突然に会社から解雇されてしまうことがあります。「そろそろ解雇されそう」と予感のある場合だけでなく、急にクビを宣告されるケースもあり、冷静に対応できない方も多いのではないでしょうか。
しかし、解雇されたらやることを理解し、労働者が正しく対応しなければなりません。
今回は、解雇されたらやることを5つにまとめて、労働問題に強い弁護士が解説します。即座の対応に迷うときには、ぜひ弁護士にご相談ください。弁護士への相談はハードルが高く感じるかもしれませんが、相談や対応が遅れるデメリットは非常に大きいです。
できる限り早く相談すれば、労働者にとって有利な解決ができます。解雇されたらすぐに相談するのがベストなタイミングです。
- 解雇されたら大きな不利益があるのを知り、将来に向けて対策を打つ
- 解雇されたらやること5つを理解し、言い渡された直後から進める
- 解雇されたら争うか、転職か選択するが、争う場合も平行して転職活動できる
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解雇されたらどうなる?
まず、解雇されたらどうなるのか、その後の将来について、具体的なイメージを持ちましょう。会社に解雇されたら、気付かないうちに労働問題は山積みとなってしまっています。具体的にどのような問題が降りかかるのか、そして、その不利益を回復する方法はないのか、解説していきます。
会社にいられなくなる
解雇は、労働契約を終了させる効果を持ちます。そのため、解雇されたら、解雇日以降は当然ながら会社にいられなくなります。解雇後は社員でなくなり、当然ながら職場での勤務はできません。
なお、「解雇」と明言されずとも、「明日から来なくていい」と言われるなど、勤務継続が困難となるような会社の処分は、実質的には解雇を意味します。
「解雇の意味と法的ルール」の解説
給料がもらえなくなる
給料は、労働の対価として支払いを請求できるものです。そのため、解雇によって労働しなくなれば、給料もまた請求できなくなるのは当然です。つまり、解雇されたら、給料がもらえなくなるので、解雇されて以降は無収入となってしまいます。
給料は、労働者にとって生きていくために必須です。投資や副業など、収入の選択肢は増えましたが、労働者にとって給料こそ生活の基盤でしょう。解雇されたら、労働契約が終わり、とても大きな不利益を負わされるのです。
失業保険がもらえる
解雇の不利益は大きく、労動者の生活に大きな影響を与えるため、一方で、法律による保障を受けられる点も知っておきましょう。解雇されたら、それでもなお安定した生活を送りながら求職活動に注力できるよう、生活保障の意味合いでもらえるのが失業保険です。失業保険は、雇用保険法の定める制度であり、解雇後も最低限の生活を保障してくれます。
ただし、解雇によって離職した全ての人が失業保険をもらえるわけではありません。失業保険には法律上の要件があり、一定の条件を満たさなければ受給できません。
「失業保険の手続きの流れと条件」の解説
解雇されたらやること5つ
次に、解雇されたらやるべき対応を解説します。
解雇されたら多くの不利益を被ることが理解できたでしょう。少しでもその不利益を和らげるために「解雇されたらやること」を知っておく必要があります。
事前に解雇を避けられるのが一番ですが、残念ながら解雇されてしまったら、速やかに行動に移す必要があります。実際に解雇されたら、迅速に、適切な対応を講じることが、被る不利益を少しでも減少させるためのポイントです。
感情的にならずに戦略を練る
仕事に一生懸命に取り組んでいた方ほど、突然に解雇されたら動揺するのは無理もありません。あまりに理不尽な会社のやり方に、憤りを感じる方もいるでしょう。
しかし、感情に任せて会社に接触するのは止めましょう。労務管理を徹底する会社ほど、解雇を言い渡す前に入念な準備をし、戦略を練っています。労動者が、感情的に無策で突っ込んでは、誠実な対応を受けられないばかりか、対話や交渉の機会を失い、不利な流れに進む危険があります。
