解雇されたとき、「本当に有効なのか」と疑問に思うこともあるでしょう。
勤務態度に問題がなく、事前の注意や警告もないまま一方的に職を失った場合、その解雇は法律上「無効」と判断される可能性があります。
労働者の不利益が大きい「解雇」は法律で厳しく制限され、実際の裁判例でも「解雇が無効である」と判断したケースは少なくありません。自分の状況が該当するか、争う価値があるのかを知りたいときは、無効となる典型例を知っておくと役立ちます。
今回は、「どのような場合に解雇が無効とされるのか?」という疑問に答えるため、解雇無効と判断された裁判例や、法律上の要件について、労働問題に強い弁護士が解説します。
- 解雇は法律で厳しく制限され、要件を満たさない解雇は無効となる
- 解雇が無効となる場合、復職やバックペイの請求ができる
- 無効を争うには労働審判や訴訟、あっせんの手段があり、費用や期間が異なる
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その解雇、本当に有効?まず知っておきたい「解雇無効」の基本

突然の解雇に直面すると、「会社が言う以上、仕方ないのでは」と諦めてしまいがちです。
しかし、解雇は法律で制限されており、会社が自由にできるものではありません。むしろ有効に解雇できるケースの方が例外であり、一定の条件を満たさない解雇は、法律上「無効」と判断される可能性が高いです。
法律上、解雇が有効とは認められにくい理由
解雇が厳しく制限されている理由は、解雇権濫用法理という考え方にあります。
わかりやすく言うと、会社が有する「解雇権」について、濫用的な行使は法律上認められないという考え方です。労働者にとって解雇は、生活の糧を失う重大な処分なので、法律は、労働者保護の観点から解雇には理由が必要であると定めているのです。
具体的には、解雇が有効とされるには、「客観的に合理的な理由」と「社会通念上の相当性」が必要であるとされています(労働契約法16条)。

この2つの要件はどちらも必要なので、一方が欠ければ解雇は無効と判断されます。
客観的に合理的な理由
解雇に求められる客観的に合理的な理由とは、解雇が事実に基づいて行われ、就業規則などで定められた事情が存在し、やむを得ないと考えられる内容であることを指します。
社会通念上の相当性
解雇に求められる社会通念上の相当性とは、解雇という手段が重すぎないという観点での検討です。注意や警告もなくいきなり解雇したり、改善の機会を与えなかったり、他の同種の事案と比べて厳しすぎたりする場合、解雇は無効です。
不当解雇と解雇無効の違い
不当解雇と解雇無効は、よく似た意味で使われます。厳密には、不当解雇とは解雇が不適切である状態を指し、解雇無効はその法的効力が無くなることを意味します。つまり、不当解雇であると労働審判や訴訟などで裁判所に認められれば、解雇は無効となります。
解雇が無効と判断されると、その解雇は当初から無かったことになり、労働契約は継続している扱いとなるので、対象となった社員は復職することとなります。また、解雇されていた間の賃金(バックペイ)を請求することができます。
「解雇に強い弁護士への相談方法」の解説

