秘書として働く女性のなかには、セクハラに悩む労働者が多くいます。
残念なことに、秘書という業務の性質上、セクハラが起こりやすい状況にあるからです。
社長秘書だと特に、社長と一緒にいる時間が長くなり、セクハラを受けがち。
社長のセクハラだと、秘書の立場では断りづらく、泣き寝入りになる例も多いです。
社長秘書でなく、役員秘書などでも、セクハラの加害者は自ずと社内の地位ある人になります。
強く拒絶すれば、社内の雰囲気が悪くなったり、働き続けられなかったりするのも心配でしょう。
今回は、秘書が受けがちな違法なセクハラとその対処法を、労働問題に強い弁護士が解説します。
- 秘書側の理由、社長側の理由、その他環境などで、社長秘書はセクハラされやすい
- 秘書も1人の労働者として保護されるから、セクハラを耐える必要はない
- 秘書はセクハラのダメージが大きくなりがちなのを理解し、不快に感じたらすぐ対処する
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【セクハラの基本】
【セクハラ被害者の相談】
【セクハラ加害者の相談】
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- セクハラの始末書の書き方
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- 身に覚えのないセクハラで懲戒処分
- セクハラ加害者の退職勧奨
- セクハラで不当解雇されたときの対応
- セクハラで懲戒解雇されたときの対応
- セクハラの示談
【さまざまなセクハラのケース】
秘書が受けやすいセクハラ被害
![](https://roudou-bengoshi.com/wp-content/uploads/2017/09/josei-tsurai-1.jpg)
まず、秘書が受けやすいセクハラ被害とは、具体的にどんなものか解説します。
性的な発言、身体的な特徴への言及など、一般にセクハラにあたるなら、慰謝料請求の対象です。
このことは、立場が秘書でもまったく変わりません。
たとえ褒めるような口調だったり、セクハラの意図がなかったりしても同じです。
業務中に身体を触られる
秘書が被害を受けるセクハラで、最もよくある例が、業務中に身体を触られるケースです。
業務の報告で近づいたら尻や腰に触れるケースすれ違いざまに胸を触られるケースなど、セクハラの態様やタイミングはそれぞれですが、「秘書だから」といって身体への接触が正当化されるいわれはありません。
秘書は、どうしても距離感が近くなるため、こんなセクハラ被害を受けがち。
勇気をもって注意しても、その反応を「喜んでいる」と誤解されエスカレートするケースもあります。
容姿で選ばれる
秘書は、容姿をみて採用されがちですが、これもセクハラの温床です。
能力をまったく見ず、容姿のみで採用するのはセクハラ被害なのです。
本来、労働者は、能力や適性で選ぶべきだからです。
容姿のみで判断しただけでなく、そのことを秘書本人に伝えるセクハラもあります。
「顔がタイプだから秘書にした」と発言すれば性的意図を感じさせ、セクハラなのは当然。
容姿で秘書を選ぶ社長のセクハラに、次の例があります。
- 容姿端麗でないと秘書に採用されない
- 「胸の大きい順に採用した」と発言する
- 社長や役員の好みの美人ばかり雇用する
- 社長好みの服装をしなければならない
- 露出の高い制服を強要される
- 社長のタイプのAV女優に似てるといわれる
これら秘書へのセクハラの根底には、男性優位の発想があります。
「売上に貢献しない」「雇ってやっている」といった考えは誤りであり、問題があります。
職場によくある男女差別は、次に解説しています。
性の対象として見られる
そして、容姿で選ばれる秘書ほど、性の対象として見られます。
容姿で選ばれた秘書は、次のようなセクハラ要求を受けがちです。
- 「疲れたから、マッサージをお願いしたい」
- 「寝付きが悪いから、出張では同じベッドで寝てほしい」
- 「○○ちゃんの顔を見ると仕事のやる気が湧く」
- 「秘書なら、社長と旅行にいくのが当たり前」
こんなセクハラ要求は、社長が秘書を性の対象として見ていなければ出てきません。
にもかかわらず、秘書の立場を考えるとノーと言えない方も。
秘書の業務は、社長を働きやすくすることと考え、セクハラ要求を受け入れてしまう人もいます。
断ると報復されるかもしれないのも怖いでしょう。
クビにされる危険はもちろん、気まずさから仕事しにくくなるのを恐れる秘書の方もいます。
性的なことに言及すれば、セクハラ発言の可能性があります。
日常生活の世話をさせられる
日常生活の世話をするよう指示命令されるセクハラも、秘書がよく被害に遭います。
例えば、次のようなケース。
- 私生活で食事の準備するよう命じられる
- 着替えを手伝わされる
- ペットの世話をさせられる
- 社長のトイレにまで付き添わなければならない
- 社長が休みをとらないと、秘書も休めない
秘書になる方の多くは、気配りができるタイプの人です。
社長からの命令に、「できることなら」と従う秘書ほど、セクハラの犠牲になります。
しかし、秘書は、あくまで業務の関係で、日常への干渉は控えなければなりません。
秘書の仕事は、社長に生産性の高い仕事をしてもらうサポートに過ぎません。
日常生活の世話は、秘書本来の業務には、まったく関係しません。
「プライベートをさらけ出しているのは社長の信頼の証拠」という反論を聞くこともあります。
秘書がいうならわかりますが、社長が押し付けることではありません。
業務に関係しない指示命令が不快なら、従う必要はありません。
秘書はあくまで労働者であり、恋人や妻、世話役や介護役ではありません。
違法な業務命令の断り方は、残業拒否についての次の解説が参考になります。
セクハラを受けた秘書の対処法
![](https://roudou-bengoshi.com/wp-content/uploads/2018/04/josei-nayamu-1.jpg)
