不当に評価が低く、理由が明らかでないとき、パワハラの一種となるケースがあります。
人事評価は、自身の働きに対する会社の評価ですが、不当な扱いに悩む方は少なくありません。注意や指導がなく、成果を上げている場合、努力が正当に評価されないと感じる方もいます。
人事評価は、給料や賞与(ボーナス)、昇進・昇格といったキャリア形成に直結する重要な手続きです。不当な評価によって失うものは大きく、屈してはなりません。人事評価に納得がいかないのに放置していると、モチベーションは低下し、業務でミスをしたり、さらに低い評価につながったりといった悪循環に陥るおそれもあります。
今回は、不当な人事評価の違法性、相談先や不服申立ての方法について、労働問題に強い弁護士が解説します。
不当な人事評価とはどのようなケースか

不当な人事評価とは、従業員の業績や能力を適正に評価せず、不公正な方法で行われる評価を指します。以下ではまず、不当な人事評価とはどのようなものか、類型に分けて解説します。
主観や個人的な好き嫌いによる偏り
不当な人事評価の1つ目は、評価者の主観や個人的な好き嫌いが全面に出た評価です。
例えば、実績や成果は十分なのに、髪型や服装、態度が気に入らないといった理由で低く評価するケースです。これまで高い評価だったのに上司が変わった途端に評価が下がったとき、新しい上司の個人的な好みが影響した疑いがあります。同じ勤続年数や成績なのに、他の同僚より明らかに評価が低い場合も、評価者の主観が原因ではないかを疑いましょう。
評価には一定の裁量があり、企業理念などの「価値観」に基づく側面はあります。とはいえ、私情を挟んで主観で評価するのは不当です。社長や上司などの評価者は、他人の人生を左右する重責を負う以上、主観を排除するよう心がけるべきです。
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一貫性のない評価
不当な人事評価の2つ目が、一貫性のない評価です。
人事評価を公正に行うには、一貫性を保つ必要があります。この「一貫性」には、過去の自分との比較、他人との比較の2つの軸があります。
客観的な基準に基づいて公正に評価していれば、過去の良い評価が突然大きく覆るのは不自然です。また、評価者が変わることで大幅に変動する(例えば上司の変更や、一次考課者と二次考課者の判断の隔たり)のも不適切です。同じ業績や行動に対し、従業員ごとに異なる評価がなされるのも一貫性がなく、不当であると考えてよいでしょう。
不明確で不透明な評価基準
不当な人事評価の3つ目は、不明確で不透明な評価基準に基づくケースです。
評価基準が曖昧だと、判断過程の合理性をチェックできません。また、どのように改善すれば良い評価となるかが理解できないと、次に活かせず、会社にとってもデメリットがあります。
契約件数や売上といった数値化できる指標を基準とした評価は明確ですが、実際は貢献度やリーダーシップ、熱意などの数値化の難しい要素を評価システムに組み込む会社は少なくありません。人事評価制度が定められていても、実際の運用が不適切なケースもあります(例:成果主義だと言いながら、実際は年功序列に近い運用をされているケースなど)。評価の基準が説明されていない場合、不公正に実施されている可能性を疑ってください。
偏見や差別、先入観に基づく評価
不当な人事評価の4つ目は、偏見や差別的感情、先入観に基づく評価です。
例えば、次のようなケースが該当します。
- 「女性は妊娠すると寿退社するから昇進させない」として男性より評価を下げる。
- 「外国人だから」という理由で昇給させず低賃金で働かせる。
- 「高卒は大卒より仕事ができない」として、実際の業績を見ずに賃金を決める。
こうした評価はいずれも、職務内容や成果といった本来対象とすべき事項を無視しているだけでなく、法律で禁止された差別に該当します。
- 国籍、信条、社会的身分を理由とした労働条件についての差別的取扱いの禁止(労働基準法3条)
- 性別を理由とした差別的取り扱いの禁止(労働基準法4条、男女雇用機会均等法6条)
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不適切なフィードバック
不当な人事評価の5つ目は、不適切なフィードバックを受けるケースです。
人事評価は本来、従業員に改善点を指摘して将来に活かすために行われます。しかし、フィードバックが正確でなかったり、そもそも存在しなかったりすると、その役割を果たせないばかりか、労働者のモチベーションを削り、成長の機会を奪ってしまいます。
評価が低いのに具体的なフィードバックがない場合や、矛盾するフィードバックで混乱させる場合が該当します。例えば、良い点が指摘されている一方で、注意や指導はなく、それにもかかわらず総合評価は非常に低いといったケースは不自然でしょう。
報復的な評価
不当な人事評価の6つ目は、報復的な評価です。
人事評価は従業員の処遇を決めるためのもので、見せしめや吊し上げをすることに正当性は全くなく、違法なパワハラといっても過言ではありません。会社には懲戒権があり、就業規則の定めに従って、企業秩序違反の行為に対して制裁を下せます。しかし、こうした制裁は、決められた手続きを遵守した懲戒処分によるべきであり、人事評価で行うべきではありません。
さらに、有給休暇の取得や残業代の請求といった正当な権利行使を理由に評価を下げられるのは明らかに違法であり、断じて許されません。
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直近の事例を過度に重視した評価
不当な人事評価の7つ目は、直近の事例が過度に重視される評価手法です。
人事評価は、1年や半期など一定の期間を対象として定期的に実施されます。このとき、対象期間の全体について評価を下すのであり、その中の特徴的な事実だけを対象とするのではありません。直近の事例だけが過度に重視される場合、不当といってよいでしょう。
記憶に新しい出来事に影響されやすい傾向があるものの、そのような偏った評価を防ぐのも、評価者、ひいては企業の責務です。例えば、一度失敗しただけで、これまでの努力を帳消しにするような低評価を下されるのは不当といってよいでしょう。
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事実に基づかない推測による評価
不当な人事評価の8つ目は、事実に基づかない推測による評価です。
問題ある事例として、具体的に次のようなケースがあります。
- 一人の上司の意見だけを鵜呑みにする。
- 他の同僚からのプラス評価を聞かない。
- 直接見聞きしていない情報のみで評価する。
- 物的な証拠を収集しない。
- 本人の弁明を一切聞かない。
評価は事実に基づくべきであり、虚偽や推測を理由にしてはいけません。労働者側では、低い評価をされたら、前提となる事実がどのようなものか、裏付けを確認する必要があります。会社に一人で質問するのが難しい場合、弁護士を通じて警告書や質問書を送る方法があります。争うタイミングかどうか不安な方は、無料相談で聞いてみるのがおすすめです。
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社内の評価手続きが守られていない場合
不当な人事評価の9つ目が、会社が定めた人事考課に関する規定が守られていない場合です。
例えば、定期的な面談を実施して評価をフィードバックするルールがあるにもかかわらず、上司が多忙を理由に面談を拒否し続けるケースが該当します。評価基準が存在しても、運用プロセスが規定通りに行われていなければ正当に評価されたとは言えません。
このような手続き違反の評価が是正されずに放置されているような状況であれば、会社全体の体制に問題があると考えられます。
不当な人事評価は違法なパワハラとなる

