労災

新型コロナウイルスによる「自宅待機命令」でも給料はもらえます!

お問い合わせ

運営元:弁護士法人浅野総合法律事務所

新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、会社から自宅待機を命じられている方も多いのではないでしょうか。特に接客業や営業職など、テレワーク・在宅勤務などのリモートワークが性質上困難で、自宅待機を命じられるとどうしてよいかわからない労働者もいます。

緊急事態宣言にともなって休業要請の対象となっている業種など、当面の間は営業しないことが明らかな会社は「休業」でしょうが、「自宅に待機しているように」と命じられると、休みなのか休みでないのか、「会社から連絡があるのではないか」、今後どのようにしたらよいのかがわからず、不安定な気分になってしまいます。

この疑問を解決するためには、そもそも「休業」と「自宅待機」の違いを理解する必要があります。結論から申し上げると、今回解説する「自宅待機」では、新型コロナウイルスを理由とする場合であれ、給料を請求できるのが原則です。

そこで今回は、会社から新型コロナウイルスを理由に自宅待機を命じられた社員が、会社に給料を請求することができる理由などについて、弁護士が解説します。

「新型コロナウイルスと労働問題」の法律知識まとめ

「自宅待機命令」では給料は保障される

自宅待機命令とは、会社が社員におこなう業務命令の一種で、その名のとおり「自宅に待機しているように」と命じることをいいます。会社は、社員に対して業務命令をおこなう権限を雇用契約によって与えられていることから、その命令が違法・不当なものでない限り、労働者側はこれにしたがう必要があります。

雇用契約とは、労働者は会社に労務を提供し、会社はその対価として賃金を支払うことを約束する契約です。

そのなかで「自宅待機命令」とは、労務の提供ができなくなることを意味するわけですが、会社がこれを命令としておこなった場合には、労務の提供ができなくなる理由は「使用者の責に帰すべき事由」にあるため、次の民法の定めにより、会社側の給与の支払義務はなくなりません。

民法526条(債務者の危険負担等)

1. 当事者双方の責めに帰することができない事由によって債務を履行することができなくなったときは、債権者は、反対給付の履行を拒むことができる。
2. 債権者の責めに帰すべき事由によって債務を履行することができなくなったときは、債権者は、反対給付の履行を拒むことができない。この場合において、債務者は、自己の債務を免れたことによって利益を得たときは、これを債権者に償還しなければならない。

なお、自宅待機命令は、感染症拡大のおそれがある場合などだけでなく、労働者の非行を理由として懲戒処分や解雇を検討する際におこなわれることもあります。自宅待機と賃金に関する一般的な解説については、次のものをごらんください。

チェック
自宅待機命令は違法??給料は支払われる??

会社でセクハラ、パワハラ、横領などの問題行為を起こしてしまうと、会社から、「自宅待機」を命令されることがあります。 この「自宅待機」の命令は、それ自体が懲戒処分なのではなく、懲戒解雇など、より重い懲戒 ...

続きを見る

「自宅待機命令」を受けた労働者側の適切な対応

新型コロナウイルスの影響により、会社から自宅待機命令を受けてしまった場合に、どのような対応をしたらよいのかについて弁護士が解説します。

会社には、社員を健康で安全にはたらかせる「安全配慮義務」があり、自宅待機命令がその一環である場合があります。しかし会社のメリットや義務は会社が考えることですが、労働者個々人が自分の権利を守らなければなりません。そのため、労働者側でも、会社が命令をするがままに受け身であってはならず、新型コロナウイルス禍を乗り越えるために策を講じることが重要です。

在宅勤務を求める

まず、健康にはたらける方は、自宅待機命令を受けたとしても、就労することを求めるべきです。特に、会社で新型コロナウイルスの感染者がでてしまった、予防のために一斉自宅待機が必要、といった事情であっても、むしろそのような非常時だからこそ、会社を継続しつづけるためには元気な人が働き続ける必要があります。

自宅待機命令を受けたとしても、自宅でおこなえる作業がある場合には、積極的に在宅勤務を求めてください。どのような業務が自宅で可能か、現場の労働者が一番理解しているはずです。