労動者として正当な権利を主張し、解雇について争いたいなら、解雇された直後は、まずは気持ちを落ち着かせ、感情的にならず冷静に戦略を練るのが大切です。
「解雇を無効にしたい場合」の解説
解雇無効を主張して出勤する
解雇は、労働者との労働契約を終了するという会社の一方的な意思表示。そのため、働きたくても、解雇後は仕事をすることはできません。「クビだ」と言われた以上、出社するのは気まずく感じるのも当然です。解雇されたら「これまでの生活が大きく変わる」という不安感もあります。
しかし、解雇されたら、それでもなお出勤するという態度を示すことが大切です。就労の意思を示しておかなければ、不当解雇だったとき、解雇期間の給料(バックペイ)を請求できなくなるおそれがあります。バックペイの請求は、就労の意思があることを条件としているからです。
なお、ハラスメントが存在するなど、現実的に出社が難しいケースも、就労の意思を示すために「働きたいがパワハラが危険で出社できない」といった通知書を内容証明で送付するのが実務です。会社が、解雇を理由に出社を拒絶する場合にも同じく、書面によって就労の意思を示し、証拠化する努力をしておいてください。
「パワハラの相談窓口」の解説
解雇理由を確認する
解雇が通知されたら、すぐに解雇の理由を確認しましょう。解雇の理由が正しくなければ、不当解雇として争うべきだからです。解雇通知書の内容だけでは解雇理由が不明確なら、会社に確認をとるのが望ましいです。会社の認識する事実に誤りがあれば、不当解雇を争いましょう。
更に、解雇理由証明書も必ず発行してもらうようにしてください。解雇理由証明書は、解雇された理由を会社が具体的に記した書面のことで、解雇の争いにおいて労働者が反論すべきポイントを明確に知るために非常に重要な資料です。会社は、労働者が求めたら解雇理由を書面で示す義務がある(労働基準法22条)ので、解雇理由証明書の交付を拒否するのは違法です。
「解雇理由証明書の請求方法」の解説
有利な証拠を集める
解雇を争うとき、正当な解雇理由がない限り「不当解雇」であり、違法です。ただし、不当解雇だという主張をして争うには、根拠となる証拠が必要。したがって、解雇されたら速やかに、有利な証拠を収集していくのが大切です。
どのような証拠が有益かは、会社の主張する解雇理由によっても異なります。例えば、人事評価書や業務報告は、成績不振を理由とした解雇に対抗するための証拠として役立ちます。これまで良い評価をされていたと証明できれば、不当解雇だといえるからです。
「不当解雇の証拠」の解説
解雇の撤回を求め、交渉する
解雇されたら、それでもまだ働きたいなら、解雇の撤回を求めて交渉しましょう。
交渉次第では、解雇が撤回され、労働契約を継続してもらえる可能性もあるからです。もっとも、労働者一人で交渉しても、会社は真摯に対応してくれませんから、弁護士のサポートを受けるのが賢明です。弁護士名で内容証明を送る方法は、交渉を有利に進める役に立ちます。会社としても「解雇に後ろめたい部分がある」「放置すると裁判になるかも」と考え、真剣に対応してくれるからです。
「解雇を撤回させる方法」の解説
解雇されたらもらえるお金
次に、解雇されたら、もらえるお金にどのようなものがあるかを解説します。
解雇は、労働者にとってかなり不利益なのは当然。そのため、一定の期間の予告が保障されるほか、金銭給付を受けられる場合があります。
失業保険
解雇されたらもらえるお金として、第一に失業保険があります。
失業保険は、雇用保険に加入して一定の条件を満たした場合に給付されます。退職の理由が解雇でも、受給することができます。むしろ、解雇のように労動者がタイミングを選択できず、突然に降り掛かってくる事態に対応することこそ、失業保険の重要な役割です。
失業保険を受給するにはハローワークでの手続きを要します。解雇の場合、労動者に重大な責任のあるものを除き、会社都合退職として雇用保険において有利な扱いを受けることができます。事前の準備として、解雇されたらすぐに、会社に離職票を請求しておきましょう。
