お盆の時期を「夏季休暇」とする会社は多く、年によっては長期連休となります。
近年は「一定日数の夏季休暇を各自で自由に取得できる」と定める会社も増えましたが、一方で「お盆に一斉に休んだ方が業務への支障が少ない」と考える会社も依然として多く見られます。その中には、お盆休みを夏季休暇とした上に、有給休暇扱いとする会社もあります。
しかし、本来は自由に使えるはずの有給休暇を、会社の都合で一方的に「お盆(夏季休暇)」として消化させられるのは、労働者にとって不利益な扱いです。そのため、有給休暇に関する正当な権利を侵害し、違法となる可能性があります。
今回は、お盆休み(夏季休暇)を有給扱いとする会社の対応が法的に問題がないのかについて、労働問題に強い弁護士が解説します。
- お盆休み(夏季休暇)でも、勝手に有給扱いとするのは違法
- 長期連休など、労働者にもメリットがあるなら合意の上で有給休暇とする
- 計画年休を利用してお盆休み(夏季休暇)を有給休暇にする要件は厳しい
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お盆休み(夏季休暇)と有給休暇は区別する

大前提として、お盆休み(夏季休暇)と有給休暇は、法的な位置づけが異なるため、区別して理解しておかなければなりません。
お盆休み(夏季休暇)の意味
まず、夏季休暇は、法律で義務付けられた休暇ではありません。
労働基準法は、次章の有給休暇を付与する義務は定めていますが、夏季休暇の定めはなく、会社の与える「特別休暇」という扱いです。そのため、夏季休暇のない会社や、お盆が休みでない会社も違法ではありません。
「お盆が休みかどうか」「何日の夏季休暇が取れるか」「有給か、無給か」といった点はいずれも、各企業の判断に委ねられています。お盆の時期を夏季休暇とし、休業する会社は多く存在しますが、あくまで任意にそのような判断をしているだけで、法律の決まりではありません。
したがって、お盆休み(夏季休暇)の扱いについての疑問は、勤務先の就業規則を確認すれば解消することが多いです。
お盆休み(夏季休暇)と有給休暇との違い
一方で、年次有給休暇は、労働基準法39条に定められた労働者の権利です。
有給休暇は、法律上の要件を満たす労働者に対して、必ず付与しなければなりません。具体的には、入社から6ヶ月継続勤務し、全労働日の8割以上出勤した場合、10日の有給休暇が付与されます。労働者は時期を指定して有給休暇を取得し、会社は原則として拒否できません(例外的に、事業の正常な運営を妨げる場合には、時季指定権の行使が可能です)。
したがって、有給休暇は労働者が自由に取得できるものであって、会社が一方的に割り当てる性質のものではない点が、お盆休み(夏季休暇)とは大きく異なります。
「有給休暇を取得する方法」の解説

お盆休み(夏季休暇)を有給扱いとするのは違法?

お盆休み(夏季休暇)に有給休暇を充当することは、違法となる可能性の高い扱いです。その理由について、法的な観点から解説します。
有給休暇は労働者の申請が原則
有給休暇は、一定期間働いた労働者への「恩恵」としての権利です。
労働者の権利ですから、権利を行使するかどうかも自由です。つまり、有給休暇を取得するか、いつ取得するかは、労働者自身が決めることができます。労働者の申請がないのに、会社が取得を強制することはできません。
したがって、お盆休み(夏季休暇)だからといって有給休暇の取得を強制したり、休んだ分を有給扱いして消化してしまったりするのは違法です。
違法になるケースの具体例
実際に、よく相談のあるケースを踏まえ、違法となる具体例を紹介します。
労働者の同意なしに有給休暇を充当する場合
労働者の同意なしに有給休暇を充当するのは違法です。
「お盆休みに勝手に有給を使われた」「申請していないのに有給残日数が減っていた」といったケースは、違法となる典型例です。
有給消化を一方的に命じる場合
会社が労働者に対し、一律に有給消化を命じる行為も違法です。
「お盆で有給休暇を消化してください」「夏季休暇を連休とするため、中日は有給休暇とします」といった形で一律に有給消化を命じるケースは、違法となる典型例です。このようなケースも、労働者が自ら時期を指定できるという趣旨に反します。
違法な扱いに対する罰則について
ここまで、お盆休み(夏季休暇)を有給扱いとすることは違法であると解説しました。
以上のような違法な扱いをすると、お盆休み(夏季休暇)に充当した日数分だけ有給休暇を取得できなくなることを意味するため、労働基準法39条違反となり、6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金という刑事罰の対象となります(労働基準法119条)。

