セクハラ行為、セクハラ発言してしまい、セクハラの加害者となると、様々な責任が生じます。具体的には、雇用契約違反、民事責任のほか、刑事責任も負います。
無理やりレイプするなど、重度のセクハラ加害は、不同意わいせつ罪、不同意性交等罪などの刑法違反。逮捕されて、刑事罰を受けるおそれもあります。
刑事罰になりそうだが、有利に立ち回れないか
被害者と示談したいが謝罪は受け入れられない
このようなケースでセクハラの重い責任を免れるためには、被害者との示談が効果的。そして、示談のタイミングで重要なのが、被害者に読んでもらうセクハラの謝罪文です。
セクハラは違法であり、やってはならないのは当然ですが、被害者に気持ちを伝え、示談してもらいやすくするためにも、セクハラ謝罪文の書き方をよく理解してください。今回は、セクハラの謝罪文について書式・ひな形を示し、労働問題に強い弁護士が解説します。
- セクハラの謝罪文は、セクハラの事実を認め、反省、謝罪を示す文章
- セクハラの謝罪文は、被害者に出すが、在職し続けるときは再発防止策が大切
- セクハラの謝罪文は、書式・ひな形を実情に沿って修正し、自分の言葉で書く
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それでは早速、セクハラの加害者が、被害者に交付するとき謝罪文の書式、ひな形の文例を紹介します。ぜひ、テンプレートとしてご活用ください。
謝罪文
○○○○様
この度は、私の配慮を欠く行為により、○○様に多大なるご迷惑をお掛けし、大変申し訳ございませんでした。原因はもっぱら私のセクハラ行為に関する知識のなさ、○○様に対する配慮のなさに起因するものであり、弁明の余地もございません。
(※ セクハラ行為を認めること)
(※ セクハラ被害者に対する謝罪の意)
セクハラ行為との指摘を受けて初めて、私の非常識かつ非礼な行為が、いかに○○様のご気分を害したかを痛感し、深く猛省するばかりです。
先般の私の分別わきまえない行為によって○○様を痛く傷つけてしまったことは取り返しのつかないことであることは十分承知の上ですが、○○様の損害を少しでも填補し、私の反省と謝罪の意を示すため、○○様の損害を賠償させていただきたいと考えております。治療等にかかった実費がございましたら、その旨お申し付けくださいませ。また、心ばかりではございますが、精神的な損害を慰謝するため、誠心誠意の賠償をおこないたく存じます。
(※ セクハラ被害者への示談の提案)
もし、直接謝罪する機会を頂けるのであれば、改めて謝罪を致します。
今後は、どのような行為・発言がセクハラ行為に該当するかを十分に理解し、セクハラが禁止された行為であることを肝に銘じ、社会人としての自覚をもった行動をするよう誓います。また、○○様には今後二度と同様の行為を行わず、再発させないことをお約束申し上げます。
(※ 今後の再発防止策)
改めまして、この度は私の不適切な行為により多大なるご迷惑をお掛け致しましたこと、謹んで深く謝罪させていただきます。大変申し訳ございませんでした。
(※ 再度の謝罪文言)
20XX年XX月XX日
○○○○
謝罪文の書き方についての不安、疑問は、セクハラトラブルに精通した弁護士に相談ください。
「セクハラ問題に強い弁護士への相談」の解説
セクハラの謝罪文に書くべき内容
謝罪文例の見本をみてもらったところで、次に、セクハラの謝罪文に書くべき内容を解説します。
サンプル文章の丸写しでは、実情に合った謝罪文とはならず、問題があります。例文を参考にするのはよいですが、結局は自分の言葉で書き直す必要があります。このとき「どのような内容を謝罪文に盛りこむべきか」を正しく理解し、過不足ない謝罪文を作ることが大切です。
セクハラの謝罪文として必要な内容が欠けていると、謝罪・反省の意思が被害者に伝わらないどころか、更に怒りを増し、二次被害を招いてしまいます。一方、余計なことを書いて被害者の怒りを買うのも避けなければなりません。
セクハラ行為を認めること
はじめに、セクハラの謝罪文に書くべき最重要は「してしまったセクハラを認める」という内容です。セクハラをめぐる労働問題は、加害者と被害者の言い分が食い違うこともあります。「そのような言動はしていない」と反論したいでしょうが、目的が「謝罪」にあるなら、細かい記憶違いにこだわってはいけません。
