試用期間は、会社が労働者の能力、適性を判断するのに設けられた期間。
ただ、労働者としても、会社を選定するのに利用してよいのです。
その結果、使用期間で、むしろ労働者側から、自主的に退職したくなるケースもあります。
試用期間のトラブルで最も多いのが、期間満了による本採用拒否・解雇の問題。
しかし労働者といえど、ブラック企業と判明したら本採用されたいとも思わないでしょう。
転職は一般化し、1つの会社にこだわる必要もありません。

入社時に思い描いた理想と違った

ブラック企業だと見抜けなかった
試用期間中でも、本採用後の同じく、退職する自由が労働者にはあります。
「早すぎる」「我慢が足りない」と批判されても、会社の責任なら堂々と辞めるべき。
あわせて、退職を余儀なくされた点につき、責任追及も可能です。
今回は、試用期間中の自主退職で、注意すべきポイントを労働問題に強い弁護士が解説します。
- 試用期間中でも、退職することは労働者の自由であり、会社は拒否できない
- 求人詐欺などがあるブラック企業は、本採用される価値すらなく速やかに退職すべき
- 試用期間中に退職するなら、被害を軽減するため権利を行使してから辞める
\ 「今すぐ」相談予約はコチラ/
【退職とは】
【退職時の注意点】
【退職できないとき】
【退職金について】
試用期間中でも退職できる

試用期間は、主に、会社のためにあるものと思われがちです。
「会社が労働者を試し、合格した場合には本採用する」といったイメージです。
しかし、試用期間は、「解約権留保付労働契約」といわれ、すでに労働契約が結ばれています。
つまり、単なる「お試し期間」ではないのです。
労働者側でも、試用期間中も労働法の保護を受けられ、正当な権利を保障されます。
このことは、本採用後の正社員と、なにも変わるところはありません。
試用期間は、正社員としての本採用のための準備期間。
このタイミングで、会社から本採用拒否や不当解雇すると、トラブルに発展します。
しかし、これと逆に、労働者側の意思で、労働契約を解約するのも自由です。
労働者は、仕事を自由に選べる権利があり、試用期間であっても退職の自由があるからです。
会社を辞めたくても辞めさせてもらえない時の対応は、次に解説します。

試用期間中でも退職すべきケースとは

試用期間は、できるだけ努力し、適性を示し、本採用されることを望む方が多いでしょう。
しかし、なかには、「本採用される価値もない会社」もあります。
入社後に、ブラック企業だったと判明したなら、できるだけ早く退職すべき。
まだ試用期間中だったとしても、速やかに辞めるべきケースだといえます。
求人詐欺があった場合
入社後に、最も早く「ブラック企業だ」と気付けるのが、求人詐欺のケース。
求人詐欺とは、採用時に示された労働条件が、実態と全く異なることです。
求人詐欺でも「給料が少ない」「労働時間が長い」など、悪質なケースは試用期間にわかります。
ただ、すべての求人詐欺が、試用期間に気づけるとは限りません。
試用期間は「お客様待遇」とし、本採用した後で給料を減らす巧妙な例もあります。
長時間労働で酷使された場合
ブラック企業は、長時間労働で、労働者を酷使します。
さらに、働いた時間に見合った残業代を払うことはありません。
このような違法な扱いは、試用期間中にも気付くことができるでしょう。
当然ながら、労働者に配慮のないブラック企業ですから、試用期間中にも退職すべきです。
残業代がもらえず、休日もとれないような会社は、労働基準法に違反しています。
退職するときには、未払いとなっていた残業代を請求し、少しでも被害を回復しておきましょう。
残業代の正しい計算方法は、次の解説をご覧ください。
社長や上司からパワハラされた場合
新入社員は、職場でのいじめの対象となることがあります。
入社直後から、社長や上司にハラスメントされるようでは、試用期間中に速やかに退職すべき。
パワハラはもちろん、セクハラの対象となるケースも同じことです。
ハラスメントが当たり前な会社だと、試用期間における教育に名を借りたパワハラもあります。
しかし、厳しい指導や教育と、パワハラとは、その目的・手段の両面で区別すべきです。
「根性論」が浸透し、試用期間からいじめられたら、退職を検討すべき会社です。
パワハラと指導の違いは、次の解説をご覧ください。
やりたい仕事ができない場合
以上の例は、あきらかにブラック企業で、すぐ逃げるべきケース。
しかし、それだけでなく、やりたい仕事ができない場合にも、早めに辞めたほうがよいでしょう。
いざ働き始めたら、採用で説明された仕事を任せてもらえない、イメージと違うこともあります。
試用期間でアピールし、長く貢献しても、結局、やりたい仕事を担当できない可能性も高いです。
良い会社なら、試用期間ほど、多様な業務を経験させてくれるはずです。
中途採用の場合には特に、試用期間といえど、即戦力のはず。
説明された業務と異なるならば、試用期間中に退職を検討したほうがよいでしょう。
ヘッドハンティングによる転職の注意点も、参考にしてください。

