MENU
浅野 英之
弁護士
弁護士(第一東京弁護士会所属、登録番号44844)。東京大学法学部卒、東京大学法科大学院修了。

企業側の労働問題を扱う石嵜・山中総合法律事務所、労働者側の法律問題を扱う事務所の労働部門リーダーを経て、弁護士法人浅野総合法律事務所を設立。

不当解雇、未払残業代、セクハラ、パワハラ、労災など、注目を集める労働問題について、「泣き寝入りを許さない」姿勢で、親身に法律相談をお聞きします。

→労働問題弁護士ガイドとは
★ 労働問題を弁護士に相談する流れは?

労働者代表とは?役割と過半数代表者の選出方法について解説

労務管理を行う際、労働者代表が必要となることがあります。

労働者代表は、過半数労組もしくは過半数代表者のことを指しますが、36協定などの労使協定の締結当事者となったり、就業規則の作成・変更をする際に意見をしたりする役割があります。労働者にとって影響の大きい重要な決定については、労働者代表の関与が必要となります。

しかし実際は、「誰を選べばよいか」「どのような手続きが必要か」といった点に誤解があり、企業の都合で恣意的に選ばれた代表者が手続きに関与しているケースも少なくありません。選出方法に不備があると労働者の意見が反映されないばかりか、労使協定が無効となるリスクがあります。

今回は、労働者代表の意味や役割、過半数代表者の適切な選出方法などについて、労働問題に強い弁護士が解説します。

この解説のポイント
  • 労働者代表は、労使協定の締結や就業規則の作成・変更の際に必要となる
  • 過半数代表者の選出に不備があると、締結した規程類が無効となる
  • 過半数代表者に選ばれた人が不利益な処遇を受けることは許されない

\ 「今すぐ」相談予約はコチラ/

目次(クリックで移動)
解説の執筆者

弁護士 浅野英之

弁護士(第一東京弁護士会所属、登録番号44844)。東京大学法学部卒、東京大学法科大学院修了。

企業側の労働問題を扱う石嵜・山中総合法律事務所、労働者側の法律問題を扱う事務所の労働部門リーダーを経て、弁護士法人浅野総合法律事務所を設立。

不当解雇、未払残業代、セクハラ、パワハラ、労災など、注目を集める労働問題について、「泣き寝入りを許さない」姿勢で、親身に法律相談をお聞きします。

\相談ご予約受付中です/

労働問題に関する相談は、弁護士が詳しくお聞きします。

ご相談の予約は、お気軽にお問い合わせください。

労働者代表とは

はじめに、労働者代表に関する基本的な知識を解説します。

労働者代表とは、会社と労働者の間で締結される各種の労使協定で、労働者側の意見を代表する者のことを指します。特に、時間外労働や休日労働に関する労使協定(いわゆる36協定)の締結など、労働基準法上の手続きにおいて重要な役割を担います。

労働者代表は、従業員代表とも呼ばれますが、法的には、「過半数労働組合」と「過半数代表者」のいずれかを指します。つまり、事業場に労働者の過半数で組織された労働組合が存在する場合にはその労働組合が労働者代表となり、そのような組合がない場合は、労働者の過半数を代表する者(過半数代表者)を選出する必要があります。

過半数代表者に選出された場合、職場の全労働者を代表するため、選出に同意した人以外のためにも行動することとなります。

過半数労働組合と過半数代表者の違い

労働者代表には、「過半数労働組合」と「過半数代表者」の2つがあります。

過半数労働組合とは、当該事業場の労働者の過半数が加入している労働組合を指します。このような労働組合が存在する場合、その組合が労働者代表として扱われます(職場に労働組合があっても、過半数の労働者が加入していなければ、過半数労働組合にはなりません)。

一方、過半数労働組合が存在しない場合、過半数代表者を選出しなければなりません。過半数代表者とは、労働者の過半数を代表する者として、民主的な手続きによって選ばれた個人のことです。過半数代表者の選出で注意すべきポイントは、あくまで、労働者の意思に基づいて選出される必要があり、会社が一方的に指名することは認められていない点です。

なぜ労働者代表が必要なのか

労働者代表が必要な理由は、労働条件の決定に、労働者の意思を反映させるためです。

労働基準法では、本来は禁止される行為について、労使協定の締結を条件として例外的に認める仕組みが多くあります。例えば、残業や休日労働は原則として違法ですが、36協定を結ぶことで初めて適法となります。労使協定は、企業の運営に不可欠である一方、労働者にとって不利な条件を受け入れることにつながるため、その締結には、労働者代表との合意が必要とされています。

