ボーナスが近づくと、楽しい気分になる方が多いでしょう。しかし、ブラック企業では、ボーナスと残業代について、違法な扱いをされるケースがあります。
業績が良く、ボーナスがたくさん出ると思いきや「残業代に充当されていた」というのが典型。しかし、ボーナスと残業代はまったく別物で、よく確認しなけいと違法な扱いで損してしまいます。
残業代で相殺するので、ボーナスは払わない
ボーナスは、残業代計算では基礎に含まない
業績や能力評価が低いと、ボーナスが出ないことすらあります。しかし「ボーナスに残業代が含まれているから、払う必要がない」というのは誤りで、未払い残業代が生じている可能性があります。
今回は、ボーナスと残業代の問題について、基本的な考えを、労働問題に強い弁護士が解説します。
- ボーナスと残業代は別物なので、いずれも損せず請求しておく必要がある
- 残業代の計算では、ボーナスが固定額ならば、残業代の基礎賃金に加算できる
- ボーナスのなかに残業代を含むという扱いは、違法の可能性が高い
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ボーナスは残業代の計算でどう扱われるか
ボーナスと残業代はまったくの別物です。しかし、ブラック企業のなかには、ボーナスを、残業代を払わない理由にしてくることがあります。
「ボーナスがあるのだから、残業代は払われない」といった反論です。このような会社の反論が誤りであり、残業代に未払いが生じているのは明らかです。「残業代が発生しない」と主張する会社側の理由は、間違っているケースも多いので注意しましょう。
ただし、残業代とボーナスは、同じ給料の一部なので、密接に関わり合っています。少なくとも、残業代の計算で、ボーナスをどう扱うかを知らずに、正しく算出することはできません。ボーナスは、法律用語で「賞与」といいます。賞与は、労働者の貢献に対して払われるもの。つまり、成果主義的な発想に近い給料こそが、賞与なのです。
これに対して、残業代は、時間に対して払われるもので、性質がかなり異なります。残業代は、必ずしも成果が出なくても、評価されなくても、一定の時間働いたら払わねばなりません。そして、残業代がどれほどあっても、賞与の請求権が減ることはありません。
ボーナスを考慮した、残業代の正しい計算方法については、次章「ボーナスと残業代の正しい計算方法」で解説します。
「ボーナスカットの違法性」の解説
ボーナスと残業代の正しい計算方法
ボーナスが払われていた場合、実際の残業代の計算でどう扱うか。会社の採用している制度によっても異なります。会社が、賞与をどう考えているかは、就業規則、賃金規程、雇用契約書を確認することでわかります。
ボーナスが業績に連動する場合
ボーナスは、支給額があらかじめ決められていないことがあります。このようなケースは、支給される場合もあれば、支給されない場合もあるということ。会社の業績や社員の成果、能力評価に連動して決められるボーナスが典型例です。
労働基準法は「臨時に支払われた賃金」「1ヶ月を越える期間ごとに支払われる賃金」を、残業代の計算の際、基礎賃金に含めないと定めています。したがって、支給額が定まっていないボーナスは、残業代の基礎に加算されません。このようなケースでは、就業規則、賃金規程や雇用契約書には、「賞与を支給する場合がある」「賞与は、業績、能力評価等に応じて支給することがある」などと記載されます。
「残業代の計算方法」の解説
ボーナスが固定額の場合
ボーナスが、固定額で払われる会社や社員もあります。雇用契約書で年俸を定め、それを16分割し、一部をボーナス時期に充当するのがその例です。固定額の賞与は、このような年俸正社員によく見られます。
ボーナスが固定額のときは、残業代計算の際、ボーナスを残業代の基礎に加えて算出します。このとき、残業代の基礎賃金は、月給(除外賃金を除く)と固定額のボーナスの合計となります。
固定額のボーナスなのに、ボーナスを入れず残業代の基礎賃金を計算していたなら、未払い残業代が生じます。損しないよう、忘れず残業代請求しておきましょう。
なお、労働基準法の通達(昭和22年9月13日発基17号)では、賞与とは「支給額があらかじめ確定されていないもの」と定められるため、固定額のボーナスは、定義上、厳密には「賞与」ではないこととなります。
「年俸制の残業代」の解説
ボーナスに残業代を含むのは違法
次に、ボーナスを「残業代の代わりだ」と説明する会社があります。このように、ボーナスに残業代を含むという扱いは、違法となる可能性が高いです。
ボーナスに残業代を含めることができない理由は、複数あるため、順に解説します。
残業代は毎月払う必要がある
ボーナス、つまり「賞与」は、夏季賞与、冬季賞与、決算賞与のように「まとめ払い」が通常です。しかし、一方で、残業代は、毎月払う必要があります。労働基準法24条で、賃金を毎月払うのが会社の義務とされているからです。
残業代は、労働者保護と長時間労働の回避のため、残業したその月ごとに払わなければなりません。したがって、ボーナスで、残業代をまとめ払いするのは違法です。
「残業代の後払いの違法性」の解説
固定残業代なら通常の賃金と区別する必要がある
残業代を、通常の賃金とは別に払う方法に、「固定残業代」があります。固定残業代とは、あらかじめ残業代に充当する一定の金銭を、事前に払っておく制度。基本給に含む方法や、みなし残業手当として払う方法などがあります。
これと同じく、ボーナスに残業代を含んでいるのだとすれば、通常の賃金との区別が問題となります。ボーナスのなかのいくらが残業代なのか、明示されていなければ、この点でも違法です。
「労働問題に強い弁護士の選び方」の解説
まとめ
今回は、残業代の正しい計算をよく理解するために、ボーナスをどう扱えばよいか、解説しました。
残業代とボーナスには、難しい法律問題が2つあります。「ボーナスに残業代を含められるか」と、「ボーナスを残業代の基礎に入れて計算すべきか」の2点です。いずれも、勤務する会社の制度によって結論が異なります。ただ、会社が正しく労務管理せず、不当に残業代を減らそうとするなら、違法の可能性は高いです。
残業代請求を検討している方、ボーナスの扱いが正しいか不安なら、ぜひ弁護士に相談ください。
- ボーナスと残業代は別物なので、いずれも損せず請求しておく必要がある
- 残業代の計算では、ボーナスが固定額ならば、残業代の基礎賃金に加算できる
- ボーナスのなかに残業代を含むという扱いは、違法の可能性が高い
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