不当な人事評価は、従業員の労働環境を悪化させ、精神的な苦痛を与えるため、場合によっては違法なパワハラに該当する可能性があります。違法なパワハラであると判明したら、慰謝料をはじめとした損害賠償を請求するなどして対抗する必要があります。
不当な人事評価の違法性
不当な人事評価が違法となる場合、労働者には精神的苦痛が生じます。
この場合、会社や社長、上司が意図的に行った場合は「故意」、公正に評価すべき注意義務を怠った場合は「過失」があり、不法行為(民法709条)に該当すれば、損害賠償の請求が可能です。
パワハラは職場における優越的な地位を利用した嫌がらせですが、「評価者」という強い立場で行う不当な人事評価は、まさにパワハラの典型例と言ってよいでしょう。
それでもなお不当な評価が発生する理由と原因
不当な人事評価が違法なパワハラになる可能性があるにもかかわらず、実際には問題のある評価をする会社は数多く、苦しむ労働者は後を絶ちません。
不当な人事評価が発生する原因には、複数の理由があります。
- 評価者の能力不足
人事評価には高度なスキルを要します。評価者はその重大性を理解し、主観を徹底して排除すべきです。管理職でも人事評価の能力が十分とは限らず、中間的で無難な評価ばかりになったり、逆に極端な評価をしてしまったりする例があります。 - 古い組織の体質や慣習
一部の企業には古い慣習や文化が根強く残り、特有の価値観が根付いている結果として、公正な評価が行われにくい環境となっていることがあります。 - 評価基準の不透明さ
そもそも会社として評価基準や制度が設けられていないとき、上司の主観に依存するしかなく、一貫性のない評価が行われやすくなります。
以上のような理由で不当な評価をされたと感じた場合は、証拠を集め、適切な相談先に相談することが、問題解決に向けた第一歩となります。
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不当な人事評価のリスクとデメリット
不当な評価が行われると、労働者は様々な不利益を被ります。
正当な人事評価のプロセスには、従業員のモチベーションを向上させ、成長を促し、問題点を修正することで企業組織を強化するといった重要な役割があります。
しかし、評価が不当だと、モチベーションは低下します。上司の主観で評価されれば、やりがいは失われ、業務効率は下がり、生産性も低下します。その結果、長時間労働が蔓延し、心身の健康に悪影響が生じてしまうケースもあります。不当な評価が重なった結果、問題社員のレッテルを貼られ、活躍できないという悪循環に陥り、最終的には退職せざるを得ない方もいます。
心機一転して新たな職場に転職しようにも、不当な人事評価のもとで我慢して働いていた人は予想以上にスキルが身に付いておらず、能力も伸ばせていないことも多いです。
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不当な評価への対応と不服申立ての方法

