労働基準監督署(労基署)は、労働トラブルにまつわる法違反を取り締まる行政機関です。労働基準法違反の疑いがあるとき「労働基準監督署への通報」は、労働者にとって大きな一歩です。
一方で、労働基準監督署への通報はリスクもあり、注意を要します。労基署に通報した後のプロセスがどのように進むか、匿名性は保持されるか、通報したことが職場にバレるリスクがあるかといった点の理解は、いざ通報をする際、労動者の注意すべき重要なポイントです。「ブラック企業」という言葉が浸透し、働き方改革が進むなど、昔より労働環境は改善しました。それでもなお、賃金未払いや長時間労働など、労働問題はなくならないのが実情です。
今回は、労働基準監督署へ通報の方法と、その後の具体的な流れ、会社にバレないよう匿名で通報するための注意点を、労働問題に強い弁護士が解説します。安心して権利を主張するには、正しい法律知識を持つ弁護士のアドバイスを受けるのが賢明です。
- 労働基準法などの法令違反を発見したら労働基準監督署に速やかに通報する
- 労働基準監督署に通報すると、調査がなされ行政処分や刑事罰が会社に下る
- 労基署に通報してもなお、並行して弁護士に相談すべきメリットは大きい
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労働基準監督署への通報とは
労働基準監督署への通報とは、労動者が、残業代の未払いやハラスメント、劣悪な労働環境といった労働法違反について、労働基準監督署に連絡し、行政処分や刑事処罰をはじめとした適切な対処を求める行為です。
労働基準法の違反に該当するとき、労動者が労働基準監督署に申告できることは、労働基準法104条にも定められた法律上の権利です。法違反の事実を伝え、改善を指示したり処罰を下したりしてもらえるよう請求することができるのです。
労働基準法104条(監督機関に対する申告)
1. 事業場に、この法律又はこの法律に基いて発する命令に違反する事実がある場合においては、労働者は、その事実を行政官庁又は労働基準監督官に申告することができる。
2. 使用者は、前項の申告をしたことを理由として、労働者に対して解雇その他不利益な取扱をしてはならない。
労働基準法(e-Gov法令検索)
はじめに、通報する際に知っておくべき基本的な法律知識を解説します。
労働基準監督署へ通報する方法
労働基準監督署へ通報する方法は、大きく分けると次の3つです。
- 電話で通報する
- メールで通報する
- 直接訪問して通報する
電話もしくは直接訪問して通報する場合、勤務先の所在地から、管轄する労基署の連絡先や住所を調べ、適した機関に連絡しましょう。メールによる通報の場合、厚生労働省の「労働基準関係情報メール窓口」の送信フォームから、必要事項を入力して通報できます。
電話、メール、訪問のいずれでもトラブルを解決する効果は同じですが、それぞれの方法はメリットとデメリットがあり、比較が必要です。一長一短あることを理解し、適切な方法を選ぶべきです。
メリット | デメリット | |
---|---|---|
電話の通報 | 直接訪問よりも心理的ハードルが低い。好きな場所から通報できる。 | 正確な説明を要する。不正の詳細が伝わりづらい。口頭のみで物的証拠を示せないと対応されないおそれがある。 |
メールの通報 | 会話が不要なので心理的ハードルが最も低い。文章でまとめることで状況を整理しやすい。 | 労基署に届くまでに時間がかかったり、検討に期間を要したりするおそれがある。 |
直接訪問 | 物理的な証拠を持参して訪問することで動いてもらいやすい。その場ですぐ話を聞いてもらえる。 | 訪問して説明する心理的ハードルが高い。平日の日中に行く必要があり、時間と労力、手間がかかる。 |
以上を踏まえると、会社の不正を適切に対処してもらうには、重大な問題であるほど、労働基準監督署を直接訪問して通報するのが最善です。手間と時間はかかりますが、直接訪問すれば、その場で違法性の有無を詳しく相談できると共に、関連するトラブルがあれば一括して対応してもらえるからです。
「労働問題の解決方法」の解説
労基署への通報は告訴・告発を意味する
