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アルバイトなのに異動・転勤を命じられたら拒否できる?断り方も解説

日本では、伝統的に、長期雇用の慣行のもと、解雇が制限されています。
これにより長期間、労働者の地位が保障される反面、配置の適正化のため、人事異動が行われてきました。

こんな人事異動が許されるのも、長期雇用を想定した「正社員」だからこそ。
定年まで働く正社員なら、多様な能力を身に着ける目的があったり、忙しさにあわせて異動させたり、適性に沿って配置転換したりするのが許されます。

これに対し、パートやアルバイトなど、非正規社員は、異動が予定されない方もいます。
そもそも長期雇用が予定されなかったり、勤務地や職種を限定されて採用されたりする例が多いためです。

今回は、アルバイトが異動、転勤を命じられたら違法かどうか、解説します。
あわせて、アルバイトへの違法な異動命令を拒否するときの、断り方も紹介します。

この解説のポイント
  • 主婦パート、学生バイトなど典型例を想像すると、アルバイトの異動、転勤は不自然
  • 繁忙期の応援など、軽度の異動、転勤は、アルバイトでもありうる
  • アルバイトで入社したなら、想定された範囲の異動、転勤なのかよく検討する

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解説の執筆者

弁護士 浅野英之

弁護士(第一東京弁護士会所属、登録番号44844)。
東京大学法学部卒、東京大学法科大学院修了。

企業側の労働問題を扱う石嵜・山中総合法律事務所、労働者側の法律問題を扱う事務所の労働部門リーダーを経て、弁護士法人浅野総合法律事務所を設立。

不当解雇、未払残業代、セクハラ、パワハラ、労災など、注目を集める労働問題について、「泣き寝入りを許さない」姿勢で、親身に法律相談をお聞きします。

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アルバイトの異動、転勤はよくあること?

アルバイト社員の場合、短期的な労働を予定しているケースも少なくありません。

アルバイト、パート、フリーターなど、呼び方はいろいろ。
しかし、これらの単語から想像するアルバイト社員は、主婦や学生といったのが典型例。
こんな社員を思い浮かべれば「アルバイトに異動、転勤を命じる」のは、不自然に感じるでしょう。

アルバイトの異動、転勤が少ない理由

アルバイトのなかには、学生や主婦などがいます。
これらの者は、他にしなければならないことがあり、空き時間で働いています。
つまり、このとき、仕事はその労働者にとってメインではないのです。
(学生なら学業、主婦なら家事、育児などが、生活のメインになります。)

アルバイトは、生活のメインとなる活動のため、大きな移動が不可能なことがあります。
アルバイトの移動、転勤が少ないのはそのためです。
これらのことから、アルバイトに異動・転勤を命令するというと、違和感の強い方も多いのではないでしょうか。

実際、正社員と同じ範囲で、異動、転勤を命じられるアルバイトはあまりありません。
異動、転勤の範囲が正社員より狭いからこそ、正社員より低い給料が受け入れられている面もあります。

アルバイトでも、異動、転勤はありうる

しかし、実は、アルバイトでも、異動、転勤をしているケースも少なくありません。
ここでいう異動、転勤の命令には、正社員ほどには至らない、軽いものも含まれます。
例えば、アルバイトがよく経験する異動、転勤の命令は、次のものです。

  • 都内の数店舗を、研修のために順番に異動を命じられた
  • 突然忙しくなった店舗に、周囲の店舗から応援のための異動を命じられた
  • 本店で訓練を受けた後で、担当する店舗に異動した

こんな異動、転勤が可能なのは、アルバイトに与えるダメージが小さいからです。
労働者の不利益は小さいならアルバイトといえども甘んじて受けるべきなのです。

労働者に与える不利益の小さい理由は、次の点にあります。

  • 応援目的の異動なら、一時的なもの
  • 代わりの人員が確保できれば、すぐに戻れる
  • 繁忙期が終われば戻れる
  • 異動先の店舗がそれほど遠くなく、通勤にも支障がない

異動・転勤を命令されるアルバイトの側からしても、これらのように必要性がとても高く、一方で受ける不利益がそれほど大きくないなら、異動、転勤に合意して活躍するケースも多いことでしょう。
結局、業務命令が妥当かどうかは、労使の利益・不利益のバランスが大切なのです。

「異動」は「命令」です。
ただ、アルバイト社員が同意するなら「同意ある労働条件変更」でもあり、法的な問題はありません。

アルバイトの異動、転勤が違法な場合とは

アルバイトに対する異動、転勤の命令は違法となることがあります。
ケースバイケースですが、アルバイトの多くは、雇用契約上、異動を前提としていない方が多いためです。

アルバイトでも、軽度な異動、転勤はよくあると解説しました。
しかし、「遠方への異動」や、「相当期間戻ってこれない」といったとき、話は別でしょう。
アルバイトだと、こんな重大な異動、転勤には耐えられる労働者は少ないことと思います。

勤務地を限定している場合

アルバイトの多くは、雇用契約からして、異動を前提としていません。
このとき、そもそも異動、転勤を命令する権利が会社に与えられていないことになります。

アルバイトの多くは、職種、勤務地、就業場所を、雇用契約書で限定して入社します。
明示的に限定をしていなくても、「ある店舗で募集されたアルバイト」は、アルバイトにすぎないなら、その店舗以外の場所では働かないと考えられるケースがほとんどです。

雇用契約書も存在しないようなブラック企業でも、同じこと。
入社の説明のとき、勤務地や就業場所について明らかにして説明されるケースが多いからです。

短期雇用で、異動を想定していない場合

短期雇用を想定したアルバイトほど、異動、転勤することは想定されていません。

短期間しか働かないのに、その間に何度も異動、転勤させられては、不利益が大きすぎます。
一生その会社に勤め続けるわけではない以上、異動、転勤があるなら、一旦やめてもらって、現地で採用しなおすのがアルバイトの性質上合っているといえます。