解雇が無効となる主なケース

次に、実務上、特に解雇の有効性が問題となるケースについて解説します。
解雇が無効であると判断されるケースには、典型的なパターンがあります。自分の解雇理由がこれらに該当するかをチェックすることで、不当解雇でないかを確認できます。
解雇権の濫用として無効になる場合
「その解雇、本当に有効?まず知っておきたい「解雇無効」の基本」の通り、会社は解雇権を有するものの、その行使は無制限ではなく、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当でない解雇は、濫用として無効になります。
例えば、次のようなケースは、解雇の無効を疑ってください。
【客観的に合理的な理由が問題となる例】
- 解雇理由とされた事実が、そもそも存在しない場合
例:指摘された規律違反の事実が存在しない、噂や風評を根拠に解雇された、会社が十分な事実確認を怠っていた、客観的な数値や資料の裏付けがないなど。 - 解雇理由とされる評価が、実態と乖離している場合
例:一度きりのミスを過度に評価した、経験の有無を考慮せずに「能力不足」と評価した、本人の努力や改善状況が全く評価されていないなど。 - 知らされた解雇理由とは異なる目的がある場合
例:実際は人員削減が目的である、特定の社員を排除する意図がある、ハラスメントの意図がある、交際要求に応じなかった報復として解雇されたなど。 - 病気やケガを理由とするが、就労可能性の検討が不十分な場合
例:主治医の意見を軽視している、配置転換や業務軽減などの配慮を検討していない、近い将来に回復する見込みを検討していない、そもそも労災であるなど。
【社会通念上の相当性が問題となる例】
たとえ一定の理由があっても、以下の事情がある場合、解雇は重すぎる処分であるとして無効になる可能性があります。
- 注意や指導をせず、改善の機会も与えていない。
- 配置転換や異動の可能性を検討していない。
- 過去の業績や勤続、貢献度を考慮していない。
- 他の社員の同種事案と比べて処分が著しく重い。
特に懲戒解雇は、労働者に与える不利益が極めて大きく、よほど悪質な事情がなければ無効と判断されやすいと考えます。
以下は、いずれも、従業員に一定の落ち度があったが、解雇が無効であると判断された裁判例です。自身のケースと比較して、参考にしてみてください。
- 最高裁昭和51年1月31日判決(高知放送事件)
ラジオニュース担当のアナウンサーが、2週間に2回遅刻し放送できなかったことを理由に解雇された事案で、遅刻に悪意や故意はなく、過去の勤務成績や処分の均衡などを考慮すると酷であるとして、解雇は無効であると判断されました。 - 最高裁平成7年5月30日判決(西武バス事件)
バス運転手が勤務終了後に飲酒し、停留所以外でバスを停めたことで運行に遅延が生じたことなどを理由に解雇された事案で、行為は不謹慎だが、遅延は30秒程度と軽微であり、過去の勤務成績などを踏まえると解雇は行き過ぎであり、無効と判断されました。 - 東京地裁平成13年8月10日判決(エース損害保険事件)
保険会社の営業職が能力不足・成績不良を理由に解雇された事案で、実際には人員削減を目的とした解雇であり、不適切な配置によって能力を発揮できなかった事情もあるとして、能力不足を理由とする解雇は無効であると判断されました。
「正当な解雇理由」の解説

差別的な解雇として無効になる場合
差別的な理由での解雇は違法であり、無効となります。
労働者に対する差別や不利益な扱いを禁止する主な法律は、次の通りです。
- 国籍、信条又は社会的身分を理由とする解雇(労働基準法3条)
- 性別を理由とした解雇(男女雇用機会均等法6条4号)
- 婚姻、妊娠、出産等を理由とする解雇(男女雇用機会均等法9条)
- 障害者であることを理由とする解雇(障害者雇用促進法35条)
- 労働組合への加入や正当な組合活動等を理由とする解雇(労働組合法7条)
これらの差別的な解雇が禁止されているのは、労働者の努力では変えられない属性や、法的に保護された立場を理由としているからです。例えば、性別や障害の有無といった個人の属性を理由に解雇することは正当化される余地がなく、当然に無効とされます。
「職場の男女差別への対応方法」の解説

