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浅野 英之
弁護士
弁護士(第一東京弁護士会所属、登録番号44844)。東京大学法学部卒、東京大学法科大学院修了。

企業側の労働問題を扱う石嵜・山中総合法律事務所、労働者側の法律問題を扱う事務所の労働部門リーダーを経て、弁護士法人浅野総合法律事務所を設立。

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解雇制限とは?労働基準法19条の定めと期間、例外的に解雇できるケースを解説

会社から「解雇」をほのめかされても、時期によっては解雇が制限されることがあります。

解雇制限について定める労働基準法19条は、業務上のケガや病気の療養のために休業中の期間とその後30日間、産前産後休業中とその後30日間について「解雇してはならない」と定めています。これらに該当する労働者は非常に立場が弱く、解雇されると生活への打撃が極めて大きいため、その期間中は保護すべきと考えられるからです。

労災も妊娠・出産も、自身では時期がコントロールしづらい出来事であり、突発的な理由で休まざるを得ない労働者こそ、解雇制限のルールを理解しておく必要があります。

今回は、解雇制限の意味と期間、そして例外的に解雇が認められるケースについて、労働問題に強い弁護士が解説します。

この解説のポイント
  • 労働基準法19条は、労働者保護のために一定時期の解雇を禁止している
  • 業務上の傷病で休業中や産前産後休業中、その後30日間は解雇禁止
  • 休職扱いをされても、実質的に業務が原因なら会社と争える

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解説の執筆者

弁護士 浅野英之

弁護士(第一東京弁護士会所属、登録番号44844)。東京大学法学部卒、東京大学法科大学院修了。

企業側の労働問題を扱う石嵜・山中総合法律事務所、労働者側の法律問題を扱う事務所の労働部門リーダーを経て、弁護士法人浅野総合法律事務所を設立。

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解雇制限とは(労働基準法19条)

解雇制限とは、一定の期間における解雇を原則禁止とするルールであり、生活に深刻な影響が及ぶ時期における解雇を、一律に制限しています。

次の項目に一つでも当てはまる場合、原則として会社は解雇できません。

  • 業務中のケガ・病気(労災)で休業している。
  • 業務上の傷病による休業が終わってから30日以内である。
  • 妊娠・出産に伴い、産前産後休業中である。
  • 産前産後休業が終わってから30日以内である。

※ 似た考え方ですが「通勤災害(通災)」や「育児休業(育休)」は、解雇制限では保護されません(無制限に解雇できるわけではなく、一般的な解雇の規制が適用されます)。

この期間に解雇を通告された場合、解雇制限の違反であり、その解雇は無効となります。

会社が「問題社員である」「経営上やむを得ない」など、どのような解雇理由を主張しても解雇は許されません。非常に強力なルールなので、理不尽な時期に解雇されたら、まずは解雇制限が適用されるかどうかを最優先で確認する必要があります。

解雇制限について定める労働基準法19条は、次の通りです。

労働基準法19条(解雇制限)

1. 使用者は、労働者が業務上負傷し、又は疾病にかかり療養のために休業する期間及びその後三十日間並びに産前産後の女性が第六十五条の規定によつて休業する期間及びその後三十日間は、解雇してはならない。ただし、使用者が、第八十一条の規定によつて打切補償を支払う場合又は天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となつた場合においては、この限りでない。

2. 前項但書後段の場合においては、その事由について行政官庁の認定を受けなければならない。

労働基準法(e-Gov法令検索)

つまり、この条文は、業務が原因で働きたくても働けない人、妊娠や出産で休業中の人といった、自分の努力や意思ではコントロールできない事情で就労不能な労働者を保護します。このような状態の人に「働けないなら解雇」「会社に迷惑をかけるなら辞めてもらう」といった対応を許せば、安心して療養や出産に臨めなくなってしまいます。就労できないと再就職もできませんし、産前産後休業中に不利益な扱いをすれば、マタハラに繋がるおそれもあります。

解雇制限が問題となる典型例として、次のケースがあります。

  • 業務中の事故でケガをして、休業中である。
  • 長時間労働が原因でうつ病を発症して休んでいる。
  • ハラスメントが原因の精神疾患で療養中である。
  • 妊娠中で産前休業に入っている。

解雇制限に違反して解雇をした場合は、6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金が科されます(労働基準法119条)。