試用期間中の退職のタイミングは「2週間後」

試用期間中の退職も、本採用をされた後の退職と同じルールが適用されます。
そのため、退職することは、労働者の自由であり、権利。
会社は妨げることはできませんから、同意や承諾は不要です。
辞めたいと希望する労働者を、退職させずに働かせるのは、試用期間中といえど不可能です。
ただし、労働者側でも、思い立ったらすぐ、即日退職できるわけではありません。
試用期間中の退職のタイミングには、民法627条1項のルールが適用されます。
つまり、意思表示をしてから、2週間が経過した時点で、退職の効果が生じるのです。
民法627条1項
当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合において、雇用は、解約の申入れの日から2週間を経過することによって終了する。
民法(e-Gov法令検索)
なお、会社によっては、これより労働者に厳しい決まりのあるところもあります。
就業規則で「退職日の1ヶ月前に予告する」とする例がそれです。
あまりに労働者に厳しい縛りなら、公序良俗(民法90条)に反して無効の可能性もあります。
ただし、円満退職したいなら、就業規則のルールをできるだけ守って退職するのがよいでしょう。
試用期間は、3〜6ヶ月など、期間が限られている場合が多いです。
この期間内に、予告を満たすには、できるだけ早く、退職の意思を会社に伝えるのが大切です。
退職届の書き方、出し方は、次の解説をご覧ください。

試用期間中の退職の意思表示の方法

試用期間中に退職の意思表示をする、正しい方法について解説します。
前章のとおり、退職を希望する日の2週間前までに、意思を伝えることが大切。
きちんと伝えておけば、試用期間中であっても、その後と同じく退職はできます。
試用期間中の退職の伝え方
試用期間中も退職はできますが、その伝え方は、他のタイミングにもまして注意を要します。
円満退職を希望するならば、無用な争いの火種となるような伝え方は避けましょう。
会社にあきらめさせ、強い引き留めにあわないために理由をしっかり説明します。
このとき、会社の責任だとはとらえられない伝え方がお勧めです。
例えば、試用期間中の退職理由として伝えるべき事情は、次のものです。
- 入社前の会社のイメージと違った
- 実際に仕事をしてみたら、自分には合わないと思った
- 御社で活躍し続けられるイメージがわかない
本音は、会社のせいだと言いたいところでしょう。
しかし、上記のように伝えれば、労働者側の理由として伝わり、引き留めを回避できます。
できるだけ、個別面談を行い、他の社員に影響を与えないよう配慮しましょう。
退職届と退職願の違いは、次に解説します。
退職届を内容証明で送る
退職届を出せば、その意思表示を証拠に残せます。
試用期間中だと、入社したばかりでしょうが、遠慮はいりません。
まずは口頭で伝え、円満に進みそうなら、手渡しで退職届を出しましょう。
しかし、退職を承諾してもらえなそうなら、内容証明で出し、到達日時も証拠化すべきです。
退職届の提出先がわからないときは、会社代表者宛てに郵送するのが適切です。
試用期間中の退職の場合、退職理由は「一身上の都合」と書くのがよいでしょう。
いわゆる「自己都合退職」となります。
退職届の書き方、出し方は、次の解説をご覧ください。
退職に必要な手続を行う
退職届によって、試用期間中の退職の意思を明らかにしたら、退職に必要な手続きを行います。
必要な退職手続きは、会社によって異なることもあるので、指示に従って進めます。
試用期間中であるとはいえ、すでに会社に雇用されています。
なので、健康保険や年金、雇用保険など、退職手続きを要します。
詳しくは、退職の意思表示をした後で、人事部や総務部などに確認をしてください。
失業保険をもらう条件と、手続きの流れは、次に解説します。