労働基準監督署への通報は、法律の専門用語では「告訴」「告発」に該当します。「告訴」と「告発」はよく似た用語ですが、行為の主体が異なるため区別して理解する必要があります。
したがって、労働基準監督署への通報は、自身が労働法違反の被害者であるときには「告訴」、そうでなく、他の従業員の被害などを通報する場合は「告発」を意味します。
なお、告訴は、被害者及びその法定代理人、(被害者が死亡したとき)その配偶者、直系の親族又は兄弟姉妹、(被害者の法定代理人が被疑者であるとき、被疑者の配偶者であるとき、又は被疑者の四親等内の血族若しくは三親等内の姻族であるとき)被害者の親族が、独立して権利を有します。
相談から通報への流れ
労働基準監督署への通報は、まずは相談からはじめてアドバイスを得て、その後に通報する流れが一般的です。相談から通報までの流れは、次のように進みます。
- 労働基準監督署に、会社の法律違反や不正の事実について相談する。
- 法違反の証拠となる資料を準備する。
- 告訴状を作成する。
- 労働基準監督署に告訴状を提出する。
なお、労働基準監督署への相談や通報は、まさに被害を受けている在職中にすることができるのは当然、退職後であっても通報が可能です。退職後であっても、在職中の法違反によって損害を被ったことに違いはなく、法律を守らない会社を是正すべき必要性に変わりはないからです。
「退職したらやることの順番」の解説
労働基準監督署への通報は匿名でできる
電話、メール、直接訪問のいずれの方法を選択するにせよ、労働者保護の観点から、労働基準監督署への通報は匿名ですることができます。匿名で、名前を名乗らなくてもよいため、通報者にとっては、法律違反を発見したらすぐに、安心して通報することができます。
労基署への通報が必ず名前を明かさねばならないとすれば、職場での人間関係や社長からのハラスメントなどが不安で通報を躊躇してしまう労動者も出てくるでしょう。これでは、労動者の権利を守るのに不十分となってしまいます。労働基準監督署への通報はあくまで、企業における法律違反を是正することが目的なのですから、所属する会社(労働法違反のある企業)を明らかにすれば足りるのであって、氏名を名乗る必要はありません。
なお、仮に通報がバレたとしても報復は許されません。法違反を通報するのは労動者の権利であり、正当な権利行使を理由とした不利益な扱いは違法だからです。匿名で通報したことがバレるかどうかは「労働基準監督署への通報は会社にバレる?」で後述します。
「違法な報復人事への対策」の解説
労働基準監督署に通報した後のプロセス
次に、労働基準監督署に通報したらその後はどうなるのか、通報後のプロセスを解説します。
通報後に行われる初動対応
通報が行われた後、まずは、労働基準監督署にて通報内容の審査が実施されます。通報された内容に、是正すべき法令違反があるかどうかをチェックするのです。
労働基準監督署は全ての労働問題に対応するわけではありません。労基署が管轄するのは、労働基準法、労働安全衛生法、最低賃金法といった、労動者保護のための最低限度のルールを定める法律への違反に限定されます。つまり、会社に不正があっても、これらの法令に違反しているという内容の通報でないなら、労働基準監督署では対応ができないのです。また、重要性の高いものから対処するのが通常であり、違法性が軽微だと、結果的に対処をしてもらえないことがあります。
「労働基準監督署が動かないときの対処法」の解説
会社への調査とその内容
労働基準監督署にて通報内容を審査した結果、労働基準関係法令に違反する疑いがあると判断された場合は、会社に対する調査が始まります。会社に対する調査では、労働基準監督署は次の複数の方法を駆使し、真実を明らかにするよう努めます。
代表者の呼び出し
最も簡易な調査方法が、代表者の呼び出しです。代表取締役など、会社の代表者宛に、出頭を依頼し、説明を求める方法です。呼び出しを受けた者は、指定された期日に労基署に赴き、法違反の有無について会社側の反論を説明する必要があります。例えば、時間外労働に対する残業代未払いを疑われたケースでは、就業規則や労使協定、タイムカードなどの書類を持参し、労務管理に問題がないという申開きをします。
準備書類の不足や追加の聴取を要する場合、再度呼び出しが行われることもあります。なお、無視して訪問しないなど、聞き取りに対応しない使用者には、次章以下の強制的な方法が実施されます。