正当な権利行使に対する報復としての解雇が無効になる場合
労働者が法律で認められた正当な権利を行使したことに対する報復としての解雇も無効です。実務上、問題になりやすいのは次のような法律です。
- 労働基準監督署に申告したことを理由とする解雇(労働基準法104条2項)
- 裁量労働制への同意を拒否したことを理由とする解雇(労働基準法38条の4第1項6号)
- 雇用保険の被保険者資格の確認請求をしたことを理由とする解雇(雇用保険法73条)
- 育児休業・介護休業を理由とする解雇(育児介護休業法10条)
- 産前産後休業を理由とする解雇(男女雇用機会均等法9条)
- 均等法上の紛争解決援助を求めたことによる解雇(男女雇用機会均等法17条2項)
- 正社員転換を求めたことによる解雇(パートタイム・有期雇用労働法14条3項)
- 紛争解決援助の申請を理由とする解雇(パートタイム・有期雇用労働法24条2項)
- 派遣法違反の申告を理由とする解雇(労働者派遣法49条の3第2項)
- 助言・指導やあっせんの申請を理由とする解雇(個別労働紛争解決促進法4条3項)
- 過半数代表者としての正当な権利行使を理由とする解雇(労働基準法施行規則6条の2第3項)
- 公益通報を理由とする解雇(公益通報者保護法3条)
- 障害者雇用促進法上の紛争解決の援助の申請を理由とする解雇(障害者雇用促進法74条の6第2項)
- 不当労働行為の申立てを理由とする解雇(労働組合法7条4項)
これらはいずれも、法律で与えられた権利を行使したこと自体を理由とする解雇であり、会社側の対応として許されません。
解雇が法律上禁止されている場合(解雇制限)
労働基準法19条は、一定期間の解雇を禁止しています(解雇制限)。
具体的には、業務上の負傷・疾病による療養のための休業期間及びその後30日間、産前産後休業期間及びその後30日間は、解雇が禁止されています。いずれの期間も、新たな就職先を探すことが特に困難な事情があるので、法律によって強く保護されているからです。
したがって、この期間中にされた解雇は無効となります。なお、既に解雇予告を受けていた場合でも、その後に労災による療養期間に入った場合は、その後の解雇は無効です。

「解雇制限」の解説

解雇予告が適切に行われていない場合
会社は、解雇日の30日前までに予告するか、不足する日数分の平均賃金に相当する解雇予告手当を支払う必要があります(労働基準法20条)。
解雇予告の日数が不足する場合も、手当は請求できるものの、直ちに解雇が無効になるとは限りません。しかし、解雇予告すら適切に行わない会社は、労務管理上の重大な問題を抱えることが多く、その解雇は無効の可能性が大いに疑われます。

なお、災害などやむを得ない事由のために事業の継続が不可能となった場合や、労働者の責に帰すべき事由に基づく解雇の場合には、労働基準監督署の認定を受けると、解雇予告をせずに即日解雇できます(解雇予告の除外認定)。
「即日解雇されたら」の解説

解雇の無効を申し立てる方法
次に、解雇の無効を争う手段について解説します。
解雇が無効かもしれないと感じたとき、「どうやって争えばいいのか」「どれくらいの時間と費用がかかるのか」と悩むでしょう。解雇無効を争う手段は、主に労働審判・訴訟・あっせんの3つがありますが、それぞれを比較して、選び方を理解してください。
なお、解雇直後に行うべき初動対応や解雇理由証明書の請求方法については、別の解説で詳しく説明します(参考:「会社を解雇されたらやること」「解雇理由証明書とは?」)。
労働審判・訴訟・あっせんの期間と進行の流れ
まず、各手続きがどのような流れで進み、期間がどれほどかかるのかを把握しましょう。
解雇が無効になる可能性があるとしても、長期間かかるとその分だけ不利益が大きくなってしまうので、労働者側としてはまず、迅速に進む「労働審判」の手続きを利用するのがお勧めです。
なお、解雇無効を請求する裁判手続きは、「地位確認請求」と呼びます。
つまり、「解雇が無効であるため、労働者としての地位が存続していることを確認する」と求めることを内容とします。解雇の無効を主張することから「解雇無効の訴え」と呼ぶこともあります。