重要なのは、解雇の種類や雇用形態を問わないという点です。

普通解雇・懲戒解雇・整理解雇といった種類を問わず、全ての解雇が許されません。また、正社員だけでなく、契約社員やパート、アルバイト、派遣といった非正規社員も、解雇制限によって保護されます。

解雇の意味と法的ルール」の解説

解雇制限の内容と期間について

次に、解雇制限の内容と期間について解説します。

解雇制限は「期間」に着目したルールなので、解雇された時点が、解雇制限の期間に含まれるかどうかが決め手となります。期間の起算点や対象外となるケースを正確に理解し、自分の解雇が違法かどうかをご判断ください。

業務上の傷病による解雇制限

第一に、業務上のケガや病気(業務災害)の療養のために休業する場合に、その休業期間中と、復職後30日間は、原則として解雇が禁止されます。

重要なのは、労働基準法19条の解雇制限が対象としているのは「業務災害」に限られ、次のケースは対象外となる点です。

  • 私傷病休職
    私生活で負ったケガや病気による休職、持病などによる休職
  • 通勤災害による休業
    通勤途中の事故によるケガや病気による療養

また、解雇制限が適用されるのは、労働者が実際に休業している期間に限られるので、労災認定を受けても休業していない場合や、治療を終えて症状固定になった後30日を経過しても休業を続けていた場合にも、解雇制限は適用されません。

実務上よく相談があるのが、本来なら業務災害であるにもかかわらず、会社が労災申請に協力せず、「私傷病休職」として処理しているケースです。

この場合、形式的には「私傷病」であっても、実質が業務災害であれば、その間の解雇は不当であると考えられます。したがって、不当に休職扱いされ、解雇された場合、労災であることを前提に解雇の有効性を争えないかを検討すべきです。

実際にこの点が争われた裁判例は「私傷病扱いであっても解雇制限が及ぶことを示した裁判例」をご参照ください。

労災で休業中の解雇は違法」の解説

産前産後休業による解雇制限

第二に、産前産後休業に関する解雇制限です。

こちらは、産前産後休業を取得している期間と、その終了後30日間は、原則として解雇が禁止されます。産前休業は、出産予定日の6週間前(多胎妊娠の場合は14週間)から、本人の請求があって初めて休業となります(請求せず就労を続けた場合は解雇制限の効果は及びません)。一方、産後休業は出産翌日から8週間が原則です。

また、産後6週間を経過した後、本人が就業を希望する場合は、医師が支障がないと判断した業務に就かせることが認められており、この場合、復帰日から30日を経過すれば有効に解雇できます。

育児休業は解雇制限の対象に含まれない点に注意してください。産休と育休は連続することが多いものの、解雇制限が及ぶのはあくまで産後休業の終了後30日間です。

ただし、「育休中は解雇しても問題ない」という意味ではありません。

育休は法律で保障された制度であり、その取得を理由とする解雇は、育児・介護休業法違反です。同じく、解雇制限期間中でなくても、産休取得を理由とした解雇は男女雇用機会均等法上の不利益取扱いとして違法です(なお、同法9条は、妊娠中の女性と出産後1年を経過しない女性に対する解雇は、会社が妊娠や出産が理由ではないことを証明しない限り、原則として無効となると定めています)。

このように、解雇制限の期間そのものに該当しなくても、妊娠・出産・育児に関連する解雇は、マタハラとして違法となる可能性が高いと考えるべきです。

妊娠を理由とした解雇を争う方法」の解説

解雇制限の例外として、解雇が許される場合

次のいずれかに該当する場合、解雇制限の期間中でも、例外的に解雇ができます。

解雇制限による労働者保護が行き過ぎると、会社にとって不都合な場面もあるため、解雇制限には一定の例外が設けられているのです。

なお、解雇制限の例外は、いずれも限定的であり、法律の定める要件を満たす必要があります。会社の説明に安易に納得するのではなく、必ず弁護士に相談してください。

会社が打切補償を支払った場合

打切補償とは、一定の金銭支払いと引き換えに、解雇制限を解除できる制度です。

業務が原因で労働者がケガや病気を負わないよう、会社には安全配慮義務があります。ただ、たとえ労災でも、傷病が長期化して将来の回復の見通しが立たない場合にまで、無期限に雇用を維持するよう強制するのは、会社にとって酷であると考えられています。