また、就業規則の作成・変更の際も、会社は労働者代表の意見を聴取する必要があります。就業規則は会社主導で作られるため、放置すれば労働者に不利な内容になりがちですが、労働者代表が関与することで一定の歯止めをかけることが目的です。

このように、労働者代表は、労使の力関係のバランスを保ち、労働条件の適正を保つという重要な役割を担っています。

労働者代表・過半数代表者の主な役割

労働者代表・過半数代表者の主な役割は、労働基準法などの法律に定められています。

代表的なのが、労使協定の締結と、就業規則の作成・変更の2つです。なお、複数の労使協定の締結、就業規則の作成・変更を行う場合、各手続きごとに過半数代表者が必要ですが、一度の選出で、複数の手続きに関する過半数代表者を選出したものとする扱いが可能です。

労使協定の締結

労使協定は、労使間で締結される労働条件に関する合意です。

労使協定の締結では、労働者代表(過半数労働組合または過半数代表者)が、労働者側の締結当事者となります。過半数代表者を選出した場合、労働基準監督署への届出書に選出方法を記載することとなっており、過半数代表者選出規程を作成して添付する方法がおすすめです。

最もよく用いられるのは、残業や休日労働を適法化する36協定ですが、その他にも、様々な労使協定が、労働者代表と会社との間で結ばれます。

労働時間時間外及び休日労働(労働基準法36条

1ヶ月単位の変形労働時間制(労働基準法32条の2

フレックスタイム制(労働基準法32条の3

1年単位の変形労働時間制(労働基準法32条の4

1週間単位の非定型的変形労働時間制(労働基準法32条の5
一斉休憩の適用除外(労働基準法34条2項

専門業務型裁量労働制(労働基準法38条の3
3歳未満の子を養育する労働者からの申出に基づく所定労働時間の短縮措置等(育児介護休業法23条1項但書
休暇・休業年次有給休暇の時間単位付与(労働基準法39条4項
年次有給休暇の計画的付与(労働基準法39条6項
育児・介護休業をすることができない労働者に関する定め(育児介護休業法6条1項但書、12条2項)
子の看護休暇、介護休暇を取得することができない労働者に関する定め働者に関する定め(育児介護休業法16条の3 2項・16条
の6 2項で準用する6条1項但書)
賃金短時間労働者に係る事項についての就業規則の作成・変更(パートタイム有期雇用労働法7条
割増賃金の支払に代えた代替休暇(労働基準法37条3項
年次有給休暇中の賃金の定め(労働基準法39条9項但書
法定の退職手当保全措置によらない旨の定め(賃金支払確保法施行規則4条1項 五
労働安全衛生安全(衛生)委員会(労働安全衛生法17条4項など)
特別安全衛生改善計画の作成に係る意見聴取(労働安全衛生法78条2項
貯蓄金・財形貯蓄金の管理(労働基準法18条2項
財形給付金契約の締結(勤労者財産形成促進法6条の2
その他短時間労働者に係る事項についての就業規則の作成・変更(パートタイム有期雇用労働法7条
寄宿舎規則の作成・変更(労働基準法95条2項

労使協定と労働協約の違い」の解説

就業規則の作成・変更

会社は、就業規則の作成・変更の際、労働者代表(過半数労働組合または過半数代表者)の意見を聴取する必要があります。常時10人以上の労働者を使用する事業場では、就業規則を労働基準監督署に届け出る義務があり(労働基準法89条)、その際、労働者代表の意見書を添付します。

労働者代表が就業規則に反対意見を述べることも可能ですが、その意見に従う義務まではなく、意見聴取せずに作成・変更した就業規則も無効にはなりません。一方で、合理的な内容と言えるには意見聴取が必要と考えられます。また、労働者に周知されていない就業規則は無効です。

なお、過半数代表者の選出が適切であっても、就業規則の変更によって労働条件を不利益に変更する場合、その内容が不合理だと違法になる可能性があります。この場合、一方的な変更によって不利益を受けたら、会社と争って権利を実現する必要があります。

労働条件の不利益変更」の解説

過半数代表者の選出方法

労働者代表のうち、過半数代表者の選出は、非常に重要な手続きです。

過半数代表者の選出方法には法律上のルールがあります。形式的に行われているだけでは足りず、法律上の要件を満たさなければ、労使協定が無効と判断されるリスクがあります。

