タイムカードを勝手に押されるのは違法！対策4つを解説します

今回は、タイムカードを勝手に押される問題行為への対応策を解説します。

まだ働いているのに、タイムカードを勝手に押されることがあります。勝手に押されていることに気付いたケースはもちろん、後からタイムカードを確認してはじめて、勝手に押されていたと知る最悪のケースもあります。

計算したかのようにタイムカードをぴったりに切られるといった被害の相談を受けることがありますが、勝手に打刻されている可能性があります。特に、飲食店や小売店で働くアルバイトやパートによくある労働問題です。タイムカードは本来、会社が労働時間を把握する義務を果たすためのツールであり、労働者自身が押すもの。勝手に押すことが違法なのは明らかです。

タイムカードさえ勝手に切ってしまえば「労働時間は把握していたが、残業はなかった」として、残業代を払わないブラック企業の主張を押し通す証拠作りに使われてしまいます。勝手にタイムカードを押される行為は、断固として拒否すべきです。

タイムカードは、いつ、誰が押すのが正しいのか

まず、タイムカードが勝手に押されるのが間違っていて、違法だということを知るためには、そもそも「タイムカードはいつ、誰が押すのが正しいのか」を知る必要があります。

タイムカードは、労働時間の把握のために押すもので、実労働時間を正確に反映する必要があります。そのため、タイムカードを押すのは「実際に労働を開始し、終了するタイミング」であり、そのことを正確に示すためには「労働者自身」が押すのが基本です。

このことを理解すれば、「タイムカードを勝手に押される」ケースが違法だとわかります。

以上のケースはいずれも、働いている時間なのに、タイムカード上には労働時間として反映されていない時間が存在してしまっています。そして、これらの時間を足し合わせ、「1日8時間、1週40時間」の法定労働時間を超えて働いていたなら、労働基準法37条に基づいて割増賃金（残業代）の支払いが義務となっています。

タイムカードが設置されている理由は、会社が、労働時間を把握する法的な義務を負っているからです。この義務を果たすのは、必ずしもタイムカードでないといけないわけではないですが、目視の方法によるチェックは不正確になったり、常に監視しておけなかったりするため、タイムカードを用意するのが一般的になっています。なお、本解説の通り、タイムカードを勝手に押されるのは違法ですが、どのような方法であれ、タイムカードが実労働時間と異なってしまうなら違法です。

タイムカードを勝手に押されるときの対応

タイムカードを勝手に押されることに気づいたら、労働者側がどう対応したらよいかを解説します。

タイムカードを勝手に押されたら、それ以上仕事しない

タイムカードに記載された労働時間分しか、残業代、給料をもらえないのが基本。タイムカードに書かれた始業・終業の間以外は、労働していないことになってしまいます。

タイムカードを勝手に押してくる会社の意図は、つまりは「残業代は払わないが、働け」ということです。そこで、タイムカードが切られた時点で仕事を止めてしまえば、「残業代を払わないならば働かない」という労働者側の意思を明確に示すことができます。

逆に言えば、タイムカードを勝手に押してくるような上司、会社のもとではそれ以上の奉仕はボランティアになってしまいます。給料がもらえないのに働く必要はないといえるでしょう。したがって、タイムカードを切られたら、仕事をやめて、それ以上は働かないのが有効な手です。

タイムカードを勝手に押された後も仕事していた証拠を残す

タイムカードを切られた後は仕事しないのが理想です。しかし実際は、来客があって接客しなければならなかったり、残務が残っていたりと、すぐに仕事をストップするのは難しいケースも多いもの。このようなときは、タイムカードを勝手に押された後も仕事をしていた証拠を残しておいてください。タイムカードを切られた後、いつまで働いていたかが全くわからないと、残業時間の証明ができず、残業代請求で不利な結論となってしまいます。

「タイムカードを勝手に押される」問題に対抗するには、労働時間を把握し、労働者側が証拠を残す努力をすることによって、会社の想定する以上の残業代を請求することが重要です。

タイムカードを勝手に押した社員の処分を求める

労働者の実労働時間を把握するのは会社の義務ですが、その義務を実際に遂行するのは、管理職を含めた上司の役割です。それにもかかわらず、タイムカードを勝手に押す行為には、責任者の立場として不適切な行為に違いありません。

会社ぐるみでタイムカードを勝手に押していたケースは別として、上司や店長などが自分だけの勝手な判断でタイムカードを押してくるとき、会社に報告し、処分を求めるのがよいでしょう。会社が問題に気付けば、厳しく注意したり、悪質なケースでは懲戒処分や解雇といった厳しい処分を下したりすることで、労働者の残業代請求する権利を守ってくれることが期待できます。

このように悪質なブラック上司、ワンマン社長のもとでは、暴言や暴力といったパワハラが横行していることも多いものです。そのため、残業代請求の問題とともに、パワハラについてもあわせて相談し、対応されなければ慰謝料請求をするといった手が有効です。

未払いの残業代を請求する

タイムカードを勝手に押した社員をかばう会社には、残業代請求によって対抗するしかありません。会社ぐるみの不正だったと明らかになった場合にも同様です。

このとき、タイムカードを勝手に切られた時間は、労働していないこととして計算されていますが、実際には働いていたなら、残業代の未払いが発生している可能性が高いです。タイムカードがなく、会社が労働時間を把握する義務を怠っていたとしても、残業代はなくなりません。タイムカードがなくても終業時刻後に働いた分について、残業代をもらえます。

事前の準備が間に合わず、残業代の証拠がないとき、労働者の作成したメモも証拠になります。「タイムカードを勝手に押される」問題に対抗するため、過去の資料を検討してみてください。

バイトでも残業代は発生する

「タイムカードを勝手に押される」という労働問題が起こりがちなのが、飲食店や小売店などのバイトのケース。バイトだということを理由に残業代請求をあきらめ、泣き寝入りしている方も多いですが、「バイトでも残業代は発生する」ことをよく理解してください。

バイトの場合、始業・終業が決められ、決まった時間には仕事を終える人が多いでしょう。しかし、実際には決められた時間よりも早く、タイムカードが勝手に押されていたとしたら、本来ならもらえるはずの残業代や給料が、不当に搾取されていることを意味します。

残業代が請求できるかどうかは、雇用形態にはよりません。そのため、バイトだろうが正社員だろうが、所定労働時間を超えて働けば、残業代請求できます。バイトでも、タイムカードを勝手に切られたら違法なのは当然。自分の労働時間の記録をしっかりと確保して、残業代請求で対抗しましょう。

まとめ

今回は、飲食店や小売店など、店舗ビジネスで働く労働者にありがちな、「タイムカードを勝手に押されてしまう」問題について、どのように対応したらよいか解説しました。

店長や上司が、常に監督しているとは限らず、アルバイトしかいない時間帯もあるでしょう。タイムカードを切ってしまうという勝手な行動を放置しておくと、あなたの働きぶりが正しく会社に伝わらなくなってしまいます。誤った労働時間の管理は、残業代の未払いという違法に繋がりますから、そのままにしておいてはいけません。

タイムカードを勝手に押されるとき、残業代に未払いがあり、損しているといわざるをえません。徹底的に残業代請求をするためにも、ぜひ一度、弁護士にご相談ください。