休憩時間といえば「1時間休憩」が一般的です。しかし、会社によっては休憩時間が1時間もらえるとはかぎらず、より短い「30分休憩」や「15分休憩」をとるよう指示している会社もあります。
ランチ休憩は、1時間は必要!
休憩時間が短すぎて休めない
休憩時間が短すぎると、休憩の間に労働者ができることは限られてしまいます。30分休憩ならまだしも、15分休憩ともなれば、ランチを食べに社外に出ることは難しく、トイレにいったりスマホを見たりしていたらあっという間に休憩時間が終わってしまうこともあります。
あまりに短い休憩時間しかない会社は、労働基準法に違反している疑いがあります。今回は、休憩時間が30分など、短すぎるのではと不安を感じている労働者に向けて、「30分休憩」が労働基準法などの労働法に違反するかどうかについて、労働問題に強い弁護士が解説します。
- 休憩時間の最低限度は、労働基準法に定めあり
- 30分休憩など短い休憩時間は、労働時間が長くなるほど違法の可能性あり
- 休憩時間に違法があると、「労働時間」と評価され残業代がもらえる
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休憩時間が短いと違法だが、「必ず1時間とれる」わけではない
30分しか休憩のとれない会社に入社してしまった結果、次のような疑問・不安が生まれます。
前の会社は1時間の休憩があったのに、納得できない!
もらえるはずの残業代が未払いとなっているのではないか
このような不安の生じる会社の場合、休憩時間であるにもかかわらず、労働を強制されていることもあります。休憩といいながら働かざるを得ないとき、未払いの残業代が発生しており、残業代請求できる可能性の高いケースだといえます。
しかし、1時間休憩が一般化してはいるものの、労働法の観点からいえば、「必ず1時間休憩をとる権利がある」というわけではなく、ケースバイケースの判断が必要となります。
労働基準法における休憩時間のルール
まず、労働基準法における休憩時間のルールについて、わかりやすく解説します。労働基準法には、一定の労働時間に対して、あたえるべき休憩時間の最低限度が定められています。
労働基準法34条1項(抜粋)
1. 使用者は、労働時間が6時間を超える場合においては少くとも45分、8時間を超える場合においては少くとも1時間の休憩時間を労働時間の途中に与えなければならない。
労働基準法(e−Gov法令検索)
「1日8時間、1週40時間」という法定労働時間通りの労働なら、労働基準法にしたがい1時間の休憩時間をとる権利があることになります。正社員として、1日8時間労働とされている多数を占めることが、「1時間休憩」がごく一般的となった理由です。
労働基準法で定められる、与えるべき休憩時間は、労働時間に応じて次の通りです。
労働時間 | 休憩時間 |
---|---|
労働時間が6時間以内 | 不要 |
労働時間が6時間を超え、8時間以下 | 45分以上 |
労働時間が8時間を超える | 1時間以上 |
終身雇用のある伝統的な労使関係では、1日8時間労働の正社員が大半だったため、「1日8時間労働ならば、1時間休憩が必要」、「1日8時間労働なのに、30分休憩しかないと違法」となるわけです。
なお、現在は終身雇用が崩壊し、働き方が多様化しています。1日8時間労働の正社員ばかりでなく、労働者のなかにはそれ以外の労働時間の方も増えています。そのため、「1時間休憩」でなくても必ずしも違法ではなく、15分休憩、30分休憩が、うまく活用されているケースもあります。
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労働基準法の休憩時間のルールに違反すると刑事罰あり
労働基準法に定められた休憩時間のルールに違反すると、「6ヶ月以下の懲役又は30万円以下の罰金」という刑事罰による厳しい処分が会社に下されます。会社の休憩時間が短すぎると感じるとき、労働基準法違反があるならば、労働基準監督署に申告し、是正してもらうことを検討してください。
休憩時間がないと残業代を請求できる
以上の労働基準法のルールを理解すれば、必ずしも1時間休憩がとれるわけではなく、30分休憩、15分休憩のケースもありうると理解できたでしょう。
しかし、短い休憩時間そのものが労働基準法に違反していなかったとしても、休憩時間が短すぎることによって、支払われるべき適正な残業代が未払いになってしまっている、という別の問題が生じている可能性があります。
「1日8時間、1週40時間」を超えて労働すると、その超えた時間は「残業時間」となり、残業代(割増賃金)を請求することができます。休憩なしに働かせ続けることは、とても問題の多いものなのです。このとき、休憩時間がなかったり、短かったり、休憩時間なのに働かされ、違法なサービス残業を強要されていたりすると、その分だけ労働時間が長くなりますから、会社の把握していない残業時間が生じてしまっている可能性があるのです。
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30分休憩は違法?適法?