そこで労働基準法は、打切補償として「平均賃金の1200日分」という補償金を支払えば、解雇制限の期間を打ち切ることができるという制度を定めています。

会社が打切補償によって解雇制限を解除できるのは、次の要件をいずれも満たす場合です。

  • 労働者が、会社からの療養補償または労災保険の療養補償給付を受けていること
  • 療養開始から3年を経過しても傷病が治癒していないこと

条文上は「会社からの療養補償」のみが規定されていますが、最高裁は、労災保険からの療養補償給付を受けている場合も同様に、打切補償によって解雇制限を解除できると判断しました(学校法人専修大学事件:最高裁平成27年6月8日判決)。この判例を踏まえ、行政解釈(平成27年6月9日基発0609号4頁)も同趣旨で発出されています。

治療を開始してから3年を超えた時点で、労災保険から傷病補償年金の支給を受けている場合も、打切補償を行ったのと同じ扱いとなり、解雇制限は適用されなくなります。

ただし、打切補償を支払えば、解雇が必ず有効となるわけではありません。

解雇制限が適用されなくても、解雇規制の一般的なルールは適用されます。そのため、解雇制限がなくても、客観的に合理的な理由がなく、社会通念上相当でない場合は、解雇権濫用法理によって無効となります(労働契約法16条)。

また、解雇予告のルールも適用されるので、解雇日の30日前に予告をするか、不足する日数分の平均賃金に相当する解雇予告手当を払う必要があります(労働基準法20条)。

実際にこの点が争われた裁判例は「解雇制限が適用されない解雇も権利濫用になることを示した裁判例」をご参照ください。

不当解雇に強い弁護士への相談方法」の解説

やむを得ない事由で事業の継続が不可能な場合

解雇制限のもう一つの例外が、「天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となった場合」です。

ここでいう「事業の継続が不可能」とは、事業の全部または大部分が継続できない状態に陥っていることを意味し、主たる部分が継続している場合や、一時的な営業停止で再開の見込みがある場合は、この例外は認められません。

実務上の判断の目安として、次の例を参考にしてください。

【やむを得ない事由が認められる例】

  • 事業所が火災で焼失した場合(事業主の故意または重大な過失に基づく場合を除く)
  • 大規模な震災によって工場やオフィスが倒壊した場合

【やむを得ない事由とはいえない例】

  • 社長が逮捕され、オフィス機器や書類を差し押さえられた場合
  • 税金の滞納処分を受けた場合
  • 経営の失敗や資金繰りの悪化

このように微妙なケースにおける判断は争いになりやすいので、事業の継続不能を理由とした解雇制限の例外には、労働基準監督署長の認定(解雇制限除外認定)を受けることが必要とされます。

なお、認定は事実の確認手続であり、認定のない解雇であっても、認定事由に該当する事実が客観的に認められるなら、解雇制限は適用されないと解されています。

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解雇制限期間中に解雇されたときの対処法

次に、解雇制限期間中にもかかわらず解雇されたときの対処法を解説します。

このケースでは、会社が解雇制限のルールを理解していないか、もしくは、違法であることを承知で、弱い立場にある労働者を辞めさせようとしている場合もあります。いずれにせよ、初動対応を誤ると、本来守られるはずの地位を失いかねません。

STEP

解雇や退職勧奨を告げられた直後の初動対応

突然「解雇する」「退職してほしい」と言われると、動揺し、その場で判断してしまいがちです。しかし、直後の対応こそが、その後の結果を大きく左右します。

絶対にやってはいけないのは、退職届や解雇通知書などに署名・押印をしたり、解雇や退職を認める発言をしたりすることです。一度でも退職に向けた意思表示をすれば、会社から「合意退職だった」「自分から辞めた」と主張されてしまいます。

突然のことで困惑するかもしれませんが、解雇理由や解雇日を冷静にメモし、可能な限り録音するなどして証拠を残すことを意識してください。

解雇されたらやること」の解説

STEP

解雇制限の法律知識を会社に伝える

初動対応を終えたら次に、解雇制限のルールの存在を会社に伝えてください。

企業によっては悪意はなく、「解雇制限について正確に知らない」「休業中で仕事をしていなければ簡単に解雇できると思っていた」という誤解も少なくありません。感情的にならず、本解説を参考に、現在が解雇制限期間中であること、労働基準法19条によって解雇が禁止されることを、書面やメールで証拠に残しながら伝えましょう。

