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浅野 英之
弁護士
弁護士(第一東京弁護士会所属、登録番号44844)。東京大学法学部卒、東京大学法科大学院修了。

企業側の労働問題を扱う石嵜・山中総合法律事務所、労働者側の法律問題を扱う事務所の労働部門リーダーを経て、弁護士法人浅野総合法律事務所を設立。

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雇い止めとは?違法・無効となる判断基準と争う方法や注意点を解説

雇い止めとは、有期労働契約の期間満了時に、更新を行わず雇用関係を終了することです。

契約社員やアルバイト、パートなどの有期雇用労働者は、契約期間が満了すれば退職するのが原則です。しかし実際は、契約更新が繰り返され、「次回も更新されるだろう」と期待す人も少なくありません。この場合、更新を打ち切る「雇い止め」は、労働者の生活基盤を失わせる点で、実質的に「解雇」と同様の性質を持つと評価されます。

企業にとって有期雇用は、景気や業務量の変化に応じて人員を調整しやすいメリットがありますが、正社員の解雇に厳しい法規制があるのと同じく、雇い止めも無制限には認められません。「雇い止め法理」に照らして一定の要件を満たさない場合、違法・無効とされる可能性があります。

今回は、契約社員の雇い止めが違法・無効となるケースと判断基準、対処法などについて、労働問題に強い弁護士が解説します。

この解説のポイント
  • 実質的に無期と同視されたり更新の期待があったりする契約社員は保護すべき
  • 雇い止め法理が適用されると、合理性と相当性がなければ違法・無効となる
  • 不更新条項、無期転換、定年後再雇用などの特殊なケースに注意する

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解説の執筆者

弁護士 浅野英之

弁護士(第一東京弁護士会所属、登録番号44844)。東京大学法学部卒、東京大学法科大学院修了。

企業側の労働問題を扱う石嵜・山中総合法律事務所、労働者側の法律問題を扱う事務所の労働部門リーダーを経て、弁護士法人浅野総合法律事務所を設立。

不当解雇、未払残業代、セクハラ、パワハラ、労災など、注目を集める労働問題について、「泣き寝入りを許さない」姿勢で、親身に法律相談をお聞きします。

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雇い止めとは

はじめに、雇い止めに関する基本的な法律知識を解説します。

雇い止めとは、期間の定めがある有期労働契約において、契約期間満了時に会社が更新を拒絶し、労働契約を終了させることを指します。

有期労働契約は、期間が満了すれば終了するのが原則ですが、実際は更新を繰り返している人も少なくありません。そのため、契約が何度も更新されて実質的に無期契約と変わらない場合や、今後も更新されるという期待に合理的な理由がある場合は、安易な雇い止めを制限する「雇止め法理」が適用され、労働者が保護されています。

雇い止めが問題となる背景

雇い止めが社会問題となった背景には、有期雇用労働者の役割が影響しています。

契約社員をはじめとした有期雇用労働者は、企業にとって「雇用の調整弁」として利用され、不景気や業績悪化を理由として人員削減が行われやすい傾向にあります。しかし、臨時的、一時的な業務を想定した制度にもかかわらず、実態としては正社員と同じく基幹業務を担い、長年にわたって契約更新が繰り返されるケースも少なくありません。

こうした状況では「今後も更新されるだろう」という期待が生じますが、雇い止めはそれを裏切り、生活基盤を失わせる深刻な不利益をもたらします。そのため、雇い止めを制限することで非正規の法的地位を保護する必要性が高まり、後述の「雇止め法理」が確立されました。

雇い止めと解雇の違い

雇い止めと解雇は、労働者の意思に反して契約が終了する点は共通します。

雇い止めが期間の定めのある有期労働契約の更新拒否であるのに対し、解雇は、期間の定めのない無期労働契約において、会社が一方的に契約を解除することを指します。ただし、有期契約は期間満了による終了が原則であるものの、労働者の生活基盤を一方的に奪う点で、実質的には「解雇」の性質を有するため、解雇権濫用法理が類推適用されるという「雇止め法理」が裁判例で確立され、2012年の法改正で労働契約法19条に規定されました。

以上の通り、雇い止めと解雇は契約形態の違いによって区別されますが、適用されるルールは似ています(なお、いずれも権利濫用は違法・無効となるものの、雇用保障の強い正社員の解雇の方が、より厳しく審査されます)。

不当解雇に強い弁護士への相談方法」の解説

雇い止めは違法になる?

