痴漢の疑いをかけられて逮捕されてしまったとき、労働者の立場にあるサラリーマンの方が最も気にするのが「会社にバレるのだろうか。」という点でしょう。
痴漢で逮捕されたことが会社にバレれば、懲戒解雇となるおそれがあることはもちろん、少なくとも円満に復帰することは困難です。
痴漢の疑いが「えん罪(冤罪)」の場合には、無罪を求めて徹底的に争う方法もありますが、残念ながら有罪の場合、「示談が成立するかどうか。」が、決定的に重要です。
というのも、痴漢容疑の場合、「被害者との示談」が成立すれば、起訴されず、前科がつかないことがほとんどだからです。
今回は、本題の労働問題から少し離れて、サラリーマンに起こりがちなトラブルとして、「痴漢で逮捕」の問題について、弁護士が解説していきます。
ご家族が痴漢で逮捕されてしまい、会社にバレずに示談したいケースでは、速やかに弁護士へご相談ください。
目次
1. 痴漢で逮捕されたとき、示談が重要な理由
痴漢で逮捕されてしまったとき、会社にバレずに済ますため、なぜ示談が最も重要となるのかについて、弁護士が解説していきます。
日本では、起訴されてしまうと、99%有罪となるといわれています。「有罪となる。」とは、いわゆる「前科がつく。」ということです。
そして、「起訴するかどうか。」は、検察官(検事)が決めることとなっており、その際に非常に重要な考慮要素となるのが、「被害者との示談が成立しているかどうか?」という点なのです。
被害者との示談が成立していれば、ほぼ不起訴となるケースがほとんどです。
ここまでいえば、会社にバレずに痴漢問題を解決するために、スピーディな示談が必要なのは、十分ご理解いただけたのっではないでしょうか。
2. 痴漢で示談するためのポイント
とはいえ、示談がいくら重要であるとはいっても、示談は話し合いで行うものですから、「被害者の処罰感情」を、慎重に見ていかなければなりません。
犯行の態様、被害者の属性などによっては、非常に処罰感情が強く、容易には示談をすることが困難なケースもあり、焦りは禁物です。
2.1. 弁護士を通じて被害者に連絡する
痴漢トラブルで、早急に示談をしようと急ぐあまり、ご自身で連絡をとろうとすることはオススメできません。
痴漢が有罪であれ、冤罪(えん罪)であれ、「性犯罪」という非常にセンシティブな事件の性質から、「再犯をするのでは?」と疑われてしまっては、元も子もありません。
痴漢の被害者に接触するときには、かならず、弁護士を通じて、マナーと礼儀を持って誠実に接するのがよいでしょう。
2.2. 反省文・謝罪文で気持ちを伝える
痴漢をはじめとする性犯罪の示談では、被害者と加害者とが、直接接触することは、被害者のお気持ちを害することになるため、オススメできません。
とはいえ、加害者から謝罪の言葉もなにもなければ、被害者も到底許す気にはなれないでしょう。
そこで、痴漢トラブルで早急に示談をするためにも、反省文・謝罪文を作成し、弁護士を通じてお渡しすることで、お気持ちを伝えるとよいでしょう。
2.3. 示談金の相場は?
痴漢の被害者と示談のお話し合い(示談交渉)をするとき、最も気になるのが、「示談金の金額」ではないでしょうか。
示談金の金額の相場はあってないようなものです。というのも、最終的には、相場をいくら押し通そうとしても、痴漢の被害者が応じなかった場合、示談ができなくなってしまうからです。
痴漢には、軽い罪の「迷惑防止条例違反」と、重い罪の「強制わいせつ罪」の2つがあり、示談金の相場については、一般的に、次のようにいわれています。
- 迷惑防止条例違反 : 30万円~50万円
- 強制わいせつ罪 : 50万円~100万円
ただし、これはあくまでも「相場」であって、痴漢行為の態様、回数、悪質性などによってケースバイケースであることは当然です。
2.4. 必ず示談書を作成する
示談が成立した場合には、その証拠として、必ず示談書を作成するようにしてください。
痴漢被害者との間の示談書は、のちに二重に責任追及をされた場合の「防御」となるほか、万が一会社にバレてしまった場合に、「すでに解決済」であることを示し、会社に対して軽い処分をお願いするときにも役立ちます。
示談書を作成する際には、次の要素を入れておくとよいでしょう。
- 謝罪文言
- 示談金の金額、支払期限、支払方法
- 刑事だけでなく、民事の責任も一切清算するという内容の文言
- 被害者が軽い刑を望むという文言
3. 「痴漢で逮捕=懲戒解雇」ではない!
痴漢容疑で逮捕されたことが会社に知られてしまえば、会社に居づらくなってしまうことは当然でしょう。
以上の解説のとおり、速やかに示談を済ませ、会社にバレずに復帰できればよいですが、逮捕、勾留が長引くケースではそうもいきません。
しかしながら、痴漢で逮捕されたことが知られてしまったら、すぐに解雇なのかと、必ずしもそうではありません。
特に、「懲戒解雇」は、会社が労働者(社員)に対して行う「解雇」の中でも、最も重いものであって、それに匹敵する大きな問題行為がない限り、懲戒解雇は違法、無効となる可能性すらあります。
4. 示談が成立しない場合には?
ここまでお読みいただければ、サラリーマンの方が、通勤途中の電車で、痴漢で逮捕されたとき、弁護士に依頼してすぐに示談を進めるべきであることは、十分ご理解いただけたでしょう。
最後に、示談が成立しない場合に、どのような流れとなるのかについて、解説します。
4.1. 釈放されない
まず、示談が成立しないと、釈放が遅れてしまうおそれがあります。
というのも、痴漢で逮捕されてしまった場合、逮捕から3日間は身体を拘束され、その後、「勾留」という別の手続きで、最大20日間、身体を拘束され続ける可能性があるからです。
そして、痴漢のように、被害者のいる犯罪の容疑の場合、示談が成立しないと、それだけで釈放が遅れることが少なくありません。
4.2. 前科がつく
次に、示談が成立しないと、前科がついてしまうおそれがあります。
軽度の痴漢容疑の場合には、「略式起訴」といって、簡易な手続きで「罰金刑」となる可能性が高いです。
しかし、この「罰金」も、立派な前科ですから、十分ご注意ください。
労働者であるサラリーマンが、前科がついてしまうと、次に犯罪を起こしたときに重く処罰されたり、海外への渡航が制限されて出張の際にバレてしまったりといった不利益が考えられます。
5. まとめ
今回は、本題の「労働問題」から少し離れて、労働者(サラリーマン)が巻き込まれがちな、痴漢トラブルについて解説しました。
痴漢容疑をかけられてしまった場合に、会社にバレずに速やかに示談をし、職場に復帰するため、お早目に弁護士まで法律相談ください。