労働審判の期間と流れ
労働審判の期間の目安は、3ヶ月程度(平均審理期間は約70日)です。労働審判の流れは、次のように進みます。
- 裁判所に労働審判を申立てる。
- 原則3回以内の期日で話し合いを行う。
- 話し合いで合意ができれば「調停」。
- 合意できなければ労働審判委員会が審判を下す。
- 2週間以内に労使のいずれかが異議申立てを行えば訴訟に移行する。
労働審判は、期日の日数の上限が法律に定められており、労働者保護の観点から迅速な解決を目指す制度です。そのため「早めに決着をつけたい」「長期化は避けたい」というケースに向いています。
訴訟の期間と流れ
労働問題について訴訟で解決する際、期間の目安は1年〜2年程度です。訴訟の中で和解ができれば半年程度で解決することもありますが、複雑なケースでは相当な期間がかかります。
訴訟の流れは一般的に、次のように進みます。
- 解雇無効を求めて訴訟を提起する(地位確認請求)。
- 労使双方が交互に、準備書面で主張を行い、証拠を提出する。
- 必要に応じて、証人尋問を実施する。
- 裁判所から和解を勧められ、応じれば和解によって終了する。
- 和解に至らない場合には判決が下される(不服があれば控訴・上告も可能)。
訴訟は、時間がかかる一方で、労働問題についての終局的な解決が得られる手段です。また、労使の対立が大きかったり、事実の認識に乖離があったり、争点に関する専門的な判断が必要であったりするときは、労働審判を経ずに訴訟を選ぶこともあります。
あっせんの期間と流れ
あっせんによる解決の期間の目安は、1ヶ月〜2ヶ月程度です。あっせんの流れは、次のように進みます。
- 労働局にあっせん申請書を提出する。
- 紛争調整委員会から指名されたあっせん委員を交えて話し合いを行う。
- 合意すれば解決、不成立なら手続きが終了する。
あっせんは、話し合いによって柔軟な解決を目指す制度です。労働者一人でも利用しやすい一方で、会社が応じなければ前には進まず、手続きが終了してしまう点に注意が必要です。
「裁判で勝つ方法」の解説

無効な解雇を争うときの費用の目安
解雇が無効の可能性があっても、争いをためらう最大の理由は「費用への不安」でしょう。
費用対効果はケースによって異なりますが、弁護士に相談して「解雇が無効の可能性が高い」とアドバイスを得た案件については、費用面でも争う価値が十分にあると考えます。解雇無効を争う際にかかる費用の目安は、次の通りです。
【裁判所にかかる実費】
裁判所に支払う実費には、手数料(印紙代)と郵券(切手代)があります。
解雇無効を争う場合、労働者としての地位を確認する請求として、訴額は160万円とみなされるため、これに対応する費用1万3,000円を収める必要があります。また、解雇無効に加えて未払賃金や慰謝料などの請求をする場合には、その金額を加算します(手数料額早見表)。労働審判の手数料は、訴訟の半額とされています。
また、裁判所から当事者への連絡用として、郵券数千円程度を収めます。
【弁護士費用の目安】
労働審判や訴訟のサポートを弁護士に依頼する場合、次のような費用がかかります。
- 相談料
初回は無料の法律相談を実施している法律事務所も多くあります。「30分5,000円」「1時間1万円」程度が相場となります。 - 着手金
解雇無効を請求する場合、30万円程度が目安となります。 - 報酬金
金銭を回収した場合、その16%〜30%程度が相場です。解雇が無効となって復職した場合には成功報酬が発生すると定める法律事務所もあります。
その他に、労働審判や訴訟の期日に出頭する際に、日当や交通費がかかることがあります。金銭的な負担だけでなく、争うことによる精神的な負担も加味しておく必要があります。
一方で、解雇が無効と判断されれば、解雇期間中の未払い賃金(バックペイ)や解決金、慰謝料を得られる可能性があるので、「いくらかかるか」だけでなく、得られる金額との「費用対効果」の見通しを踏まえて判断することが大切です。
「解雇の解決金」の解説

