求人内容は、入社する企業を選ぶ際の大きな動機となります。しかし、求人情報に嘘を書き、だまして採用して酷使する悪質な会社もあります。募集要項の好条件に期待しても「実態は求人票とかけ離れていることが入社後に明らかになった」というトラブルの相談は跡を絶ちません。
約束した給与より低賃金だった……
入社後、求人内容が違うと言われた
求人内容と違う労働条件は違法であり、職業安定法、労働基準法などの法律に違反します。給料をはじめとした労働条件は、仕事のパフォーマンスや私生活の安定と密に関係します。求人における最重要な条件に嘘があると、労動者は大きな損害を被ります。
ブラック企業ほど、真実を伝えると求人が集まらず、応募者を増やすには求人内容に嘘をつくしかありません。違法性に気づいたら、ハローワークや労働基準監督署に相談すると共に、弁護士に依頼して被害を回復しましょう。ケースによっては損害賠償請求できる場合もあります。
今回は、求人内容と違う場合の違法性と、その後の対処法を労働問題に強い弁護士が解説します。
- 求人内容と違う労働条件だからというだけで違法にはならない
- はじめから変更するつもりで嘘の求人内容を示すのは労働基準法、職業安定法といった法律に違反し、違法になる
- 違法性が強い場合には、会社に対して損害賠償請求をすることができる
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求人内容と違う労働条件は違法?
実際の労働条件が求人内容と異なっていたとわかったとき、不当な扱いだと感じるでしょう。求人内容と実際の労働条件が異なることで労使トラブルに発展するケースは多いもの。こうした求人内容と違う労働条件とすることは、違法な場合があります。
まず、求人内容とは違う労働条件の違法性について、基本的な考え方を解説します。
入社を検討するに際し、ハローワークの求人票、求人情報誌や求人サイトの求人広告を参考に労働条件を調査し、応募を決めます。つまり、転職を希望する者にとって、求人内容に掲示された労働条件は応募の動機であり、とても重要。なのに実態が求人内容と違っていたというのでは労動者が害されてしまうので、違法とされる場合があるのです。
求人内容と違う労働条件への変更が違法になるケース
求人内容と違う労働条件への変更が違法になるケースは、主に次の2つです。いずれにせよ、「嘘をつく」ということは職場環境は劣悪で、他にも残業代の未払いやハラスメントなどの隠したくなる労働法違反が潜在しているおそれがあり、入社は避けるべきです。
職業安定法違反
求人票に虚偽の条件を提示して労働者を募集する行為は、職業安定法65条9号に該当し、「6月以下の懲役又は30万円以下の罰金」に処せられます。
職業安定法65条9号(抜粋)
次の各号のいずれかに該当するときは、その違反行為をした者は、これを六月以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する。
九 虚偽の広告をなし、又は虚偽の条件を提示して、職業紹介、労働者の募集、募集情報等提供若しくは労働者の供給を行い、又はこれらに従事したとき。
職業安定法(e-Gov法令検索)
この条文により、求人内容について虚偽の広告をしたり、虚偽の条件で求人したりといった行為は違法です。求人における詐欺行為は、いわゆる「求人詐欺」の事案に該当します。
ただし、次章の通り、求人内容と実際の労働条件は異なることもあるため、「虚偽」といえるには、求人の当初からだますつもりで真実と異なる内容を提示していることが要件となります。つまり、はじめから「入社後に労働条件を変更しよう」という悪意をもって、実態と異なる求人内容を示して初めて、職業安定法違反の違法があるといえるのです。
変更ありきで良い条件を示し、だまして入社させ、後から求人内容とは違った労働条件に変えることは、労動者の損失が大きく、職業安定法違反の違法行為として禁止されます。
労働基準法違反
求人内容と違う労働条件であったというケースのなかには、そもそも、雇用契約時に労働条件の明示を受けていない例もあります。入社時に説明がなければ、「求人内容の通りの条件で入社できた」と思い込むのも無理ありません。しかし実際に入社してみたら求人内容の労働条件とは違ってしまっていたという場合、そもそも労働契約の締結時に労働条件を明示しないこと自体も違法となります。
