契約社員とは、「有期雇用契約」によって雇われる社員のこと。
つまり、期間の定めのある社員です。
有期雇用だと、終身雇用の正社員とは違って、期限が来れば退職になります。
労働契約の期間満了により、当然に関係が解消されるのです。
契約は自由に解約できるのが原則です。
しかし、有期雇用契約だと、必ずしも自由には解約できないものとされています。
「期間が経ったら終了」とする以上、期間内は「やむを得ない理由」なしには解約できないという考え方。
とはいえ、契約社員にも辞めたくなることはあるはず。
契約社員は、すぐ辞めたいと考えたときにも、退職はできないのでしょうか。
今回は、契約社員の辞め方と、退職できる条件である「やむを得ない理由」を、労働問題に強い弁護士が解説します。
- 労働契約に期間のある社員は、期間途中では辞められないのが原則
- しかし、やむを得ない理由があるなら、契約期間の途中でも、すぐに退職できる
- 契約社員は退職金がないなど保護が薄い可能性があるが、失業保険はもらえる
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【退職とは】
【退職時の注意点】
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契約社員が退職できるケース
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まず、どういった場合なら、労働者から一方的に辞められるのか、解説します。
労働者には退職の自由があり、退職そのものは可能。
ブラック企業に入社したら、少しでも早く辞めたいでしょう。
会社が認めれば合意退職できますが、人手不足だと簡単には辞めさせてもらえません。
なお、正社員など、労働契約の期間の定めのない方は、次の解説をご覧ください。
![](https://roudou-bengoshi.com/wp-content/uploads/2018/02/josei-tsurai-1-300x169.jpg)
契約満了により退職できる
有期雇用契約の場合、原則として期間が満了するまで、解約することはできません。
逆にいえば、契約の期間が満了すれば、当然に退職できます。
契約に終わりがあるのが、正社員をはじめとした無期社員との違いです。
労働契約が終わったのになお、働くことを強要されるのは違法です。
いくら以前に契約を結んでいても、契約がなければ働く義務はないからです。
引き継ぎが長かったり、指示命令をされ続けたりといったケースが不適切なのは明らか。
1年を超える契約で、1年を経過すればいつでも退職できる
期間満了で辞められるとしても、労働契約の期間が長過ぎると不当に拘束されてしまいます。
労働基準法137条は、1年を超える契約なら、1年を経過後、いつでも期間前に解約できると定めます。
ただし、最長5年の有期労働契約を締結できる労働者(高度な専門知識を有する労働者、60歳以上の労働者)との間では、労使ともに、全期間、その契約に拘束される点には注意が必要です。
1年未満の契約は「やむを得ない理由」が必要
以上の解説にあたらないケースでは、退職にはやむを得ない理由が必要です。
つまり、労働契約の期間の定めがあるとき、中途解約は制限されるのです。
民法628条に、次のように定められています。
民法628条
当事者が雇用の期間を定めた場合であっても、やむを得ない事由があるときは、各当事者は、直ちに契約の解除をすることができる。この場合において、その事由が当事者の一方の過失によって生じたものであるときは、相手方に対して損害賠償の責任を負う。
民法(e-Gov法令検索)
契約社員の方には、すぐ辞めたいというケースもよくあります。
この点で、やむを得ない理由があるなら、即座に退職することも可能です。
ブラック企業を退職したいのは、契約社員に限る問題ではありません。
ただ、雇用期間に定めがあると、会社に軽視されやすく、処遇は悪化しがちです。
退職トラブルは、弁護士に相談できます。
労働問題に強い弁護士の選び方は、次に解説します。
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契約社員がすぐに退職できる「やむを得ない理由」とは
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期間の定めある労働契約は、期間が満了するまで解約できないのが原則でした。
わざわざ期間を定めたなら、終了までは労使ともに解約されないと期待するから。
この期待は、法的にも保護に値します。
ただ、例外的に、やむを得ない理由があれば、期間前でも解約できます。
つまり、やむを得ない理由は、期待が保護されなくて仕方ないほど重大でなければなりません。
以下では、やむを得ない理由にあたる具体例を解説します。
本人の事情による就労不能
やむを得ない理由となる1つ目の例が、本人の事情による就労不能です。
働きたくても、ケガや病気で、これ以上働けないことがあります。
就労不能なら、たとえ労働契約の期間中といえど、退職しても仕方ありません。
会社も、就労不能を理由に退職を申し出られれば、あきらめざるをえません。
引き留めても働けず、休職するにせよ、会社の負担となります。
なお、就労不能で退職するには、一時的なものではいけません。
少なくとも、契約の期間中、継続する可能性があると示さなければ、退職は難しいでしょう。
深刻な家庭の事情
やむを得ない理由となる2つ目の例が、深刻な家庭の事情です。
例えば、家族が危篤になったり、介護が必要となったりするケースです。
ただし、期間中に退職するには、その事情は、相当に深刻なものである必要があります。