「自己都合と会社都合の違い」の解説
解雇予告手当
解雇の不利益を緩和するため、会社は30日以上前に予告すべきことが法律上の義務となっています(労働基準法20条)。また、予告期間が不足する場合には、その日数分の解雇予告手当を請求することができます。例えば、即日解雇なら、30日分の平均賃金に相当する解雇予告手当が払われます。
「解雇予告手当の請求方法」の解説
退職金
解雇されたら、退職金がもらえる可能性があります。退職金は、法律に義務付けられたものではありません。したがって、退職金がもらえるかどうかは、会社の退職金規程を確認する必要があります。
退職金というと、定年まで全うした場合をイメージするかもしれません。しかし、解雇が理由でも、退職することに変わりはありません。
なお、「懲戒解雇の場合には退職金を支給しない」と規定する例もありますが、裁判例には、それでもなお退職金の一部の支払いを認めた例もあるので、あきらめてはいけません。
「懲戒解雇でも退職金がもらえるケース」の解説
解雇後の賃金
不当解雇が無効になれば、解雇を争っている期間の給料をもらうことができます。これを、法律用語で「バックペイ」と呼びます。
本来、ノーワーク・ノーペイの原則により、給料は働かなければ払われません。しかし、不当に解雇されたら、働けない原因は会社にあります。この場合は、例外的に、解雇された日から解決した日まで、給料を請求することができます。
「バックペイの意味と計算方法」の解説
未払いの残業代
残業代に未払いがあるなら、あわせて請求できます。残業代がもらえるのは、解雇されて退職するケースでも同じことです。なお、残業代の時効は3年のため、解雇されたらすぐ、同時に争うのがよいでしょう。せっかく残業したのに見合った金額が払われない事態は、徹底的に争うべきです。
「残業代の計算方法」の解説
慰謝料
解雇されたら、慰謝料をもらえる可能性もあります。
解雇は、労働契約を一方的に終了させるので、あまりに理不尽な場合には不法行為(民法709条)の可能性があるからです。ただし、裁判所で慰謝料を認定してもらうには、解雇で受けた精神的苦痛を証拠によって立証する必要があります。
ひどい嫌がらせで解雇に追い込まれたり、セクハラ被害で辞めざるを得なかったりといったケースでは、解雇されたら慰謝料の請求が認められることがあります。
「不当解雇の慰謝料の相場」の解説
解雇されたら争うべき?あきらめて転職すべき?
では、解雇されたら、争うべきでしょうか。それとも、あきらめて転職すべきでしょうか。
転職が一般化した現代では、争うことをあきらめ、次の仕事に集中する選択が悪いとはいいません。しかし、納得いかないのに我慢して、後悔するくらいなら「解雇されたら争うのが基本」というくらいの強い覚悟を持つ方が良いのではないかと思います。
次に、解雇されたら、争うべき場合とあきらめる場合の判断のポイントを解説します。
不当解雇の可能性がある
確かに、労動者の責任が明白なケースだと、解雇を争っても勝ち目のない場合もあります。しかし、それでもなお、解雇を争うのを簡単にあきらめてはいけません。
解雇がトラブルになる場面では、会社が労働者より強い立場にあります。労使トラブルにおいては「労動者が被害者になる」という特徴があるのです。
弱い立場にある労働者を保護するため、解雇は法律で厳しく制限されています。客観的に合理的な理由がなく、社会通念上相当でない場合は、違法な不当解雇として無効になります(労働契約法16条)。このルールを、法律用語で「解雇権濫用法理」といいます。
したがって、たとえ労動者に重大なミスがあり、会社に損害を与えたとしても、解雇するのは相当でないケースでは、不当解雇であると主張して争う余地があります。
「不当解雇に強い弁護士への相談方法」の解説
解雇されたら争うべきケース
では、具体的には、どのような場合に不当解雇となるのでしょうか。不当解雇と認められやすい類型に当たるなら、争うべきです。
例えば、次の場合は、解雇されたら争うべきケースです。
