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浅野 英之
弁護士
弁護士(第一東京弁護士会所属、登録番号44844)。東京大学法学部卒、東京大学法科大学院修了。

企業側の労働問題を扱う石嵜・山中総合法律事務所、労働者側の法律問題を扱う事務所の労働部門リーダーを経て、弁護士法人浅野総合法律事務所を設立。

不当解雇、未払残業代、セクハラ、パワハラ、労災など、注目を集める労働問題について、「泣き寝入りを許さない」姿勢で、親身に法律相談をお聞きします。

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社内不倫で解雇されたときの対処法は?不倫がバレたらクビになる?

結婚したら、他の異性と肉体関係を持つことは許されません。婚姻中に他の異性と性交渉をするのは単なる浮気ではなく「不貞」という違法行為だからです。

社内不倫だと、配偶者から慰謝料請求されるのみでなく、職場の人間関係を複雑にするなど業務の支障となるおそれがあり、発覚すると解雇されるケースもあります。しかし、不倫が許されないのはあくまでプライベートの問題であり、業務とは無関係なケースもあります。そのため原則は、社内不倫は解雇理由とはなりません。不倫の発覚を理由に解雇されたら、不当解雇の可能性があります。

今回は、社内不倫を理由とした解雇と、その対処法について労働問題に強い弁護士が解説します。なお、不当解雇は無効となるものの、社内不倫はセクハラ問題に繋がるおそれがあるなどリスクが大きいため、慎重な行動が求められます。

この解説のポイント
  • 不倫交際は恋愛の延長であり、プライベートは労働者の自由が原則
  • 社内不倫で、業務に支障がある場合には、不倫は解雇理由になり得る
  • 社内不倫は、違法なセクハラに発展するなど、他の労働問題に繋がるリスクがある

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解説の執筆者

弁護士 浅野英之

弁護士(第一東京弁護士会所属、登録番号44844)。東京大学法学部卒、東京大学法科大学院修了。

企業側の労働問題を扱う石嵜・山中総合法律事務所、労働者側の法律問題を扱う事務所の労働部門リーダーを経て、弁護士法人浅野総合法律事務所を設立。

不当解雇、未払残業代、セクハラ、パワハラ、労災など、注目を集める労働問題について、「泣き寝入りを許さない」姿勢で、親身に法律相談をお聞きします。

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社内不倫による解雇リスク

はじめに、社内不倫による解雇その他のリスクについて解説します。

社内不倫はリスクの高い行為で、お勧めはできません。とはいえ、どうしても社内不倫をしてまったとして、解雇が許されるのはごく例外的なケースであり、基本的にクビにはできません。

社内不倫の問題とは

不倫は、結婚した男女が浮気をすることです。法律の専門用語で「不貞」というのは、既婚者が配偶者以外の異性と肉体関係(性交渉)を持つことを指します。つまり、法律の世界では、「不貞」というのは「既婚者」が「肉体関係を持つ」場合であり、それ以外の不誠実な行為については、婚姻中の場合は「不倫」、未婚で交際中の場合は「浮気」というように呼び分けます。

そして、社内に相手のいる場合を「社内不倫」と呼びますが、社内不倫は会社から敵視され、しばしば解雇の理由とされます。

社内不倫のリスクは高い

社内不倫がバレてクビにされるのは「不倫=悪」と考える人が多いからです。「不倫は風紀を乱す」「規律違反だ」と評価されると、企業秩序違反に下される最も重い処分である「懲戒解雇」とされる危険もあります。

社内不倫には解雇のほかにもリスクが多く、社長や役員、管理職など立場のある人は、既婚者ならば意識して振る舞い、社内不倫を疑われないようにすべきです。

社内不倫が発覚したことで……

  • 解雇されてしまう(クビになってしまう)
  • 不倫相手が同意していなかったと言われ、セクハラの疑いをかけられる
  • 不倫を理由に不当な人事評価をした(された)と言われる
  • 不倫して仕事に身が入らない「問題社員」というレッテルを貼られる

社内不倫を理由に解雇はできないのが原則

一方で、恋愛は自由であり、どうしても社内の異性と恋に落ちる方もいます。

このとき、解雇を含む会社の処分は、あくまでも業務に関連する事由によらなければなりません。これに対して不倫は恋愛の延長であり、つまりはプライベートな事情。恋愛が個人の自由であるのと同じく、不倫もまた、会社や他の従業員に迷惑をかけない限りは自由なので、不倫を理由にした解雇はできないのが原則です。