立ち入り調査(臨検)
次に、立ち入り調査が行われます。立ち入り調査は、専門用語で「臨検監督」とも呼び、労働基準関係法令を遵守しているか、監督官が事業場に入って調査します。任意の呼び出しと異なり、強制的な手段なので、基本的に会社は拒否できません。
立ち入り調査では、重要書類のチェックや関係者への聞き取りがなされ、違反の実態について労基署が事実確認をします。臨検監督は、その趣旨により4種類に分けられます。
- 定期監督
労働基準監督署が管轄する地域内にある会社に対して定期的に実施する。法令違反がなくても対象となる。 - 災害時監督
労災事故が起こったときに、労働災害の原因を調査し、再発を防止する目的で実施される。 - 申告監督
労働者からの申告に基づいて、通報された法違反の事実の有無を確認する目的で実施される。 - 再監督
過去に法令違反が確認された会社に対し、違反状態が是正されたかを確認するために実施される。
労動者からの通報によって行われるのは「申告監督」です。
なお、法違反の疑いが濃厚な場合の臨検監督は、抜き打ちで進められることが多いです。臨検が抜き打ちでされる理由は、特に悪質な労働基準法違反をする会社において、調査を予告すると証拠を隠匿されたり、改ざんされたりする危険があるからです。
モニタリング
労働基準監督署から状況を改善するよう指導された場合に、指導された事項が継続的に改善されているかどうか、労基署に報告することを求められます。一度指導を受けたら終わりではなく、状況を改善し、法令を遵守している状態をその後も継続する必要があります。
強制捜査
労働基準監督官には、司法警察官としての権限が与えられます(労働基準法102条)。
そのため、労働基準法などの法令への違反が重大で、悪質な場合には、警察と同じように、捜索や差押え、逮捕といった強制捜査を行う権限を有します。
通報後の行政処分(助言指導・是正勧告)
労働基準監督署が通報を受け、会社を調査した結果、違法行為があることが明らかになると、その後に行政処分が下されます。
労基署の下す行政処分は、大きく分けて、助言指導、是正勧告の2種類です。いずれも、労基署から会社に書面が交付される点は共通ですが、意味合いが大きく異なります。
- 助言指導
法令に違反するほどではないが、改善するのが望ましい場合に行う。改善項目を記載した「指導票」が交付される。法的な強制力はないが、改善状況を報告するのが望ましい。 - 是正勧告
法令に違反している場合に「是正勧告書」を交付して行う。是正勧告書が出された場合、法令違反の状態を是正し、その旨を労働基準監督署に報告しなければならない。
より強い効力を有する是正勧告を下してもらうには、労動者として通報時に、労働基準法違反の事実と、その悪質さが強いこと、長期間継続しており被害が大きいこと、といった点を説得的に労働基準監督署に伝えるのが効果的です。
「是正勧告の基本」の解説
送検と罰則(刑事罰)
会社の行為が法令に違反し、悪質な場合、刑事事件として立件できます。
労働基準法には、違反に対して罰則(刑事罰)が科される条文があり、逮捕、送検、そして起訴されて刑事罰を科すという厳しい制裁を受けさせることができます。前章の通り、労働基準監督官には司法警察官の権限が与えられているため、労働基準監督署への通報は刑事事件化する最初のきっかけとなります。
例えば、是正勧告では状態の改善が見込めない場合や、度重なる行政処分を無視しているケースは、悪質と評価され、刑事事件化されやすいです。「令和4年 労働基準監督年報」によれば、2022年の1年間で送検された事件は783件あります。多くは書類送検(被疑者の身柄を拘束せずに検察に送致する方法)によりますが、ひどい場合は逮捕されるケースもあります。
罰則の対象となる法令違反の代表例は「賃金未払い」(労働基準法24条違反)、「残業代の未払い」(労働基準法37条違反)など。例えば、法律で義務とされる時間外割増賃金(残業代)を払わない場合には「6ヶ月以下の懲役又は30万円以下の罰金」に処せられます(労働基準法119条)。
「残業代請求に強い弁護士への無料相談」の解説
労働基準監督署への通報は会社にバレる?