解雇無効を訴える手段ごとの特徴と選び方
以上の点を踏まえ、最後に、各手続きがどのようなケースに向いているかを整理します。
労働審判が向いているケース
労働審判は、話し合いが中心の手続きなので、解決までにかかる費用や期間の負担が小さいメリットがあります。また、裁判官をはじめとした専門家が関与するので、労働法や裁判例の知識をもとに判断してもらうことができます。
一方で、異議申立てがあると自動的に訴訟に移行するため、対立の大きいケースでは最終的な解決となりません。また、原則として3回までの期日で判断を下すため、主張が複雑であったり証拠が多数あったりすると、審理に限界が出てしまうデメリットがあります。
労働審判で解雇の無効を争うのは、次のケースに向いています。
- 早期解決を重視したい(次の転職先が決まっているなど)。
- 解雇無効かどうかの判断をまずは知りたい。
- 金銭解決も視野に入れている。
労働者保護のために整備された制度なので、労働者側で解雇を争うなら、「まずは労働審判」という方針が基本と考えてよいでしょう。
訴訟が向いているケース
訴訟で争うと、労働審判に比べて期間と費用がかかるのが通常です。
その分、主張整理や証拠調べは綿密に行われるため、正確な判断を下してもらえる可能性が高くなります。また、裁判官の判決によって問題を終局的に解決できるので、時間はかかりますが、最終的な判断を求める場合に適しています。
訴訟で解雇の無効を争うのは、次のケースに向いています。
- 会社と徹底的に争うことを希望している。
- 労働者が復職を強く望んでいる(金銭解決で妥協したくない)。
- 事実関係や証拠が複雑である。
あっせんが向いているケース
あっせんは、各手続きの中で最も期間と費用がかからないメリットがありますが、その分、会社が応じない場合には解決できないデメリットに注意しなければなりません。そのため、次のようなケースに向いています。
- 会社との対立をできるだけ避けたい(在職を続ける場合など)。
- 費用や時間をかけたくない。
- 弁護士を依頼せず、自分で解決したい。
どの手段を選ぶべきかは、解雇の理由や証拠の有無、目指す解決の方針などによっても大きく変わります。専門的な判断が必要なので、争いを開始する前に、労働問題に精通した弁護士に相談しながら決めるのがお勧めです。
「労働審判の流れと注意点」の解説

解雇が無効になったらその後の具体的な対応は?
次に、解雇が無効となった後の流れについて解説します。
解雇が無効と判断された場合、法律上「その解雇は最初からなかったもの」と扱われます。その結果、労働者は復職することができ、解雇期間中の賃金(バックペイ)を受け取れます。とはいえ、一度解雇された会社には戻りたくないという不安を抱く人もいて、この場合、解雇が無効だとしても選択肢は「復職」だけではなく、あえて復職せずに金銭解決を目指す方針もあり得ます。
復職した場合のお金と手続きのシミュレーション
解雇が無効である場合、労働契約は継続している扱いとなります。
その結果、原則として、解雇前と同一の条件で復職することとなります。解雇を巡るトラブルがあったからといって賃金を減額したり、嫌がらせ目的で配置転換したりといった不利益な取り扱いをすることは許されません。もし復職後に不当な扱いを受けた場合は、労働条件の不利益変更やハラスメントとして、解雇とは別に争う余地があります。
解雇が無効なら、解雇期間中に本来支払われるべきだった賃金(バックペイ)を請求できます。バックペイは、基本給や手当のほか、在籍していれば支給された賞与や定期昇給も対象となります。会社がノーワーク・ノーペイを主張することがありますが、就労できなかった原因は無効な解雇にあるので、この反論は認められません。

なお、解雇が無効になる場合、社会保険料についても遡及して調整されます。
つまり、健康保険や厚生年金について、解雇期間中も被保険者であったという扱いとなり、会社側で被保険者資格の再取得を行い、社会保険料を遡って納付する必要があります。一方で、解雇時に発行された離職票は無効となり、既に受給していた失業保険は返還しなければなりません。
解雇は無効だが復職したくない場合
「解雇を争った会社には戻りたくない」と感じるのは、ごく自然なことです。パワハラやセクハラなど、労働環境に問題がある場合は尚更です。
重要なのは、解雇が無効だとしても、必ず復職しなければならないわけではないという点です。解雇が無効と認められれば、一旦は労働者の地位が回復しますが、復帰を拒否して退職することも可能です(この場合、バックペイは受領可能です)。
実務上、労働者が復職を望まないケースほど、会社も戻ってきてほしくないと考えていることが多いです。この場合、建前はともかく、労使の本音が合致するなら、解決金を受領して退職する「金銭解決」を選択することができます。