次に、不当な評価への対応と不服申立ての方法を解説します。
不当な人事評価を受けた労働者は声を上げるべきです。適切に対処して異議を述べることで自身の権利を守る必要があります。「労働」は単なる生活の糧を得る手段ではなく、存在意義やアイデンティティを維持する活動でもあります。不当な評価を受けた場合、自身の価値が損なわれるおそれがあるため、早急な対策が必要となります。
評価基準の開示を求める
まず、評価が不当であることを証明するため、証拠を集めることが重要です。
評価が不当かどうかを判断するには、評価が「本来どうあるべきか」を理解する必要があり、基準の開示が不可欠です。評価基準が存在しないか、不合理である場合、不当評価の可能性が高いです。また、開示された基準から乖離した評価は、評価者の主観が反映されている疑いがあります。
直属の上司などに問い合わせても開示されないときは、人事部や総務部、場合によっては社長への連絡がおすすめです。まだ「不当かどうか」が断定できない段階では、感情的にならず、事実に基づいて冷静に話を進めてください。
評価のフィードバックを求める
評価者に対してフィードバックを求めることも必要な対応です。
低い評価になった理由を説明してもらうことで、自身の認識との齟齬を埋めることができます。今後、どのように改善すべきかを質問すれば、建設的に議論を進められます。評価表などの書面上の記載だけでは疑問が残る場合でも、フィードバックを受けてみると納得できたり、努力して改善しようという気持ちになったりする例もあります。
将来の公正な評価と目標設定を求める
不当な評価に不服を申し立てた後も、会社に残って活躍したい方もいるでしょう。
不当な評価を繰り返されると、社内での評価が定着してしまいます。そのため、少なくとも次回以降は公正で納得感のある評価をしてもらえるよう働きかけるべきです。次回以降の評価に納得するためにも、評価基準の開示とフィードバックを適切に受け、改善策を提案してもらうようにしてください。あわせて、将来の目標を明確にすることも大切です。
被評価者の意見の正当性を伝える
不当な評価に対しては、被評価者としての自分の意見や反論を伝え、その正当性を説得的に会社に伝えてください。直属の上司などの評価者に問題があるケースにおいて、会社としては被評価者の意見の方が正当だと判断すれば、人事評価を覆すことが可能です。
正当性を伝える際は、逆に自分の意見や感情が先行しないように、具体的な数値を示すなど、事実に基づいて話しましょう。中立的な判断を求めるためにも、評価者と口論するのではなく、評価者とは別の社員(上位の社員や社長など)に相談するのが望ましいです。
不当な評価の撤回を要求する
不当な人事評価であることが判明したら、会社に撤回を要求します。
不当な評価の撤回要求は、内容証明を用いて証拠に残るように行ってください。この段階で弁護士名義で警告を行えば、強いプレッシャーにより評価を見直してもらいやすくなります。実際に、弁護士が警告書を送付したことで会社が調査し、評価者の独断で進められていた不当な評価が明るみに出て、再評価が促進されたケースも少なくありません。場合によっては、問題のある上司に対し、懲戒処分や配置転換などが検討されることもあります。
以上のような交渉でも不当な評価が撤回されない場合には、次は裁判手続きを検討します。不当な人事評価についての争いは、次章で詳しく解説する通り、複数の方法が考えられます。
不当な人事評価を裁判で争う方法