むしろ会社のほうから在宅勤務での業務を命じられた場合には、自宅待機命令を受けている状態であったとしても給料を請求することができ、「1日8時間、1週40時間」を超えてはらたく場合には、あわせて残業代も請求できます。

賃金を請求する

自宅待機命令を受けたとしても賃金を請求することができることは、冒頭で解説しました。念のため、会社に対しても、自宅待機命令を開始する際に確認しておくことが、事後のトラブルを回避する意味でもお勧めです。

会社が、自宅待機中の給与を払ってくれない場合には、労働審判や訴訟などの法的手続きで請求することができます。

2020年4月7日より、新型コロナウイルスの影響により緊急事態宣言が出され、裁判所の業務が停滞していますが、「賃金仮払い仮処分」など、労働者保護の観点から緊急の必要性のある手続きについては、従前どおりの運用がなされています。

会社の指示にしたがう

自宅待機命令が出された後も、給料が支払ってもらえる限り、労働者であり続けることには変わりはなく、会社の指示・命令にはしたがう必要があります。

例えば、新型コロナウイルスの予防のため一定の行動制限を指示される可能性があります。新型コロナウイルスを疑わせる症状が出ていたり、家族や近しい友人に感染者が出てしまったときは、病院の検査を受けるよう命令される可能性があります。これらの命令が正当なものである限り、労働者側としてもしたがうことが必要です。

ただし、会社の業務命令が違法、不当なものである場合には、したがう必要はありません。特に、新型コロナウイルスについては多くのデマや誤情報が流れています。「何が正しいのか」「どのような考え方に従うできなのか」は、「会社に言われているから仕方なく」というだけではなく、自己責任での判断が重要となります。

【ケース別】「自宅待機命令」への対応方法

以上の、自宅待機命令を受けた労働者による一般的に正しい対応を超えて、個別のケースにおいては、特に注意しておいていただきたい対応方法があります。

そこで次に、特に注意したいケースごとに、自宅待機命令を受けた際の対応方法について弁護士が解説します。

ウイルス感染が疑われる場合の自宅待機命令

家族などに感染者が出てしまい濃厚接触者となった場合や、発熱がつづくような状況であったとしても、自身がウイルス感染して陽性となった場合でない限り、自宅待機命令中の賃金を請求することがお勧めです。

会社が、自主的な判断で社員に対して自宅待機を命じることを意味するからです。あわせて、労働基準法では、「使用者の責に帰すべき事由による休業」について平均賃金の6割以上を「休業手当」として支払うことをを義務付けています。

なお、新型コロナウイルスは指定感染症であり、り患してしまった場合の自宅待機は、無給とされても仕方ありません。

子どもがいて自宅待機が難しい場合

新型コロナウイルスを理由とする一斉休校措置がとられています。その影響で、会社から自宅待機命令を出されても、子どもが家にいるため自宅で仕事をすることは難しいという人もいあるのではないでしょうか。

このような場合でも、会社からの自宅待機命令にはしたがって出社はしない反面で、できる限りの範囲で就労を求めていくべきです。

在宅勤務が難しい場合には、シェアオフィスにおけるテレワークなど、最大限の感染予防措置をとった上でおこなえる業務を会社に具体的に提案してください。その際、これに必要となる費用負担についてもよく話し合う必要があります。

集団感染を避けるための自宅待機命令

社内に感染を疑わせる症状のある社員が出てしまったとき、集団感染を避けるために、会社が自宅待機を命じることがあります。また、そのような事態になったとき会社の業務を止めないよう、業務量の減少に応じて社員を2グループに分けて、交代で自宅待機を命じるケースがあります。

このどちらの自宅待機も、会社が自主的な判断でおこなうものであり、労働者側の得られる賃金額が減ってしまうことは妥当ではありませんから、賃金を満額請求すべきです。

なお、社内に感染を疑わせる症状のある社員がいるのに、会社の感染予防対策が十分ではなく、出社することに身の危険を感じる場合にも、同様に会社の責任により出社ができない場合と考えることができます。

感染症対策をおこなわない会社に対する労働者側の対応については、次の解説もごらんください。

チェック
感染予防の措置をとらない会社の責任と、労働者側の適切な対応

新型コロナウイルスの感染拡大の影響は甚大です。しかし、このような緊急時であっても、仕事をしなければならない労働者は多くいます。特に、スーパーマーケットや薬局、医療機関など、このような時期だからこそ最重 ...

