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浅野 英之
弁護士
弁護士(第一東京弁護士会所属、登録番号44844)。東京大学法学部卒、東京大学法科大学院修了。

企業側の労働問題を扱う石嵜・山中総合法律事務所、労働者側の法律問題を扱う事務所の労働部門リーダーを経て、弁護士法人浅野総合法律事務所を設立。

不当解雇、未払残業代、セクハラ、パワハラ、労災など、注目を集める労働問題について、「泣き寝入りを許さない」姿勢で、親身に法律相談をお聞きします。

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休業手当とは?休業補償との違い、支給額の計算と請求方法をわかりやすく解説

使用者の責に帰すべき事由により労働者が休業した場合、休業手当を受け取れます。

休業手当は、労働者が働きたくても会社の都合で働けない状況で、最低限の生活を保障するために支払われる手当であり、働けない原因が会社側にある場合の収入保障を意味します。例えば、業績悪化や資材不足などを理由とする休業が典型例です。

休業手当は平均賃金の60%以上が保障されます。具体的な計算方法を理解しておきましょう。なお、業務中のケガや病気による休業の際に支払われる「休業補償」とは異なります。

今回は、休業手当の定義や、支給額の計算方法、受け取るための請求手続きについて、労働問題に強い弁護士が解説します。

この解説のポイント
  • 「使用者の責に帰すべき事由」による休業の場合、休業手当を受給できる
  • 休業手当の金額は、平均賃金の60%以上が保障されている
  • 休業を通知されたら、理由や原因に応じて休業手当または給与を請求する

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解説の執筆者

弁護士 浅野英之

弁護士(第一東京弁護士会所属、登録番号44844)。東京大学法学部卒、東京大学法科大学院修了。

企業側の労働問題を扱う石嵜・山中総合法律事務所、労働者側の法律問題を扱う事務所の労働部門リーダーを経て、弁護士法人浅野総合法律事務所を設立。

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休業手当とは

はじめに、休業手当の基本的な意味について解説します。

休業手当とは、使用者の責に帰すべき事由により休業させた場合に、休業期間中に支払うべき手当であり、平均賃金の100分の60(60%)以上が保障されます(労働基準法26条)。本来は、ノーワーク・ノーペイの原則があるため、働いていない分の給与は受け取れませんが、会社の都合による休業から労働者の生活を守るため、休業手当の支払いが義務付けられています。

具体的には、通常の業務が停止したり、急な休業を命じられたりした場合に適用され、労働者は、休業手当として給与の一部を受け取ることで、生活の安定を図ることができます。

強行法規であるため、就業規則や雇用契約書で法律で定める額未満としたり、不支給としたりすることは違法・無効です。休業手当は、労働基準法上の「賃金」に該当し、同法24条の賃金支払の5原則(通貨払、直接払、全額払、毎月1回以上、定期払)が適用されるため、所定の賃金支払日に支払われる必要があります。また、未払いは「30万円以下の罰金」という刑事罰の対象となります(労働基準法120条)。

休業手当の対象は正社員に限らず、契約社員やアルバイト、パート、派遣社員など、雇用形態を問わず適用されます。

「使用者の責に帰すべき事由」の範囲と判断基準

次に、休業手当の要件である「使用者の責に帰すべき事由」について解説します。

労働基準法26条の「使用者の責に帰すべき事由」は、民法536条2項の「債権者の責めに帰すべき事由」よりも広く、使用者側に起因する経営、管理上の障害のことと解されています。

「使用者の責に帰すべき事由」の具体例

例えば、以下のような事情は「使用者の責に帰すべき事由」に該当し、休業手当を請求できます。

  • 使用者の故意又は過失による休業
  • 業績悪化による休業
    経営状態の悪化によって一時的に事業を縮小したり、営業日を減らしたりしたことが原因で労働者を休業させる場合
  • その他の会社の都合による休業
    • 原料・資材の不足や入手困難による休業
    • 設備・機械の検査や故障、欠陥による休業
    • 監督官庁による操業停止や検査に伴う休業
    • 従業員不足による休業
    • 親会社の経営不振を受けての休業
    • 労働者が所属しない組合のストライキによる休業

裁判例の基準について

最高裁判例(ノースウエスト航空事件:最高裁昭和62年7月17日判決)によれば、「使用者の責に帰すべき事由」とは、会社が不可抗力を主張できない経営上の障害が全て含まれるとされます。一方で、不可抗力による休業の場合は、使用者に休業手当の支払義務は生じません。

不可抗力と認められるには、次の要件をいずれも満たす必要があります。

  • 原因が事業の外部より発生した事故であること
  • 通常の経営者として最大の注意を尽くしてもなお避けることができない事故であること

したがって、一見は不可抗力に見えても、会社が注意や努力をすれば回避できたなら、休業手当の支払義務が生じるケースもあります。

休業手当を請求できないケース

例外的に、休業手当が請求できない場合についても解説します。

不可抗力による休業の場合

裁判例の基準について」の通り、不可抗力による場合、休業手当は請求できません。

不可抗力は、会社や労働者の努力では避けられない事態を指し、地震や台風などの自然災害、戦争やテロなどが該当します。ただし、外的な要因でも、会社が十分な対策を講じなかった場合は、不可抗力ではありません(例:災害対策が不十分であったことを理由とする休業の場合など)。

