多忙な会社だと社員を集めてまとまった時間のミーティングをするのは難しく、昼休憩に「ランチミーティング」をせざるを得ないケースがあります。
しかし、多くの会社ではランチ時間はいわゆる「昼休み(昼休憩)」。つまり、法的には「労働時間」でなく「休憩時間」と扱われていることでしょう。にもかかわらずランチミーティングを設定し、参加を強制することは違法となる可能性があります。
ランチミーティングそのものが違法な場合もありますが、そうでなくても、ランチ時間分の残業代の未払いが生じ、結果として違法になるケースもあります。会社が休憩時間だとして扱ったランチの時間が、実は労働時間となっていることで、もらえるはずの残業代を損しているのです。
今回は、ランチミーティングが違法な場合と、拒否する方法、強制された時の対応などについて労働問題に強い弁護士が解説します。
- ランチミーティングの強要は、残業代未払いやパワハラなど違法のケースあり
- ランチミーティングが業務に関連したり参加が強制されたりするなら労働時間
- ランチミーティングが労働時間なのに休憩扱いされていると未払い残業代が生じる
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ランチミーティングが違法となるケース
忙しい会社では、ランチミーティングによって時間を節約しようとすることがあります。業務効率を上げて仕事をするのは労動者にとってもメリットがありますが、ランチミーティングは、やり方によっては違法となることもあります。
「パワーランチ」と称して労働者のモチベーションを上げようとする会社もあります。しかし、違法な業務命令に従う必要はなく、違法性があるなら拒否すべきです。
ランチミーティングが強制参加の場合
ランチミーティングにはメリットも多くあります。時間を節約して業務をして帰宅時間を早められたり、社員が一緒に食事をすることによって社内のコミュニケーションを円滑にしたり、業務をスムーズに進める「潤滑油」の機能もあります。
しかし、ランチミーティングの強制参加は、「休憩の自由利用の原則」に反し、違法となる可能性があります。休憩時間として与えられた時間は、労動者が自由に利用できるようにしなければならないからです。労働基準法34条は、1日の労働時間に応じて最低限必要な休憩時間がに定めており、昼休憩をミーティングに充ててしまった結果としてこれを下回る休憩しかとれないなら違法です。
- 1日の労働時間が6時間以内
休憩時間を与えなくてよい - 1日の労働時間が6時間を超え、8時間以内
休憩時間は、45分以上 - 1日の労働時間が8時間を越える
休憩時間は、1時間以上
このとき、昼休憩がランチミーティングでつぶれてしまう結果、合計してこれら最低限必要な休憩時間すらとれていないなら、労働基準法違反であり違法です。休憩を付与する義務に違反した場合には、6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金に処せられます(労働基準法119条)。
なお、ランチミーティング以外の時間に十分な休憩時間が取れているならば、必ずしも違法ではありません。
「休憩時間が短いことの違法性」の解説
ランチミーティングの強要がパワハラの場合
ランチミーティングの強要は、パワハラにあたることもあります。職場の優越的な地位を使って嫌なことを押しつけるのは、ハラスメントとなるからです。
違法なランチミーティングを断ってもなおしつこく誘われるなら、実質的には強制参加であり、パワハラにあたる可能性があります。参加しない場合に不利益を与えるのもまた、強制参加に等しいと言えます。業務時間外のプライベートな時間をミーティングで奪って精神的な負担をかけたり、ミーティング中に業務とは無関係な個人のプライベートな話題を強要するのも不適切です。
男女の関係でランチを誘われて不快なときは、セクハラではないかも検討しておいてください。
「パワハラの相談先」の解説
ランチミーティングは労働時間?休憩時間?