試用期間で退職するリスクと、デメリットを回避する方法

最後に、試用期間で退職するとき、リスク、デメリットを小さく抑える対策を解説します。
試用期間中の退職も、まったくリスクがないわけではありません。
本当なら、すぐ退職せざるをえない会社なら、入社前に見抜くべきでした。
入社後に退職するなら、早い方がよいですが、試用期間中に決断できてもデメリットはあります。
できれば採用段階で、ミスマッチの生じないように慎重に進めましょう。
ブラック企業でないかは、入社前に納得いくまで調べてください。
未払いの給料、残業代を請求する
試用期間中に退職するときも、給料は払われます。
入社まもなくも退職だと、「まだ貢献できていない」と感じる方もいるかもしれません。
しかし、給料や残業代は、働いた時間の対価として払われるもの。
試用期間で能力が発展途上でも、努力して働いたなら、給料、残業代をもらうべきです。
休日出勤した場合の休日手当、深夜労働したときの深夜手当も同じくです。
在職中に払われない場合、退職後でも残業代の時効(3年)が経過するまで請求できます。
未払いの給料を請求する方法は、次に解説します。
「解雇する」という脅しに屈しない
試用期間中や、期間満了時に、解雇されてトラブルになることがあります。
また、試用期間満了により、本採用せずに会社を追い出す「本採用拒否」も問題です。
これらはいずれも解雇と同視され、厳しく制限されています。
つまり、正当な理由のない解雇、本採用拒否は、違法な「不当解雇」として無効です。
試用期間中に退職しようとするとき、会社から「解雇する」と脅されることがあります。
しかし、その解雇は、不当な可能性の高く、脅しに屈してはなりません。
「イメージが違った」「社風に合わない」といった理由は、あくまで労働者側の事情。
労働者の退職に納得がいかないからといって、会社が解雇してよいいわれはありません。
転職への悪影響を減らす
一般に、試用期間は3ヶ月〜6ヶ月が相場。
なので、試用期間で退職するというのは、入社から1年も満たず退職することを意味します。
日本の長期雇用慣行のもとでは、「長く働くこと」が褒められる傾向にあります。
試用期間で退職したのが明らかになると、転職で「問題社員」扱いされるリスクがあります。
「前職で、トラブルがあったのではないか」とも邪推されかねません。
再就職の悪影響としないために、試用期間で退職するなら、その理由を証拠化する必要があります。
退職届に、退職理由を書いたり、会社とのやりとりを保存しておいたりといった努力をしましょう。
やむをえないミスマッチだったと説明できれば、転職での不利を避けられます。
労働問題に強い弁護士の選び方は、次の解説をご覧ください。

まとめ

今回は、入社して間もなく退職する労働者に向けた解説でした。
試用期間中に、退職を余儀なくされるとき、辛い気持ちでいっぱいでしょう。
試用期間中に自主退職するとき、リスクやデメリットは極力回避したいものです。
試用期間といえど、退職は労働者の自由。
ただ、できれば適切な方法で、円満な退職を目指すべきです。
試用期間での退職が、転職に悪影響になったり、再就職を失敗したりせぬよう、慎重に検討しましょう。
ブラック企業に入社してしまった方は、ぜひ弁護士に相談ください。
試用期間だからといって、退職をためらう必要はありません。
- 試用期間中でも、退職することは労働者の自由であり、会社は拒否できない
- 求人詐欺などがあるブラック企業は、本採用される価値すらなく速やかに退職すべき
- 試用期間中に退職するなら、被害を軽減するため権利を行使してから辞める
\ 「今すぐ」相談予約はコチラ/
【退職とは】
【退職時の注意点】
【退職できないとき】
【退職金について】