勤務する労働者だと、年に1回、源泉徴収票をもらうでしょう。源泉徴収票は、年末調整のときもらえるとても重要な書類。ですが、紛失したり、捨ててしまったりする人がいます。
転職や、住宅ローンの審査などで、源泉徴収票を要するとき、はじめて重大さに気付くことでしょう。源泉徴収票をなくしてしまったら、どのように対処すべきでしょうか。会社にとって、源泉徴収票の再発行は面倒なものであり、ブラックな会社だと、再発行にすんなりとは応じてくれないこともあります。退職後だと、連絡するのも気まずく、言い出しづらい気持ちもよくわかります。
今回は、源泉徴収票をなくした際の対応と、会社が再発行してくれないときの対策を、労働問題に強い弁護士が解説します。
- 源泉徴収票は、転職や結婚など、人生の節目のタイミングで必要となることが多い
- 源泉徴収票の交付は、法律上の義務なので、再発行にも応じる必要がある
- 会社が、源泉徴収票を再発行してくれないなら、専門家や税務署に相談する
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源泉徴収票とは
源泉徴収票とは、毎月の給与から天引きされた税金(所得税、復興特別所得税)の金額と、給与の支払総額を証明するために、会社が労働者に対して発行する重要な書類です。
源泉徴収票について、「年収を知れる」程度の認識しかない労働者もいます。しかし、源泉徴収票は、年収を知らせる役割ではなく、税金に関するとても重要な書類です。労働契約を結ぶ労働者は、毎年末に年末調整をしてもらい、このとき、源泉徴収票が交付されます。
また、年の途中で転職する際にも、退職する会社から源泉徴収票をもらうことができます。
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源泉徴収票が必要なケースとは?
次に、労働者側で、源泉徴収票が必要となるケースにどんな場面があるか、解説します。
確定申告
確定申告は、自分の税金を国に深刻する手続きです。個人事業主、フリーランスが行うイメージが強いですが、サラリーマンでも、確定申告が必要なケースがあります。雇用されて働く労働者でも、確定申告を要するのは、例えば次のケースです。
- 給料が、年収2000万円を超える労働者
- 副業による収入が、年収20万円を越える労働者
- 会社を退職したが、年末調整をしてもらっていない労働者
- 2ヶ所以上の会社から給料をもらう労働者
- 住宅ローンを組んで不動産を購入した労働者
副業が許される会社だと、その収入が年20万円を超える方も少なくないでしょう。上記の条件に該当すると、確定申告の際、給料をもらう会社の発行する源泉徴収票が必要です。
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住宅ローンの審査
住宅ローンでマイホームを購入する方は、源泉徴収票が必要です。
住宅ローンの審査の際、年収を証明するため、源泉徴収票の提出を求められることが多いからです。源泉徴収票を出せば、給料が主な収入である労働者にとって、年収を容易に証明することができます。住宅ローン以外にも、融資を受けるときなど、年収の証明に源泉徴収票を要するケースは多いものです。
扶養親族の追加
家族の扶養親族となるときにも、源泉徴収票が必要です。いわゆる「扶養に入る」タイミングです。
扶養する側の家族が勤務する会社が、扶養される家族の源泉徴収票を提出するよう求めるからです。その理由は、扶養に入れるかどうかは、扶養される側の年収が要件となるためです。具体的には、いわゆる「103万円の壁(給与所得のみの場合、収入が103万円以下)」を超えない必要があります。
転職
年の途中で再就職、転職するときも、源泉徴収票が必要となります。一年の途中で退職するときには、年末調整を待たずに退職してしまうことになります。転職先の会社が、引き継いで年末調整しなければならず、その際、源泉徴収票が必要となるからです。
年末調整までに源泉徴収票が用意できなかった場合など、転職先の会社に年末調整をしてもらえないときは、自分で確定申告をしておかなければなりません。
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源泉徴収票をなくしたとき、再発行する手続きは?
