勘違いセクハラ、というケースをご存じでしょうか。
セクハラ加害者とされる人は、悪意をもってセクハラを行う人ばかりではありません。セクハラ加害者だと指摘されてはじめて気付くのが、「勘違いセクハラ」の典型例です。
被害者は喜んでいなかったのか
好きだからやっていたのだけだ
このような人は、セクハラしているとは自分では全く思ってもいません。被害者にとってはセクハラだと感じても、セクハラしている当人が「勘違い」。セクハラでなく「ジョーク」「恋愛」「相手も好意がある」などと思っているなら、被害者からすれば勘違いにもほどがあると感じるでしょう。
勘違いセクハラが続くと、「好きだから」と思ってした行為もエスカレートしてきます。重度のセクハラとなり、ストーカーとも言われかねない状況に発展することもあります。
今回は、セクハラ問題の相談のなかでも、加害者がセクハラだと気付けない「勘違いセクハラ」について、労働問題に強い弁護士が解説します。
- 悪意のない勘違いセクハラこそ、放置して悪化させがちで危険
- 勘違いセクハラは、男女の性別の差、考え方の違いによる誤解から生まれる
- 勘違いセクハラは軽度のうちに対策するのが被害者・加害者いずれにも最善となる
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悪意のない「勘違いセクハラ」は危険
セクハラ(セクシュアルハラスメント)は、「性的嫌がらせ」と訳されるとおり、嫌がらせしようという「意図」をもって行うのがその典型例です。つまり、嫌がらせ目的でするハラスメントのうち、性的な意図を伴う言動が、セクハラになります。
例えば、肉体関係を強要したり、「愛人にならないと降格にする」と脅したり、性行為を拒否されたのを理由に減給したり、といった行為や、あえて職場で過激な下ネタをいうなどのセクハラ発言や、パソコンのデスクトップを卑猥な画像にしたりといった態度は、セクハラにあたるのが明らかです。
しかし、必ずしも加害者に「意図」のあるケースばかりではないのが、セクハラ問題の難しいところです。セクハラ相談のケースのなかでも、悪質で、意図的なセクハラは、実はそれほど多くありません。加害者が「セクハラではない」と勘違いしていたり、そもそも「セクハラかどうか」の判断すら難しいケースほど、被害者は悩み、苦しんでいるのです。
今回は、悪意のない「勘違いセクハラ」について、その予防と、実際に勘違いセクハラの被害にあったときの対策を中心に解説します。
「労働問題に強い弁護士の選び方」の解説
勘違いセクハラのケース4つ
社長や上司、人事部などに呼び出されて、セクハラを厳重注意されて初めて、自分の行為の愚かさに気づくことがあります。このような事態を回避するために、よく法律相談のある、典型的な勘違いセクハラのケースについて解説していきます。
勘違いセクハラを起こす加害者は、被害者が不快に思ったり、傷ついたりするのに気付いていないことが多いです。セクハラかどうかは、「加害者がセクハラだと思っていたか」「加害者に悪意があるか」で判断されるのではなく、「被害者が不快に思ったかどうか」で決まる点を理解しましょう。
【勘違いセクハラ①】「恋愛のつもり」
「恋愛のアプローチのつもりが、勘違いセクハラになっていた」というのが、勘違いセクハラの1つ目の相談事例です。「女性側にとって、最初からアプローチが迷惑だった」というケースもあれば、「最初は恋愛だったが、別れた後の未練のあるアプローチが勘違いセクハラに繋がった」「恋愛していたが片方だけが冷めてしまった」といったケースもあります。
恋愛に伴う勘違いは、女性の気持ちをわからない男性が起こすと思われがちですが、異性に好かれてきた、見た目や経歴に自信のある「モテる男」でも、「恋愛のつもりだった」「好きだからアプローチしたのに」という勘違いセクハラに陥ることがあります。社内恋愛は、嫌がらせやストーカーなどの勘違いセクハラと紙一重だと肝に銘じ、慎重に対応する必要があります。
「社内恋愛を理由とする解雇」の解説
【勘違いセクハラ②】「嫌がっていない」
勘違いセクハラの2つ目の事例は、セクハラ被害者となった人の態度が、加害者の側からみると「嫌がっていない」と受け取られてしまっていたケースです。
セクハラを受けた際に、面と向かって「ノー」といえる被害者は、むしろ少ないでしょう。はっきりと拒絶しない態度は、セクハラ加害者の誤解を生み、勘違いセクハラになってしまいます。加害者のなかには、「むしろ自分に好意があると思っていた」という人さえいます。
特に女性社員は、男性社員の積極的な誘いに対して、社内の人間関係を良好に保とうとして、はっきりと断っていないケースも多いです。「無理矢理脅したわけではないから、嫌なら嫌といえばよい」といった加害者の言い分は身勝手であり、実務では、「社内の人間関係を壊したくなくて従ってしまった」という被害者の意見が優先されます。面と向かって「セクハラだ」「嫌だ」「不快だ」とは言いづらいのが当たり前であり、「嫌がっていないと勘違いしていた」というだけでは許されません。
「職場の男女差別の例と対応方法」の解説
【勘違いセクハラ③】「褒めているだけ」
女性を褒める行為がセクハラにつながることもあります。特に、女性の外見、容姿、容貌をほめる行為は、不快感を抱かせるセクハラになってしまいます。
「褒めているだけだ」という勘違いが、褒められた女性にとっての不快感につながり、その結果、勘違いセクハラに発展してしまうというわけです。例えば、「綺麗な脚だね」「おっぱい大きいね」「髪がいいにおいするね」といった発言は、好きな人から言われれば嬉しいのかもしれませんが、職場で言われても不快に感じる人の方が多いことでしょう。「褒めているだけだ」「嫌がっていない、むしろ嬉しいのでは」といった誤解は、勘違いセクハラのもとです。
「セクハラ発言になる言葉一覧」の解説
【勘違いセクハラ④】「ジョーク(冗談)で言っただけ」
男女の意識の差が原因で生じるのが、4つ目の「冗談(ジョーク)で言っただけ」という勘違いセクハラ。セクハラ発言をした加害者は、セクハラになるという気持ちはなく、軽い気持ちで「冗談(ジョーク)」のつもりでいったとしても、言われた方はとても傷ついてしまうケースは少なくありません。不快な気持ちにさせてしまえば、勘違いであっても違法なセクハラ行為となってしまいます。
特に、軽い下ネタのつもりだったという例はよくあります。男性よりも、女性は傷つきやすく、周囲を嫌な気持ちにしてしまう勘違いセクハラ被害は後を絶ちません。
「ジェンダーハラスメント」の解説
勘違いセクハラの加害者になってしまったら?