具体的には、重要な労働条件の書面による明示を定める労働基準法15条、労働基準法施行規則5条に違反します。労働条件明示義務に違反した場合、使用者や事業主は30万円以下の罰金に処される可能性があります(労働基準法120条)。
「労働問題の解決方法」の解説
求人票と入社後の労働条件は異なることがある
求人内容と違う労働条件へ変更することが違法となる場合があると説明しましたが、法律は求人内容からの労働条件の変更を一切禁止しているわけではありません。実際は、様々な事情によって、結果的に求人の時点とは異なる労働条件で入社する方も珍しくありません。
詳しく説明すると、求人内容は、求人企業から求職者に対する「契約の申し込み」にはあたらず、あくまで入社後の労働条件の目安であり、誘引に過ぎません。
求職者が求人内容に承諾しても、直ちに雇用契約が成立するわけではなく……
- 求人内容が申し込みの誘引となる
- 求職者が求人に応募する
- 求人企業が改めて契約内容を提示して申し込みをする
- 求職者が承諾し、雇用契約が成立する
というのが、雇用契約を締結するまでの法的な流れです。
その結果、求人企業が提示する労働契約の内容は、求人内容とは異なることもあります。この場合、求職者はこれを拒み、入社をしないことを選択して対抗できます。労使の話し合いの結果、互いに労働条件に合意してはじめて労働契約を締結できるのです。
このような契約の経緯からして、求人票や求人広告などの求人内容と、実際の労働条件が違うことは、さほど珍しいことではありません。採用面接の過程で得られた情報をもとに、詳細な労働条件を話し合うこともあり、そうすると求人段階で示す労働条件はどうしても暫定的なもので、ある程度幅を持ったものにならざるを得ません。
ひとまず採用フローに乗ってほしいという思いもあり、募集段階では実際の労働条件を詳述せず、脚色したがる会社も多いです。したがって、求人と実際の労働条件が異なったからとて直ちに違法なわけではなく、違法なのはあくまで、当初から労働条件を変更するつもりでだました場合、隠した場合や、あまりにかけ離れた労働条件を押し付けた場合といったケースです。
「労働条件の不利益変更」の解説
求人内容と違う労働条件を示されてトラブルになるケースの具体例
求人内容と労働条件が違うことが直ちに違法でないにせよ、労動者の立場としては「だまされた」と思う人も多く、労働条件の相違をめぐるトラブルは多々あります。例えば、次のような労働問題の相談例があります。
- 求人サイト上の基本給額より低賃金だった
- 約束された福利厚生の制度がなかった
- 正社員採用のはずが実態はパート・アルバイト
- 残業代込みの給料であることを隠されていた
- 役職手当や休日数が足りなかった
- 求人票に「退職金支給」とあったが退職金規程がなかった
- 応募した企画職の仕事がないといわれ営業職で採用された
- 予定にないアクセスの悪い勤務地を提示された
- 求人内容の労働時間と異なり育児に支障が出た
これらの労働問題に共通するのは、一時的な給料の未払いなどと異なり、労動者にとって不利益が将来に継続すること。根本的な労働条件に齟齬があると、退職までずっと不利益を発生し続けることになります。求人内容と違う点が違法で、かつ、悪質な企業だとわかったら、入社前に明らかになったなら入社辞退を、試用期間中であっても早めに退職を決断して被害を軽減すべきです。
実際、悪質な企業では、できるだけ労働条件を記録に残さず、採用面接などで社長がした口約束を破ってくることもあります。
「口頭の雇用契約」の解説
求人内容と違う違法な労働条件に直面したときの法的な対応
次に、求人内容と違う違法な労働条件に直面したとき、すべき対処法を解説します。
入社前に気づいたら入社を取りやめる
できるだけ労働契約の締結前に、希望と違う労働条件であることに気付くのが理想です。希望の条件で働けないことが入社前にわかれば、入社を取りやめることができます。悪質な会社とは速やかに縁を切ることによって、違法な対応による損失を軽減すべきです。
入社前に、違法性に気づいた場合の対応は、その段階によって異なります。