次に、源泉徴収票が手元にないとき、再発行の手続きについて解説します。
節目のタイミングで求められることの多い源泉徴収票。重要な書類ですが、残念ながら紛失してしまう人もいます。マイホーム購入、結婚や転職など、人生の重要なイベントがはじめての経験な方も多いでしょう。毎年のようにもらう源泉徴収票の重要性に気付かないのももっともです。
源泉徴収票の再発行の依頼先
源泉徴収票の再発行は、給料をもらっている会社に依頼しましょう。現在も勤務を続けているなら、会社に直接申し出てください。
源泉徴収票は、給与計算をしている部署で作られていることが多いです。多くの会社では、総務部、人事部、経理部などが、再発行の依頼先として適切です。小さな会社では、社長に直接頼むのが最善である場合もあります。
すでに退職していたら、前職の会社に依頼します。源泉徴収票の再発行は、しばしばあるので、なにも気まずいことはありません。
紛失してしまった落ち度を認め、丁寧に依頼しましょう(郵送してもらうときは、切手と封筒を準備しておくと応じてもらいやすいです)。
源泉徴収票の再発行にかかる期間
源泉徴収票の重要性に気付かないと、必要なタイミングであわてて再発行を依頼することになります。すると「源泉徴収票の再発行に、どの程度の期間がかかるか」を理解しておく必要があります。
会社には、労働者の源泉徴収票を保管しておく義務があります。再発行を依頼してから、あまりに長時間かかるならば、この義務に違反するおそれがあります。なので、あまり長い期間を想定する必要はなく、1週間ほど待てば十分でしょう。
なお、年末、確定申告、決算などのタイミングは、忙しいこともあります。経理部や、任せている税理士が忙しい時期だと、少し時間がかかる可能性があります。
源泉徴収票の再発行にかかる費用
源泉徴収票を再発行してほしいとき、かかる費用も心配でしょう。一度はもらった源泉徴収票を再発行してもらうのですから、会社にとって手間に違いありません。会社によっては、源泉徴収票の再発行には、手数料を求めるところもあります。
ただ、源泉徴収票の重要性から考えると、あまりに高額な費用は不適切です。かかる「実費」程度ならまだしも、それを超える額は不当なこともあります。あきらめさせるために高額の金銭を請求したり、罰として違約金を課したりする会社には問題があります。
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会社が源泉徴収票を再発行してくれない時の対処法
会社に、源泉徴収票の再発行をしてもらえないとき、どう対応したらよいでしょう。
源泉徴収票を作り、労働者に交付するのは、法律上の会社の義務。たとえ労働者がなくしてしまって再発行を求めても、断る会社はさほど多くはありません。しかし、法律知識の不足するブラック企業だと拒否されることもあります。既に退職していたり、懲戒解雇をされて円満退社ではなかったりすると、トラブルになってしまいます。
税務署に通報する
源泉徴収票を交付しないのは、所得税法に違反する問題行為です。なので、再発行を断られたら、会社の所在地を管轄する税務署に通報しましょう。源泉徴収票の再発行を断られた理由を明らかにし、「源泉徴収票不交付の届出書」を提出します。すると、税務署が会社に指導してくれて、大きなプレッシャーとなることが期待できます。
税理士や社会保険労務士にお願いする
給与計算を、社外に外注している会社もあります。よくある例は、顧問税理士、顧問社労士に委託しているケースです。会社に直接頼みづらいとき、税理士や社会保険労務士に依頼し、再発行してもらう手もあります。
税理士や社会保険労務士は、法律をきちんと守って対応してくれます。必要なケースでは、会社にとりなして、源泉徴収票を再発行してくれるでしょう。なお、委託料や顧問料を払うのはあくまで会社であり、あなたではないので、礼を失しないよう、丁寧に頼まなければ、協力は期待できません。
弁護士に代わりに請求してもらう
それでもなお、源泉徴収票の再発行がされないなら、最終手段として弁護士に頼みましょう。弁護士が代わりに請求すれば、再発行に応じてくれる会社がほとんどです。
退職後であり、前職への連絡がしづらいときも、弁護士に代わりに連絡してもらえます。円満退職でないときや、会社に連絡するとパワハラを受けそうなときに活用できる手です。退職時は、特に労働問題がよく起こるタイミングです。円滑に辞めるために、退職の連絡や、その後のやりとり、引き継ぎなどを弁護士経由ですることもあります。
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会社が倒産しても源泉徴収票は再発行してもらえる
最後に、源泉徴収票をもらわないうちに、会社が倒産してしまった時の対応を解説します。特に、退職済みの前職が、倒産してしまったケースでは、「源泉徴収票は再発行してもらえるのだろうか」と心配でしょう。
結論からいえば、倒産した会社でも、源泉徴収票を再発行してもらうことができます。会社が既に倒産手続きを開始している場合には、裁判所から「破産管財人」が選任されます。破産管財人は、破産手続において財産を処分するために仕事をする弁護士のことであり、源泉徴収票の再発行も、破産管財人に依頼することができます。
ただし、破産手続のなかで処理するため、一定の時間がかかるおそれがあります。年収に関する資料が入手できない場合に備え、「源泉徴収票不交付の届出書」を税務署に提出しておきましょう。
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まとめ
今回は、源泉徴収票の再発行について解説しました。
税金を納めたり、年収を証明したりするのに、源泉徴収票は重要な資料。捨ててしまったり、紛失してしまったりして手元にないとき、再発行が必要となります。
多くの会社では、再発行を依頼すれば、快く交付してくれます。しかし、悪質な会社だと、足元を見て嫌がらせをしてくるかもしれません。会社が再発行してくれない場合に備え、必要となる時期には前もって依頼しておきましょう。退職した会社との、手続き上のトラブルについても、弁護士に相談すれば解決することができます。
- 源泉徴収票は、転職や結婚など、人生の節目のタイミングで必要となることが多い
- 源泉徴収票の交付は、法律上の義務なので、再発行にも応じる必要がある
- 会社が、源泉徴収票を再発行してくれないなら、専門家や税務署に相談する
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