そもそも、アルバイト社員として契約した時点で、その店舗でしか働かない例も多いものです。
短期雇用を想定したアルバイトの性質上、不利益の大きい異動命令は、雇用契約の範囲外と判断されます。

給料が低く、異動を想定していない場合

正社員として長期間就労するとき、それなりの賃金を保障されます。
全国転勤を予定した幹部候補生だと、その分だけアルバイトとかけはなれた給料を約束されます。
一方で、アルバイト、特に、空き時間の労働である主婦や学生のとき、高賃金の人は少ないでしょう。

こんな賃金の差は、それに合わせた職務の内容、責任の程度に影響します。
正社員とアルバイトの間の給料の格差は、異動、転勤の範囲によるものでもあるのです。
つまり、正社員は待遇がいい代わりに異動、転勤が広く認められる。
これに対し、アルバイトは、正社員より給料が低い代わりに、異動命令が限定されている
、というわけです。

給料が低いのに扱いが同じだと、同一賃金同一労働の観点から問題です。
もし、正社員とまったく同じ職務と責任があり、同じ範囲の異動、転勤を受けなければならないアルバイトがいるなら、給料が低いと、パートタイム労働法違反の違法な処遇となります。

以上のような違法の多いバイトは、ブラックバイトの可能性あり。

アルバイトが異動、転勤を命じられたときの断り方

アルバイトが異動・転勤を命令されたとき、どんな対応がよいかについて順に解説します。

アルバイトに対する異動命令、転勤命令は違法のおそれあり。
とはいえ実際には、アルバイトの立場でも、異動、転勤を命じられるケースがあります。

会社で今後も働くため、人間関係を崩したくなく、断りきれない方もいます。
やむを得ず異動、転勤に応じてしまう前に、違法な命令の断り方を知っておいてください。

アルバイトの異動、転勤の根拠があるかチェックする

まず、異動命令を下されたら、アルバイトの異動、転勤の根拠についてチェックします。
確認すべきポイントは、次の3点です。

  • アルバイトの異動、転勤の根拠があるか
  • 根拠があるなら、異動、転勤の範囲がどこまでか
  • 異動、転勤に従ったとき、労働条件が変わるか
    (特に、給料が減らないか)

雇用契約の内容によって、どの範囲の異動、転勤を拒否できるかは変わります。
労働契約の内容となる、労働協約、就業規則、雇用契約書の記載を、順に確認するようにしてください。

労使ルールの優劣関係
労使ルールの優劣関係

正社員の就業規則とは別に、アルバイト用の就業規則が用意されている会社もあります。
このとき、アルバイトに適用される就業規則がどれか、よく検討しておいてください。

正社員の就業規則には異動、転勤の条項があるが、アルバイト就業規則にはその規定がない例もあります。

異動により給料が減るなら、拒否できる可能性が高まります。
詳しくは、次の解説をご覧ください。

異動、転勤が違法なら、同意しない

異動命令の根拠がなかったり、雇用契約の内容を越える範囲だったりするとき、その命令は違法。
アルバイトだからこそ、違法な命令に従う必要はありませんから、拒否してよいです。

このとき、異動、転勤が不服なら、同意しないようにしてください。
アルバイトへの違法な異動、転勤でも、労働者の同意があれば有効になるおそれがあるからです。

それでもなお強要されそうなとき、アルバイトからの退職を考えてもよいでしょう。

アルバイトが異動、転勤を拒否するとき、将来、法的トラブルとなる可能性があります。
労働審判、裁判などに発展しそうなとき、次のことに注意し、慎重に対応してください。

  • 異動、転勤を拒否したのを、証拠に残す
    (例:書面、録音、メール、LINEなど)
  • 異動、転勤の拒否を理由に不利益な扱いを受けたら、すぐ弁護士に相談する

違法な移動の拒否のしかたは、次の解説をご参照ください。

アルバイト特有の、異動、転勤の不利益を伝える

異動、転勤を拒否するときは、あなたに与える不利益が大きいことを、よく会社に説明しましょう。
アルバイトとしての入社時、職場を移れない理由を説明しているなら、そのこともきちんと話してください。

不利益が大きいと説得的に説明できれば、会社に、アルバイトの異動、転勤を強行するリスクを感じてもらえます。

なお、アルバイトだからこそ、違法な異動を受けてしまったら、退職も1つの手です。
退職して、次のアルバイトを探す間、違法な異動が理由ならば、会社都合の失業保険をもらえます。

まとめ

弁護士法人浅野総合法律事務所
弁護士法人浅野総合法律事務所

アルバイトとして入社したら、異動、転勤は限定されてしかるべきと考えましょう。
全国転勤があるなど、面接や雇用契約書で説明されないかぎり、アルバイトの特性からして当然です。
アルバイトは短期雇用、低賃金の反面、勤務地、就労場所は限定されるのです。

雇用契約で想定された範囲を越える異動、転勤を命じられても、アルバイトなら拒否できます。
このとき、円満に拒否するためには、断り方も大切。
アルバイトとして働き、異動に不満な方は、ぜひ一度弁護士にご相談ください。

この解説のポイント
  • 主婦パート、学生バイトなど典型例を想像すると、アルバイトの異動、転勤は不自然
  • 繁忙期の応援など、軽度の異動、転勤は、アルバイトでもありうる
  • アルバイトで入社したなら、想定された範囲の異動、転勤なのかよく検討する

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