遠回しに辞めろと言われることがあります。「解雇」「クビ」と明言されなくても、辞めざるを得ない場面です。
遠回しに辞めるよう言われる原因は、ケースによって様々です。業務上のミスや勤務態度に起因する例もあれば、好き嫌いの感情が理由のことも。ただ、上司の気分で嫌がらせされるのは、納得いかないでしょう。
辞めろといわれたら辞めなければならない?
遠回しとはいえ居づらいが、無視してよい?
会社の決定に基づいて強制的に辞めさせるのが解雇。しかし、「遠回しに」言われているときは発言の真意を確認すべきです。会社を辞めるという不利益の大きさを考えれば、慎重な対処を尽くしたいものです。態様によっては、遠回しに辞めろという発言がパワハラの可能性もあります。
今回は、遠回しに辞めると言われた際の対処法と、真意の見分け方について、労働問題に強い弁護士が解説します。
- 遠回しに辞めろと言われても、おとなしく辞めてはいけない
- 遠回しの発言はすべて、その真意を確認してから慎重に対応すべき
- 遠回しに辞めろと言うのは解雇やパワハラなど違法の疑いがあり、録音して証拠を残す
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遠回しに辞めろと言われるケースとは
遠回しに辞めろと言われたと感じたときでも、焦って行動するのは禁物。その発言が、本当に辞めろという趣旨なのか、発言の意図を確かめるべきです。
場合によっては、あなたの気にしすぎということもあります。社内の人間関係が悪化すると自己肯定感が低くなり、自分を否定してしまいがちです。
遠回しに、辞めろと言われているに等しい発言は、例えば次のケースです。
- 「この仕事に向いていないのではないか」
- 「無理して会社にいる必要はない」
- 「君がいても全く役に立たない」
- 「君が残業するのは会社にとって無駄だ」
- 「給料泥棒」
- 「他の業種のほうが実力を発揮できる」
- 「私だったら、とっくに辞めている」
このような発言を受ければ、凹むに違いありません。辞めてほしいというサインのことも、もちろんあります。ただ、いずれもあくまで「遠回し」な表現に過ぎません。
なお、発言の内容だけで判断するのは避けたほうがよいでしょう。発言する態度や語気などにも、その人の真意が現れるからです。
辞めろという発言が本気なときには、次のハラスメントが併発しがちです。
- 実現不可能な分量の仕事を与える
- 誰でもできるような事務作業しか振らない
- 通勤困難な転勤をさせる
- 周囲を巻き込んで無視したり、いじめたりする
また、「嫌なら辞めろ」という発言も、遠回しに辞めさせようとしているものです。条件付きであれ遠回しであれ、「辞めろ」という言葉は、軽々しく使ってはなりません。飲めない条件を付けられれば、結局受け入れて辞めざるをえない状況に追い込まれます。
これらの発言は、自主退職に追い込むことを意図していますが、違法といえます。
「退職勧奨を拒否する方法」の解説
遠回しに辞めろと言われても辞める必要はない
遠回しに辞めろと言われたからといって、すぐ辞める必要はありません。
心地よいことではなく、難しいかもしれませんが……。まずは、気にせず、会社に残る努力をしてください。
この種の発言は、あくまでも遠回しの発言です。正式な退職勧奨なら、会社の社長などが関与し、適切な方法で行われるでしょう。
個室で、退職の時期や、金銭面の処遇など、しっかり話し合って決めるのが通例です(というのも、会社からすると、丁寧に進めないと不当解雇を争われるおそれがあるからです)。
なので、遠回しな発言は、必ずしも会社全体の決定に基づく発言でない可能性も十分あります。遠回しに言われているだけならば、まだ真に受ける必要はありません。上司の個人的な感情に基づくものなら、当然辞める必要はありません。
ただ、会社の決定で、あえて遠回しに辞めろと言ってきていることもあります。ブラック企業にありがちな辞めさせ方です。
しかし、精神的に追い詰めて、自主退職に追い込むのは、理不尽であり違法です。会社の策略だとわかったら、戦わなければなりません。労働者個人で会社と戦うのが難しいとき、弁護士のサポートが必須です。
「労働問題に強い弁護士の選び方」の解説
遠回しに辞めろと言われた時の対処法
遠回しに辞めろと言われたときの対処法について、解説します。
「遠回しに辞めろと言われても辞める必要はない」という原則を、頭で理解しても、いざ発言に晒されると不安になってしまいます。対処法が不適切だと、会社に付け入る隙を与えます。
発言の真意を理解する
遠回しにやめろと言われた場合の対処法で、最も大切なのは、真意を理解すること。「本音と建前」という言葉があります。発言はすべて真意とは限らず、遠回しなら特にそうです。
「辞めろ」という発言を、そのまま受け取るべきでないケースもあります。上司や、まして社長から言われれば、本気にしてしまうかもしれません。思い込みが悪い方向に進めば、ストレスが大きくなってしまいます。