次に、ランチミーティングの法的な性質について解説します。
ランチミーティングが、労働基準法にいう休憩時間といえるかどうかは、次の要素によって総合的に判断する必要があります。
- ランチミーティングの内容・議題
- 業務上の必要性
- 参加の強制力
- 参加メンバー
そして、休憩時間でないならば、すなわち「労働時間」となります。
業務に関連するなら「労働時間」
休憩時間は、労働者の「休息」のために与えられます。そのため、労働者が自由に利用できるのが保証されていなければなりません。業務に関連する話がされるなら、それは仕事そのものであり、自由に利用できているとはいえません。したがって、仕事の時間と同じく給料の発生する時間で、長時間となれば残業代がもらえます。
強制参加なら「労働時間」
これに対し、労働時間とは「使用者の指揮命令下に置かれた時間」のことを指します。強制参加のランチミーティングなら、会社の命令によるものといえ、まさに「労働時間」です。強制参加のランチミーティングはもちろん、半強制、事実上の強制といったケースでも同じことです。
例えば、次のようなケースを想定してください。
- 社長とランチにいくのが慣行となっている
- パワーランチに参加しないと評価が下がる
- ランチに参加しない社員は職場いじめにあう
- ランチに参加しない社員はやる気がないといわれる
- ランチでしか仕事の大切な話が共有されない
- やむを得ずランチに参加しないときも社長の事前許可が必要
これらのケースでは、事実上断ることが難しく、強制参加と同等だと考えることができます。
「労働時間の定義」の解説
懇親目的のランチも「労働時間」になりうる
強制参加、業務目的のランチは、労働時間だと解説しました。
社員でいくランチには、懇親目的のものなど、必ずしも業務との関連性が高くはないケースもあります。しかし、参加が強制ならば、ランチミーティングと同様に労働時間となる可能性があります。
本来の業務と直接の関係がなくても同じこと。社内のコミュニケーションを深めたり、歓送迎会をしたりといったこともまた、広い意味では業務の一部に含まれると考えられるからです。なお、食事や会食の場ではハラスメントが起きやすい性質がある点にも注意してください。
「飲み会でのセクハラ」の解説
違法なランチミーティングを強制された時の対応
次に、違法なランチミーティングへの参加を強制された時、どう対応したらよいかを解説します。
休憩を取ってよいか確認する
ランチミーティングが強制参加であり、「労働時間」だと評価できる場合も、必ず違法とは限りません。というのも、昼休憩以外の時間で、労働基準法に基づく適切な休憩を与える配慮をすれば適法だから。
そこで、強制参加のランチミーティングを設定された場合には、「それ以外の時間で、いつ『休憩時間』をとってよいのか」、ランチミーティングを命令した社長や上司に確認してください。「昼休憩以外に休憩はない」といわれたら、違法の可能性が高まります。
「休憩時間を取れなかった場合の対処法」の解説
ランチミーティングを拒否する
違法なランチミーティングであることが明らかになったら、参加を拒否しましょう。業務命令とはいえ、違法ならば拒絶するのは問題ありません。違法性を理由に拒否してもなお、繰り返し指示されるなら、その会社はブラック企業でしょう。
疲弊してしまう前に、早々に退職を決断すべき状況なのかもしれません。
「裁判で勝つ方法」の解説
ランチミーティングの時間分の残業代を請求する
最後に、ランチミーティングを強制され、それが労働時間にあたるなら、残業代請求しましょう。このとき、ランチミーティングの時間も合計して「1日8時間、1週40時間」の法定労働時間を超えて働けば、残業代をもらうことができます。
多くの会社は、昼休憩をとれることを前提に、始業時刻、終業時刻を決めています。間の昼休憩がなくなってしまえば、未払い残業代が生じる可能性が高いのです。違法なランチミーティングが強要されるのは、それが無償だと思われているから。残業代請求をすることは、違法な押し付けを回避するのに非常に効果的です。
「残業代の計算方法」の解説
まとめ
今回は、参加強制のランチミーティングが違法となる可能性のあることを解説しました。違法なランチミーティングを強要されたときの対応についても理解しておいてください。
業務を円滑に進めるため、社員でランチにいくのはとても大切なこと。しかし、給料面で不当な扱いを受けぬよう、違法なランチミーティングには、残業代請求で対抗しましょう。
長時間労働のある会社だと、昼休憩がとれないと体を壊してしまいます。ランチミーティングが嫌で、拒否したい労働者は、ぜひ一度弁護士にご相談ください。
- ランチミーティングの強要は、残業代未払いやパワハラなど違法のケースあり
- ランチミーティングが業務に関連したり参加が強制されたりするなら労働時間
- ランチミーティングが労働時間なのに休憩扱いされていると未払い残業代が生じる
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