人事評価を争うにあたり、交渉が決裂したときは裁判手続きに進むべきです。利用できる救済方法には、複数の選択肢があります。
地位確認請求
不当な人事評価に基づいて降格や降職といった人事上の処分を受けた場合、その違法性を主張して争う方針が基本となります。基となる評価が不適切なら、処分も違法となるからです。撤回を求める方法は「地位確認請求」と呼ばれます。例えば、不当な低評価によって部長から課長に降格された場合、「部長として働く地位にあることの確認」を求める方法です。
裁判手続きは主に、労働審判と訴訟のいずれかが選択されることが多いです。通常訴訟を利用する場合には相当の期間がかかるおそれがあるため、簡易かつ迅速に労働者保護のための柔軟な解決が期待できる労働審判の利用がおすすめです。
被った損害の賠償を請求する
不当な人事評価を受けたときの解決策として、その評価によって被った損失の補填を請求する方法もあります。つまり、不当な人事評価によって労働者の受けた不利益について、労働契約上の債務不履行(民法415条)または不法行為(民法709条)を根拠に損害賠償を請求するものです。
評価自体を覆すことができなかったとしても、不当な評価によって被った損害を回復することができます。請求すべき損害には、給料の差額、将来の逸失利益(正当な評価に基づいて昇給・昇格していれば得られたはずの給料)などがあります。
慰謝料を請求する
最後に、不当な人事評価により被った精神的苦痛について、慰謝料請求も可能です。
慰謝料は、精神的苦痛に対する補償であり、不当な人事評価が不法行為であると認められる場合に請求できます。評価表やフィードバックの内容などによって「評価が不当であること」を証明するとともに、医師の診断書を入手し、精神的な苦痛を受けたことを主張します。
認められる慰謝料額は、労働者の不利益の程度や、評価の不当性の程度によっても異なります。ただし、評価の裁量によっては前章のような救済を図れない場合の次善策と考えるべきで、「不当な評価によって失った給与額」ほどもらえるケースは残念ながら稀です。
「不当降格による慰謝料請求」の解説

人事評価が不当なときの相談先

人事評価が不当であると考えられるときの、適切な相談先についても解説します。
直属の上司などの評価者
不当な評価が疑われるとき、まずは直属の上司など、第一次的な評価者に伝えましょう。直属の上司や身近にいる人ほど、働き方の実態を把握しています。会社の上層部の評価に誤りがある場合や、経営と現場の考え方が乖離している場合、上司が味方になってくれる可能性があります。
人事部もしくは社長
人事部や社長も、不当な評価に関する相談先として挙げられます。
人事部に相談すれば、状況を整理し、評価の過程に誤りがないかを確認してもらえる可能性があります。例えば、直属の上司に嫌われ、不当に低い評価をされたケースの対策となります。不当な評価がパワハラに該当する場合、社内のハラスメント相談窓口に対応を求めるのも対処法の一つです。
ただし、全社的に不当な評価が蔓延している場合や、社長に嫌われて低評価を下されている場合などは、社内での解決は困難であり、社外の相談先を検討してください。
「パワハラ相談先」の解説

労働局や労働基準監督署
外部の相談先として、労働局や労働基準監督署などの行政機関が考えられます。
ただし、労働基準監督署は、労働基準法などへの違反を監督する機関であり、不当な評価やパワハラといった問題に速やかに対処してもらえない可能性があります。この場合、法律知識を得ることが目的なら、各都道府県の労働局に設置された総合労働相談コーナーへの相談がおすすめです。
「労働基準監督署が動かないときの対処法」の解説

労働組合
上司、人事部または社長に相談しても解決が難しい場合、労働組合への相談も検討してください。労働組合に加入しているとき、組合は労働者の権利を守り、サポートしてくれます。
評価の不当性のように全社的な問題であれば、同じ不満を抱える社員が複数いる場合もあり、団体交渉によって評価基準を見直すよう働きかけやすいです。人事考課については、義務的団交事項(労働組合法7条)であるため、会社には、団体交渉の申入れに応じる義務があります。
「労働組合がない会社における相談先」の解説