では、雇い止めは違法になるのでしょうか。正社員の解雇は法律で制限され、不当解雇は違法・無効となりますが、契約社員は期間満了で終了するのが原則です。とはいえ、雇い止めが無制限に許されるわけではなく、解雇と同じく違法・無効とされる場合があります。

契約満了で終了するのが原則

有期労働契約は、契約期間が満了した際に更新されなければ、退職となるのが原則です。

正社員などの無期雇用契約と異なり、期間の定めがあるためです。逆に、期間途中に退職する場合は「やむを得ない事由」が求められます(民法628条)。しかし、有期雇用であれば期間満了で必ず終了するわけではなく、次章のような例外があります。

雇い止めが違法・無効となる場合がある

有期契約労働者は、本来は契約期間満了とともに雇用が終了するのが原則です。

しかし、何度も更新が繰り返された場合や、今後の雇用継続を期待するに足りる合理的な理由がある場合は、例外的に「雇止め法理」が適用されます。この法理は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当と認められない雇い止めを違法・無効とするものです。

労働契約法19条に定められ、実態が無期契約と変わらない場合(実質無期契約型)や、更新回数や通算期間、会社側の言動から期待が生じる場合(期待保護型)などに適用されます。

労働契約法19条

有期労働契約であって次の各号のいずれかに該当するものの契約期間が満了する日までの間に労働者が当該有期労働契約の更新の申込みをした場合又は当該契約期間の満了後遅滞なく有期労働契約の締結の申込みをした場合であって、使用者が当該申込みを拒絶することが、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められないときは、使用者は、従前の有期労働契約の内容である労働条件と同一の労働条件で当該申込みを承諾したものとみなす。

1. 当該有期労働契約が過去に反復して更新されたことがあるものであって、その契約期間の満了時に当該有期労働契約を更新しないことにより当該有期労働契約を終了させることが、期間の定めのない労働契約を締結している労働者に解雇の意思表示をすることにより当該期間の定めのない労働契約を終了させることと社会通念上同視できると認められること。

2. 当該労働者において当該有期労働契約の契約期間の満了時に当該有期労働契約が更新されるものと期待することについて合理的な理由があるものであると認められること。

労働契約法(e-Gov法令検索)

実質無期契約型

実質無期契約型とは、形式的には有期労働契約でも、その実態は期間の定めのない無期労働契約と社会通念上同視できる場合を指します(労働契約法19条1号)。

具体的には、長期間にわたって何度も更新が繰り返され、契約の締結や更新の手続きが形骸化しているようなケースが該当します。業務内容や責任の重さが正社員と変わらない契約社員などが典型例です。

この場合、雇い止めは実質的に「解雇」と同視され、「客観的に合理的な理由」と「社会通念上の相当性」がなければ違法・無効となります。

期待保護型

期待保護型とは、有期契約労働者が「次も更新されるだろう」と期待することに合理的な理由がある場合を指します(労働契約法19条2号)。

更新の期待が合理的かどうかは、更新回数や通算期間、業務内容が恒常的かといった点で総合的に判断します。また、採用時の説明や更新面談での発言、更新手続きの形骸化、他社員の更新状況なども、更新を期待させる重要な考慮要素となります。

期待が合理的である場合は法的に保護され、「客観的に合理的な理由」と「社会通念上の相当性」がなければ違法・無効となります。

なお、不当な雇い止めの場合、会社が従前と同一の条件で契約の申込みを承諾したものとみなされ、その結果として会社に復帰することができます。

労働問題に強い弁護士の選び方」の解説

雇い止めが違法・無効となる判断基準(雇止め法理)

