労働者として働いていると、どうしても休日を返上せざるをえないことがあります。社長や上司から強く指示されると、拒否できない方も多いでしょう。
土日を利用した研修に、強制的に参加させられる
週明けまでにすべき課題が、たくさん与えられる
休日は心身を休めるために大切なもので、研修や課題で休日返上となると、休養を取れなくなってしまいます。ワークライフバランスが崩れ、心身の健康にも悪影響を及ぼすおそれがあります。その上、休日を返上した分の残業代すら払われないケースもあります。休み返上、土日返上で仕事をしざるを得ないときには、少なくとも休日手当は請求できて当然です。
今回は、会社の研修や課題で、休日返上となった労働者の対応について、労働問題に強い弁護士が解説します。
- 休日返上の業務命令が、違法ないし不当なら、従う必要はない
- 休日返上分の残業代が払われず、長時間労働となるときは拒否できる
- 休日返上での課題、研修がやむをえないなら、休日手当を請求することができる
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休日返上で仕事を命じられたら、応じる必要はある?
休日返上とは、労働者が本来休むべき休日に仕事を行うことを指します。
労働基準法35条は、週に1回、もしくは4週間で4回の休日を与えることを使用者の義務としており、これらの休日に出勤せざるを得なくなるのが、休日返上のケースです。そのため、休日を返上してする労働は、休日労働に該当し、適切な割増賃金の支払いを求める必要があり、不当に強制されないよう注意しなければなりません。
休日返上で、仕事を命令されるケースには、次の例があります。
- 明らかに業務時間内に終わらない課題を、週末に与えられた
- 大量の業務の締め切りが、週明け早々に迫っている
- 土日にしか受講できない研修がある
- 休日返上で仕事を終わらせないと「能力不足」といわれる
- 他の社員も、休日返上で働くのが通例となっている
責任感の強い人ほど、仕事を放置して休むことはできません。休日を取っても仕事が気になって、休日返上で働くしかない空気を押し付ける企業もあります。ブラック企業だと、休日返上しない社員は「職務怠慢」という低い評価を受け、社内で干され、責められる危険もあります。
休日返上して仕事をするよう命じることを「休日労働命令」と呼びますが、労働者は、従う必要があるのでしょうか。休日労働命令は、残業命令の一種であり、業務命令の性質を持ちます。そのため、適切にされた命令なら、従わなければなりません。
しかし、休日の残業代が払われないなら、その命令は適切でなく、従う必要はありません。違法な命令に従って休日返上しても、残業代が払われないのでは貢献が報われません。たとえ残業代がもらえても、毎週末休日を返上して働くなど労働が長時間になりすぎると、その点も違法となりますから、健康に配慮しない会社の命令に従う必要はありません。
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休日返上で仕事の課題をするよう指示された時の対応
休日返上するよう、会社から命じられても、従う必要のない場面もあると解説しました。そこで次に、休日返上で仕事の課題をするよう指示を受けたら、どう対処すべきか説明します。
あえて「土日返上で」と命令されなくても、明らかに業務時間では終わらない課題なら同じこと。結局は、休日を返上せざるを得ないとしても、労働者として正しく対処してください。
業務命令が正当か確認する
労働者は、労働契約によって、業務命令には従わなければなりません。しかし、会社の業務命令といえど、正当なものでなければ従う必要はありません。
休日返上で仕事の課題をするよう指示する業務命令について、正当かどうかは、次の順で検討してください。
- 休日返上の業務命令について、「契約上の根拠」があるか
- 業務命令に、「業務上の必要性」があるか
- 必要性に対して、相当な範囲内の命令かどうか
休日返上をする必要のない状況なら、その命令は不当です。締め切りがさほど切迫していなかったり、週明けでも間に合う業務だったりするケースがその例です。また、業務上の必要性があれど、明らかに長時間労働となる命令も不相当だといってよいです。
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休日返上せず週明けに対応する
休日返上についての業務命令が不当ならば、拒否するようにしましょう。このとき、休日返上をしないということは、週末の土日を返上して働くことはしないということです。会社から命じられた業務については、週明けに対応すれば足ります。
この場合、業務命令が違法なら、それに従わなかったからと不利益な処分はできません。休日返上させる必要もないのに、休日に仕事をしなかったからという理由で「能力不足」と評価して給料を下げたり、「勤務態度の不良」と評価してクビにしたりするのは、違法の可能性が高いケースです。
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休日労働の残業代を請求する