労働者の都合による休業の場合

労働者の都合で休む場合は、休業手当の対象外です(例:体調不良や、家族の事情など)。なお、業務に起因する場合には労災認定を受けることで休業(補償)給付を受け取れます。

法律上の就業制限がある場合

法律上の就業制限がある場合にも、休業手当は発生しません。例えば、新型コロナウイルスや新型インフルエンザなどの指定感染症を発症した場合、感染症法によって就業が禁止されるため、ノーワーク・ノーペイの原則に従って無給扱いとなります。

民法536条2項との関係および賃金全額請求

民法の危険負担の原則によれば、「債権者の責に帰すべき事由」がある場合には、反対債権は失われないことが基本とされています。その結果、会社側に帰責事由があるケースにおいて、賃金全額(100%)の請求が可能となることがあります。

労働基準法26条民法536条2項は支払額が異なり、帰責事由の程度にも差があります。

  • 労働基準法26条の場合(休業手当)
    「使用者の責に帰すべき事由」として、不可抗力を除く経営上の障害がある場合に、平均賃金の6割以上の休業手当が保障されます。
  • 民法536条2項の場合(危険負担)
    「債権者の責に帰すべき事由」として、故意、過失または信義則上これと同視すべき事由が存在するとき、反対給付としての賃金全額(100%)の請求権が認められます。「危険負担の債権者主義」という考え方に基づいて、労務提供という債務の履行が、その債権者(会社)の責任によって不可能となった場合、反対給付である賃金請求権は失われないという結論になります。

したがって、会社側に故意・過失がある場合は、労働者は休業手当(6割)を超えて、賃金全額(10割)を請求できます。ただし、危険負担の原則は特約によって排除できるため、労働契約に特約が定められる場合は、労働基準法の休業手当による保護を受けることとなります。

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ケース別の休業手当支給の有無について

次に、実際に休業手当が問題となるケースについて解説します。実務では、休業の形態や特定の雇用形態において、休業手当が特に問題になりやすい場面があります。

一部休業や早上がりの場合

休業には、全日の休業だけでなく、1日の所定労働時間の一部を休業させる場合も含まれます。

この場合、実際に就労した時間に対して支払われる賃金が、その日の平均賃金の60%に満たないときは、使用者はその差額を支払う必要があります。例えば、半日休業として賃金の50%を支払った場合、休業手当との差額(10%)を追加で支払わなければなりません。

休業手当の取扱いが問題になる雇用形態

以下の場面では、休業手当の支払いの有無がよくトラブルの火種となります。

  • 訪問介護事業
    利用者からのキャンセルによって休業が発生した場合でも、他の利用者宅での勤務の可能性を検討するなど、使用者として代替業務を提供する努力を尽くしていなければ、休業手当の支払義務が生じます。
  • 派遣労働者
    派遣元と派遣先との契約が中途解約されたことで派遣労働者を休業させた場合、「使用者の責に帰すべき事由」による休業に該当し、派遣元に休業手当の支払義務が生じます。
  • スポットワーク
    労働契約が成立した後に、雇用主の都合で仕事の中止や早上がりをさせた場合、休業手当の支払いが必要となります。

休業手当と休業補償との違い

休業手当と似た制度に「休業補償」があります。

休業手当と休業補償は、労働者が働けない期間の生活安定を目的とする点で共通しますが、その法的根拠や活用される場面が異なります。

休業補償は、業務上の負傷・疾病の療養によって休業した場合に受け取れる補償です。休業補償は、労働基準法76条による企業の義務ですが、無資力で支払えない場合に備え、労災保険の制度が整備されています。労災として認定されれば、労災保険から休業(補償)給付を受給できます。

一方で、前述の通り、休業手当は、使用者の責に帰すべき事由による休業の際の保障であり、労働基準法26条を法的根拠とします。

いずれも、平均賃金の100分の60(60%)以上とされますが、休業手当は「賃金」として扱われ、給与所得として課税されるのに対し、休業補償は非課税です。

労働問題に強い弁護士」の解説

休業手当の支給額の計算方法

次に、休業手当の正しい計算方法を理解しておきましょう。

「使用者の責に帰すべき事由」による休業があったとき、補償が正当に受け取れているかを知るには、法律に基づいて正確に、休業手当の金額を算出しなければなりません。

休業手当は平均賃金の60%以上

休業手当は「平均賃金×60%」という計算式で算出されます。

なお、60%は最低ラインであるため、会社によっては、就業規則や賃金規程、労働契約においてそれ以上の割合を定めている場合があります。

平均賃金の算定方法

平均賃金は、「直近3ヶ月間の賃金総額」を「その期間の総日数」で割って計算します。

  • 平均賃金 = 直近3ヶ月間の賃金総額 ÷ その期間の総日数

「総日数」とは、実際の出勤日数ではなく暦日数のことです。賃金の締日が設定されている場合、直前の締日から遡って3ヶ月間を算定期間とします。ただし、以下の期間は控除されます。