次に、雇い止めが違法・無効となる判断基準について解説します。

雇い止めが法的に制限されるかどうかは、次の2段階の審査によって判断されます。

  • 第一段階(雇止め法理が適用されるか)
    雇止め法理の適用を受けるケース(前章の「実質無期契約型」「期待保護型」)に該当するかを判断します。これに該当しない場合、原則にしたがって、期間満了によって労働契約が終了し、退職することとなります。
  • 第二段階(雇い止めの効力があるか)
    雇止め法理の適用を受けるケースに該当する場合、その雇い止めに「客観的に合理的な理由」と「社会通念上の相当性」があるかを判断します。そして、これらの要件を欠く場合に、不当な雇い止めとして違法・無効となります。

以下では、この第一段階、第二段階に分けて、それぞれの判断基準を解説します。

雇止め法理が適用されるか(第一段階)

第一段階として、雇止め法理が適用されるかどうかを判断します。

実質的に無期と変わらない場合や、更新に合理的な期待が認められる場合、雇止め法理が適用されて解雇と同様の規制が及びますが、その際、次の要素を総合考慮して判断します。

無期社員との同一性

まず、正社員をはじめとした無期社員との同一性があるかどうかという点です。

有期契約でも、実態として無期とほぼ同じ扱いを受ける場合、同様の保護が必要であり、雇止め法理が適用されやすくなります。具体的には以下の事情が考慮されます。

  • 業務内容が正社員と同一または極めて近い。
  • 臨時的ではなく、恒常的な業務を担当している。
  • 配置転換や責任について正社員と同程度である。
  • 契約更新が当然の前提として扱われている。
  • 正社員と同一の労働条件である。

このような場合、「形式は有期でも実質は無期に近い」と評価され、雇い止めには解雇と同程度の厳しい制約が課されます。

更新回数・通算期間

契約の更新回数や通算期間も重要な要素となり、次の場合、「今後も更新されるだろう」という期待が生じやすくなります。

  • 更新回数が多い(例:5回、10回など)。
  • 長期間にわたって継続勤務している(例:数年~10年以上など)。

特に長期間にわたり反復更新される場合、企業側が自由に雇い止めできるとは評価されにくくなります。

更新手続きの厳格さ

契約更新の手続きがどれほど厳格かも考慮されます。例えば、次の事情があると、更新が前提となっていたと評価され、雇止め法理の適用において有利に働きます。

  • 自動更新に近い運用である。
  • 更新時に審査や面談が実施されていない。
  • 更新の契約書が締結されていない。
  • 書面手続きが形式的であり、期間満了後にサインしている。

一方で、期間満了ごとに厳格な審査や面談が実施され、契約時の適切なタイミングで契約書に署名押印を求められている場合、更新は当然ではないと判断されます。

更新を期待させる言動の有無

会社側から更新を期待させる言動があった事実も重要視されます。

  • 「問題がなければ更新する」と説明されていた。
  • 入社時に長期雇用を前提とした発言があった。
  • 面談時に「次も更新する」と言われていた。
  • 将来の配置や昇給について言及されていた。

こうした言動は、労働者に合理的な期待を生じさせます。逆に、「更新しない可能性がある」と説明されたり、問題点やミスを指摘されていたり、更新しない特約(不更新条項)があったりする場合、期待の程度は低いものと評価されます。

他の労働者の更新の有無

同様の立場にある有期雇用労働者の扱いも参考にされます。

恣意的で不公平な運用は違法となり得るため、同じ条件の労働者について通常は更新されている場合、「自分も同様に更新されるだろう」という期待は保護されるべきです。一方で、自分だけが雇い止めされた場合、嫌がらせやいじめといったハラスメントが背景にある可能性もあり、会社と争うことを検討すべきです。

雇い止めが有効か(第二段階)

「雇止め法理が適用されるか(第一段階)」を検討し、適用されると判断された場合、次に「雇い止めが有効か(第二段階)」が審査されます。この判断は、解雇と同じく、解雇権濫用法理に基づき、「客観的に合理的な理由」と「社会通念上の相当性」の2点で判断されます。