- 1回のミスや勤怠不良なのに、注意や指摘なく、すぐ解雇された
- 同種の事例で、他の社員は減給だったのに自分だけ解雇された
- 新入社員なのに教育なく、能力不足で解雇された
これらのケースは、解雇の処分は不相当だとみなされやすいからです。「注意しても何度も繰り返した」「改める様子がない」といった事情があってはじめて、解雇すべきだといえます。
「不当解雇を争う際の禁止事項」の解説
争うときでも転職活動はできる
解雇されたら争うべきケースでも、転職活動は許されます。解雇されれば、労働者ではなくなり、他の会社で働くのも自由だからです。そもそも在職中でも、こっそり転職活動をすることはよくあることで、解雇されたからといって禁止されるわけではありません。
ただ、交渉から裁判まで、すべての流れを労働者1人でやると、転職活動は事実上難しいでしょう。弁護士に依頼すれば、やるべきことは大幅に削減され、並行して転職活動するのも容易です。会社との直接のやり取りも不要で、ストレスが軽減してリフレッシュできます。
「不当解雇を争う間も再就職してよい理由」の解説
解雇されたら、まずは弁護士に相談してください
金銭的なトラブルのみならず、解雇でお悩みなら一人で抱え込まず弁護士にご相談ください。弁護士の協力を得れば、余計なストレスや負担は少なくて済みますし、早期解決を望めます。
解雇されたら、すぐに相談するのが大切なポイントです。
弁護士に相談するのに「早すぎる」ということはありません。実は、弁護士は「解雇される前に相談してほしかった」と思っていることも多いものです。そのため、解雇された時点で「最速」の相談タイミングは逃したといっても過言ではありません。
弁護士費用が、早いタイミングで相談するネックとなっている方もいます。しかし、早く相談した方が、結果として解決までの期間が短くて済み、有利な解決を目指せるので金銭的にもプラスであることがほとんどです。
なお、早いタイミングでの相談が心配なら、軽い無料相談を活用することから始めてみるのも得策です。
解雇されると、自分を責めてしまい、弁護士に問い合わせすらしない方もいます。しかし、解雇されたのは、あなたのせいではありません。不当解雇ならば、誤って解雇した会社にこそ責任があります。
労働問題に「小さな問題」などはありません。解雇トラブルは、まさに弁護士に相談すべき問題の典型例です。法律相談するにも「小さすぎて、まだ相談すべきタイミングではない」というのは誤りなのです。「備えあれば憂いなし」という言葉のとおり、先手を打てるよう事前に対応しましょう。
弁護士に相談する際は、すぐに解雇の問題点に気付いてもらえるよう、解雇に至る経緯をはじめ、相談内容を時系列で整理しておくとよいでしょう。
「労働問題に強い弁護士の選び方」の解説
まとめ
今回は、解雇されたらやるべきことを、労働者側の立場で解説しました。急に解雇されたら、やることがたくさんあり、課題は山積みです。
解雇は、労働者に大きな不利益を及ぼす手続きであり、給料がもらえなくなると生活に困窮してしまう方もいます。しかし、解雇されたら、直後の対応ほど冷静に進めなければなりません。
突然のことに戸惑い、どうしてよいかわからないなら、まず弁護士に相談してください。早く相談すれば、解雇されたらすぐやることについてもアドバイスできます。可能ならば、解雇されそうになったタイミングでの相談の方がなお良いです。
解雇されたら、交渉、法的手続きなどいずれの手段でも弁護士のサポートは役立ちます。解雇トラブルの解決まで弁護士に依頼しなくても、法律相談は有益です。今後どう立ち回れば良いのか、労働者に有利な解決を知ることができるからです。
- 解雇されたら大きな不利益があるのを知り、将来に向けて対策を打つ
- 解雇されたらやること5つを理解し、言い渡された直後から進める
- 解雇されたら争うか、転職か選択するが、争う場合も平行して転職活動できる
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