労働問題に強い弁護士の選び方」の解説

社内不倫でクビにされたら不当解雇の可能性がある

解雇とは、会社の一方的な意思表示によって労働契約を解約することです。

会社を辞める方法には、自主退職、合意退職といった労働者の同意ないし合意によるものもありますが、解雇は、労働者の承諾なく一方的に会社を追い出すことができます。労働者に与える不利益の大きさからして厳しく制限され、解雇権濫用法理によって、客観的に合理的な理由がなく、社会通念上相当でない場合、違法な不当解雇として無効になる、という制限があります労働契約法16条)。なかでも懲戒解雇のデメリットは甚大であり、特に厳しく判断されます。

社内不倫の問題があったとして、これを理由に即座に解雇できるわけではありません。そもそもプライベートの事情である不倫の問題が「客観的に合理的な理由」とはならない可能性が高い上、業務に支障が生じるといった例外的な事案でも、その支障の程度によって「社会通念上の相当性」まではないと判断される事例も少なくないからです。

社内不倫を理由とした解雇が、不当解雇となる理由を詳しく解説します。

不倫は解雇の理由にはなりづらい

恋愛は個人の自由であり、不倫は解雇理由にならないのが原則です。したがって、社内不倫といえど、解雇の「客観的に合理的な理由」とは認められづらいです。

ただし、社内ですることについては、たとえ個人的な事情だとしても一定の制限を受けます。社内で行えば、他の同僚や上司、会社の業務に事実上の影響があるからです。権利や自由にしても、他者に迷惑をかけるのは制限されます。そのため、職場恋愛で社内不倫をしているとき、会社に悪影響があるなら禁止される可能性があり、例外的に、正当な解雇理由となり得ます。

正当な解雇理由の例と判断方法」の解説

解雇できるのは重大な場合に限られる

業務に支障がある場合は、不倫が解雇の理由となり得ると解説しました。しかし、解雇をするに足る事情とは、その重い処分にふさわしい重大な場合に限られます。影響はあるものの軽微であれば、解雇の「社会通念上の相当性」は認められません。

社内不倫による影響の程度がどれほどか、よく検討する必要があります。また、問題ある社内不倫があっても、注意指導して警告し、戒告譴責といった軽度の懲戒処分によって是正を図るべきです。「何度注意されても問題ある社内不倫を止めない」といった状況でなく、改善の機会を与えずにクビにするのは不当解雇のおそれがあります。

重大な処分である懲戒解雇の手続きは、適正でなければなりません。注意も警告もなく、弁明の機会も与えられなければ、無効となる可能性が高いです。

解雇が無効になる例と対応方法」の解説

例外的に不倫を理由に解雇できるケースは?

以上の通り、社内不倫でクビにされたら不当解雇の可能性は高いです。しかし、社内不倫を理由に解雇が許される例外的なケースもあります。

解雇の制限が厳しい一方で、不倫は個人の自由だと解説しましたが、解雇も全くの禁止ではなく、かつ、不倫もまた社内でされる以上、業務への支障、会社への悪影響が大きい場合には、解雇されてもやむを得ないケースがあるからです。

法律や倫理に著しく反する場合

不倫そのものは犯罪行為ではありません。配偶者との関係では慰謝料や離婚を請求されますが、恋愛は個人の自由です。とはいえ、法律や倫理に違反した悪質な態様でされるケースは問題視せざるを得ず、解雇されても仕方ない場合もあります。

  • 女性の同意や承諾なく無理やりホテルに連れ込んだ
  • 不貞相手が未成年だった
  • 不貞相手を妊娠させ、中絶させた
  • しつこい連絡、家に付いていくなどストーカー化した

このように、法律や倫理に違反した態様でされる不倫については、就業規則で禁止とし、違反する場合には解雇することも可能です。

社内不倫が業務の支障となる場合

社内不倫は、職場のトラブルの原因となります。職場の男女関係が乱れることで業務に支障が生じるなら、解雇の理由となることがあります。

  • 社内で人目をはばからずイチャついていた
  • 他の社員の業務の邪魔をした
  • 上司が、不倫相手の部下を贔屓した
  • 社内不倫から失恋した後に嫌がらせをした
  • 社内不倫で喧嘩したので業務の情報を共有しなかった
  • 社内不倫が楽しくて仕事に身が入らない