解雇権濫用法理とは

雇い止め理由の合理性

まず、企業側が主張する雇い止めの理由に「客観的な合理性」があるかを検討します。

合理的な理由かどうかについて、次のような点が考慮されます。

  • 労働者の能力や勤務態度に問題があったか。
  • 業務上の必要性があるか(例:事業縮小、業績悪化など)。
  • 労働者に重大な企業秩序違反があったか(例:横領、重度のハラスメント、犯罪行為など)。

一方で、単なる社長の好き嫌いや主観的な評価、嫌がらせなどを理由とすることは認められません。

「能力不足」はよく雇い止めの理由に挙げられますが、これまで特に指摘されることなく更新を重ねた場合、「能力に大きな問題はなかった」と考えられ、突然の雇い止めは無効と判断されやすくなります。

社会通念上の相当性

次に、仮に一定の理由があっても、社会通念上の相当性が必要となります。これは、雇い止めが社会的に見て妥当であるといえるかどうかという基準です。判断にあたっては、次のような事情が考慮されます。

  • 雇い止めに至る経緯(突然か、事前説明があったか)
  • 労働者への影響の大きさ
  • 他の手段の有無(例:異動、配置転換、注意指導による改善など)
  • 手続きの適正さ(説明があったか、弁明の機会が付与されたか)

例えば、事前の注意指導や改善の機会もなく「能力不足」として雇い止めされた場合、社会通念上の相当性がないと評価されます。

契約社員を軽視する会社では、これまで長年にわたって貢献したにもかかわらず、小さなミスや些細な理由で雇い止めに遭うこともあり、不当として戦うべきです。

解雇の意味と法的ルール」の解説

雇い止めについて判断した裁判例

次に、雇い止めについて判断した裁判例を紹介します。

前述の通り、雇止め法理が裁判例で確立され、労働契約法に明文化されたように、有期雇用労働者の保護は、裁判例の積み重ねによって発展してきた歴史があります。そのため、どのようなケースで違法になるか、保護されるかは、過去の裁判例を参考にすることができます。

雇い止めを無効とした事例

雇い止めを無効と判断した事例には、次のものがあります。

最高裁昭和49年7月22日判決(東芝柳町工場事件)

最高裁昭和49年7月22日判決(東芝柳町工場事件)は、無期契約と同視できる場合の雇い止めについて、解雇権濫用法理の適用を認めた有名な裁判例です。

裁判所は、景気変動などの原因で労働力の余剰が生じない限り契約継続を予定していたという事情から、当然更新されるべき労働契約を締結する意思を有していたとし、期間の定めのない契約と実質的に異ならないと判断しました。

大阪高裁平成3年1月16日判決(龍神タクシー事件)

大阪高裁平成3年1月16日判決(龍神タクシー事件)は、1年間の雇用期間を定めたタクシー運転手の雇い止めを無効とした裁判例です。

裁判所は、自己都合による退職者を除き、例外なく雇用契約が更新されてきたという事情を考慮し、契約当初から更新がほぼ確実に予定される状況であったとして、更新回数が少なくても雇用継続の期待が生じることを認めました。

雇い止めを有効とした事例

雇い止めを有効と判断した事例には、次のものがあります。

最高裁昭和61年12月4日判決(日立メディコ事件)

最高裁昭和61年12月4日判決(日立メディコ事件)は、繰り返し更新された有期契約の雇い止めに、解雇権濫用法理の適用を認めた有名な裁判例です。

裁判所は、業務が季節的・臨時的なものではなく、ある程度の継続が期待されていたこと、2ヶ月の労働契約を5回にわたって更新していたことといった事情を考慮しました。ただし、無期社員と有期社員の雇用保障には差があることを指摘し、結果として合理的な理由による人員整理であるとして、雇い止めを有効としました。

最高裁平成21年12月18日判決(パナソニックプラズマディスプレイ事件)