- 内定承諾前に気付けた場合
内定前、つまり、採用選考の過程で違法性に気付けた場合は、それ以上のプロセスを進めないよう会社に求めることで解決できます。採用の過程は、求人企業が求職者を選ぶだけでなく、求職者もまた入社すべき企業を見極めているのです。 - 内定承諾後に気付けた場合
既に内定を承諾した後で違法性に気付いた場合も、まだ入社前ならば速やかに内定辞退をすることで入社を取りやめるのが適切です。 - 雇用契約書の締結前に気付けた場合
内定後でも、雇用契約の締結をしておらず、書面による入社手続きが完了しないうちに気付けば、これ以上の手続きを進めないよう求め、入社辞退をすることができます。口頭でも雇用契約は締結できますが、更に進んで契約書にサインをしてしまってから退職するよりも、手間や労力は少なくて済みます。
なお、入社後でも遅すぎることはなく、あきらめてはいけません。多くの会社では入社後3ヶ月〜6ヶ月程度は試用期間とされ能力や適性の見極めに充てられます。いずれにせよ将来辞める決意が固まっているなら、勤続が短いうちに、試用期間中に退職する方が、人生の時間を無駄にせず済み、最終的にはメリットが大きいとの考えも一理あります。
「試用期間中の退職」の解説
労働条件変更の理由の説明を求める
求人内容と違う労働条件で雇われそうになったら、会社に対し、採用段階とは異なる労働条件に変更された理由の説明を求めます。会社の態度を観察すれば、「当初から虚偽の採用条件を提示していた」という違法があるかを見抜くことができます。
違法な場合は、次章以降の方法により行政や司法の場で責任追及できます。また、違法とまでいえないにせよ、納得いかない労働条件変更の説明を入念に求め、改善を求めることもできます。また、早めにコミュニケーションをとり、誠意のなさが分かれば、労動者をだまそうとする企業への入社をストップするのもよいでしょう。
直属の上司や採用担当者に聞いても、適切な回答が得られないことがあります。労働条件は、労使間の契約の内容のため「会社組織としての意見」を聞く必要があります。人事部や総務部といった労務管理を行う部署に問い合わせをするほか、誠意ある説明が得られないなら、代表者宛に内容証明を送付し、理由の説明をもとめたことを証拠に残しておきましょう。
「雇用契約書がもらえない時の対応」の解説
ハローワークに相談する
ハローワーク(公共職業安定所)における求人票と実際の労働条件が違った場合、違法な求人詐欺を疑われるなら、ハローワークに相談しておく必要があります。ハローワーク求人ホットラインに申し出ることによって、事実確認の上、会社に対して是正指導をしてもらうことができます。
ハローワークは、求人票に不正がないよう監督し、悪質な企業には注意をしたり、今後の求人を止めたりして、駆逐してくれることが期待できます。
労働基準監督署に相談する
入社時に労働条件が明示されず、求人内容と同じか、違っているかも判別できないケースでは、労働基準法の違反があります。したがって、労働基準監督署に相談するのが正しい解決策です。
労働基準監督署は、労働基準法などの違反を取り締まる行政機関です。違法な行為が疑われる場合は調査し、会社や事業主に助言指導、是正勧告といった行政指導を下すほか、悪質な場合は刑事罰を科してくれる可能性もあります。
労基署への相談に先立って、事実関係や虚偽であると思われる事項を整理し、時系列に沿って順序立てて説明する準備をしましょう。
「労働基準監督署への通報」の解説
弁護士に相談する
求人内容と違う労働条件となっており、違法の可能性があるのに会社が誠意ある対応をしない場合は、弁護士にご相談ください。
弁護士に依頼すれば、労動者一人では全く相手にしてくれないブラック企業でも、交渉に応じるよう強いプレッシャーをかけられます。労働基準監督署やハローワークといった行政機関とは異なり、弁護士は依頼者の利益を最優先にして動いてくれるので、労働問題を直接的に解決できます。
お悩みを放置せず、労働問題に精通した弁護士のアドバイスを求めるのがおすすめです。過去の実績や顧客の声をもとに良い弁護士を探しましょう。入社前に求人内容と異なることに気づいたケースなど、違法性が軽微だとしても、まず無料相談を試すことで自身の置かれた違法な状況を理解するのに役立ちます。
