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浅野 英之
弁護士
弁護士(第一東京弁護士会所属、登録番号44844)。
東京大学法学部卒、東京大学法科大学院修了。

企業側の労働問題を扱う石嵜・山中総合法律事務所、労働者側の法律問題を扱う事務所の労働部門リーダーを経て、弁護士法人浅野総合法律事務所を設立。

不当解雇、未払残業代、セクハラ、パワハラ、労災など、注目を集める労働問題について、「泣き寝入りを許さない」姿勢で、親身に法律相談をお聞きします。

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台風を理由に会社が休みになっても給料はもらえますか?

日本では、夏から秋頃にかけて、台風の季節となります。
しばしば、台風が直撃する地域では、強い風雨で、出社もままならないことがあります。
公共交通機関がストップすれば、通勤が難しい労働者も多いでしょう。

台風直撃で、会社が休みになったとき、給料がもらえるのか、心配でしょう。
台風を理由とした休みだと、無給になってしまうのでしょうか。
台風とはいえ仕事はできそうなら、休業や欠勤扱いで給料が払われないと困ります。

ホワイトな会社だと、労働者に帰宅を命じる企業も。
このときも、果たして有給と扱われるのかどうか、不安が残ります。
とはいえ逆に、「台風でどれだけ危険でも出社しろ」というブラック企業も問題は多いです。
安全は、お金には変えられません。

今回は、台風の影響で仕事できないとき、労働法でどう扱われるのか、労働問題に強い弁護士が解説します。

この解説のポイント
  • 台風による休みは、ノーワーク・ノーペイの原則で給料をもらえないのが基本
  • 台風が理由でも「使用者の責めに帰すべき事由」があれば、6割の給料が保障される
  • 台風の危険があるのに出社を強要されたら、安全配慮義務違反の責任がある

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解説の執筆者

弁護士 浅野英之

弁護士(第一東京弁護士会所属、登録番号44844)。
東京大学法学部卒、東京大学法科大学院修了。

企業側の労働問題を扱う石嵜・山中総合法律事務所、労働者側の法律問題を扱う事務所の労働部門リーダーを経て、弁護士法人浅野総合法律事務所を設立。

不当解雇、未払残業代、セクハラ、パワハラ、労災など、注目を集める労働問題について、「泣き寝入りを許さない」姿勢で、親身に法律相談をお聞きします。

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台風による休みも、ノーワークノーペイの原則が適用される

天災地変は、労働者・会社の双方いずれの責任でもありません。
両者に「帰責事由」のない事情による休業は、ノーワーク・ノーペイの原則により判断されます。

つまり、労使どちらにも責任がないなら、原則に立ち返るということ。
その結果、労働しなかった時間分の給料は、支払われないことになります。

すると、台風による休みで仕事をしなければ、給料はもらえなくなってしまいます。

ただし、台風によって休業にした会社が、本当に責任を負わないかは、よく検討が必要です。
でないと、本来ならもらえたはずの給料を損してしまいます。
例えば、台風の程度が軽度なのに念のため仕事を休みにした場合、それは会社の判断による休み。
つまり、会社に責任あると評価できる場合もあります。

台風で仕事を休みにしたことが、会社に帰責事由なしといえるのは、例えば次のケース。

  • 台風の直撃により、家から外に出ることすらできない
  • 公共交通機関が終日ストップし、交通手段がない
  • 公共交通機関の遅れがひどく、会社にたどり着けない
  • 通勤中にケガする可能性が高く、危険がある

これに対して、多少の強風や雨なら、仕事ができる場合もあります。
交通機関も、地下鉄などは台風に強く、動き続けていることも。

このような場合には、休業を決断するなら会社の責任ですべきです。
仕事できるにもかかわらず台風を理由に休みになったなら、給料をもらうべきです。

労働トラブルの判断に迷うなら、弁護士に相談できます。

労働問題に強い弁護士の選び方は、次に解説します。

台風による休みで、休業手当をもらえるケース

労働基準法では、「使用者の責めに帰すべき事由」によって休業となった場合には、会社は労働者に対して、休業手当を払わなければならない義務を負います。
この休業手当とは、「平均賃金の6割」として計算されます。

労働基準法26条には、次のとおり定められます。

労働基準法26条

使用者の責に帰すべき事由による休業の場合においては、使用者は、休業期間中当該労働者に、その平均賃金の百分の六十以上の手当を支払わなければならない。

労働基準法(e-Gov法令検索)

そのため、会社側の都合によって休業するなら、平均賃金の6割は保障されています。
労働者として、勝手に仕事がなくなって、給料ももらえなくなるのでは困るからです。

未払いの給料の請求について、次に解説しています。

台風による休みに、有給休暇を充当されてしまったら?

会社のなかには、台風が来たら、(それほど危険でなくても)休みにしたいこともあるでしょう。

例えば、台風で客足が遠のく接客業や店舗のケースです。
また、台風なのに無理に出社させても、事実上、仕事がなかなか進まないこともあります。

反面、「休業とすれば、給料を払わなくても済む」という動機もあるようです。

悪質な会社が、休業手当の支払いを回避するため、有給休暇を充当してくることがあります。
しかし、台風による休みだからといって、有給休暇を勝手に充てることはできません。
有給休暇は、その勤続の功労に対して与えられた、労働者の権利だから
です。

権利を勝手に行使させられてしまうのは違法。
そのため、会社が、労働者に無断で、一方的に有給休暇を使わせるのは、たとえ台風という事情があってもできません。

なお、労働者が、台風の不都合を回避すべく有給休暇を申請することはできます。

例えば、次のケースでは、有給休暇を検討しましょう。

  • 他の社員は出社できるが、自分の地域は特に台風がひどい
  • 普段利用している交通機関が、台風でストップしてしまった
  • 台風で学校が休みになったので子どもの面倒をみなければならない

【ケース別】台風による休業中の給料がもらえる?もらえない?