最高裁平成21年12月18日判決(パナソニックプラズマディスプレイ事件)は、契約が一度も更新されず、契約締結前から更新を拒絶し得る旨の会社の意図が明らかにされていたことから、雇用継続への合理的期待は認められず、雇い止めは有効とされました。

労働問題の種類と解決策」の解説

【ケース別】雇い止めされたときの注意点

雇い止めは、個別の契約内容や状況によっても、様々な注意点があります。以下では、特に労使の争いが起こりやすい点について解説します。

不更新条項がある場合

不更新条項とは、雇用契約書などに記載される「更新しない」旨の特約のことです。

不更新条項がある場合、労働者の更新への期待は否定されやすくなります。初回だけでなく、更新時の契約から付されるケースもあります。この場合、会社は事前の合意を根拠に雇い止めの正当性を主張しますが、特約があっても必ず有効になるとは限りません。

特に、更新時に後から付された特約は、これまでの更新の期待を失わせるかどうかが慎重に判断されます。労働者としては、更新時に雇用契約書にサインをする際、不当な条件が付されていないか、注意深くチェックしてください。

無期転換の回避が目的の場合

無期転換の回避のみを目的とした雇い止めは、違法・無効となる可能性があります。

無期転換とは、同一の使用者との間で有期労働契約が更新されて通算5年を超えた場合、労働者の申し込みによって期間の定めのない契約に転換できる制度です。労働契約法18条に定められ、「5年ルール」とも呼ばれます。

無期転換による雇用リスクの増大を恐れ、権利発生の直前で雇い止めをすることは、「客観的に合理的な理由」を欠く可能性があります。過去の更新で特に問題を指摘されず、5年目前で突然雇い止めされたときは、無期転換の回避が目的ではないかと疑うべきです。一方で、無期転換権発生の数年前に制度を設け、厳格に管理している場合には期待が否定されると判断した裁判例もあります(国立大学法人東北大学(雇止め)事件:仙台地裁令和4年6月27日判決)。

なお、無期転換権が行使されると、次の更新から期間の定めのない契約となるため、その後の解約は「雇い止め」ではなく「解雇」となり、より厳格な法規制を受けます。

契約社員の5年ルール」の解説

定年後の再雇用の場合

定年後の再雇用でも、雇止め法理が適用される可能性があります。

高年齢者雇用安定法により、企業には希望者を65歳まで継続雇用する義務があり、契約更新への期待が法的に保護される余地があります。例えば、継続雇用制度の運用が形骸化していたり、会社側から更新を期待させる言動があったりする場合、更新の期待に合理的な理由があると認められます。この場合、客観的に合理的な理由のない雇い止めは無効と判断されます。

ただし、定年後の再雇用は、年金受給までの雇用確保という性質があるため、正社員の解雇ほどの厳しい基準は適用されない傾向にあります。

雇い止めは予告が必要となる

正社員などの無期雇用労働者の解雇は、労働基準法20条に基づき、少なくとも30日前の予告、または、不足する日数分の平均賃金に相当する解雇予告手当の支払いが必要となります。

一方、有期雇用労働者の雇い止めに労働基準法20条は適用されず、予告は法的な義務ではありません。原則として期間満了により契約が終了しますが、一定の場合には雇い止めの予告が必要です。厚生労働省の「有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準」(平成15年告示357号)によれば、次の要件に該当する場合、契約期間の満了する30日前までの予告が必要です。

  • 有期労働契約が3回以上更新されている場合
  • 1年以下の契約期間の労働契約が更新または反復更新され、最初に労働契約を締結してから継続して通算1年を超える場合
  • 1年を超える契約期間の労働契約を締結している場合

ただし、あらかじめ契約を更新しない旨が明示された場合は予告義務の対象外となります。また、30日前の予告なく雇い止めをしても解雇予告手当の支払い義務は生じませんが、不当な雇い止めと評価されやすくなります。したがって、事前の予告がなかった場合、雇い止めそのものが違法ではないかを疑うべきです。