続きを見る

海外出張者の自宅待機命令

新型コロナウイルスの影響により、海外渡航者には厳しい制限が加えられています。政府からは、帰国後2週間の自宅待機などの対策が要請されています。

海外に渡航していたことを理由として自宅待機をしなければならないとき、それが会社の業務によって命じられた「海外出張」であった場合には、その自宅待機命令の期間中も賃金が補償されるべきです。

一方で、個人的な「海外旅行」が理由であった場合には、このような時期に海外旅行をおこなったことを理由に会社から自宅待機命令を受けてしまうのはしかたなく、その間の賃金を支払ってもらうことは難しいと考えるべきです。

自主的に自宅待機を選択する場合は?

新型コロナウイルスの蔓延の状況を考えると、会社から一方的に自宅待機命令を受ける場合だけでなく、労働者側から自主的に自宅待機を選択したほうがよいケースもあります。

例えば、家族に新型コロナウイルス感染者が出て濃厚接触者と認定された場合や、高熱が何日も続くなど感染が疑われる症状が出ている場合などは、同僚にうつしてしまわないためにも、無理をして出社をせず、自主的な自宅待機を選択したほうがよいケースです。

このように、自主的に自宅待機を選択するケースでは、残念ながら、「使用者の責に帰すべき事由」による自宅待機ではないため、法律によっては給料を支払ってもらうことができません。

しかし、それでもなお、会社に自宅待機を選択する理由を伝え、給料の補償を受けることができないか、粘り強く話し合いをおこなうべきです。会社としても、上記のようなケースで、「給料を支払ってもらえないのであれば、自宅待機を選択せずに出社をするしかない」と労働者側が決断することにはデメリットやリスクが大きいはずです。

交渉の結果、給料を満額は補償してもらえなかったとしても、会社に休職制度がもうけられている場合にはその適用を受けることができないか、会社と交渉してください。会社との交渉のなかでは、考えうる選択肢のうち、できる限り「有給で」休める方法を検討してもらうようにしてください。4日以上の欠勤となった場合には、健康保険組合の傷病手当金をもらうことができます。

「労働問題」は、弁護士にお任せください!

今回は、新型コロナウイルスの感染拡大によって、会社から自宅待機命令を受けた労働者の正しい対応について解説しました。

「会社が苦しい状況だから理解してほしい」と言われることがあるかもしれません。しかし、新型コロナウイルスの影響を強く受けているのは、会社も労働者も同じことです。会社の一方的な都合による自宅待機命令によって損失をこうむってしまわないよう、賃金の請求など、必要となる権利行使を積極的におこなってください。

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に起因する労働トラブルにお悩みの方は、労働問題に強い弁護士にお気軽に法律相談ください。

「新型コロナウイルスと労働問題」の法律知識まとめ

お問い合わせ

運営元:弁護士法人浅野総合法律事務所
  • この記事を書いた人
  • 最新記事
弁護士法人浅野総合法律事務所

弁護士法人浅野総合法律事務所

弁護士法人浅野総合法律事務所(東京都中央区銀座)は、代表弁護士浅野英之(日本弁護士連合会・第一東京弁護士会所属)をはじめ弁護士5名が在籍する弁護士法人。 不当解雇、未払残業代、セクハラ、パワハラ、労災など、近年ニュースでも多く報道される労働問題について、「泣き寝入りを許さない」姿勢で、親身に法律相談をお聞きします。 「労働問題弁護士ガイド」は、弁護士法人浅野総合法律事務所が運営し、弁護士が全解説を作成する公式ホームページです。

-労災
-, ,

お問い合わせ

© 2020 労働問題の法律相談は弁護士法人浅野総合法律事務所【労働問題弁護士ガイド】