以上が、休業と給料についての基本的な考え方です。

しかし、実際に台風が来て仕事が休みになったら、ケースに応じた検討を要します。
そこで、具体的な事例に即して、給料がもらえるのか、もらえないのかを解説します。

交通機関が止まって通勤できない場合

台風を理由に交通機関が完全にストップすれば、そもそも通勤すること自体できません。
この場合、労働者が働けない理由は、「使用者の責めに帰すべき事由」ではありません。

なので、台風の直撃など、自然現象による不可抗力で欠勤せざるをえなかったと考えられます。
基本に戻り「ノーワーク・ノーペイの原則」にしたがい、給料はもらえないことになります。

屋外の業務で進めるのが困難な場合

建設業など、屋外でする業務だと、台風によって仕事ができないでしょう。
台風などの自然現象で、業務遂行が不可能な場合も、「使用者の責めに帰すべき事由」ではありません。

この場合にも「ノーワークノーペイの原則」にしたがい、給料はもらえないことになります。

会社の判断で休業とした場合

これに対し、交通機関は一応動いていれば、出社はできるでしょう。
台風の勢いも、生命に危険が及ぶほど強風でなければ、仕事をするのが原則となります。
このような場合に、会社の判断で休業とするなら「使用者の責めに帰すべき事由」です。

この場合は、仕事が休みの理由が台風など自然災害でも、少なくとも給料の6割が保障されます。

台風による客足減少が理由で休業した場合

台風が直撃すると、お客さんが少なくなる可能性が高い業種もあります。
例えば、ホテルや飲食店、レジャー施設などのケースです。

街中を往来する人の数も減り、台風が直撃した日の繁華街は、「開店休業」状態かもしれません。
しかし、客足減少を理由とした休業もまた「使用者の責めに帰すべき事由」といえます。
したがって、労働者は最低でも、6割の給料をもらえる権利があります。

出社を命じられたが台風で行けなかった場合 

業種によっては、台風の直撃によって緊急対応が必要なこともあります。
例えば、病院や工事現場など、台風への対策は、必須です。
むしろ、台風が来ることによって多忙になる業種もあるでしょう。

台風が直撃した状況でも、出勤が可能ではあるにもかかわらず、出勤を命じられたが大事をとって休んだ、という場合には、通常の欠勤と同様「ノーワーク・ノーペイの原則」により、賃金は支払われません。

月給制で、給料控除がされない場合

以上の基本的な考えによらず、働いた時間にかかわらず給料を控除されない労働者もいます。
いわゆる「完全月給制」の労働契約のケースです。
この場合、台風が理由でもそれ以外の理由でも、欠勤しても給料は控除されません。

完全月給制は、正社員で多く採用されます。
正社員では月の給料が決められるだけで、遅刻、欠勤では給料が変わらないケースがあるのです。

これに対し、日給制ならノーワーク・ノーペイの原則にしたがい、休んだ日の給料は控除されます。
また、月給制のなかにも、欠勤控除は行うという給料形態もあります。

遅刻を理由に解雇されたときの対応は、次に解説します。

台風でも出社するよう命じられた時の対応

逆に、台風で外がとても危険な状態でも、出社を命じられてしまうこともあります。
労働者の危険をかえりみず、会社の利益だけを目指すのは、ブラック企業で間違いありません。

あまりに危険が大きい台風なら、会社の命令にしたがって出社するのは止めましょう。

このとき、会社が出社を命じて、応じられないなら、給料は控除されるおそれがあります。
しかし、それでもなお、命には変えられません。

明らかに危険があるなら、それを理由に欠勤しても、労働者の責任にはなりません。
そのような理由ある欠勤を理由に、最悪は解雇にされてしまえば、違法な「不当解雇」です。
解雇は、正当な理由のないかぎり無効となるから
です。

さらに、会社には、労働者の安全に配慮する義務があります(安全配慮義務)。
台風の危険があるのに出社を強要したり、自宅に帰らせなかったりする処遇は、義務違反です。
そのため、どうしても不当な処遇が止まないなら、安全配慮義務違反による慰謝料の請求も、検討してください。

労災の慰謝料の相場と、請求方法は、次に解説します。

まとめ

今回は、台風で会社が休みになったり、仕事を休んでしまったりした時の対応を解説しました。

台風は、天災なので、労働者にもコントロールはできません。
会社に行けなかったり、仕事を休まざるをえなかったりしても、誰のせいとも言い切れません。
しかし、台風など天災で仕事ができないとき、給料のルールは法律で決まります。

本来もらえたはずの給料を請求せず損しないために、本解説をよく理解してください。

この解説のポイント
  • 台風による休みは、ノーワーク・ノーペイの原則で給料をもらえないのが基本
  • 台風が理由でも「使用者の責めに帰すべき事由」があれば、6割の給料が保障される
  • 台風の危険があるのに出社を強要されたら、安全配慮義務違反の責任がある

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