即日解雇されたら」の解説

違法な雇い止めをされたときの対応と争い方

次に、不当な雇い止めを告げられた際、労働者が取るべき対処法を解説します。

雇い止めが無効となり得るときは、今後に備えて雇い止め理由を示した証明書を請求し、会社と争うことを検討してください。労働者だけでは交渉が難しい場合は弁護士のサポートを受け、会社が誠実に対応しない場合は労働審判や訴訟に移行します。

STEP

雇い止めの撤回を求める

不当な雇い止めを言い渡されたら、直ちに撤回を求めましょう。

契約期間が満了しても、雇い止めが違法となる可能性があることは本解説の通りであり、継続して働く意思を明確に伝えることが重要です。異議があることを明確にするため、内容証明で通知して証拠化する方法がおすすめです。

会社が撤回に応じない場合でも、働き続ける意思を明確に示すことには意味があります。労働契約法19条は、雇い止めが不当である場合の効果について「申込みを承諾したものとみなす」としており、労働者からの契約の申込みが必要だからです。

解雇を撤回させる方法」の解説

STEP

雇い止めの理由の通知を求める

雇い止めを告げられた際、労働者は会社に対し、その理由を具体的に記した証明書の交付を求めることができます。

解雇理由証明書に関する労働基準法22条は直接適用されないものの、厚生労働省の「有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準」(平成15年告示357号)によって同様の義務が定められているからです。

雇い止めの理由を書面で明確にさせることで、争った際に会社から理由を後付けされたり、変更されたりすることを防ぐ効果があります。

解雇理由証明書」の解説

STEP

退職届や合意書にサインしない

会社から退職届や合意書へのサインを求められても、応じてはいけません。

安易に署名すれば、期間満了による退職に同意したとみなされ、合意後に「不当な雇い止めだった」と主張して争うのは難しくなってしまいます。

「手続き上必要」と説明する会社もありますが、そもそも有期契約の期間満了であれば、労働者の同意や手続きなく終了するのが原則です。強引に迫られた場合、やり取りの録音などにより、強制があったことを証拠に残しておきましょう。

退職合意書の強要の違法性」の解説

STEP

証拠を集める

不当な雇い止めを争うには、客観的な証拠を揃えることが重要です。

まず、雇用契約書や就業規則を確認し、更新の条件や上限などを確認してください。次に、更新回数や期間、手続きの杜撰さなどを示す書類を入手しましょう。業務の内容や責任が正社員と変わらない場合、業務遂行に関する書類も重要な証拠となります。

会社側から「今後も長く働いてほしい」といった継続雇用を期待させる発言があった場合は、その際のメールやチャット、録音は強力な武器になります。

不当解雇の証拠」の解説

STEP

雇い止めを労働審判、訴訟で争う

交渉での解決が難しい場合、裁判所で雇い止めを争うことを検討してください。

主な手続きには労働審判と訴訟があります。雇い止めの争いでは「労働者の地位にあることを確認する」と主張することが多く、これを「地位確認」と呼びます。

争った結果、雇い止めが違法であると認められれば復職が可能となり、雇い止め期間中の未払い賃金(バックペイ)を請求できます。一方で、労働者も、本音では退職を希望しているなら、解決金を受け取ることで金銭解決するケースもあります。

解雇の解決金の相場」の解説

雇い止めで退職したら失業保険は会社都合?自己都合?

雇い止めによる離職が失業保険でどう扱われるかを解説します。

失業保険は、会社都合退職か自己都合退職かにより、受給タイミングや額に差が出るところ、雇い止めの場合、契約更新の期間と労働者の更新希望の有無によって扱いが異なります。会社都合の方が自己都合よりも有利で、待機期間(7日間)の経過後、給付制限期間なく受給できます。

有期労働契約者の雇い止めについては、以下の場合には「特定受給資格者」「特定理由離職者」として扱われ、給付制限は設けられません。

特定受給資格者となる場合

有期労働契約の満了による離職であっても、以下の場合は再就職の準備期間が十分にない「解雇」に近い状況とみなされ、特定受給資格者に該当します。

  • 3年以上雇用が継続していた場合
    有期労働契約が更新され、3年以上雇用されていたにもかかわらず、次回の契約が更新されないこととなった場合
  • 契約更新が明示されていた場合
    契約締結時に、更新されることが明示されていたにもかかわらず、更新されなかったことで離職した場合