「労働問題に強い弁護士の選び方」の解説
労働審判や訴訟などの裁判手続きで争う
交渉が決裂した場合は、労働審判や訴訟などの裁判手続きにて終局的な解決を図ります。裁判手続きを有利かつスムーズに進めるには、弁護士のサポートが有益です。
実際に、求人内容と違う労働条件の違法性について訴訟に発展した事例では、下記の通り「求人票の内容が契約の内容となる」旨の判断がなされ、労動者側が勝訴しています。また、次章の通り、違法性が強い場合には損害賠償請求も可能です。
求人票では雇用期間の定めも定年制もなかったが、入社後に初めて、雇用期間の定めと定年制であることが知らされた事案。労働者はハローワークで求人票を閲覧して面接に行ったが、面接でも求人票と異なる旨の説明はないまま採用された。
裁判所は「求人票記載の労働条件は、当事者間においてこれと異なる別段の合意をするなどの特段の事情のない限り、雇用契約の内容となると解するのが相当である」とし、期間の定めのない契約として成立したものと認められると判断した。定年制については、期間の定めとは異なり、面接時に代表者から「未定」との回答が一応あったものの、同様に求人票の記載とは異なることを明確にしないまま採用を通知した以上、定年制のない労働契約が成立したものと判断した。
「労動者が裁判で勝つ方法」の解説
違法性が強い場合は損害賠償を請求できる
採用面接時に提示された条件と、実際の労働条件が異なることがあります。このような状況で、違法性が強い場合には不法行為(民法709条)に基づく損害賠償を請求できる可能性があります。
労動者の損害賠償請求が認められた例を参考にして、解説します。
中途採用者の初任給について新卒者の下限に位置づけるという内規があったのに、求人情報誌では「給与面では同年次新卒者の給与からスタート」と記載し、新卒者の平均給与を受け取れるかのように誤信させた事案。労動者の質問にも、努力次第で昇給する旨を回答していた。
裁判所は、労働基準法15条1項違反、及び、雇用契約締結過程における信義則違反があると判断し、会社に対して、精神的苦痛について不法行為責任を負うと判断し、慰謝料100万円の支払いを命じた。
この事例からも分かる通り、企業が求職者に対し、実際とは異なる労働条件を提示し、実態を隠していた場合は、「信義誠実に反する」とみなされ、損害賠償請求の対象となり得ます。
ただし、提示された条件があくまで「見込み」である場合は必ずしも直ちに違法とはなりません。上記の事例は、当初の採用時から、嘘をついてだます、後から変更する、という意図が明らかでした。本裁判例は不法行為責任を認め、慰謝料の支払いを命じましたが、求人内容と実際の条件の違いだけで認めたのではなく、その求人内容の示し方や、労動者から異議を述べられたときの対応の悪質さといった流れに着目したものである点はご注意ください。また、精神的苦痛に対する慰謝料として一定額の支払いを命じたのであり、求人内容との差分について金銭請求を認めたわけでもありません。
求人内容と違う労働条件を理由に仕事を辞める際の注意点
次に、求人内容と違う労働条件に直面して仕事を辞める際の注意点を解説します。
求人内容と違った違法な労働条件に直面してしまったとき、仕事を辞めるのも選択肢の1つです。期待した求人内容に満たない条件でしぶしぶ働いても、十分なパフォーマンスは示せません。当初の予定からかけ離れた条件では、仕事のやる気もわかず、心身ともにきつい状況は容易に想定できます。この点で、求人内容が実態と違うことは、退職理由として十分です。
違法性が明らかだとしても、争うことには手間と労力、費用がかかります。気持ちを切り替えて、速やかに退職するのも1つの手です。
退職前の準備
まずは、本当に退職すべきかどうか、慎重に検討しましょう。
本解説の通り、求人内容と実際が少し違うだけでは違法にはなりません。求人内容はあくまで誘引に過ぎず、採用過程で、適性に基づいた業務内容を提案されたり、組織の都合によって勤務場所が変更されたりといった例はよくあります。退職し、再度就活しても起こり得るリスクは、甘んじて受け入れた方が後悔の少ないこともあります。