謝罪文では、セクハラしたと認め、自分のしたセクハラが「違法である」と認め、謝罪するのが適切な態度。「思い込みだ」「勘違いだ」など、被害者を責めていると受け取られたり、言い訳とみられたりすれば、「セクハラの自覚がないのか」と怒りを抱かせ、謝罪のはずが逆効果となります。このとき、セクハラの事実は全て、自分の主観ではなく、客観的事実に沿って書くべきです。謝罪文を出したことがかえって誤解を生めば、ますます示談が難しくなります。示談できず、被害者の処罰感情が強いと、刑事責任を問われやすく、社内の処分も懲戒解雇など重くなりがちです。
なお、「被害者の証言と食い違っている」と言われたとき、謝罪の場面における対応は以上の通りですが、謝罪以外の場面(会社への弁明、警察の取り調べなど)では別の対応もあり得ます。
セクハラ被害者に対する謝罪の意
謝罪文を交付した被害者に対して、「セクハラ行為が悪いことだと理解している」と伝える必要があります。そのため次に、謝罪文には謝罪の意思表示、反省の意思表示を十二分に書いてください。被害者との示談や許しにつながる効果的な謝罪文を作るためにも、反省の意思表示が重要です。
セクハラ被害者への示談の提案
謝罪文はあくまでも被害者への謝罪が目的。ですが、セクハラ加害者からすれば重大な関心事は「セクハラ被害者との示談が成立するか」という点でしょう。
というのも、示談が成立すれば、刑事罰を下される可能性は、格段に減るからです。初犯であり、かつ、セクハラの内容もそれほど重度でないなら、示談が成立すれば不起訴が基本となります。社内の責任についても、示談していれば、下される懲戒処分の程度は軽く済む可能性が高いです。
そこで、謝罪文のなかには、示談の提案も入れておいてください。ただし、下心が見えてしまわないよう、示談の提案を書くときには、次の点に注意してください。
- あくまでも謝罪と反省を、文章の中心とする
- 示談の提案は「被害者の損害を補填したい」という理由で書く
- 「お金を払うから許してほしい」などと誤解される書き方をしない
「セクハラの示談」の解説
今後の再発防止策
謝罪の意思は、「過去」に対するもの。謝罪文には「過去」だけでなく「将来」に関することも書いておきます。つまり、「二度と同様のセクハラをしない」「繰り返さない」という誓約であり、約束です。セクハラ問題の解決後、加害者も被害者も会社に残り続けるときは特に、今後の再発は防がなければなりません。少しでも関係を修復するために、再発防止策を謝罪文に書いておくのが重要です。
再発防止策は、できるだけ具体的で、かつ、実現可能なものを考えるようにします。謝罪の気持ちを強調するあまり、再発防止策が非現実的で、実現不可能なものばかりの例がありますが、意味のない謝罪文になってしまいます。
再度の謝罪文言
セクハラの謝罪文では、冒頭に必ず「大変申し訳ありませんでした」などの謝罪文言を書きます。そして、謝罪文の最後にも、あらためて謝罪文言を記載するのが通例です。
ここまで解説した必須項目を盛り込むと、謝罪文はある程度長文になります。全文を通して読んでもらったとき、文の最後にもあらためて謝罪文言があったほうが、セクハラ被害者に反省と謝罪の意思をしっかり伝えられます。したがって、最後にもう一度お詫びの文言を記載してください。
セクハラ謝罪文の形式的な注意点
ここまで解説したセクハラ謝罪文の必須項目は「内容」に関すること。最後に「形式」にも、記載を忘れてはならない項目があります。以下のチェックリストにしたがって確認してください。
- 文章の題名は「謝罪文」とする
- セクハラ謝罪文の宛先となる被害者の氏名を最初に書く
- セクハラ謝罪文の末尾に、加害者である自分の氏名を書く
- 自分の肩書、役職などを書く
- 自分の氏名の末尾に押印する
- 謝罪文の作成年月日を記載する
- 便箋に手書きし、気持ちが伝わりやすいよう丁寧に作る
- 「です・ます」調で丁寧な文体を心がける
- 誤字・脱字をチェックする
「労働問題に強い弁護士の選び方」の解説
セクハラの謝罪文の正しい書き方は?