解決金の金額はケースバイケースですが、次のような判断要素が考慮されます。
- 解雇を争った場合に、無効と判断される可能性
- バックペイの見込額
- 復職の現実性
- 会社側のリスク(訴訟の長期化や信用への影響など)
金銭解決により退職した場合は、通常の退職と同じく、離職票を改めて発行し(離職理由を変更)、失業保険を受給することができます。社会保険についても、国民健康保険・国民年金への切り替えを行うこととなります。
「解雇から復職したくない場合の対応」の解説

解雇無効を争うなら弁護士に相談すべき

無効な解雇を争うなら、早めに弁護士に相談しておくのが有益です。
解雇無効の問題は、初動の対応次第で結果が大きく左右されます。行動によっては「解雇を受け入れた」と評価されかねないので、有利な解決を目指すなら早い段階での相談が重要です。
弁護士に相談するタイミング
弁護士は、「裁判になってから相談すればよい」と思われがちですが、実際はそれでは遅く、「解雇を言い渡された直後」が最も重要なタイミングとなります。
解雇無効を主張するつもりでも、退職を前提とした発言や行動をしたり、放置したまま期間が経過してしまったりすると、いざ争うときに「退職に同意していた」と反論されかねません。予期せぬリスクを回避するために、解雇を告げられた時点で弁護士に相談するのが望ましいです。
早く動くほど選択肢が広がるので、「無効かもしれない」と思ったら遠慮なくご連絡ください。なお、解雇の争いそのものに時効はないものの、付随して争う賃金や残業代については、3年間の消滅時効があります。
弁護士に相談するメリット
解雇の無効を争う際は、法律や裁判例の知識が欠かせません。解雇無効について弁護士に相談するメリットは、次の通りです。
- 解雇が無効かどうかを専門的に判断できる
解雇の有効性は、法律と裁判例の知識をもとに判断する必要があります。弁護士なら、類似の裁判例を踏まえ、無効と判断される可能性を見極めることができます。 - 会社との交渉を代理してもらえる
弁護士に依頼すれば、会社との交渉窓口を代理人として任せることができます。強い交渉力をもとに勧められるほか、会社担当者と直接やり取りせずに済むなど、精神面でのメリットもあります。 - 裁判手続きをスムーズに進められる
解雇無効を巡って、労働審判や訴訟に発展することもあります。裁判手続きは専門的で煩雑なので、弁護士のサポートなしに進めるのは現実的でありません。 - 時間と労力を節約できる
解雇無効を争うには、書面作成や証拠収集、法的主張の整理が必須となります。慣れない手続きを一人で行うのは大きな負担でしょう。弁護士に依頼すれば、再就職活動に専念しながら、解雇問題の争いを進めてもらうことができます。
専門家の助けがある方が、解雇無効の争いの成功率を上げることができるので、解雇の問題に直面したら速やかに弁護士に相談することをお勧めします。
「労働問題に強い弁護士の選び方」の解説

復職するかどうか悩むときは?
解雇が無効となる可能性が高くても、復職するか、それとも金銭解決で区切りを付けるべきか、判断に悩むケースは少なくありません。
人によって正解は違いますが、次の点を加味して決定してください。
- 復職できる職場環境が整備されているか。
- 転職に成功する可能性がどれほどあるか。
- 金銭面でどちらが有利か。
- 争いを継続する負担をどこまで許容することができるか。
選択肢を広く持つには、解雇無効の争いを始める段階で、戦略的に方針を決定しておくべきです。有利な解決に繋げるためにも、弁護士に相談して法的な見通しを聞くと共に、自分の状況や希望を踏まえて現実的な選択肢を一緒に考えるのがよいでしょう。
方針に悩んでいるからといって、相談を先延ばしする理由にはなりません。
解雇無効を争いたい方からのよくある質問