決意が固いなら、退職後に生活基盤を失わぬよう次の転職先を探します。同じ過ちを犯さぬよう、求人票や求人広告の情報を見比べ、面接やOB訪問で情報を多く取得するよう心がけてください。
適切な退職手続きの進め方
労働者には、退職の自由があり、会社を辞めることができます。法律上、退職の意思表示をしてから2週間が経過すれば、会社の承諾などなしに一方的に会社を辞められます(民法627条)。また、話し合って会社と合意できれば、即日の退職も可能です。
とはいえ、現実にはスムーズに事が運ぶばかりでなく、辞めるまでに苦労するケースも多いです。求人内容と違った違法な労働条件を押し付けるような会社では、採用難かつ人手不足で、一人でも多くの働き手を確保したくて無理をしている可能性が高いです。引く手あまたな人気企業なら、求人内容に嘘をつく必要がありません。一度採用できた社員を簡単に手放しはせず、在職強要をして食い下がってくるかもしれません。
入社時に明示された労働条件と実態が異なっていた場合は、労動者は即時に労働契約を解除できます(労働基準法15条2項)。したがって、求人内容と違った労働条件となっており、それが入社時にも明らかにされていなかったような場合は、即時解除をして速やかに退社することも可能です。
労働基準法15条2項(抜粋)
2. 前項の規定によつて明示された労働条件が事実と相違する場合においては、労働者は、即時に労働契約を解除することができる。
労働基準法(e-Gov法令検索)
「会社の辞め方」の解説
求人内容と違う違法な労働条件に直面しないための予防策
次に、求人内容と違う違法な労働条件に直面して悩まないよう、事前の予防策を解説します。
求人内容と違う労働条件に不満で辞める場合、せっかくの就職活動の努力が無駄になります。予防できる限り、対策を講じておくべきです。
入社前に気付けるよう注意を払う
入社前に気付けばダメージが少なくて済みます。「求人内容が示されたからといって必ずそのように雇用されるとは限らない」ということを念頭に、労働条件を精査してください。まだ入社前なら、エントリー前の集団説明会や採用面接など、実態を知るチャンスは多くあります。
入社前に気づく前提として、求人票や求人広告に書かれた条件を過度に信じ過ぎないことです。最も重視すべきは雇用契約時に示される労働条件であり、それは求人内容とは異なることもよくあることを理解してください。
採用面接で具体的に質問する
採用面接は、労働条件を詳細にチェックするのに不可欠な機会です。
入社説明会でも質問できる場合はありますが、質問の時間に限りがあり、そもそも実施しない企業もあります。求人票や求人広告の内容について掘り下げて質問し、実態を探りましょう。質問をはぐらかし、曖昧にしか回答しない担当者もいますが、そのような会社は特に、求人内容とは違った条件が入社時には提示されるおそれがあり、要注意です。
「経歴詐称のリスク」の解説
労働契約の締結前に確認する
無事採用が決まると、通常は、内定通知書や労働条件通知書といった書面が交付されるのが一般的です。これらの書面は、求人内容以上に、入社後の労働条件を正確に示しているものなので、サインをする前に必ず入念に確認してください。
本来、会社側から、採用面接を通じて細かく説明をするのが適切です。ただ、労務管理に不備のある会社では、説明が不足していたり、説明内容が入社時の手続き書類に盛り込まれていなかったりすることもあります。
試用期間中と本採用後の労働条件に違いがあるか確認する
注意しておくべきは、一旦は入社時に、求人内容と違った労働条件ではなかったとしても、試用期間を過ぎた後で、契約内容が不利に変更されてしまうケースがあることです。
試用期間は、労動者の能力や適性を判別する期間であり、本来、試用期間の前後で待遇差を設けるのは適切ではありません。しかし、ひとたび試用期間を超えて本採用されると、労動者としてもすぐには辞めづらくなることを見越して、本採用した途端に給料を理由なく切り下げるといった違法な対応をする会社も、残念ながら存在しています。
「本採用後に給料を下げられた場合」の解説
求人内容と違う違法な労働条件についてのよくある質問
最後に、求人内容と違う違法な労働条件について、よくある質問に回答しておきます。
求人内容と違った場合どうすればよい?
