職場でつい、アダルトサイトを見てしまうことがあります。いけないこととはわかっていながら、なにげなくアダルトサイトを開いてしまうことも。しかし、職場のパソコンでアクセスすれば、バレる可能性があります。
退職時のPC調査で、不適切なサイトへのアクセスがバレると、解雇を言い渡されるおそれあり。「不当解雇ではないか」という法律相談もあります。
職場で他の同僚が、「業務中にアダルトサイトを見ていてろくに仕事しない」という悩みも聞きます。アダルトサイトを堂々と閲覧する行為は、女性社員にとってはセクハラにもあたります。いずれにせよ、職場のパソコンですべきことではありません。
今回は、アダルトサイトなど不適切なアクセスをした労働者の対応について、労働問題に強い弁護士が解説します。
職場でアダルトサイトを閲覧するのは問題
まずは、職場のパソコンで、アダルトサイトを閲覧することの問題点を解説します。「人として問題だ」という道徳はもちろん、職場で起こることなので労働問題でもあります。
職場における不適切なサイトへのアクセスには、次の問題があります。
- 労働時間なのに、業務に集中できていない
- 職場のパソコンに、アダルトサイト経由でウィルス感染させるおそれがある
- 情報セキュリティに被害を与える
- 業務上のメールアドレスにスパムメールが届くおそれがある
- 他の真面目に仕事している社員の邪魔になる
- 同じ処遇だと、不公平感を生む
アダルトサイトを閲覧した時間が業務時間中だと特に問題ですが、業務時間外でも、会社のパソコンでする行為ですから「まったく会社に無関係だ」というわけにはいきません。労働者は、職務に専念する義務があり、アダルトサイトばかり見ていると義務を果たせていません。
情報セキュリティを徹底した会社だと、アダルトサイトや違法サイト、不適切サイトにアクセスできないようブロッキングするという対策もありますが、小規模な会社では難しいでしょう。経済的な余裕のない会社では、ウィルス対策ソフトも準備できていない可能性もあります。
更に、周囲の女性社員にアダルトサイトを見られればセクハラです。女性社員の労働環境を悪化させるのは、いわゆる「環境型セクハラ」の典型だからです。
「セクハラ問題に強い弁護士に相談すべき理由」の解説
アダルトサイト閲覧が発覚したときの初動対応
アダルトサイトを、職場のパソコンで閲覧しているのがバレたら、直後の対応が肝心です。まずは謝罪し、反省するのが一番です。ただ、懲戒処分や解雇などといった不利益な処分を受けてしまいそうなら、それだけではいけません。
ところで、オフィスで堂々とパソコンを悪用した場合はさておき、次のケースも不安でしょう。
- 休日出勤し、オフィスに誰もいないと思った
- 男性しかいないと思って盛り上がってしまった
- 自分が事業所の責任者なので、文句を言う人はいないと思っていた
- 出張の移動中にアダルトサイトで時間つぶししていた
在宅勤務をいいことに、バレようがないと油断し、アダルトサイト閲覧に精を出す方もいます。
これらの例でも、発覚し、懲戒処分や解雇に至る例も、残念ながらあります。会社から貸与されたパソコンを調査するのは、会社の自由です。会社に所有権があるパソコンで、プライベートな活動をするのが間違い。「自分のプライベートだから中を見ないでくれ」といった反論は通用しません。
また、会社のサーバーに溜まったメールが調査され、アダルトサイトからの広告メール、スパムメールが見つかることによってバレてしまうケースもあります。
「会社の持ち物検査の違法性」「会社のプライベート干渉の違法性」の解説
アダルトサイト閲覧で懲戒処分や解雇とされたら?
職場のパソコンで、アダルトサイトを閲覧していたと発覚し、懲戒処分や解雇にされてしまったら「不当処分」または「不当解雇」だとして争えるのでしょうか。
解雇は、厳しく制限され、正当な理由がなければ違法です。アダルトサイトを見ていたという非が、どれほど重大なのかにより、結論は異なります。
就業規則に処分の根拠がある?