最後に、解雇無効を争いたい方からのよくある質問に回答しておきます。
解雇が無効だとどうなる?
解雇が無効と判断されると、その解雇は最初から存在しなかったものと扱われ、その結果、労働者は会社に復帰することができ、合わせて、解雇期間中の賃金(バックペイ)を請求できます。
なお、解雇期間中に他社で働いて収入を得ていた場合でも請求はできますが、その収入額に応じて、最大で給与の6割まで減額されます。
解雇が無効かどうか確認する方法は?
解雇が無効かどうかを判断する第一歩は、会社が主張する解雇理由を正確に把握することです。そのために有効なのが、解雇理由証明書の請求です。
解雇理由を元に無効かどうかを判断するには専門的な法律知識を要するので、弁護士に依頼するのが適切です。早い段階で相談すれば、解雇の有効性だけでなく、その後の対応方針についてもアドバイスを受けることができます。
解雇を無効にしたら、必ず復職しないといけない?
解雇の無効が確定しても、復職する義務はありません。
本音では「もうこの会社では働きたくない」と感じるなら、解雇の無効を前提として、解決金を受け取って退職する金銭解決を目指すことも可能です。
ただし、争っている間に「復職するつもりがない」と明言すると足元を見られるおそれがあるので、復職の意思を前提として対応することが重要です。結果として復職しなかった場合でも、解雇が無効であれば解雇期間中の賃金(バックペイ)は受け取れます。
解雇無効の慰謝料はいくら?
解雇無効となった場合、慰謝料を請求できる可能性があります。
慰謝料の相場は、50万円~100万円程度が目安です。ただし、慰謝料が認められるのは、解雇を無効にするだけでは回復しきれないほどの精神的苦痛がある場合に限られます。実際に高額な慰謝料(100万円)を認めた事例には、妊娠中であることを知りながら解雇した事案があります(東京地裁平成18年11月29日判決)。
また、解決金による解決を目指す場合も、慰謝料請求を合わせて主張することで解決金の増額に繋がる可能性があります。精神的苦痛とは別に実損がある場合、損害賠償請求が認められることもあります。
「不当解雇の慰謝料の相場」の解説

解雇無効の場合、社会保険はどうなる?
解雇が無効になると、解雇期間中も在職していた扱いとなります。
そのため、健康保険や厚生年金、雇用保険、労災保険といった保険資格も、遡って継続することとなります。
したがって、解雇が無効と確定した後は、会社に対し、被保険者資格の再登録や社会保険料の遡及支払いを行うよう依頼しましょう。社会保険料の労働者負担分については、支給される賃金から控除されるのが通常です。
解雇無効の場合、離職票はどうなる?
解雇が無効な場合、そもそも退職しなかったことになるため、解雇時に発行された離職票は無効となり、使用することはできません。既に失業保険を受給していた場合、復職に伴って受給額を返還する必要があります。
【まとめ】解雇を無効にしたい場合

今回は、解雇が無効と判断される具体例と、その後の対応について解説しました。
解雇は、労働者の生活に影響する重大な処分なので、社長の一時の感情で行えるものではありません。十分な理由や手続きを欠した解雇に泣き寝入りする必要はなく、たとえ会社から一方的に言い渡されたとしても、無効になる可能性が高いと考えて戦うべきです。
納得のできない点があるなら、安易に受け入れるべきではありません。解雇が法的に有効なものかどうかを確認するためにも、弁護士に相談して、専門家の視点で判断してもらうべきです。無効の可能性があるなら、労働審判や訴訟を含めた最適な解決方法を選ぶことが、有利な解決に繋がります。
解雇問題は、早期の対応が必要となります。後悔しない選択をするためにも、一人で抱え込まず、労働問題に精通した弁護士に早期にご相談ください。
- 解雇は法律で厳しく制限され、要件を満たさない解雇は無効となる
- 解雇が無効となる場合、復職やバックペイの請求ができる
- 無効を争うには労働審判や訴訟、あっせんの手段があり、費用や期間が異なる
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