不倫は、その態様によっては職場の人間関係や業務環境に悪影響を及ぼします。業務時間中に公然と交際が行われるなど、不倫が原因でチームの士気が低下したり、他の従業員との関係が悪化したりする場合は、状況を改善する最後の手段として、解雇が許される場面もあります。

職場の男女差別の例と対応方法」の解説

不倫相手が退職を余儀なくされた場合

社内不倫をはじめ、恋愛は必ずしも円満に続くとは限りません。喧嘩したり、別れたりすることはトラブルの原因となり、特に社内不倫だと、職場の秩序に影響してしまいます。その最たる例が、不倫相手が退職を余儀なくされてしまうケースです。

小規模な企業ほど、人間関係のトラブルが与える影響は大きいもの。例えば、上司の男性と社内不倫していたケースで、別れてしまい、嫌がらせで報復人事されたり、職場いじめが起こったりすれば、部下の女性はそれ以上会社に留まるのは難しいでしょう。社内不倫がトラブルに発展して、大切な人材を退職させてしまえば、解雇理由となるおそれがあります。

社内不倫がセクハラに発展した場合

社内不倫は、両当事者が満足していれば大事に至らないこともありますが、感情の問題は非常に不安定です。一時期は愛し合っていたとしても、何かのきっかけでうまくいかなくなり、片方は好意を抱いていても、他方は冷めてしまうことがあります。その結果、単なる不倫だったのが、セクハラやパワハラといった労働問題に発展してしまいます。

セクハラとは、職場における優越的な地位を利用した性的な嫌がらせのこと。例えば、男性側は自由恋愛のつもりでも、女性側が「強要された」「無理やりだった」と感じることによって、セクハラが起こるおそれがあります。不倫交際そのものが、「上司だから仕方なく」していたと言われるケースもあれば、性交渉の強要、食事の誘いの強要といった例もあります。

未婚者でもセクハラが許されないのは当然ですが、既婚者ならなおさらセクハラの加害者にならないよう、「相手が不快に思っていないか」と敏感になるべきです。

セクハラの相談先」の解説

不倫相手の配偶者が責任追及してきた場合

不倫は、犯罪ではないものの、配偶者(夫や妻)との関係では不法行為(民法709条)となり、不倫相手の配偶者から慰謝料請求をされる危険があります。社内不倫が、慰謝料をめぐるトラブルとなれば、業務に支障を生じさせる可能性が非常に高いです。

なかには、不倫相手の配偶者が怒り狂って会社に押し掛けてきたり、何度も電話をしてきたりしてしまう例もあります。不倫をしていた人たちにとっては「自業自得」ですが、会社にとってはただ迷惑でしかなく、不倫の当事者となった労働者の解雇を検討せざるを得なくなります。

企業の信頼を喪失させた場合

職場における不倫が、会社の名誉や信用を傷つけ、企業の信頼を喪失させしまうケースもあります。社内不倫が公然と行われたこと、悪い印象を持たれないような配慮がなかったことなどによって、企業の信頼を喪失させてしまった場合、解雇の理由となる可能性があります。

不倫は、犯罪ではないものの、民事的には慰謝料請求の原因となったり、離婚の理由となったりする点で、問題のある行為なのは当然です。そして、道徳や倫理の観点からしても、良いイメージはありません。芸能人の不倫がニュース報道されているように、社会的にはネガティブな印象があります。社内不倫が取引先や顧客といった社外に知られれば、良くは思われないでしょう。不快感、嫌悪感を抱く人も少なくありません。

名誉毀損を理由とした解雇の違法性」の解説

社内不倫で解雇された時の対処法

最後に、社内不倫を理由に解雇されたケースの対処法について解説します。解雇は厳しく制限され、不倫によってクビにされれば不当解雇となる可能性が高いため、会社と争うことができます。

退職の強制は拒否する

まず、会社から社内不倫の責任を追及されても、すぐに認めるべきではありません。退職を強制されても、はっきりと拒否してください。「不倫はクビにはならない」という原則を解説しましたが、会社は不当解雇のトラブルを避けようとして、自主的に退職させようと働きかけてきます。