家族の事情を優先するからこそ、正社員ではなく契約社員として働く方もいます。
このようなとき、自分自身でなく家族のことでも、退職のやむを得ない理由になりえます。
会社の違法行為
やむを得ない理由となる3つ目の例が、会社の違法行為です。
違法行為は、会社の責任であり、退職しても当然だからです。
例えば、ハラスメントなど、職場で嫌がらせを受けるなら、退職はやむを得ないでしょう。
我慢して働き続ける必要はありません。
セクハラや長時間労働、違法な残業代の未払いなどでも同じことです。
会社としては、辞めてほしくないなら、違法行為を是正できるはず。
是正せずに放置している会社で、期間まで働き続けねばならないのは、あまりにも酷です。
ハラスメントの相談窓口についての解説も参考にしてください。
すぐに辞めたい契約社員の退職時の注意点
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最後に、すぐ辞めたい契約社員が、退職時に注意すべきポイントを解説します。
やむを得ない理由があり、退職が可能でも、注意しないと思わぬ不利益が生じます。
退職後の生活に影響がないよう、退職前から検討しなければなりません。
退職金規程がないと退職金はもらえない
契約社員は、退職時、退職金がもらえない可能性があることに注意が必要。
そもそも、退職金規程がなければ、退職金はもらえません。
退職金は、法律上の義務ではなく、労使の契約によって払われるものだからです。
契約社員など有期の社員は、正社員など無期の社員に比べ、退職金がない傾向にあります。
そもそも長期の雇用を予定せず、功労に報いる必要がないと考えられているからです。
契約社員でも失業保険はもらえる
失業保険とは、失業者が安定した生活を送りつつ、転職活動を安心して行うためのもの。
なので、その対象は、正社員に限りません。
契約社員でも、労働者として当然に、失業保険の給付を受けられます。
正社員より短い時間しか働いていなくても、雇用保険に加入できる場合もあります。
すぐに辞めたいなら、失業保険がもらえるか、手続きをよく理解してください。
(参考:パート・アルバイトも雇用保険に加入できる条件)
失業保険をもらう条件と、手続きの流れは、次に解説します。
すぐに辞めたいなら、契約社員でも退職届を出す
契約社員でも、退職そのものは可能だということは理解できたでしょう。
そして、労働者側の覚悟が強いほど、決断が早いほど、早く退職できます。
やむを得ない理由がある場合はもちろんのこと、そうでなくても、退職の意思を強く示さなければ、会社が認めてくれることもなく、退職も遠のいてしまい、酷使され続けてしまいます。
なので、すぐ辞めたいなら、契約社員でもすぐに退職届を出すべきです。
口頭で伝えるだけでなく、書面で提出しなければ、証拠に残りません。
会社が、拒絶する可能性の高いときは、内容証明で送付する方法により、証拠化しておいてください。
すぐ辞めたいなら、早く退職届を書くべきです。
退職届の書き方、出し方は、次の解説をご覧ください。
![](https://roudou-bengoshi.com/wp-content/uploads/2016/08/memo-300x169.jpg)
契約期間満了なら、円満に辞められる
![](https://roudou-bengoshi.com/wp-content/uploads/2017/08/business.jpg)
契約社員を雇用する会社には、あえて期間を定めて採用する意味があったはずです。
それは、多忙や業務の増加など、一時的に増員が必要だからでしょう。
そのため、契約期間が満了し、これを理由に退職するなら、円満に退職できます。
もちろん、更新を予定することもあるかもしれません。
ただ、ずっと必要な労働力なら、正社員をはじめ無期で雇うべき。
会社としても、いいとこどりをするのは許されません。
少なくとも会社にとって、期間途中に退職されるのは望ましくないもの。
労使の対立が激化するおそれがあります。
退職により思わぬ不利益を与えると、損害賠償を請求されるおそれもあります。
リスクを避けたいなら、契約期間の満了を待つのがよいでしょう。
期間満了まで日数があるがどうしても働けないとき、有給休暇や、休職制度を利用する手もあります。
会社から損害賠償請求された時の対応は、次に解説します。
![](https://roudou-bengoshi.com/wp-content/uploads/2022/06/money-300x169.jpg)
まとめ
![弁護士法人浅野総合法律事務所](https://roudou-bengoshi.com/wp-content/uploads/2022/03/asanosougou-zentai.jpg)
今回は、すぐに辞めたい契約社員に向けて、退職する条件を解説しました。
雇用期間の定めある契約は、「やむを得ない理由」がないと、期間満了まで解約できません。
とはいえ、本来、退職は自由なはずで、不当な制約は許されません。
なので契約社員は、どんなときやむを得ない理由が認められるか知ってください。
また、いざ退職を決めたときは、退職金や失業保険についても事前に確認しましょう。
予想外の不利益を被らないために、退職の意思は、書面で伝えるべきです。
やむを得ない理由があるのに辞めさせてもらえないなら、違法の可能性があります。
ぜひ、弁護士に相談ください。
- 労働契約に期間のある社員は、期間途中では辞められないのが原則
- しかし、やむを得ない理由があるなら、契約期間の途中でも、すぐに退職できる
- 契約社員は退職金がないなど保護が薄い可能性があるが、失業保険はもらえる
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