労災隠しの事例と対処法」の解説

STEP

解雇制限期間中であることの証拠を集める

次に、解雇制限期間中であることの証拠を集めます。

解雇制限は労基法のルールなので、期間中であることを証明できれば、裁判でも勝てる可能性は非常に高く、交渉も有利に進めることができます。

不当解雇の証拠を集める方法

【産前産後休業による解雇制限の場合】

  • 出産予定日や出産日を示す医師の診断書
  • 母子手帳
  • 産前産後休業の取得を示す会社資料

【業務上の傷病による解雇制限の場合】

  • 長時間労働を示す資料
    例:タイムカード、業務日報、PCのログ履歴、メール送受信記録、オフィスの入退室記録、労働者作成のメモなど
  • ハラスメントや過度な業務負荷を示す証拠
    パワハラやセクハラの録音・録画、メールやチャットのやり取り、ハラスメントに該当する指導や処分を通知する書面など
  • 医師の診断書・意見書
  • 治療経過や通院状況が分かる資料

業務上の傷病を理由にした解雇制限を主張する場合、自身の負ったケガや病気が「業務上」のものであることを立証しなければならず、争いが激化しやすい場面です。会社が責任逃れのために私傷病として扱い、休職命令を出している場合でも、実質的に業務に起因する場合は解雇制限を主張できる可能性があるので、諦めてはいけません。

労災の条件と手続き」の解説

STEP

交渉が決裂した場合は裁判手続きに進む

交渉で解決しない場合は、労働審判や訴訟を通じて、解雇の無効を主張します。

特に、業務上の傷病かどうかが争点となるケースでは、会社側は「業務上ではない(私傷病である)」「復職不能なので、休職期間満了による当然退職である」と反論してくることが多く、激しい争いになりやすい局面です。会社としても、「業務上」として解雇制限が認められれば、単に辞めさせられないだけでなく、安全配慮義務違反の損害賠償を受けるおそれもあります。

解雇制限違反が認められれば、解雇の撤回や職場復帰だけでなく、解決金を受領して退職する金銭解決を目指すことも可能です。

解雇制限が関係する事案は、専門的な判断が不可欠なので、早い段階で労働問題に精通した弁護士に相談しておくことが有益です。

解雇を撤回させる方法」「解雇の解決金」の解説

解雇制限の適用が争いになる難しいケースと注意点

解雇制限は、解雇のタイミング次第で結論が分かれるので、法的にも微妙な判断となる難しいケースがあります。以下では、実務上特に争点となりやすい場面と、その注意点を解説します。

解雇制限期間中に定年を迎えるケース

多くの企業では、定年制度が設けられています。

定年による労働契約の終了は、会社の意思による「解雇」ではなく、契約の当然終了を意味するので、解雇制限は適用されません。解雇制限期間中でも、定年に達すれば契約は終了します。

例外的に、会社が「定年に達したら解雇によって契約を終了させる」制度(定年解雇制)を採用している場合は、解雇制限期間中に定年を迎えても解雇はできず、労働契約は終了しません。自社の制度がどちらに当たるかは、就業規則の文言を確認する必要があります。

定年退職後の再雇用を拒否されたら違法?」の解説

解雇制限期間中に休職期間満了で退職させたケース

実務上、最も争いが多いのがこの類型です。

つまり、労働者が「業務上の傷病だから解雇制限が適用される」と主張しても、会社が「私傷病による休職にすぎない」と反論し、休職期間満了による当然退職扱いとするケースです。このとき、最大の争点は、その傷病が「業務上」のものかどうかという点です。

裁判例においても、当然退職扱いとすることが労働基準法19条違反となり、無効であると判断したケースが複数存在します。

  • 大阪高裁平成24年12月13日判決(アイフル(旧ライフ)事件)
    業務に起因して精神疾患になった社員を、24ヶ月の休職期間満了により退職扱いとしたことは、労働基準法19条1項の類推適用に違反し、無効と判断。
  • 静岡地裁平成26年7月9日判決(社会福祉法人県民厚生会ほか事件)
    業務起因の適応障害による休職者を、1年の休職期間満了で退職させたことが労働基準法19条1項に違反すると判断。
  • 東京地裁平成28年6月15日判決(ケー・エス・アイほか事件)
    業務に起因する腰痛の療養による休職者を、1年の休職期間満了で退職扱いとした点につき、労働基準法19条1項に反して無効と判断。
  • 東京地裁平成29年3月13日判決(エターナルキャスト事件)
    退職強要によるうつ病の悪化で就業不能となった社員について、休職及び当然退職扱いは労働基準法19条1項の趣旨に照らして許されないと判断。

裁判例から分かるとおり、「休職期間満了だから仕方ない」という会社の説明が、そのまま通るとは限りません。実質が業務起因であれば、解雇制限違反として争える余地は十分にあります。

