逮捕された場合、特に気になるのは「会社にバレるのか?」という点でしょう。痴漢や盗撮などの犯罪行為を犯した場合、サラリーマンであれば、会社に知られることは大問題です。犯罪が会社に発覚すると、職場復帰は非常に難しく、懲戒解雇される可能性も高くなります。
逮捕されたからといって、必ずしも処罰されて前科がつくわけではありません。冤罪の可能性もあるため、無罪を主張して徹底的に争うこともできます。しかし、有罪が避けられない場合、できるだけ早期に示談を成立させ、会社に知られないようにするのが有効です。示談が成立すれば、逮捕や起訴を免れる可能性が高く、裁判になって前科がつくこともありません。解雇などの将来の不利益も回避することができます。
今回は、逮捕されたことが会社にバレない方法と、そのための示談の進め方について、労働問題に強い弁護士が解説します。
- 逮捕されても会社にバレないのが原則だが、現実にはバレることがある
- 逮捕されたことを会社にバレないようにするには、早期に示談することが大切
- 示談すれば、逮捕されたり起訴されて前科がついたりするリスクを軽減できる
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逮捕されても会社にバレないのが原則
不幸にも逮捕された場合、何としても会社に知られたくないことでしょう。
結論から言えば、逮捕されても基本的には会社にバレることはありません。警察は、逮捕した際に勤務先へ連絡することは通常ないからです。公私を区別することが原則であるためです。
逮捕された後に起訴され、有罪になっても、基本的には会社にその事実が知られはしません。有罪判決を受けると前科がつくことになるものの、会社には、労働者の前科を調べる方法がありません。労働者もまた、自ら「逮捕された」「処罰された」と会社に報告する義務はないのです。逮捕歴がある場合でも、採用の際にも、逮捕のみなら履歴書に記載する必要もありません。
「履歴書の賞罰欄」「痴漢で懲戒解雇された時の対処法」の解説
逮捕されたことが会社にバレるケース
次に、逮捕が会社にバレてしまうケースについて解説します。
法的には、逮捕されても会社に知られはしないのが原則ですが、実際は、逮捕されると様々な経緯で、会社の知るところとなる場合があります。現実問題として、労働者は職場で多くの時間を過ごすため、逮捕され、身柄を拘束されると、社会生活に支障が生じてしまいます。
会社の業務に関連する犯罪の場合
業務に関わる犯罪なら、逮捕されると会社に連絡されてしまいます。このとき、会社は犯罪の被害者であって、当事者だといえます。例えば、会社のお金を盗むことによる業務上横領罪や、社内のトイレでの盗撮事件といったケースでは、逮捕されればすぐバレることとなるでしょう。
会社が事件に関連している場合、勤務記録を確認する必要があるなど、捜査の一環として会社に連絡がいき、逮捕されたことを知られてしまう場合があります。
「労働問題に強い弁護士の選び方」の解説
逮捕時に同僚や上司に目撃された場合
逮捕時に、会社の同僚や上司に目撃された場合にも、すぐに会社に報告され、逮捕されたことがバレてしまいます。例えば、会社の近くで行った犯罪行為について現行犯逮捕されると、会社の誰かが見ている可能性があります。
なお、重大犯罪で、逃亡のおそれが非常に強いケースでは、例外的に職場で逮捕され、速やかに会社に知られてしまうことがあります。
身柄拘束中に連絡が取れずにバレる場合
逮捕後に勾留されるなど、身柄拘束が長引くと、会社との連絡が途絶え、それを理由にバレてしまうケースがあります。何日も無断欠勤が続くと、会社が不審に思って調査をしたり、警察に問い合わせをしたりした結果、逮捕されていたことが発覚することがあります。
身柄拘束が長期間になり、業務に支障が生じると、それによって解雇されるリスクも高まります。
「無断欠勤を理由とする解雇」の解説
メディア報道された場合
重大な事件や社会的な関心の高い犯罪の場合、逮捕されたり前科がついたりしたことが、新聞やテレビ、ネットニュースなどで報道されてしまうことがあります。事件が大きく取り上げられれば、報道を通じて会社が知る可能性が高いです。