どうしても休日返上で仕事の課題をせざるを得ないなら、残業代を請求しましょう。会社からの業務命令で、休日に課題を片付けるよう指示されるケース。悪質な会社でこれに従わないと、業務命令違反として懲戒処分や、最悪は解雇など厳しい処分を受けます。
週末の土日をつぶさざるをえないと、プライベートが減ってしまいます。少なくとも、その分の残業代くらいは請求したいところです。休日といえど、返上させられ、資料を読んだり課題をしたりしたなら「労働時間」に該当し、その時間については休日手当が発生します。
残業代は「1日8時間、1週40時間」の法定労働時間を超える時間に対して払われます。いわゆる週休2日制の場合には、そのうち1日は法定休日となります。そのため、土日の片方がつぶれれば、通常の給料の1.25倍、土日の両方がつぶれれば、通常の給料の1.35倍の割増賃金(残業代)を、その返上させられた休日の労働時間に対して請求することができます。
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休日返上で研修に参加するよう命じられた時の対応
ここまでの解説は、「仕事の課題を命じられ、事実上、休日返上せざるをえない」というケースでした。しかし、もっと悪質なのは、休日返上せざるを得ない研修のある会社です。週末の土日に研修を受けさせられ、課題や宿題を課されたりといった場合です。
このように休日返上の研修への参加を命じられたときの対応についても、解説します。
強制参加の研修なら労働時間になる
休日に行われる研修は、自由参加だったり任意だったりすれば、労働時間にはなりません。その分、労働者としては、その研修に参加しなくてもよいといえます。「休日なのだから、拒否することも、労働者の自由」というわけです。
しかし、休日返上の研修に、強制参加させられるなら、労働時間になります。例えば、次の場合、休日を返上した分は、残業代請求をしたほうがよいでしょう。
- 明示的に、休日返上の研修に、参加が強制されている
- 「自由参加」とはいいながら、参加しないとペナルティがある
- 休日返上の研修に参加しないと、仕事がもらえない
- 休日返上の研修にみな参加しており、不参加だと仲間はずれにされる
このようなとき、実作業をしている時間でなくても、労働時間になります。研修でも「使用者の指揮命令下に置かれている時間」にあてはまるなら労働時間といえるからです。
業務時間には研修や課題をしないよう指示されたり、それだと業務時間内には終わらないのが明らかな分量の研修や課題を指示されたり、提出締め切りが週明けで、休日返上でないと間に合わない場合などもまた、残業代をもらえる可能性が高いです。
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代休の交渉をする
どうしても業務に必要な研修が、休日に予定されているケースもあります。休日返上にて研修に対応する必要があるなら、代休の交渉をする手も有効です。
代休とは、その名のとおり休日返上の「代わりに休むこと」をいいます。代休がもらえれば、その分、本来は業務日だった日を休日にできます。その結果、休みをとった分の給料と相殺して、休日返上分の残業代の元をとることができます。
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休日返上の研修について残業代を請求する
会社からの指示、命令にしたがって休日を返上したなら、残業代を請求することができます。これは、休日に強制参加させられた研修の時間でも同じことです。
できるだけスムーズに残業代を払ってもらうには、労働者が泣く泣くした休日返上が、会社の命令であると明らかにしておかなければなりません。休日の研修では特に、会社の命令で強制参加させられたと証拠に残しておくのが大切です。
休日返上の研修について、書面を交付されていれば、必ず保存しておいてください。メールやチャットなどで休日の研修参加を命じられたら、「休日返上すべきか」「強制参加かどうか」を質問し、その回答を保存しておくのがお勧めです。
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まとめ
今回は、休日返上で仕事を命じられたとき、労働者側の対応を解説しました。
週末の土日や祝日、研修に参加させられ、課題をせざるをえないこともあるでしょう。泣く泣く働かざるをえず、休日返上となったら、まずは休日の残業代を請求しましょう。残業代をもらえないと、休日返上のうえ、残業代未払いの違法も積み重なってしまいます。
明示的に休日返上するよう指示された場合だけではありません。週末に作業せざるをえない状況に追い込まれるといったケースもまた、残業代請求できます。また、休日返上の研修や課題を強制され、健康を害したこともまた、会社の責任を追及することができます。
- 休日返上の業務命令が、違法ないし不当なら、従う必要はない
- 休日返上分の残業代が払われず、長時間労働となるときは拒否できる
- 休日返上での課題、研修がやむをえないなら、休日手当を請求することができる
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