不当解雇の裁判の勝率」の解説

解雇予告期間と解雇制限期間が重なるケース

労働基準法19条1項は、解雇そのものの禁止する規定であり、解雇予告は禁じていません。そのため、制限期間中に解雇予告を行い、制限期間の終了後に解雇日を設定することは可能です。

一方で、解雇予告をしていても、解雇日までの間に業務上の傷病によって休業し、解雇制限の要件を満たすこととなった場合は、予定していた解雇日が到来しても、解雇制限によって解雇することができなくなります(休業から復帰後に再び解雇するなら、あらためて解雇予告が必要です)。

労働問題に強い弁護士の選び方」の解説

解雇制限が争点となった裁判例

最後に、解雇制限が争点となった裁判例を紹介します。解雇制限が実際にどのように争われ、裁判所がどう判断したかを理解してください。

解雇制限が適用されない解雇も権利濫用になることを示した裁判例

以下の裁判例は、解雇制限が形式的に適用されないとしても、直ちに解雇が有効となるわけではないことを示しています。

東京高裁平成22年9月16日判決は、打切補償を払った後も解雇が権利濫用になることを示唆しており、札幌高裁令和2年4月15日判決(東京キタイチ事件)は、解雇制限期間の後であっても解雇が権利濫用となると判断しています。

東京高裁平成22年9月16日判決

過労による業務災害で療養中、打切補償を支払った上で解雇した事案です。

打切補償がなされ、労働基準法19条の解雇制限は除外される状況でしたが、それでもなお解雇が権利濫用に当たると主張して争いました。

裁判所は、「打切補償の要件を満たした場合には、雇用者側が労働者を打切補償により解雇することを意図し、業務上の疾病の回復のための配慮を全く欠いていたというような、打切補償制度の濫用ともいうべき特段の事情が認められない限りは、解雇は合理的理由があり社会通念上も相当と認められる」と判示し、特段の事情が認められない本件解雇は有効とされています。

札幌高裁令和2年4月15日判決(東京キタイチ事件)

業務上の負傷が治癒した後、約2か月が経過した時点で解雇された事案です。

解雇時点では解雇制限期間を過ぎており、労働基準法19条違反の主張は否定されたものの、解雇権濫用法理に基づいて、解雇回避努力が十分に尽くされていないこと、慣らし勤務を行えば債務の本旨に従った労務提供が可能であったことなどの事情を重視し、本件解雇は権利濫用として無効であると判断しました。

私傷病扱いであっても解雇制限が及ぶことを示した裁判例

以下の裁判例は、会社が私傷病として扱っていても、実質的に業務起因性が認められれば解雇制限が及ぶことを明確にしている点で、非常に重要な意味があります。

東京高裁平成23年2月23日判決(東芝(うつ病・解雇)事件)

休職後、復職不能と評価されて解雇された労働者が、原因となったうつ病が、「業務上の疾病」に該当するかどうかを争った事案です。

裁判所は、業務上の疾病の判断は、労災認定における「業務上」の判断と同じであるとした上で、発症直前の就労時間、新たに担当した業務内容、昇進に伴う負担増などの事情を踏まえ、本件のうつ病は業務上の疾病に該当すると認定しました。

その結果、本件解雇は、解雇制限期間中になされたものとして無効と判断されました。

裁判で勝つ方法」の解説

まとめ

今回は、解雇制限の具体的なルールについて解説しました。

解雇制限は、労働者にとって影響が大きい解雇を一定期間禁止する制度です。業務上の傷病による休業中や産前産後休業中など、生活への支障が大きい時期について原則として解雇が禁じられています。どのような解雇理由を主張しても、解雇制限期間中の解雇は違法です。

解雇制限中に解雇されたら、労災や妊娠・出産などの事実を裏付ける資料を収集して、解雇の無効を主張してください。解雇を撤回して職場復帰を望むだけでなく、解決金を得て退職する金銭解決を目指すことも可能です。

解雇をめぐるトラブルは初動対応が結果を大きく左右します。自分のケースで解雇制限が適用されるかの判断に迷う場合、できるだけ早い段階で弁護士に相談してください。

この解説のポイント
  • 労働基準法19条は、労働者保護のために一定時期の解雇を禁止している
  • 業務上の傷病で休業中や産前産後休業中、その後30日間は解雇禁止
  • 休職扱いをされても、実質的に業務が原因なら会社と争える

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