お盆休み(夏季休暇)に有給を充てても違法にならないケース

「お盆休み(夏季休暇)を有給扱いとするのは違法?」の通り、原則として、お盆休み(夏季休暇)に有給休暇を一方的に使わせるのは違法です。ただし、一定の条件を満たす場合、例外的に違法とならないケースがあります。
計画年休を適法に導入している場合
計画年休とは、年次有給休暇のうち一定日数について、会社が取得時期をあらかじめ指定できる制度で、有給休暇の計画的付与制度とも呼ばれます。計画年休が適法に導入されている会社であれば、お盆休み(夏季休暇)について、有給休暇を取得させることができます。
ただし、計画年休を導入するには、次の要件を満たす必要があります。
- 労使協定が必要
会社と労働者代表との間で、計画年休についての労使協定を締結する必要があります。 - 書面で定める
計画年休について、就業規則、もしくは、雇用契約書に定める必要があります。対象日数、対象者、取得日について明記しなければなりません。 - 対象となる有給休暇は一部のみ
有給休暇のうち、計画年休の対象になるのは一部のみです。具体的には、「5日を超える分」のみとされます(つまり、計画年休が導入されていても、労働者は、最低5日間は自由に有給休暇を取得することができます)。
したがって、「計画年休だから」と言われた場合、要件を満たすかを確認しましょう。
たとえ計画年休を理由にしていても、お盆休み(夏季休暇)の全日程を有給休暇にして残日数全てを消化してしまった、就業規則や雇用契約書に全く記載がない、労使協定が存在しないといった場合、制度そのものが違法であり、従う必要はありません。適法な制度かどうかは、労使協定の有無、就業規則の内容などを見れば確認できます。
なお、一旦計画年休によってお盆休みや夏季休暇に有給休暇を充当することとした場合、労使のいずれからもその日程を変更することはできません。
労働者の同意がある場合
労働者の同意がある場合にも、お盆休み(夏季休暇)に有給休暇を利用できます。
例えば、「長期連休を取得したい」「お盆シーズンを避けてゆっくり休みたい」など、労働者側にも同意するメリットのある場面もあります。
また、2019年4月以降、年10日以上の有給休暇が付与される労働者に、年5日は必ず取得させる義務が会社に課されています。既に退職予定であるなど、他に全く有給休暇を取得する機会がないのであれば、お盆休みや夏季休暇に充てることを選択してもよいでしょう。
ただし、有給休暇の重要性からして、黙示の同意や事後説明では足りず、労働者の明示的な意思による取得(申請手続きや書面による同意など)が必要です。例えば、次のような事情がある場合は、違法とはならないと考えられます。
- 事前に説明を受け、納得している。
- お盆休み(夏季休暇)に有給休暇を充当することを書面で同意している。
- 労働者側にも同意するメリットがある。
- 有給休暇が十分に残り、自由に使える日数が確保されている。
- お盆休みに有給を充てても、賃金や待遇に不利益がない。
このように、労働者の意思が尊重され、実質的な不利益が生じていないことが重要です。同意が形式的であったり、逆らいづらい雰囲気で、実質は強制に近いといった場合、やはり違法となる可能性があります。
「労働問題に強い弁護士の選び方」の解説

お盆休み(夏季休暇)に有給を使わせる会社への対処法
以上の通り、お盆休み(夏季休暇)に有給を使わせる扱いは、違法の疑いがあります。そのため、このような扱いを受けたら、次の手順で冷静に対応を進めてください。
就業規則と労使協定を確認する
まず、お盆休み(夏季休暇)を有給扱いにする会社側の根拠を確認します。
- 就業規則で確認すべきこと
- お盆休み(夏季休暇)の定めがあるか。
- 有給休暇との関係が明記されているか。
- 有給休暇取得のルールが定められているか。
- 計画年休制度を導入している場合に確認すべきこと
- 労使協定が締結されているか。
- 対象日・日数が具体的に定められているか。
「会社のお盆休みは有給扱い」と説明されても、就業規則や労使協定などに根拠がなければ適法とは言えません。
会社に確認し、交渉を行う
就業規則などを確認しても疑問が残る場合、会社に直接確認しましょう。
いきなり感情的にならず、お盆休み(夏季休暇)の扱いや有給休暇を充てる理由について会社側の意見を質問してください。冷静に話し合えば、運用が見直されたり、労使双方にとって妥協点が見つかったりすることもあります。
企業側が「昔からそうだから」「この業界のルールだから」などと説明する場合、法違反である可能性が高いです。
弁護士と労働基準監督署に相談する
会社が誠実な話し合いをせず、一方的に有給を強制される場合、弁護士や労働基準監督署への相談を検討しましょう。中には、お盆休み(夏季休暇)と有給休暇の関係を確認したことで目をつけられ、不利益な扱いを受けるケースもあります。
有給休暇に関する違反は「違法な扱いに対する罰則について」の通り刑事罰の対象なので、労働基準監督署への相談が可能です。また、是正を求めたり、退職を目指して条件交渉をしたりといった場面では、労働問題に精通した弁護士への相談も有効です。
労働者が自発的にお盆休み(夏季休暇)に有給休暇を使う場合

