 「今すぐ」相談予約はコチラ/