弁護士
不当な人事評価の問題について有利な解決を得たいなら、弁護士に相談するのが最適です。
不当な人事評価は、解雇や残業代未払いといった典型的な労働問題とは異なり、「弁護士に相談するほどの問題ではないのではないか」と不安に思う方もいますが、大きな誤りです。不利益を過小評価したり、弁護士には対処不能なのではないかと誤解されたりするケースもあるようです。
年功序列型から成果主義型へ移行する会社が多い昨今、人事評価が労働者の処遇に与える影響は非常に大きく、正当に評価されなければ不利益が拡大します。目先の給料が減るという分かりやすい不利益に加え、翌期の評価は、前期の評価を前提として考慮されるために、その不利益は将来にわたって続いてしまいます。
人事評価には、経営判断と結びついた広い裁量が会社に認められるものの、不当な評価に対して不服を申し立てることは非常に重要です。労働者にとって有利な主張をしっかり伝えるには、弁護士を窓口として警告するのが有益です。
不当な人事評価を受けたときは、すぐに弁護士にご相談ください。「正当な評価を受けていない」という悩みは想像以上に苦しいでしょう。弁護士であれば、評価書や注意指導書、その他の手元にある資料をもとに、評価がどれほど不当なのかのアドバイスを得られます。
「労働問題に強い弁護士の選び方」の解説

不当な人事評価を違法だと判断した裁判例

最後に、不当な人事評価を違法であると判断した裁判例について解説します。
不当な人事評価が違法と認められた事例では、評価基準の曖昧さや説明の不足といった問題点が指摘されています。公正で透明性の高い評価を行う責任は企業側にありますが、不当な評価に対して声を上げることで、労働者としても不当な評価を是正する努力をしてください。
労働組合の役職者であったことを理由に昇格を行わなかった点について、予定された賃金額と支給額との差額を損害として賠償請求した事案です。
裁判所は「賃金処遇制度上、個々の労働者に対して一定の条件が整えば従前よりも良い条件のもとに待遇すること、あるいは一定の条件を失わない限り従前より悪い条件のもとに待遇されることがないことを具体的に期待させる取扱いを続けていたような場合に、他に特段の理由もなく、特定の労働者をその期待に反して遇することがあれば、不法行為となる余地があるものとみるべき」とし、「特に労働者が具体的な期待が成立している事情のもとで使用者が労働組合法7条1項1号の定める事情によって特定の労働者を他の労働者に比し劣位に遇することは、労働者の期待権を侵害するものとして不法行為に当たるというべきである」と判断して、本件の人事考課は不当であり、不法行為に該当すると認めました。
ただし、損害額については、昇格できていればもらえたはずの賃金との差額分は認めず、不当な人事評価によって他の候補者と競争する地位を奪われたことに対する精神的苦痛に留まるとして80万円の支払いを命じました。
降格や配転の無効を求めて争った社員が、出向を命じられ、その期間中、人事考課において平均を大幅に下回った低い点数しか与えられなかった事案です。
裁判所は、人事評価は使用者の裁量で行われるのが基本としながら、性別や社会的身分といった事由に基づく差別的な評価、嫌がらせや見せしめなどの不当な目的のもとに行われた不合理な評価は「社会通念上到底許容できない」とし、人事権濫用であって違法になると判断しました。当該労働者の低い評価は、会社の意に沿わない言動をしたことに対する嫌がらせ、見せしめの目的でされたものと認めるのが相当であるとし、慰謝料300万円の支払いを命じました。
具体的には、次の事実が、人事権濫用とされる理由とされています。
- 考課表に改善点の指摘がないにもかかわらず、一貫して他の従業員より異常に低い点数しかつけられていないこと
- 大きく減点される項目が考課表ごとに一貫していないこと
- 労働実態を直接把握していない2次考課で、1次考課の点数を大幅に下げていること
- 2次考課の点数は、1次考課の低い点数を追認しているか、更に低下させた点数しかなく、点数の上昇がないこと
- 出向中に具体的な改善指導が行われた形跡がないこと
「裁判で勝つ方法」の解説

【まとめ】不当な評価はパワハラ

今回は、不当な人事評価について、その相談先や解決策を解説しました。
不当な人事評価は、報復や見せしめの目的で行われるケースから、差別的取扱いに当たるものまで様々ですが、その態様によっては違法なパワハラとなる可能性があります。不当に評価されたのに放置すると、積み上げたキャリアが台無しになり、精神的な苦痛を受ける危険があります。評価の側面だけでなく、仕事の押し付けや職場いじめなど、他の問題が併発する場面もしばしばです。
適切な対処法を知り、納得のいかない評価には不服を申し立てる必要があります。不当な評価が違法なら、決して泣き寝入りしてはいけません。
人事評価に違和感を覚えたときは、一人で悩まず、弁護士へご相談ください。あなたの主張を弁護士名義の内容証明で送ることで、不当な評価を撤回させたり、今後の評価を慎重に実施させたりして、正当な評価を受けられる環境作りをサポートすることが可能です。