「労働基準法における休憩時間のルール」のとおり、法律では、「6時間以上」「8時間以上」の勤務の2つのケースにわけて、休憩時間の最低限度をルール化しています。このルールからして、30分休憩は、次の場合に違法となります。
6時間を超える勤務で、休憩30分だと違法
6時間を超える労働時間があると、45分の休憩が必要ですから、30分休憩しか与えられていない労働者は、その違法性を主張できます。労働時間ごとに、違法性についてまとめると次の通りです。
- 「5時間勤務、休憩30分」は適法
- 「6時間勤務、休憩30分」は適法
- 「7時間勤務、休憩30分」は違法
- 「8時間勤務、休憩30分」は違法
- 「9時間勤務、休憩30分」は違法
(8時間を超える労働には、残業代も必要)
6時間以下の労働時間のときには、労働基準法でも休憩時間の最低限度は決められていません。そのため、6時間以下の勤務なら、30分休憩はもちろんのこと、休憩を与えないのも違法ではありません。なお、6時間ちょうどの勤務のときは休憩が不要ですが、残業があって結果的に労働時間が6時間を超えるならば、休憩をもらう必要があります。
ただし、休憩時間が30分であったり、休憩がなかったりすることによって、次章のように「休憩の有無」とは別の労働問題が起こり、違法となる可能性が高いといえます。
「残業したときの休憩時間」の解説
休憩時間が30分で違法となる他のケース
労働時間の点だけでなく、その他にも、休憩時間が30分という短い設定だと違法となるケースがあります。休憩時間が30分で違法となるケースは、次の通りです。
- 休憩時間が30分しかないことで、実際に払われる給料が最低賃金に満たないケース
- 休憩時間が30分しかないことで、残業代に未払があるケース
- 休憩時間が30分しかないことで、労働者の身体の健康が害されるケース
これらのケースでは、「休憩時間が30分しかないこと」自体が問題なのではなく、最低賃金や残業代が払われていなかったり、会社の安全配慮義務違反があったりすることなど、労働者の権利を侵害する別の問題が生じてしまっています。
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「休憩が短いから自由に利用できない」なら違法
休憩時間は、労働者が自由に利用できるのが原則です。この原則は、たとえ30分しか休憩がない労働者のケースでも同じくあてはまります。「休憩時間自由利用の原則」といって、労働基準法の基本的なルールとなっています。
休憩時間の分割は、一応許されています。例えば、8時間を超える労働時間ならば、休憩時間を1時間とれる必要がありますが、この休憩時間を「30分休憩を2回とらせる」という定め方にしても、違法ではありません。
しかし、自由に利用ができない休憩時間は、むしろ休憩時間ではなく労働時間だと評価されます。30分休憩などと、休憩時間を細かく分割しすぎた結果、休憩時間を自由に利用するのが困難な状態となってしまえば、「休憩時間自由利用の原則」に反するといってよいでしょう。極端な例をあげれば、「1分休憩を60回とらせる」というのも可能ではありますが、合計すれば1時間の休憩を取れるとはいっても1回の休憩は1分しかなく、何もできないに等しく、法律上の「休憩」とは評価できません。
このとき、休憩時間が「労働時間」と評価されるなら、その時間も含めて「1日8時間」を超えれば残業代が請求できます。毎日8時間労働の正社員の場合、昼休みのランチ休憩がメインでしょう。さすがに、ランチ休憩が30分では足りない、というのが本音ではないでしょうか。
まとめ
今回は、30分休憩などの、短い休憩時間を定めている会社ではたらく労働者に向けて、30分休憩が、労働基準法などの労働法に違反するのかについて解説しました。
結論をいえば、30分休憩が違法かどうかは、全体の労働時間の長さによって変わります。また、30分休憩とすること自体は適法だったとしても、未払いの残業代がないかも検討が必要です。
30分休憩など、休憩時間が短く、ストレスで病んでしまう前に、弁護士にご相談ください。残業代請求をすべき場合もありますので、正しく計算し、未払い残業代を回収するサポートができます。
- 休憩時間の最低限度は、労働基準法に定めあり
- 30分休憩など短い休憩時間は、労働時間が長くなるほど違法の可能性あり
- 休憩時間に違法があると、「労働時間」と評価され残業代がもらえる
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