以下では、秘書がセクハラを受けた場合の有効な対処法を解説します。
セクハラを受けたら、何もせず放置しておくのは危険です。
精神的なストレスで、体調不良になってしまいかねません。
当時は大丈夫だと感じても、自分の気持ちに蓋をしてはいけません。
秘書は弱い立場で、我慢するほど心に深い傷が残ります。
セクハラをやり過ごすのでなく、まず周囲に相談すべきで、自らアクションを取るのが重要です。
拒否の意思を明確にする
穏便に事を収めようとも、セクハラ社長との関係は、再構築が難しいもの。
秘書が嫌がっていても社長が勘違いし、うまくあしらえないケースは多々あります。
やんわりと拒否するだけでは、セクハラが終了するとは限りません。
秘書に、執拗に性的言動を繰り返す「偉い人」は多いものです。
それほどまでに、社長と秘書の上下関係には、大きな差があります。
泣き寝入りをするのは絶対にやめ、強く「やめてください」と伝えるのが大切。
社長の行為でも、セクハラならはっきりと拒否し、違法だと認識させる必要があります。
セクハラの証拠を残す
拒否の意思を明確にしても、セクハラがやまないケースもあるでしょう。
この場合、証拠もないままセクハラ被害を訴えても、周囲の協力が得られません。
社長秘書だと、他の社員も触れづらいことがあります。
第三者の目からも明確な証拠は、退職にせよ訴えるにせよ、有利な条件を得る助けになります。
ですので、セクハラの証拠を残すのが重要な対処法となります。。
具体的には、秘書の立場で、社長からされたこと、言われたことを記録してください。
セクハラにより受けた精神的苦痛は、病院の診断書をとって証拠化しましょう。
どんなにあなたがセクハラだと主張しようと、証拠がなければ無意味です。
証拠こそ、裁判における切り札ですから、十分な証拠収集が必要です。
弁護士に相談する
社長秘書で、セクハラの加害者が社長だと、社内での解決は難しいでしょう。
加害者が社長なだけに、目撃していた社員も保身に走り、協力を得られないからです。
このとき、社外での解決を図るのがよいでしょう。
弁護士が内容証明で指摘すれば、訴訟手続に進む可能性もあるので、会社の真摯な対応を望めます。
さらに、訴訟などで社長によるセクハラが公になれば、会社自体の信用問題。
企業の信用が低下するリスクが高ければ、非協力的な社員も対応してくれる可能性が上がります。
秘書のセクハラは、弁護士に相談できます。
労働問題に強い弁護士の選び方は、次の解説をご覧ください。
![](https://roudou-bengoshi.com/wp-content/uploads/2016/08/bengoshi-point-300x169.jpg)
秘書の受けるセクハラに特有の注意点
![](https://roudou-bengoshi.com/wp-content/uploads/2018/04/red-card.jpg)
最後に、秘書の受けるセクハラに特有の注意点を解説します。
社長は他の役員とは異なり、会社のトップ。
その社長につく秘書のセクハラには、複雑な労働問題が潜んでいます。
トップには逆らえない
社長のセクハラは、社内での解決が困難です。
社長は通常の社員とは異なる業務スケジュールで、秘書もそれに合わせます。
そのため、社長が秘書にセクハラしても、周囲が気づかないことがあります。
秘書が被害を訴えていても、社員は自己保身に走りがちで、直属の上司も、相手が社長だと文句がいえません。
こうして、社長のセクハラ行為に注意できる人もいない事態が生じます。
また、相談できる人がいないため、味方もいない、団結して行動することができない場合も。
社長に間違いを認めさせるのは難しい
たとえセクハラを明確に拒否しても、たった一人の指摘では無視されるおそれあり。
「これくらい普通だ」と勘違いされ、あなたがおかしいとされる可能性もあります。
他の社員からも指摘してもらい、自分から間違いを認めさせるのが重要です。
しかし、社長は会社のトップであり、他の社員からの指摘を受けません。
ブラックな会社ほど、社長のわがままは通ってしまいます。
結果として、「秘書へのセクハラではない」という間違いを、社長に認めさせることはできません。
秘書からの異動は難しい
セクハラ被害を受けても会社で働くケースで、異動を希望するという対処法があります。
しかし、社長秘書で採用された場合には、異動が困難なことがあります。
というのも、秘書の業務は、サポートがメインで、社長の指揮命令で働いています。
このように業務内容が限定されているため、他の職種への異動は難しいでしょう。
仮に異動できても、他の社員からは「元社長秘書」として腫れ物扱いされかねません。
違法な異動について、次の解説をご覧ください。
![](https://roudou-bengoshi.com/wp-content/uploads/2022/07/aruku-300x169.jpg)
まとめ
![弁護士法人浅野総合法律事務所](https://roudou-bengoshi.com/wp-content/uploads/2022/03/asanosougou-zentai.jpg)
今回は、秘書の受けやすいセクハラ被害について解説しました。
秘書のセクハラ被害は、通常のセクハラと共通の点もありますが、より難しい問題とお考えください。
業務時間内だけでなく、時間外にも、セクハラ被害が及ぶ場合が多くあります。
秘書のセクハラ被害は、社長や役員といった上位者との関係で生じます。
ハラスメントは地位の上下を利用しますが、秘書の立場で起こるのはその最たる例。
身体を触られるといった軽度のセクハラでも、日常的に繰り返されれば大きな苦痛になります。
しかも、セクハラに遭遇する機会の多い秘書は、常に緊張を強いられます。
悪化して体調を崩したり、業務だけでなく生活にも支障が出たりする前に、弁護士に相談ください。
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