「謝罪文に書くべき内容」を理解したところで、次に、実際の「書き方」のポイントを解説します。
謝罪文は、心を込めた「お手紙」である必要があります。必須の内容を項目ごとに列挙しても、ただ書き並べただけでは不自然な文章になってしまいます。「書き方」のポイントを理解し、効果的な謝罪文を作成してください。
実情に合わせて修正する
実際に謝罪文を作成するときは、起こしたセクハラ問題の実情にあわせ、加筆、追記、修正を要します。決して、テンプレートをそのまま書き写さないようにしてください。書式・ひな形はネット上に多くありますが、丸写しでは、被害者に反省・謝罪の気持ちが正確に伝わりません(被害者もまた、その程度の文例は目にしているおそれがあります)。
誤記や、事実と異なる記載、不自然な文章があり、丸写しだとバレてしまえば、ますます被害者の怒りを増幅するおそれがあります。書式・ひな形はあくまで「参考」であり、「被害者に反省と謝罪を伝える」という謝罪文の目的をよく理解し、実情に合わせた修正をしてください。
自分の言葉で書く
謝罪文の文例を丸写しすると、文章が堅苦しくなったり、不自然になったりします。それは、自分が普段使い慣れていない言葉だからです。
セクハラ問題に責任を感じるなら、被害者には最大限の礼節をもって振る舞う必要がありますが、あまりに堅苦しすぎると「慇懃無礼」ととられて逆効果のおそれもあります。被害者との人間関係、職場での関係(上司か、部下か、同僚かなど)、セクハラ加害者の普段の行為、性格などに合わせて、不自然な文章にならないよう自分の言葉で伝える必要があります。
謝罪や反省をあらわす感情表現についても、自分の心情にあった言葉を選んでください。
被害者の気持ちになって書く
「セクハラの謝罪文を受けとってほしい」という相談のなかには、自分本位で身勝手な人も少なからずいます。
- 謝罪文を受けとってもらえれば、責任が軽くなるのではないか
- 少しでも自分に有利な行動を起こしたい
- 被害者の悲しみよりも、我が身がかわいい
しかし、セクハラの謝罪文にはデメリットもあります。謝罪文の交付は、被害者の気持ちへの配慮のためにすべきで、「責任が軽くなる」のは結果にすぎないと肝に銘じるべきです。
セクハラの謝罪文は、被害者の気持ちを理解し、被害者の立場を想像して作る必要があります。被害者が、セクハラによって感じたであろう不快感、嫌悪感や恐怖感を具体的に想像して、十分な配慮をもって謝罪と反省の意を伝えるようにしてください。
セクハラの謝罪文を出すデメリット
セクハラ加害者側の相談で、「謝罪文を書きましょう」と弁護士がアドバイスすると、「謝罪文を出すと、セクハラを認めたことになってしまうのではないか」と質問されることがあります。ご不安の通り、セクハラ謝罪文にはメリットもありますが、デメリットもあります。
セクハラの謝罪文のメリットは、本解説の通り、被害感情を緩和し、示談につなげられる点。これに対して、デメリットの典型は、セクハラを争えなくなることです。
セクハラ謝罪文を有効活用するには、セクハラを認める文言を書かなければなりません。そのため、謝罪文を出した後で、セクハラの事実を否認し、セクハラ冤罪だという反論はできません。「セクハラをしていない」「被害者の証言と食い違っているが、自分の方が正しい」「被害者が嘘をついている」と考えているなら、謝罪文を出さない方がよいケースもあります。
言いたいことがあるからといって、言い逃れや、加害者寄りの謝罪文を出せば、セクハラ被害者の感情を害して、かえって逆効果です。セクハラ謝罪文を出す方がよいケースは、デメリットよりメリットが大きいケースに限られます。セクハラ謝罪文を出すデメリットの大きさが気になるならば、いっそ「謝罪はしない」という手もあります。
なお、セクハラ加害者で、冤罪を主張したい場合、以下の解説を参考にしてください。
「セクハラ加害者側の対応」「セクハラ冤罪の対策」の解説
セクハラの謝罪文の注意点
最後に、セクハラの謝罪文を作成し、被害者に交付するときの注意点を解説します。
セクハラ謝罪文では、やってはいけない禁止事項や、むしろ不利になりかねないデメリットが存在します。せっかく謝罪するなら、最大限の効果を生めるよう、注意して慎重に進めてください。
言い訳(弁明・反論)を書かない
「謝罪文」の名から察する通り、謝罪文を提出せざるを得ないケースは、既にセクハラの事実を認めざるを得ず、言い逃れできない事態になっています。
この段階になってなお、言い訳や弁明、被害者証言への反論とみられる文を書いてはいけません。かえって被害者の感情を害し、「反省していないのではないか」と疑われてしまいます。そのような文章ならいっそ出さない方がよいでしょう。