会社の決定事項か確認する
発言の意図を確認するにあたり大切なのは、会社としての判断かどうか、という点。
発言が、会社としての判断の結果なら、それは解雇という意味の可能性もあります。しかし、上司個人の判断による発言だったり、嫌味に過ぎないケースもあります。会社の決定事項でない限り、気にする必要はありません。会社を辞めなければならないこともなく、むしろ違法なハラスメントとして争うべきでしょう。
「会社から呼び出しを受けたときの対策」の解説
解雇かどうか確認する
会社の判断だと確認できたら次に、「辞めろ」というのが文字通り解雇の意味か、確認します。解雇とは、会社による一方的な労働契約の解約のことを指します。
会社の決定だとしても、上司が過大に表現している可能性もあります。遠回しで曖昧だと、誤って伝わるおそれもあるのです。本当に解雇ならば、遠回しに言うのでなく、解雇通知書を交付するのが正式です。解雇ではなく退職勧奨だという場合もあります。その場合、辞めたくないならば、拒否しなければなりません。
なお、いきなり解雇するのは不当解雇の可能性もあるため、不当解雇だと疑われるなら速やかに弁護士に相談すべきです。
「不当解雇に強い弁護士への相談方法」の解説
はっきりクビと断定されるまで無視する
発言の真意が理解でき、クビでないなら、気にしないでおきましょう。会社組織といえど、価値観は多様で、全員に好かれるのは難しいことです。
遠回しに辞めろと言われても、その人に嫌われているだけで、会社には残れることもあります。会社からはっきりクビと断言されなければ、まだ社員として価値があるのでしょう。
この際、突然休む、無断欠勤するということは避けましょう。無断欠勤すると、結果的に会社から解雇されやすくなってしまうからです。本当は辞めなくても済んだのに、遠回しの発言を気にするあまり、リスクを拡大するのは避けるべきです。
「無断欠勤を理由とする解雇」の解説
証拠を集めておく
とはいえ、遠回しに辞めろと言われると、やはり心が痛みます。発言の程度や態様によっては、日常生活に支障がでるおそれもあります。
したがって、繰り返される場合は、証拠を集めておきましょう。上司の独断で、辞めさせようと嫌がらせされているなら、会社に相談しましょう。このときにも、信じてもらうには証拠が重要です。発言を証拠に残すには、ボイスレコーダーでの録音の方法が有効です。
発言のニュアンスや態様は、録音でないとうまく伝わりません。遠回しの発言ほど、録音による証拠の重要度は上がります。
「パワハラの録音」の解説
遠回しに辞めろと言うのはパワハラの可能性あり
遠回しに辞めろと言うのはパワハラの可能性があります。「遠回し」に言うという点が、嫌がらせ的な要素があるからです。
パワハラは、優越的な地位に基づき、業務の適正な範囲を超えて行われるもの。遠回しに辞めろと発言することが精神的苦痛につながるのは本解説でも説明のとおりです。何度もしつこく言われたり、強迫まがいの暴言だったりすれば、パワハラの要件を満たします。
そして、遠回しに辞めろという発言は、上司という立場から辞職を暗に促す行為。会社における上位の立場にいる人からの言葉だと、遠回しでも気になるでしょう。優越的な地位に基づいて行われるのは明らかです。
たとえ、退職を促すのが会社の決定でも、言い方によっては嫌がらせになります。発言によって、精神的な苦痛を受けたなら、その違法性をしっかりと争うべきです。
辞めろ、と明確に断言されるより、負担が少ないかもしれません。しかし一方、遠回しのほうが、被害に気付かず、知らないうちにストレスを蓄積してしまいます。弁護士に相談すれば、精神的負担は軽減でき、損害賠償請求も可能です。
「パワハラの相談先」の解説
まとめ
今回は、遠回しに辞めろといわれたケースの対処法を解説しました。
遠回しに辞めろという発言は、それ自体でパワハラの可能性があります。少なくとも、従って辞めたら、不利になってしまいます。社長や上司から、遠回しに言われる嫌がらせには、素直に従う必要はありません。辞めてしまってから悔やんでも、もはや手遅れです。
まずは、発言の真意を確かめてから、慎重に対応すべきです。その際、誰の判断なのか、会社としての決定なのか、発言者や会社に確認すべきです。
クビを恐れ、居心地の悪いなか仕事を続けるのは苦痛でしょう。万が一、不当解雇される危険も考慮し、証拠をしっかり集めておく必要があります。
- 遠回しに辞めろと言われても、おとなしく辞めてはいけない
- 遠回しの発言はすべて、その真意を確認してから慎重に対応すべき
- 遠回しに辞めろと言うのは解雇やパワハラなど違法の疑いがあり、録音して証拠を残す
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