勘違いセクハラの加害者になってしまったときの対応を解説します。
自分ではセクハラだと全く思っていなかったのに、「セクハラです!」と言われてしまったときは、まずは勘違いを反省し、謝罪するのが大切です。「自分はセクハラのつもりではなかった」と言い訳をしても、後戻りはできません。セクハラ被害を生んでしまったという事実は認めて、適切な事後対応を速やかに進めてください。
不合理な言い訳や、その場しのぎの言い逃れは、セクハラ被害者の主張にかき消される可能性が高いです。被害者の感情を逆なでして、状況を悪化させる危険もあります。会社が調査を開始すれば、不合理な言い逃れはあなたの印象を悪くするばかりで、逆効果となることもあります。軽度の勘違いセクハラにとどまるケースなら、謝罪と反省の態度を示し、セクハラであったと素直に認めて再発防止の努力をすれば、社内でも重度の処分とはならない可能性もあります。
セクハラ問題が、勘違いの限度を超えて重大な問題に発展してしまうと、懲戒解雇となったり、刑事責任を追及されたりといった取り返しのつかない事態となってしまいます。
「セクハラ加害者側の対応」の解説
なお、勘違いセクハラの一部には、明らかに冤罪のケースもあります。言動が軽微であったり、被害者の気にし過ぎであったりなど、「むしろ被害者の方が勘違いだ」といえる場面もあります。
セクハラの事実自体がないときは、加害者だと名指しされてもきっぱりと否定すべきです。それでもなおセクハラの加害者扱いされるなら、弁護士に相談して法的対処をしなければなりません。
「セクハラ冤罪の対策」の解説
勘違いセクハラの被害にあったら?
逆に、勘違いセクハラの被害にあってしまった被害者の方の対応についても解説します。
勘違いセクハラが軽度の場合には、「勘違いを早めになくす」というのが解決の近道です。強固な態度で、セクハラに対する「ノー」という意思表示を明確にすべきです。
面と向かって直接伝えるのは、職場の人間関係から難しいという場合もあります。このとき、上司や同僚、セクハラについての相談窓口などに早めに相談することで、勘違いをしているセクハラ加害者に「自分のやっていることはセクハラだ」と気付いてもらうようにしましょう。
この程度を超えて、勘違いセクハラが重度の場合には、精神的、肉体的なダメージを少しでも抑えるため、セクハラ行為を回避し、慰謝料請求などを行うため、労働問題に強い弁護士にご相談ください。
「セクハラの慰謝料の相場」の解説
まとめ
今回は、被害者と加害者との間の「勘違い」が生む、勘違いセクハラについて解説しました。勘違いセクハラの場面では、被害者と加害者のそれぞれの立場や思いが大きく違うことを理解して対処しなければなりません。
意図して行う悪質なセクハラが違法なのは当然です。被害者としては労働審判や訴訟といった裁判手続きを起こしてでも、慰謝料請求をして解決すべき重大な問題です。しかし、加害者に悪意のないケースもまた、決して甘く見てはいけません。勘違いによって起こるセクハラこそ、事前に予防したり、早期に対処したりしなければ、エスカレートしてしまいます。
勘違いによるセクハラの被害にあった被害者の方、自分はセクハラだとは思っていなかったのに、それは勘違いで、セクハラだと言われてしまった加害者の方、いずれの立場でも、早めに弁護士に相談するのが賢明です。
- 悪意のない勘違いセクハラこそ、放置して悪化させがちで危険
- 勘違いセクハラは、男女の性別の差、考え方の違いによる誤解から生まれる
- 勘違いセクハラは軽度のうちに対策するのが被害者・加害者いずれにも最善となる
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【セクハラの基本】
【セクハラ被害者の相談】
【セクハラ加害者の相談】
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