謝罪文に次のような文言があると、被害者の性格によってはやぶ蛇のリスクもあります。
- 「思い違いでセクハラしてしまった」
- 「自分は気付いていなかった」
- 「自分のことが好きなのではないかと勘違いした」
- 「つい行き過ぎてしまった」
「セクハラの謝罪文に書くべき内容」にあてはまるような、事実と謝罪の意思だけ書き、自分の意見や気持ちは極力書かないのをおすすめします。
抽象的であいまいな記載はしない
セクハラ行為を認め、反省し、謝罪することは、セクハラ加害者にとって不利になる可能性があります。謝罪文を出してしまった以上、「やはりあれは嘘だった」というわけにはいかないからです。そのため、謝罪文を出すことに「怖い」と思う気持ちがあるのは十分理解できます。
しかし、せっかく謝罪文を書くのにそのような気持ちでは、意義ある文章は書けません。言い逃れの気持ちが先行し、抽象的であいまいな記載だと、伝えたいことがよくわからない文章になります。セクハラの謝罪文は、できるだけ具体的に書くのがポイント。特に、許されて仕事に残れるなら、今後の再発防止策は、できるだけ具体化しましょう。
「安全配慮義務」の解説
謝罪を受け入れてもらえたら、示談書を作る
謝罪文が十分な効果を発揮し、被害者に無事、謝罪を受け入れられると、示談が成立するケースもあります。セクハラ問題について被害者と示談するときは、示談書を必ず作成しましょう。示談書を作ることで「示談が成立した」ことを客観的な証拠に残すことができます。示談書は、被害者による更なる責任追及を防ぎ、刑事罰や懲戒解雇などの重い責任を回避できる効果があります。
このとき、適切な示談金の額は、ケースによって異なります。セクハラといっても、その行為態様の重さ、違法性、悪質性、頻度や回数により、責任の程度が変わるからです。内容にもよりますが、セクハラの示談金の相場は30万円~200万円が目安です。
示談金の相場よりも高い金額を請求されて、交渉での減額が難しいケースもあります。あくまで被害者の感情に配慮しながら交渉しなければならないため、自身での話し合いが困難なときは弁護士にご相談ください。
謝罪文は直接渡す?
セクハラの謝罪文は、直接被害者に手渡すのは適切でないケースも少なくありません。セクハラがトラブルとなったとき、被害者は「もう加害者に会いたくない」と思う人も多いからです。
自分が安心したいからと無理に会って謝罪しようとすれば「二次被害」といわれてしまいます。謝罪を受け入れるよう強要するのは独りよがりであり、してはならない禁止行為の代表例です。
謝罪文の適切な渡し方は、ケースによって異なるため、慎重な検討を要します。あくまで、被害者の気持ちになって判断しましょう。直接手渡すのが不適切な場合でも謝罪文を届ける方法には、次のものがあります。
- 弁護士に依頼し、弁護士から送ってもらう
- 被害者の依頼している弁護士に渡してもらう
- 謝罪文を会社に送り、会社の人に渡してもらう
- 仲の良い同僚に頼んで、謝罪文を渡してもらう
まとめ
セクハラ問題を起こし、加害者となったとき、その重い責任を少しでも軽減するには謝罪文が効果的。刑事事件になるほどのセクハラだと、被害者に許してもらえなければ、最悪のケースでは逮捕され、刑事罰を下される危険があります。
このとき、注意点をよく理解し、適切な謝罪文を作らなければなりません。不十分な内容の謝罪文だったり、謝り方が不適切だったりすると、セクハラの謝罪文が、むしろ逆効果のおそれもあります。
今回紹介した謝罪文の書式は、あくまで例文であり、ケースに応じて修正を要します。刑事責任や懲戒解雇など、重い責任になってしまいそうなセクハラ問題では、謝罪文の作成も含めて、弁護士にお任せいただくことができます。
- セクハラの謝罪文は、セクハラの事実を認め、反省、謝罪を示す文章
- セクハラの謝罪文は、被害者に出すが、在職し続けるときは再発防止策が大切
- セクハラの謝罪文は、書式・ひな形を実情に沿って修正し、自分の言葉で書く
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【セクハラの基本】
【セクハラ被害者の相談】
【セクハラ加害者の相談】
- セクハラ加害者の注意点
- セクハラ冤罪を疑われたら
- 同意があってもセクハラ?
- セクハラ加害者の責任
- セクハラの始末書の書き方
- セクハラの謝罪文の書き方
- 加害者の自宅待機命令
- 身に覚えのないセクハラ
- セクハラ加害者の退職勧奨
- セクハラで不当解雇されたら
- セクハラで懲戒解雇されたら
- セクハラの示談
【さまざまなセクハラのケース】