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感染予防の措置をとらない会社の責任と、労働者側の適切な対応

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運営元:弁護士法人浅野総合法律事務所

新型コロナウイルスの感染拡大の影響は甚大です。しかし、このような緊急時であっても、仕事をしなければならない労働者は多くいます。特に、スーパーマーケットや薬局、医療機関など、このような時期だからこそ最重要となる仕事もあります。

会社は、雇用する社員の健康と安全を守らなければなりません。仕事をすることがどうしても必要な場合でも、その安全を保障せずに働かせることは違法です。

しかし残念ながら、「会社が感染予防をしてくれない」「『3密』状態で働かされていて、いつ感染してしまうか恐怖を感じる」という労働者からの悲痛な声があがっています。

今回は、感染予防の措置をとらない会社の責任と、そのような会社に雇用されている労働者の適切な対応について、労働問題に強い弁護士が解説します。

「新型コロナウイルスと労働問題」の法律知識まとめ

安全配慮義務に違反する会社の行為

会社は、労働者を安全に働いてもらう義務があります。労働者にとって、職場は人生の大半を過ごすとても重要な場所であり、快適な職場でなければ、心身の健康を害してしまうからです。

法律にも、次のとおり定めがあります。この会社の義務を「安全配慮義務」「職場環境配慮義務」といいます。

労働契約法5条(労働者の安全への配慮)

使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする。

職場の安全と衛生について定める「労働安全衛生法(労安衛法)」という法律では、特に、常時50人以上の労働者を使用する事業場では「衛生委員会」を設置し、職場衛生に関する計画の作成、自死、評価及び改善をおこなうことを義務としています。

以上のことは、平時はもちろんのこと、このたびの新型コロナウイルス禍のように危機が迫っているときには、特に重要です。

2020年4月28日に発出された「新型コロナウイルス感染症の労災補償における取扱いについて」(厚生労働省)という通達では、新型コロナウイルスの特殊性を考えると、これまでの労災認定よりも感染経路の特定についてゆるやかな認定が認められるべきであるとされています。特に、新型コロナウイルス感染者と接触する可能性なある医療従事者や、海外出張を命じられた人などでは、労災であると認められる可能性が高くなります。

労働者は、会社のはたらく場所を選ぶことができませんし、生活のためにそう簡単には仕事を辞めることもできませんから、会社が感染予防の対策を万全におこなわなければ、安全配慮義務違反の責任があることは明らかです。

ココに注意

安全配慮義務は、法律上の義務であり、業種・業態・規模にかかわらずすべての会社が負う義務です。「うちの会社では労災はない」とか「この業界では当たり前のルールだ」といった会社の理不尽な主張にしたがう必要はありません。

そして、医療機関に勤める医療従事者、スーパーマーケットのレジ担当、接客業のように、特に新型コロナウイルスの感染可能性の高い業種の場合には、他の会社にも増して特別な感染症対策が必要となります。

会社が感染症対策をしないときの適切な対応

会社が新型コロナウイルスなどの感染症予防、対策をおこなわないことが「安全配慮義務違反」となり、責任追及が可能であることを解説しました。しかし、コンプライアンス意識の低い会社の中には、残念ながら感染症対策をまったくおこなってくれない会社もあります。

そこで次に、労働者側で、感染症対策をしてくれない会社に対してどのような対応をしていくべきかについて、弁護士が解説します。

具体的な改善策を提案する

まず、感染症対策をしてくれない会社の社長は、この新型コロナウイルスの非常時に及んでも危機感がそれほどないのかもしれません。労働者として危機感を持っていることを「現場の声」として適切に伝え、対策を練ってもらえるよう、理解を求めてください。

このとき、単なる「会社への文句」ととられないよう、具体的な対策を提案することが有効です。特に「どのような場合に感染の危機を感じるか」は、業種や業態によっても異なり、現場にいる労働者でなければ気付かないこともあります。

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の対策として、具体的に検討すべきことは、次のことです(あくまでも、最低限の対策であり、より良い策がある場合には具体的に提案することがお勧めです。)。

  • 社員全員が、オフィスに出社したときに手洗い・うがい・アルコール消毒をおこなう
  • マスクを着用するなど、咳エチケットを守る
  • 職場内の座席配置について、各社員間のスペースを広くとる
  • 多人数の参加する会議・会食をおこなわない
  • 窓を開放し、換気をおこなう
  • テレワーク・在宅勤務などのリモートワークや、時差出勤・オフピーク出勤を導入する

違法な業務命令に従わない

ブラック企業気質な会社の中には、残念ながら「命よりも経済が大切だ」という考えの会社もあります。確かに、経済を回すことはとても重要なことですが、労働者の命をないがしろにしてよいわけではありません。

経済を回すにあたって、その担い手となる労働者の感染予防対策をしなければならないことに変わりはありません。中には、「新型コロナを吹き飛ばす飲み会」など、不謹慎な活動をおこなう会社の話も報道されています。「客前でマスクをつけるな」「根性があればコロナにはかからないはず。コロナにかかるのは甘えだ」という精神論を語るブラック企業もあります。