職場でのアダルトサイトの閲覧を理由に、会社が労働者を処分するには、その根拠が必要です。会社のルールが書かれた就業規則を見せてもらうよう会社に依頼しましょう。
就業規則や雇用契約書に、懲戒処分、懲戒解雇について記載がなかったり、アダルトサイトを仕事中に閲覧することが問題行為とされていなかったりするケースでは、懲戒処分、懲戒解雇にはできません。
会社の業務中にパソコンでアダルトサイトを閲覧するのは、職務専念義務違反です。「その他、社員として不適切な行為」「職務専念義務に違反する行為」といった一般的な記載でも、処分を下すことが可能です。
「正当な解雇理由の例と判断方法」の解説
アダルトサイトの閲覧…どの程度の処分が妥当?
では、職場でのアダルトサイト閲覧について懲戒処分を下すことが可能だとして、就業規則にいくつも定められた懲戒処分のうち、どの程度の処分が妥当なのかについても解説します。
懲戒処分の程度を決めるには、問題行為の悪質性、内容、頻度などによって判断します。業務時間中に職場パソコンでアダルトサイトを閲覧した、というケースでも、次のような事情を参考に決定されることとなります。
- アダルトサイトを閲覧した頻度
アダルトサイトの閲覧頻度が多いほど、重い懲戒処分となります。 - アダルトサイトの閲覧した期間
アダルトサイトの閲覧期間が長いほど、重い懲戒処分となります。 - 過去の同種懲戒歴、指導歴の有無
過去にもアダルトサイトの閲覧によって注意指導、懲戒処分を受けても改善しなかった場合、重い懲戒処分となります。
一概に、「アダルトサイトの閲覧」という問題行為で、この懲戒処分が妥当という相場はありません。次に示すような大きな実害が会社に生じていなければ、一度目は、厳重注意にとどまるか、もしくは、戒告や譴責などの軽めの懲戒処分となるのが一般的です。
アダルトサイトの閲覧で懲戒解雇は不当?
職場で、エロサイトを見るという行為自体、非常に問題のある行為であることは、常識ある社会人の方であれば、よく理解いただけることでしょう。不適切な行為であり、労働者側に不利になりますから、ご注意ください。
とはいえ、懲戒処分については、既に解説したとおり相場はなく、悪質性の程度によってさまざまであるものの、アダルトサイトを見ていた、というだけで懲戒解雇というのでは重すぎ、「不当解雇」のおそれが十分にあります。ただし、アダルトサイトからウィルスに感染してしまったり、スパムメールが止まらなくなってしまったりなど、実害が生じ、会社のパソコンが壊れてしまったなどといった場合には、会社に生じた損害の賠償を請求されるおそれがあります。
「懲戒解雇を争うときのポイント」の解説
同僚がエロサイトばかり見て仕事しない場合は?
アダルトサイトばかり見ている社員がいると、その労働者自身の問題にとどまりません。会社にそのような人がいることの悪影響は計り知れません。
あなたの隣の席の上司、同僚が、職務時間中にアダルトサイトばかり見ていて、全然仕事をしておらず、一方であなたがとても忙しいと、不公平感を感じ、不平不満を抱くのは当然ではないでしょうか。
同じ給料なのにアダルトサイトを見ている人には、制裁を下してもらいと思うでしょう。
アダルトサイトばかり見ていることがまだバレておらず、なにも処分を受けていないのであれば、まずは直属の上司もしくは社長に、事実をありのままに伝え、対応を依頼しましょう。
ただし、労働者を懲戒処分や解雇にするかどうかは、会社の判断。いかに不公平でも、あなたが、アダルトサイトを見ている社員の処分を決めることはできません。嫌な思いをしているのはあなただけではないはずなので、勇気をもって告発しましょう。
一方で、女性社員の立場ならば、あなたはセクハラの被害者です。アダルトサイトを堂々と見続ける社員によって労働環境が劣悪なものとなっているからです。このとき、会社が対応してくれないなら、弁護士に相談し、慰謝料請求を検討する手もあります。
「セクハラの相談窓口」の解説
まとめ
今回は、アダルトサイトを、職場のパソコンで労働時間中に見ていたのが発覚したとき、懲戒処分や解雇などの厳しい処分とされても仕方ないのかについて解説しました。
職場のパソコンで仕事中にアダルトサイトを見るのは、悪いことなのは当然です。「バレないだろう」と軽い気持ちでしても、パソコンの解析やメールなど、発覚するポイントは多いもの。逆に、堂々と見ていれば、セクハラと言われても仕方ないでしょう。
アダルトサイトやAVをはじめ、違法なサイトにつないで後ろめたいとき、早めに弁護士に相談してください。
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