起訴されたことで会社に知られる場合
起訴されても、会社にバレないのが原則ではありますが、実際には、裁判になることで会社に発覚する機会が増えてしまいます。例えば、次のきっかけが考えられます。
- 裁判所に出頭する必要がある
裁判期日は平日に開かれ、必ず出頭する必要があります。有給休暇があればよいですが、そうでないと、不自然な欠勤によって刑事裁判に訴えられていることがバレてしまう危険があります。 - 裁判記録は公開される
裁判は、公開の場で行うのが原則で、誰でも記録を閲覧できます。そのため、会社が、裁判記録を通じて逮捕の事実を知るおそれがあります。注目された事件としてインターネットやSNSに公開されると、情報が拡散されやすくなります。
なお、裁判所からの通知は、自宅に送達されるため、職場に連絡はいきません。また、略式起訴によって罰金刑となる場合、裁判所への出頭は不要なため、バレづらいです。
「有給休暇を取得する方法」の解説
逮捕が会社にバレないためには早期の示談が大切
逮捕されても会社にバレずに済ませるには、迅速に示談活動を進めることが重要です。
示談は、被害者のいる犯罪において、最も重要な情状として考慮されます。被害者との示談が成立すれば、逮捕を避けられ、在宅での捜査に切り替わる可能性が高まります。よほど重大な犯罪や前科のある人でない限り、示談が成立すれば起訴されない可能性が期待できます。
示談すれば逮捕されない
逮捕するには「逮捕の理由」「逮捕の必要性」という条件を満たす必要があります。そして、「逮捕の必要性」とは、逃亡や、罪証隠滅のおそれがあることとされています。示談が成立すれば、もはや、逃げたり証拠を隠したりする必要はなくなります。そのため、示談すれば、逮捕の可能性は下がり、その結果、会社にバレずに済ませることができます。
示談すれば不起訴になる
日本の刑事司法では、統計上、起訴されると99.9%が有罪判決を受けています。つまり、起訴されるとほとんどの場合、有罪となり前科がついてしまうのです。また、起訴されると裁判への出頭が必要となるため、会社にバレる可能性も高まります。
示談が成立して起訴を回避できれば、その分会社にバレるリスクを減らせます。また、不起訴にならなかったとしても、処分が軽くなることが期待できます。例えば、略式起訴で罰金刑となったり、執行猶予が付与されたりと、処分が比較的軽いものになる可能性があります。
示談すれば紛争を一括解決できる
示談は、刑事事件において逮捕や起訴を回避する効果があるだけでなく、民事事件としても、被害者からの慰謝料や損害賠償の請求を防ぐ効果があります。つまり、示談を成立させることで、刑事・民事の両面において、問題を一括解決することができるのです。
この示談の効果を十分に発揮するには、必ず示談書を作成する必要があります。示談書は、示談をした証拠となり、将来のトラブルを回避する役に立ちます。示談書がなければ、後に再び請求される可能性があり、万が一会社にバレた際にも「示談によって解決済みである」と説明することができなくなってしまいます。
「セクハラで示談する流れ」「労災の示談」の解説
示談すれば被害者の処罰感情を減らせる
示談とは、被害者との話し合いによって解決を図る方法です。その際、しっかりと反省し、謝罪をし、示談金を支払うことで、被害者の処罰感情を和らげることができます。
被害者の処罰感情が強い場合、会社にバレる原因となることがあります。特に、身近な人間関係の中で起こった犯罪では、噂が広まり、結果として会社に伝わってしまう可能性があります。また、ネットに書き込まれれば、会社にバレるだけでなく、炎上してしまうリスクもあります。
弁護士を通じて示談を進める際には、反省文や謝罪文を作成し、被害者に誠意を伝えてもらうことが有効です。誠実な示談活動によって、被害者の処罰感情を和らげることができれば、会社にバレるリスクを大幅に下げることができます。
「労働問題を弁護士に無料相談する方法」の解説