  • 業務上の負傷・疾病による療養のための休業期間
  • 産前産後の休業期間
  • 使用者の責に帰すべき事由による休業期間
  • 育児休業・介護休業の期間
  • 試用期間

また、「賃金総額」とは、基本給や諸手当、有給休暇分の賃金、残業代などの全てを含み、税金や社会保険料が源泉控除される前の「額面」で計算します。ただし、次のものは含みません。

  • 臨時に支払われた賃金
    結婚手当、私傷病手当、加療見舞金、退職金など
  • 3ヶ月を超える期間ごとに支払われる賃金
    ボーナス(賞与)、3ヶ月を超える期間ごとに払われる歩合など
  • 現物給与

なお、日給制、時給制、出来高払制の場合、労働日数が少ないと平均賃金が著しく低くなるおそれがあるため、最低保障額として「(算定期間中の賃金総額 ÷ その期間中の実労働日数) ×60%」が設定されており、原則的な計算式による額と比較し、高い方を平均賃金とします。

労働問題を弁護士に無料相談する方法」の解説

休業手当の具体的な計算例

休業手当の計算について、具体的な計算例で説明します。

具体例

例えば、毎月20日を締日とする会社において、直近の給与締日から遡って3ヶ月間の総給与額が90万円(30万円×3ヶ月)、算定期間の暦日数が90日とすると、平均賃金は、10,000円(90万円÷90日)となります。

そして、休業手当は平均賃金の60%以上が支給されると定められているため、休業手当の支給額は1日あたり6,000円(10,000円×60%)となります。

このような計算の関係上、休業する直前の残業代の額や、算定期間の日数などによって、金額が増減することにも注意が必要です。

残業代の計算方法」の解説

休業手当が支払われないときの請求方法

最後に、会社が休業手当を支払わないときの請求方法について解説します。

休業の理由を確認する

会社から休業を指示されたら、その理由を確認しましょう。

「使用者の責に帰すべき事由」の範囲と判断基準」の通り、休業手当が得られるかは、その理由が使用者の責に帰すべき事由に該当するかどうかで決まるからです。

就労の意思と能力を示す

休業を指示されたら、就労の意思と能力があることを明示する必要があります。

休業手当を受け取るには、労働者に就労の意思と能力があることが前提です。休業手当は、休むことが会社の都合の場合に支払われ、労働者の都合であれば支払われません。就労の意思と能力がなければ働くことができず、休業は労働者の都合であると反論されてしまいます。

内容証明で記録に残しながら、業務の指示を求めたり、出社が困難なら在宅勤務やリモートワークを提案したりすることで、就労の意思と能力があることを証拠化できます。労働者から積極的に伝えて話し合いを継続することがポイントです。

退職勧奨の拒否」の解説

未払い賃金として請求する

休業手当は「賃金」の性質を有するため、未払い賃金として請求できます。

交渉もまた、内容証明を送付することで証拠に残しながら行います。前述の通り、賃金支払の5原則が適用されることから、賃金支払日に支払いがなければ、未払いとなります。

労働審判や訴訟で争う

休業手当を交渉で請求しても支払われない場合、労働審判や訴訟で争いましょう。

労働審判の方が、紛争の実情に応じた迅速かつ柔軟な解決を図れる点で、労働者にメリットがあります。労働審判なら、訴訟に比べて審理期間が短く、早期解決が期待できます。給料の未払いという緊急性の高いトラブルでは、仮処分が利用されることもあります。

なお、支払いが遅延している場合には遅延損害金を請求できるほか、休業手当の未払いが悪質な場合は付加金の対象となります。ただし、付加金は判決の確定によって初めて発生するため、労働審判や支払督促などでは認められません。

会社を訴えるリスク」の解説

【まとめ】休業手当について

弁護士法人浅野総合法律事務所
弁護士法人浅野総合法律事務所

今回は、休業手当についての基本的な法律知識を解説しました。

休業手当は、使用者の責に帰すべき事由によって休業した場合に、労働者が受け取ることのできる手当であり、平均賃金の60%以上の支給が保障されています。休業に対する労働者の保護という点で「休業補償」と共通しますが、活用される場面や条件が異なります。

ノーワーク・ノーペイの原則に基づき、労務提供のない分の賃金は支払われないのが基本です。しかし、休業せざるを得ない理由が会社側にあるとき、労働者の生活の困窮を避けるため、休業手当として給与の一定額が保障されています。

予期しない休業を通知されたら、速やかに休業手当を請求しましょう。休業に伴う会社の対応に疑問があるとき、違法の可能性もあるため、ぜひ弁護士に相談してください。

この解説のポイント
  • 「使用者の責に帰すべき事由」による休業の場合、休業手当を受給できる
  • 休業手当の金額は、平均賃金の60%以上が保障されている
  • 休業を通知されたら、理由や原因に応じて休業手当または給与を請求する

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