労働基準監督署へ通報したことが会社にバレてしまうのかどうか解説します。
労働基準監督署へ通報したことが会社にばれると、報復されるおそれがあります。労基署に通報したことを理由に、パワハラや職場いじめの標的にされる危険もあるため、バレないように気をつける方法についても理解しておいてください。
労基署への通報はバレないのが原則
労働基準監督署へ通報しても、基本的には会社にバレることはないのが原則です。
そもそも通報は匿名でできるので、名乗る必要はありません。とはいえ、問題の内容によっては個人が特定できてしまう場面もあります。例えば、残業時間の違反のように全労働者に当てはまる通報はバレづらいですが、不当解雇や雇い止め、配置転換などの特定の個人のみが対象となる法律違反を争う通報だと、匿名でもバレる危険があります。
このとき、できるだけ「自分が通報した」という事実をバレないようにするには、通報の際に、労働基準監督署に対し「会社にバレたくない」と強く伝えるべきです。労基署は、使用者による報復の危険をよく理解しており、徹底して秘密を守るように動いてくれます。
守秘義務により匿名性は保護される
労働基準監督署の監督官には、守秘義務が課せられています(労働基準法105条)。
つまり、誰から通報を受けたかという情報は、秘密にしておくことが義務化されています。会社から通報者の情報を聞かれたとしても、監督官が答えることはないため、労働基準監督署からの情報によって通報がバレることはありません。
通報がバレないためのポイント
以上を踏まえて、できる限り労働基準監督署に通報した事実をバレないよう振る舞うには、どのようなきっかけで発覚しやすいかを理解し、会社に知られないよう通報するのが大切です。少なくとも、次のポイントを押さえてください。
- 匿名で通報する
- 通報時に、会社にバレたくないと強く伝える
- 個人的な利益ではなく、全社員の利益のために通報する
- 家族など近しい人にしか伝えない
社内の人間に伝えてしまうとバレる危険がある。どれほど仲が良くても、上司や先輩、同僚、後輩など、あらゆる社内の人間関係に対して、通報した事実は伏せておくべき。 - 通報を予告する必要はない
当事者間の交渉を先行させるケースで、「書面到達から2週間以内に対応しない場合は労基署に通報する」など通知してプレッシャーを与える戦い方もあるが、通報の予告は必須ではない。報復の危険がある場合、予告なく通報することを選択すべき場合がある。
万が一の心配があるときは弁護士に相談し、弁護士から通報してもらう手もあります。弁護士名義で通報すれば、自分の名前を明かす必要はありません。また、通報内容についても弁護士の事前チェックを受け、バレる可能性を徹底して排除してもらうのが最も安全です。
「労働問題を弁護士に無料相談する方法」の解説
通報を理由とした不利益な取り扱いは禁止される
会社は、通報を理由として、通報者に対して不利益な取り扱いをすることを禁止されています。つまり、通報に対する報復人事は許されません。このことは、労働基準法104条2項に定められています。
労働基準法104条2項(抜粋)
2. 使用者は、前項の申告をしたことを理由として、労働者に対して解雇その他不利益な取扱をしてはならない。
労働基準法(e-Gov法令検索)
不利益な取扱いの典型例は解雇ですが、それだけでなく降格、減給、異動や転勤などの配置転換といった処分も、労働基準監督署に通報したことを理由にして行われる場合には違法です。
この条項に違反し、不利益な扱いをした会社には、「6か月以下の懲役又は30万円以下の罰金」という罰則が科されます(労働基準法119条)。また、通報を理由にした不利益な扱いは無効であり、撤回を求めることができるほか、被った精神的苦痛については慰謝料を請求できます。
「労働条件の不利益変更」の解説
労働基準監督署に通報した後の労働問題の解決
労働基準監督署へ通報したとしても、それだけで労働問題が全て解決するわけではありません。そこで、問題が解決しない場合にどう対処すればよいかを解説します。
通報だけでは解決しない問題への対処法
前述の通り、労働基準監督署が取り扱える法令は、労働基準法をはじめとした一部の法律に限られます。労動者からよく弁護士に相談のある労働問題のうち、労基署が取り扱ってはくれないものの代表例が、ハラスメントと不当解雇です。
これらの問題は、労働局や労働基準監督署に設置された総合労働相談コーナーでアドバイスを得ることで行政からの情報提供を受けられるものの、労働基準監督署に通報して最終的な解決に持っていくのは難しい性質があります。
このとき、特に不当解雇の問題については、弁護士に依頼して法的な手続きを進めるのがお勧めです。また、労働組合に相談することもできます。弁護士も労働組合も、労働基準法に限らず、あらゆる労働問題について総合的に相談を聞くことができるからです。
「不当解雇に強い弁護士への相談方法」の解説
通報しても対応してくれない場合の対策
令和4年度の全国の監督官数は3,094人(参照:令和4年 労働基準監督年報)であり、人数が限られていることから、通報した事案の全てに対応してもらえるとは限りません。違反の程度が重大とはいえない場合や証拠が不十分な場合には、対応が後回しになり、対処してもらえない危険もあります。
通報しても対応してもらえない場合は、並行して弁護士への相談も検討してください。弁護士に事前に見てもらい、証拠の整理や通報への同行を依頼することにより、対応してもらいやすくなります。
労働問題を弁護士に相談すべき理由
労働基準監督署に通報する場合に、あわせて弁護士にも相談しておきましょう。専門知識が必要となる労働問題においては、弁護士が強い味方となります。労基署に通報するだけで済ませず、同時に弁護士に相談するメリットは次のようなものです。
- 相談者の利益を最優先にしてくれる
公共の利益を優先し、法令違反を監督することを役割とする労働基準監督署に対して、弁護士は依頼者の利益を最大化するためにサポートをしてくれます。 - 手続きや証拠集めをサポートしてくれる
労働問題の解決には、煩わしい作業や証拠収集が不可欠ですが、弁護士はこれらの手続きを代行してサポートしてくれます。労働基準監督署はあくまで企業を監督するに過ぎず、書類作成や裁判手続きなどを代わりにしてくれることはありません。 - 会社に対応してもらえる可能性が高まる
弁護士なら、労働審判や裁判といった法的手続きを活用でき、法違反を放置するような悪質な会社にも対応してもらえる可能性があります。法的手続きは、放置しておくと敗訴してしまい会社にとって損失が大きいからです。
労働基準監督署をはじめとした行政機関は、労働者保護という立ち位置はあるものの、あくまで労働問題においては第三者という立場でしかありません。これに対し、弁護士は、労働問題の当事者である相談者の代理人として、本人に代わって問題解決に向けて動くことができます。
ひとりで悩まず、専門家である弁護士に相談することも検討してみましょう。
「労働問題に強い弁護士の選び方」の解説
労働基準監督署への通報についてのよくある質問
最後に、労働基準監督署への通報についてのよくある質問に回答しておきます。
労働基準監督署に通報したらどうなる?