特定理由離職者となる場合

特定受給資格者の要件を満たさない場合(例:3年未満の場合や、「契約を更新する場合がある」など契約の更新について明示はあるが、確約はない場合など)でも、以下の条件に該当すれば「特定理由離職者」となります。

  • 更新を希望したが更新されなかった場合
    有期雇用労働者が契約の更新を希望したにもかかわらず、使用者が更新の合意に応じなかったことにより離職した場合

失業保険の手続きと条件」の解説

雇い止めに関するよくある質問

最後に、雇い止めに関するよくある質問に回答しておきます。

何回更新されたら雇い止めは無効になる?

雇い止めの有効性は、実質的に無期契約と同視できるか、更新の期待があるかといった点が重要で、更新回数はその判断における重要な要素の一つです。

ただ、「何回更新したら無効」というように基準が決まっているわけではなく、業務の内容や性質、更新手続きの実態なども総合的に考慮されます。

更新回数や通算期間について、裁判例では次のような判断があります。

【雇い止めが無効とされた事例】

  • アルバイト契約が22年以上更新され、無期契約とほぼ同視できるとした事案(ジャパンレンタカー事件:名古屋高裁平成29年5月18日判決)。
  • 約30年間、29回更新された契約について、合理的理由のない雇い止めが無効とされた事案(博報堂事件:福岡地裁令和2年3月17日判決)。

【雇い止めが有効とされた事例】

  • 約30年間、30回更新されたが、手続きは厳格で、事業縮小などから期待は弱まっていたとした事案(三洋電機事件:鳥取地裁平成27年10月16日判決)。
  • 5年10か月間、8回更新されたが、業務の性質や事前の説明状況から、合理的期待が否定された事案(日本通運事件:東京地裁令和2年10月1日判決)。
  • 8年間、6回更新されたが、業務内容が都度異なり、更新上限が明示されたことから合理的な期待を否定した事案(東北大学事件:仙台地裁令和4年6月27日判決)。

会社に雇い止め理由を聞くことはできる?

労働者は、会社に対して雇い止めの理由を問うことができます。厚生労働省の「有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準」(平成15年告示357号)は、雇い止めの予告後や退職後に、労働者が更新しない理由について証明書を請求した場合、使用者は遅滞なく交付しなければならないと定めます。

明示すべき理由は「契約期間満了」といった抽象的なものではなく、それに該当する具体的な事情が必要となります。

【まとめ】雇い止めの違法性

弁護士法人浅野総合法律事務所
弁護士法人浅野総合法律事務所

今回は、雇い止めの違法性と判断基準について詳しく解説しました。

雇い止めは、有期雇用契約の期間満了による終了という「原則」に基づく対応です。しかし実際は、更新状況や会社の説明、業務内容などにより、雇い止めが違法・無効と判断される「例外」が存在します。特に、実質的に無期雇用と同視できる場合や、更新を繰り返されてきた場合、将来の更新について期待が生まれるため、労働者は保護されるべきです。

雇い止め法理が適用される場合、「客観的に合理的な理由」「社会通念上の相当性」を欠く場合、雇い止めは違法・無効となります。労働者側で対応する際に重要なのは、「契約満了だから仕方ない」と安易に受け入れず、契約書などで更新のルールを確認し、不当な扱いは争うことです。

雇い止めに納得できない場合、労働審判や訴訟などの法的手続きで争うことが可能です。雇い止めの有効性に疑問があるときは、ぜひ弁護士に相談してください。

この解説のポイント
  • 実質的に無期と同視されたり更新の期待があったりする契約社員は保護すべき
  • 雇い止め法理が適用されると、合理性と相当性がなければ違法・無効となる
  • 不更新条項、無期転換、定年後再雇用などの特殊なケースに注意する

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