選出の基本ルール

過半数代表者は、労働者の意思に基づく民主的な手続きで選出される必要があります。

具体的には、誰が代表になるかを労働者自身が決められる仕組みであることが重要です。そのため、会社があらかじめ候補者を決めたり、実質的に指名したりすることは認められません。また、選出にあたり、労働者に対して手続きや趣旨がきちんと周知されることも必要で、締結する労使協定の種類や名称など、選出目的を明らかにしなければなりません。単に形だけ選んだように見える場合は、後から無効と判断される可能性があります。

具体的な選出方法

過半数代表者の選出方法に、法律上の厳密な形式は定められていませんが、「民主的な手続き」といえるためには、次のような方法が用いられます。

  • 投票方式:最も民主性が担保しやすい方法
  • 挙手方式:小規模事業場などで簡易に選出する場合に適した方法
  • 信任方式:候補者を提示し、異議がなければ承認したものとみなす方法

いずれの方法でも重要なのは、「労働者が自由な意思で選出に参加できること」です。強制や誘導がある場合は、違法の疑いがあります。また、実際の社内への周知や投票の集計は、書面を回覧するほか、選出のためのメールを送付したり、フォーム入力としたりするなどの方法があります。

無効になる選出方法

次のようなケースでは、過半数代表者の選出が無効と判断されるおそれがあります。

  • 会社が一方的に代表者を指名した場合
  • 管理職など、本来対象とならない者が選ばれている場合
  • 実質的な選出手続きがなく、形式だけ整えている場合

会社の意向を色濃く反映している場合は不適切であり、例えば、「毎年同じ人を自動的に代表にしている」「会社が推薦した人物しか選ばれない」といった運用は問題があります。企業にとって、選出方法に不備があると、労使協定が無効になるリスクがあります。労働者としても、適法な選出をされているかを確認するため、就業規則や過半数代表者選出規程などをチェックしてください。

裁判例でも、選出方法が違法であったことを理由に、36協定を無効とした事例があります(トーコロ事件:東京高裁平成9年11月17日判決)。この裁判例では、「社員の親睦会の幹事を行うものを、自動的に過半数代表者とする」という方法は、労使協定を締結する目的での選出とはいえず、民主的な手続きでもないため違法であると判断されました。

労働問題を弁護士に無料相談する方法」の解説

過半数代表者の要件と注意点

次に、過半数代表者の選出に必要な要件について解説します。

どのような従業員でも労働者代表になれるわけではなく、他の労働者の不利益とならないよう、過半数代表者として選出される者には、法律で定められた条件があります。

労働基準法上の労働者であること

過半数代表者に選出されるには、労働基準法上の「労働者」であることが必要です。

労働基準法9条は「労働者」を「職業の種類を問わず、事業又は事務所(以下「事業」という。)に使用される者で、賃金を支払われる者をいう」と定義しています。また、労働基準法の適用を受けない者も過半数代表者になれないため、労働基準法116条で適用が除外される同居の親族(他に従業員がいない場合)や家事使用人も、過半数代表者にはなれません。

また、労働者を代表する者という性質から、事業主(代表者や社長、経営者など)、取締役や役員なども、過半数代表者にはなれません。

管理監督者ではないこと

「管理監督者」(労働基準法41条2号)は、過半数代表者になることができません。

管理監督者は、雇用される労働者ではあるものの、労働者側ではなくむしろ経営者側に位置する立場にあります。そのため、労働者の意見を代表する過半数代表者として不適切です。

ただし、管理監督者に該当するかは、役職の肩書のみでは決まらず、会社が管理職扱していても権限や待遇を伴わない「名ばかり管理職」もいます。この場合、理論上は、過半数代表者に選出されることが可能ですが、そもそも会社が管理職扱いしているため、労働者代表として不適切でしょう。

使用者の意向に基づく者ではないこと

以上の要件を満たしても、使用者の意向に基づく者ではないことが必要です。

過半数代表者は、労使協定の締結当事者となったり、就業規則に意見を言ったりすることで労働者の利益を代表する役割を担います。そのため、会社にとって都合のよい労働者が選出されてしまっては十分に役割を果たすことができません。

管理監督者と管理職の違い」の解説

過半数代表者の任期の考え方

過半数代表者の任期について、法律上の決まりはありません。そのため、過半数代表者の選出時に任期を設けたとしても、直ちに違法とはいえません。

ただし、「過半数代表者の選出方法」の通り、選出時には、その目的や締結する協定などを明らかにして行う必要があります。そのため、任期制とする場合、その期間に生じる可能性ある全ての協定などを具体的に列挙しなければなりません。また、長すぎる任期は、労働者の意向を反映しない代表者が残存する可能性があるため不適切です。