入社して、求人内容と違うことが明らかになったら、まず、違法性があるかを確認します。最初からだますつもりで、実際と違った求人内容を示したなら違法ですから、「なぜ異なる労働条件に変更されたのか」、その理由を問いただしてください。
違法だとわかったら、速やかに退職して縁を切ると共に、被った被害は、会社に損害賠償請求をすることができます。
求人内容と違うと思ったらどこに相談すべき?
求人内容と違うことによる違法性の問題は、まずは弁護士に相談してください。特に、労働問題を得意とする弁護士に相談すれば、会社との交渉、労働審判や訴訟などの裁判手続きについてサポートし、問題解決に導いてくれます。
あわせて、求人票に虚偽があったならハローワーク(公共職業安定所)へ、そもそも入社時に労働条件が明示されないという労働基準法違反があったなら労働基準監督署へそれぞれ相談します。
求人内容と給料が違うのは違法?
求人内容と給料が違うからといって、直ちに違法になるわけではありません。求人内容はあくまで目安で、採用過程において話し合い、理由を説明し、結果として給料が変更されることは許されます。
しかし、当初の求人段階から、後から変更することありきで嘘をつき、労動者をだます会社は、違法です。
求人内容と労働条件が違って辞めたら会社都合?
求人内容と労働条件が違うことが会社の悪意による場合など、違法性があるなら、それを理由にした退職は保護されるべきです。つまり、求人内容と違うことに違法があれば、会社都合退職として扱われる可能性があります。会社都合退職は、自己都合退職に比べて失業保険の面で有利です。
具体的には「労働契約の締結に際し明示された労働条件が事実と著しく相違したことにより離職した者」は、特定受給資格者であり、会社都合として扱われます。
「自己都合と会社都合の違い」の解説
まとめ
今回は、求人内容と違う労働条件の違法性について解説しました。
いざ入社してみて求人内容と労働条件が大きく異なると、「話が違う」と憤るのはもっともです。求人票に虚偽の労働条件を載せたり、そもそも正確な労働条件を明示しなかったりする使用者側の対応は、労働基準法、職業安定法などの法律の違反であり、違法です。
ただ、求人票の内容は必ずしも入社後の労働条件と全く同一ではありません。そのため、雇用契約の締結時、示された条件は慎重に吟味する必要があります。また、嘘の求人内容にだまさたことに内定承諾前に気付けば、入社辞退して被害を最小限に抑えられます。求人内容と異なる点の違法性が強い場合は、損害賠償を請求し、被害の回復が可能なケースもあります。
不当な結果をあきらめず会社の責任を追及すべきで、このとき弁護士への相談が有益です。
- 求人内容と違う労働条件だからというだけで違法にはならない
- はじめから変更するつもりで嘘の求人内容を示すのは労働基準法、職業安定法といった法律に違反し、違法になる
- 違法性が強い場合には、会社に対して損害賠償請求をすることができる
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