最後に、労働者側から自発的に、お盆休み(夏季休暇)に有給休暇を使うケースと、その際の注意点について解説します。
例えば、帰省や旅行などで、「お盆休み(夏季休暇)にまとまった休みを取りたい」と考える労働者にとって、積極的に有給休暇を取得する理由があります。有給休暇は法律上の権利であり、特に会社に理由を伝えることなく取得することが可能です。
実質的に「強制」とならないよう注意する
お盆休み(夏季休暇)に有給休暇を使うこと自体は、労働者が希望するのであれば問題ありません。ただし、形式上は「本人の申請」でも、実態として会社の意向に逆らえない状況であれば、実質的には有給休暇の取得を強制されたに等しいと評価される場面もあります。
例えば、次のようなケースは、自発的とは言いづらいです。
- 「あなた以外、全員お盆に有給を使った」と責められる。
- お盆休み(夏季休暇)に有給休暇を申請しないことが評価に影響する。
- オフィスが閉まっているなど、休む以外の選択肢がない。
会社からの説明や運用が「お願い」の形式を取っていても、断れない空気がある場合には注意が必要です。
お盆休み(夏季休暇)が無給のとき、有給休暇を取れる?
お盆休み(夏季休暇)は、会社が任意に定めるものなので、無給である会社が多いです。
法律上も、お盆休み(夏季休暇)を有給とすることが保証されているわけではないので、会社の定めに従う必要があります。一方で、有給休暇が余っている人から「どうせ無給で休みになってしまうなら、せっかくだから有給休暇を取得したい」と相談を受けることがあります。
しかし、残念ながら、このような扱いは難しいと言わざるを得ません。有給休暇は、労働日に取得するのが原則であり、お盆休み(夏季休暇)は既に「休暇」となっており労働義務がないからです。この扱いを希望するなら、有給扱いにならないかを事前に会社と相談する必要があります。会社にとっても、いずれ有給休暇を取得させる必要はあるわけで、理由を説明すれば応じてもらえる可能性もあります。
お盆休み(夏季休暇)を連休にしても時季変更権を行使される?
まとまった休みのほしい労働者が、お盆休み(夏季休暇)の中日などに自発的に有給休暇を取得し、連休とすることを目論むケースがあります。
この場合、労働者が自発的に取得した有給休暇であれば全く問題ないのですが、気になるのが「時季変更権」です。時季変更権とは、事業の正常な運営を妨げる場合に、会社が、労働者の申請したのとは異なる時期に有給休暇の取得日を変更できる権利のことです(労働基準法39条5項)。この権利を行使されると、せっかく作った連休が崩されてしまいます。

ただし、有給休暇は重要な権利なので、時期変更権の要件は厳格に判断されます。少なくとも、「人手不足で多忙だ」「連休を取られると業務が滞る」といった理由では時季変更権の行使は許されず、代替要員の確保を含め、会社が十分な努力を尽くす必要があります。
まとめ

今回は、お盆休み(夏季休暇)に有給休暇を充当する扱いについて解説しました。
お盆休み(夏季休暇)を有給扱いとすると言われた場合、その扱いは違法の可能性があります。年次有給休暇は労働者の正当な権利であり、本人の申請なく、会社が一方的に取得を強制することはできません。勝手に消化されるのは労働基準法違反となり、違法です。
一方で、有給休暇を取ることが労働者にもメリットがある場合や、計画年休制度が正しく運用されている場合、必ずしも違法にならないケースもあります。重要なのは、会社の言い分を鵜呑みにせず、労働関係法令に照らして適法かどうか、冷静に見極めることです。
有給休暇とお盆休み(夏季休暇)の関係を正しく理解して、自身の有給休暇が不当に消化されてしまわないよう、日頃から注意してください。
- お盆休み(夏季休暇)でも、勝手に有給扱いとするのは違法
- 長期連休など、労働者にもメリットがあるなら合意の上で有給休暇とする
- 計画年休を利用してお盆休み(夏季休暇)を有給休暇にする要件は厳しい
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