実務上は、任期を設ける場合でも、最長1年単位とすることが多いです。

なお、労働法は法改正も多く、選出時に予定していなかった労使協定の締結を要するケースもあります。この場合、既に選出済みの過半数代表者を流用するのは適切でなく、改めて選出し直す必要があります。

過半数代表者に対する不利益な取扱いは違法となる

過半数代表者であることや、過半数代表者になろうとした者に対して、使用者側が不利益な取扱いをすることは禁止されています(労働基準法施行規則6条の2第3項)。

また、会社には、過半数代表者が協定締結に関する事務を円滑に遂行できるよう、必要な配慮が義務付けられています。過半数代表者は、労働者の意見を反映するため、会社と対立し、敬遠されやすい立場にあります。そのため、不利益な扱いを受けないよう、法的に保護されるのです。

過半数代表者に対する不利益は扱いは、会社側に嫌がらせの意図があればパワハラに該当します。この場合、通常の労働者にもまして違法性が強く、慰謝料や損害賠償の請求が可能です。

パワハラの相談窓口」の解説

労働者代表・過半数代表者に関するよくある質問

最後に、労働者代表・過半数代表者に関するよくある質問に回答します。

過半数代表者の「労働者」の分母は?

過半数代表者とは、「労働者の半数を越える者の代表」という意味です。

この「労働者」の分母には正社員だけでなく、アルバイトやパート、契約社員などの非正規も含み、育児休業や休職中の社員も含みます。一方で、派遣社員や業務委託の個人事業主(フリーランス)など、直接の雇用関係がない者は含みません(派遣社員は、派遣先ではなく、派遣元の「労働者」の分母に含みます)。

「管理監督者」(労働基準法41条2号)は、過半数代表者の要件を満たさないものの、「労働者」の分母には含まれる点に注意してください。

過半数代表者を選出する事業場の単位は?

過半数代表者の選出は、事業場ごとに必要となります。

そのため、複数の事業場を有する企業では、過半数代表者も複数必要です(同様に、過半数組合も、事業場ごとの労働者の過半数で組織されるかどうかで判断します)。

労働基準法上の「事業場」は、場所的に判断されます。そのため、経営母体や法人が同じでも、東京本社と大阪支社は別事業場となります。

ただし、次の場合は例外的な扱いとされています。

  • 出張所や支所など、規模が著しく小さい場合は上位組織と一括されます。
  • 同じ場所にあるが、事業内容が全く異なる場合は別事業場とされます(工場内の診療所や、食堂など)。

アルバイトやパート、契約社員も過半数代表者になれる?

過半数代表者について、正社員であることは要件とされません。

そのため、アルバイトやパート、契約社員など、非正規社員でも過半数代表者になることができます。一方で、直接雇用関係にない派遣社員や、業務委託契約で働く者はそもそも「労働者」(労働基準法9条)でないため、過半数代表者にはなれません。

会社が過半数代表者を指名するのは違法?

過半数代表者は、民主的な手続きにより選出される必要があります。

そのため、会社が過半数代表者を指名するのは違法です。会社が指名した者を過半数代表者として労使協定を締結しても、その協定は無効となります。なお、民主的な手続きによるなら、その候補者を会社が指名すること自体は違法ではありません。

【まとめ】労働者代表について

弁護士法人浅野総合法律事務所
弁護士法人浅野総合法律事務所

今回は、職場の労働条件に深く関わる、労働者代表について解説しました。

労働者代表は、36協定を締結しての残業命令、就業規則による労働条件の不利益変更など、労働者にとって不利益のある場面で重要な役割を果たします。だからこそ、過半数代表者の選出方法には一定のルールがあり、手続きに不備があると、締結した協定が無効になるおそれがあります。

また、労働者代表に選ばれた人にとっても、不当な処遇を受けないように注意が必要です。会社が、過半数代表として選出された労働者に不利益な扱いをすることは厳格に禁止されています。

労働者代表・過半数代表者に関連して、会社の扱いが違法なのではないかと疑問がある場合は、ぜひ弁護士に相談してください。

この解説のポイント
  • 労働者代表は、労使協定の締結や就業規則の作成・変更の際に必要となる
  • 過半数代表者の選出に不備があると、締結した規程類が無効となる
  • 過半数代表者に選ばれた人が不利益な処遇を受けることは許されない

\ 「今すぐ」相談予約はコチラ/

目次(クリックで移動)