「あなたの不倫が迷惑をかけている」といって後ろめたさを感じさせたり「自主退職しないならクビにする」と脅したりするケースがありますが、屈してはなりません。

退職強要の対処法」の解説

解雇理由が「不倫」にあると確認する

社内不倫を理由として、実際に解雇を通告されたら、解雇理由を確認しましょう。「不倫が解雇理由だ」という明らかな証拠がなければ、後から理不尽な反論をされかねません。

解雇理由を直ちに証拠に残す方法として、解雇理由証明書を求める手が有効です。解雇理由書に記載させれば、後から解雇理由を追加されたり変更されたりするのを防げます。労働基準法22条により、解雇予告の後は、労働者から求められれば会社は書面で解雇理由を示す義務があります。

同書面に、口頭での通告と同じく「職場での浮気、不倫」といった記載があるかを確認してください。口頭で告げられた解雇理由と違っていたり、解雇理由が勤務態度の不良能力不足といった抽象的なものでしかなかったり、就業規則の条項しか記載されていなかったりするときは、より具体的に書くよう強く求めてください。

解雇理由証明書の請求方法」の解説

社内不倫が解雇理由として十分か検討する

社内不倫が解雇理由だと明らかにされたら、次に、理由として十分かを検討してください。特に懲戒解雇は、就業規則に定められた理由でなければ下せません。

ただし、社内不倫や浮気による迷惑といった細かい事情までは、就業規則に明記されない場合が多いです。「企業秩序を乱す行為」「社員として不適切な行為」などの一般条項に含まれるかどうかは、他に列挙された事由と同程度に重大なものであるかによって判断します。

また、これらに該当するとしても、解雇が相当である必要があります。つまり、その不倫によって、解雇に匹敵するほど、重大な支障が生じていなけれなりません。少なくとも、不倫による軽いトラブルやいざこざでは、懲戒解雇はできません。

内容証明で不当解雇を争う

不当解雇と考えられるような処分を受けてしまったら、ただちに争いを開始しましょう。まずは、労働者側の主張をまとめ、内容証明で伝え、証拠化していきます。

ブラック企業だと、「解雇が制限されている」「不倫はプライベートの出来事で、業務に関連しないのが原則」といった基本的な労働法の知識が不足する会社もあります。感情論や道徳心で、不倫を嫌悪し、性急に解雇してしまったケースもあります。このようなケースだと、法的な問題点を明らかにし、解雇を撤回してもらえる可能性があるので、話し合いで、会社の行為に労働法上の問題があることを指摘してください。

懲戒解雇を争うときのポイント」の解説

労働審判・訴訟などの裁判で不当解雇を争う

内容証明をはじめ、交渉では解決できないとき、法的手続きを要します。社内で適用されているルールが違法ならば、社外の第三者の助けを借りなければなりません。裁判手続きで争うときには、労働問題の経験が豊富な弁護士のサポートを受けるのがお勧めです。

職場における不倫、浮気による解雇が撤回されないなら、労働審判で争うのが最適です。労働審判は、労働者保護のために簡易、迅速かつ柔軟に解決できる制度です。解雇トラブルにおいては、訴訟の長期化は労働者にとって大きな不利益なので、労働審判で争うのに向いています。

職場における不倫、浮気を理由とした不当解雇を争うには、解雇が無効であり、労働者としての地位を有し続けることの確認を求める「地位確認請求」の労働審判を申し立てます。

労働問題の種類と解決策」の解説

まとめ

弁護士法人浅野総合法律事務所
弁護士法人浅野総合法律事務所

今回は、社内不倫による解雇について解説しました。

社内不倫を理由とした解雇は、業務の支障や会社への損害が大きいといった特別な事情のない限り、不当解雇となるのが原則です。違法な不当解雇をされたら、解雇の撤回を求めて直ちに争うべきです。社内不倫といえど、恋愛はプライベートの問題であり、労働者各自の自由です。

とはいえ、社内不倫が発覚するリスクは大きく、セクハラ問題にも発展しがちなので、既婚者は社内の立ち回りに特に注意してください。

社内不倫が発覚し、解雇のリスクに直面したとき、冷静な対処が必要です。解雇理由を正確に確認して、労働問題に精通した弁護士に相談するのが賢明です。

この解説のポイント
  • 不倫交際は恋愛の延長であり、プライベートは労働者の自由が原則
  • 社内不倫で、業務に支障がある場合には、不倫は解雇理由になり得る
  • 社内不倫は、違法なセクハラに発展するなど、他の労働問題に繋がるリスクがある

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