労働基準監督署に通報したら、監督官による調査がなされ、助言指導や是正勧告といった行政処分のほか、悪質な場合は逮捕、起訴されて刑事処分が下ります。
そのため、労基署への通報は、労動者にとって非常に効果の大きい、いわば最終手段といってよいでしょう。注意点としては、労基署の扱える法律は、労働基準法をはじめとした最低限の労働条件を定める重要なものに限られ、それ以外の法違反や、違法性が軽微な場合には対応してもらえないおそれがあることです。
労働基準監督署に連絡する方法は?
労働基準監督署に連絡する方法は、電話、メール、直接訪問の3つがあります。違法行為の通報をする際は特に、それぞれの方法のメリット、デメリットが顕著なので、比較検討し、最適な方法を選ぶ必要があります。
軽い問題ならばメールによる通報、重大な労働問題に悩む状況ならば、直接訪問しての通報がおすすめです。
労働基準法違反の通報は匿名でできる?
労働基準法違反の通報は、匿名ですることができます。労働基準監督署への通報の際には、電話、メール、直接訪問のいずれであっても、名前を名乗る必要はないからです。
労基に通報したら会社にバレる?
労基への通報が会社にバレることはありません。ただ、法律上はバレないものの、実際には様々な理由でバレてしまう例がないとはいえません。秘密を守りたい場合、どのような原因で通報がバレるのかを知り、対策を講じる必要があります。
まず匿名で通報し、あわせて、通報時に労基署に、報復のおそれがあるのでバレないようくれぐれも注意してほしいと伝えます。通報内容から個人を特定されぬよう、全社的な被害を通報するよう心がけ、自身の利益のみを重視しないよう気をつけてください。
労働基準監督署に通報された会社側の適切な対応は?
本解説は労動者の視点での解説ですが、最後に、通報をされた会社側の対応も解説しておきます。会社としては、通報されたことを知ったらまず、法違反がないかどうか、社内の制度や労働環境を詳細にチェックすべきです。労基署の連絡は無視せず真摯に対応し、指示に従って情報を開示したり、調査に応じたりすべきです。
助言指導や是正勧告といった行政処分が下った場合には、その内容に従って是正し、法違反の再発を防ぐのが適切な対応です。
使用者側の適切な対処法を知っておくことは、労動者側においても、自身の勤務先が労基署からの指導に正しく対応しているかどうかを判断するのに役立ちます。
まとめ
今回は、労働基準監督署に通報したらどうなるのか、その後の流れを詳しく解説しました。また、労働基準監督署への通報によくある悩みにお答えしました。
通報した事実が会社にバレるリスクはさほど高くなく、そのデメリットを軽減する方法があることを、本解説でご理解ください。労基署への連絡によって、抱えている労働問題が解決する可能性を上げるには、証拠となる資料をしっかりと準備し、説得的に説明する必要があります。
通報によるデメリットが生じる危険を少しでも減らすには、労働基準監督署に連絡する前に、弁護士に相談するのもお勧めです。労働基準監督署は必ず動いてくれるとは限らず、通報のみで全て解決するとも限りません。このような場合、弁護士のサポートを並行して受けることで、泣き寝入りせず、裁判など法的手続きで問題を解決できます。
- 労働基準法などの法令違反を発見したら労働基準監督署に速やかに通報する
- 労働基準監督署に通報すると、調査がなされ行政処分や刑事罰が会社に下る
- 労基署に通報してもなお、並行して弁護士に相談すべきメリットは大きい
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