このような明らかに問題のある会社は、TwitterなどのSNSや5ちゃんねるなどの匿名掲示板でも話題になりつつあり、企業の信用を低下させ、企業イメージを悪化させることとなります。

労働者として、生活のためなどの理由で残念ながらこのような会社を辞められない場合であっても、違法な業務命令に従う必要はありません。

会社を欠勤する

次に、社内の感染症対策をまったくおこなわず、「3密(密閉・密集・密着)」が野放しにされているような危険な会社には、これ以上出社することができません。

会社は、労働環境を安全に保つ義務を負いますが、この義務に違反しているような危険な会社に出社しないようにしてください。このことは、新型コロナウイルス感染症の例だけでなく、「会社にいくと、殴ってくる上司がいる」「会社に長時間労働が横行しすぎて、健康被害が出てしまう」といった場合を想定していただければ、明らかに理解できるのではないでしょうか。

そして、安全配慮義務を果たしていないことを理由に、労働者がやむを得ず会社にいけないことで会社を休んだ場合には、「使用者の責に帰すべき事由」があると考えられますから、その分の給与は全額請求してください。

弁護士から警告書を送る

職場に相談窓口のある会社は、まずは相談することができますが、よりお困りの労働者は、労働者の声には耳も課さないワンマン社長の下で勤めている中小企業、零細企業の労働者です。

一人で提案しても、社長が危機感を持ってくれない場合、社員全員で相談して提案したり、労働問題に強い弁護士に依頼して「警告書」などを送付してもらうことが有効です。

弁護士から警告書を送る場合には、会社が安全配慮義務を果たすべき法的根拠とともに、現場を知る労働者の聞き取りを踏まえた具体的な改善策を提示し、会社に新型コロナウイルス対策をきちんとおこなうよう要求することができます。

弁護士からの警告書は、内容証明郵便の形式を利用して送ることにより、証拠化することができます。

マスク着用を指示されたときの適切な対応

新型コロナウイルス感染症の予防としてマスクを着用するよう指示をする会社があります。一見、安全配慮義務を果たしている良い会社のようなふりをしています。

しかし一方で、現在ではマスク価格が高騰しており、マスクを容易には入手しがたいのが現状です。業務命令権は、雇用契約に付随して認められる会社の権利ですが、従いたくても従うことが現実的に不可能な場合に、どのように対応したらよいのでしょうか。

そこで最後に、会社からマスク着用を指示されたときの、労働者側の正しい対応について弁護士が解説します。

マスク着用をせず、懲戒処分にされたら?

マスク着用を指示されても、マスクが手に入らないときには、マスクなしで出社せざるを得ません。マスク着用の指示に違反して、懲戒処分にされてしまったとしたら、その懲戒処分は「懲戒権の濫用」であり、違法です。

そもそも、懲戒処分をおこなうためには、就業規則に、懲戒権があることと、その懲戒権を行使できる事由を定めていなければなりません。「業務命令違反」が懲戒権を行使できる事由とされていることが多いですが、これは、その業務命令が適法な場合に限られます。

なお、会社が、会社の費用負担でマスクを準備している場合には、マスクをつける必要性のある業務であれば、マスク着用の指示にしたがう必要があります。

マスクを準備する費用は誰が負担する?

さきほど解説したとおり、マスク着用を指示しながら、「マスクは社員が自分で調達してくること」という会社の業務命令にはしたがう必要はなく、業務命令違反を理由とする懲戒処分も無効です。

とはいえ、新型コロナウイルス感染症の対策として、マスクには一定の意義があります。マスクを準備するための費用は、会社が負担すべきです。アルコール消毒液や手洗い用の石っけんなどの感染症対策についても同様です。

たまたま家にたくさんマスクがある場合など、自分のマスクを使用することができる場合や、会社の他の社員にも使ってもらうような場合には、会社からその費用を支給してもらえないかどうか、話し合いをすることがお勧めです。

「労働問題」は、弁護士にお任せください!

今回は、新型コロナウイルス感染症の対策をまったくしてくれない会社にお勤めの労働者に向けて、労働者側の適切な対応について弁護士が解説しました。

新型コロナウイルスの感染拡大が社会問題になっているものの、この問題に対する意識の高さ、危機感の大きさには個人差があります。しかし、万が一にも会社の業務を原因として感染してしまわないためには、労働者だけの努力では足らず、会社が協力的である必要があります。

感染拡大の危険のある場合には、命より重要なものはありません。労働者として自分の身を守るための最大限の対策をしてください。新型コロナウイルスに関する労働問題についても、ぜひお気軽に弁護士にご相談ください。

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弁護士法人浅野総合法律事務所(東京都中央区銀座)は、代表弁護士浅野英之(日本弁護士連合会・第一東京弁護士会所属)をはじめ弁護士5名が在籍する弁護士法人。 不当解雇、未払残業代、セクハラ、パワハラ、労災など、近年ニュースでも多く報道される労働問題について、「泣き寝入りを許さない」姿勢で、親身に法律相談をお聞きします。 「労働問題弁護士ガイド」は、弁護士法人浅野総合法律事務所が運営し、弁護士が全解説を作成する公式ホームページです。

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