逮捕されたら、会社の対応も弁護士に任せる
犯罪を犯して逮捕された場合、弁護士に刑事弁護を依頼するのが一般的です。しかし、刑事弁護だけでなく、労働問題として、会社との対応についても弁護士に任せるべきです。
弁護士から会社に連絡してもらう理由
捜査機関との交渉や、被害者と接触しての示談交渉といった弁護活動は、自分自身で行うことはできません。むしろ、被害者に直接連絡を取ると、「危険人物」とみなされるリスクが高まってしまいます。刑事弁護は弁護士に任せてこそ効果を発揮するものであり、特に痴漢や盗撮などの性犯罪では、その重要性が一層増します。
これに加えて、会社との対応についても専門的な判断が必要です。長時間を職場で過ごす労働者にとって、犯罪は「刑事事件」であると同時に「労働問題」でもあります。弁護士のアドバイスを受けながら、会社に適切に対応してもらうことで、社会復帰へのハードルを下げることができます。
なお、軽度の犯罪であれば、弁護士の指導のもとで家族から会社に連絡を入れてもらうという方法も有効です。
逮捕されたことをどう伝えるべきか
逮捕されて会社に行けなくなった場合、いずれは会社にその事実を伝えなければならない時が訪れます。この際も、弁護士のアドバイスが役立ちます。刑事事件の進行状況を考慮しながら、適切な回答をする必要があるからです。
刑事事件における身柄拘束の期間は、逮捕について3日間(警察で48時間、検察で24時間)、その後、勾留によって10日間(更に最大10日間の延長)、合計23日間が上限とされます。
早期に釈放される見込みがある場合、会社に「風邪」などの理由で欠勤すると伝えることも可能です。しかし、拘束期間が長引きそうな場合、その嘘が発覚してしまう危険があるので、誠実な対応を取った方がよいでしょう。
「懲戒解雇を争うときのポイント」の解説
逮捕がバレて解雇されたら不当解雇の可能性がある
逮捕されたことが会社にバレると、解雇されるリスクが生じます。
解雇とは、会社が労働契約を一方的に解除することを意味します。会社としては従業員の逮捕にはリスクを感じ、「できれば辞めて欲しい」と思っていることが多いです。
しかし、解雇は労働者に大きな不利益をもたらすため、法律で厳しく制限されます。具体的には、解雇権濫用法理によって、客観的に合理的な理由がなく、社会通念上相当であると認められない場合には、違法な不当解雇として無効になります(労働契約法16条)。
このことは、犯罪を犯して逮捕された労働者にも当てはまります。業務に直接関係する犯罪でない限り、逮捕はプライベートな問題として、仕事とは切り離し、区別して考えるべきです。
そのため、業務に大きな支障がない限り、逮捕されたというだけでは解雇の正当な理由になりません。正当に解雇できるかどうかの判断は、犯罪の種類や内容、刑罰の重さ、報道による社会的影響など、様々な要素が総合的に考慮されます。特に、懲戒解雇のような重い処分を行う場合は、それに見合った重大な犯罪でなければなりません。
「逮捕を理由とする解雇」の解説
まとめ
今回は、逮捕された場合に会社に知られる可能性について解説しました。また、会社にバレないように早急に示談を進める方法についても説明しました。
「自分は犯罪などしないから関係ない」と思っている労働者でも、トラブルに巻き込まれることはあります。通勤中の痴漢や盗撮など、性犯罪での逮捕は、サラリーマンでも珍しくありません。犯罪をする気はなくても、冤罪の疑いをかけられてしまうこともあります。
痴漢などの疑いをかけられ、逮捕された場合、会社に知られる前に迅速な対応が必要です。早期の示談を成立させ、スムーズに社会復帰するためにも、早めに弁護士に相談することをお勧めします。
- 逮捕されても会社にバレないのが原則だが、現実にはバレることがある
- 逮捕されたことを会社にバレないようにするには、早期に示談することが大切
- 示談すれば、逮捕されたり起訴されて前科がついたりするリスクを軽減できる
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