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浅野 英之
弁護士
弁護士(第一東京弁護士会所属、登録番号44844)。東京大学法学部卒、東京大学法科大学院修了。

企業側の労働問題を扱う石嵜・山中総合法律事務所、労働者側の法律問題を扱う事務所の労働部門リーダーを経て、弁護士法人浅野総合法律事務所を設立。

不当解雇、未払残業代、セクハラ、パワハラ、労災など、注目を集める労働問題について、「泣き寝入りを許さない」姿勢で、親身に法律相談をお聞きします。

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労働基準法違反とは?よくある事例や企業の責任と罰則、法令違反にならないための対策

労働基準法は、労働条件の最低基準を定める法律です。

しかし、企業が軽視した結果、重大な違反が発覚するケースは跡を絶ちません。

労働基準法違反は、企業にとって法令違反の責任を負うにとどまらず、信用失墜や人材流出、さらには刑事事件にまで発展しかねない重大なリスクです。しかし実務の現場では、「長時間労働が常態化している」「適正な残業代が支払われていない」など、労働者が知らないうちに労働基準法違反の状態に陥っているケースは少なくありません。

今回は、労働基準法違反のよくある事例から、企業の法的責任や罰則、さらに法令違反を未然に防ぐために企業が講じるべき対策まで、労働問題に強い弁護士が解説します。

この解説のポイント
  • 労働基準法違反により、企業は民事・行政・刑事上の責任を負うリスクあり
  • よくある事例を知ることで、労働基準法違反に早く気付いて対策を講じられる
  • 労働基準法違反は、労働基準監督署と弁護士に相談することが可能

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解説の執筆者

弁護士 浅野英之

弁護士(第一東京弁護士会所属、登録番号44844)。東京大学法学部卒、東京大学法科大学院修了。

企業側の労働問題を扱う石嵜・山中総合法律事務所、労働者側の法律問題を扱う事務所の労働部門リーダーを経て、弁護士法人浅野総合法律事務所を設立。

不当解雇、未払残業代、セクハラ、パワハラ、労災など、注目を集める労働問題について、「泣き寝入りを許さない」姿勢で、親身に法律相談をお聞きします。

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労働基準法違反とは

はじめに、労働基準法違反とはどのようなものかを解説します。

労働基準法は、労働条件の最低基準を定める法律です。労働者が安心して働ける環境を整えるために「最低限守るべきルール」を定め、労働時間、休日・休暇、賃金などについて労働者保護を目的として、不当な扱いを禁止しています。労働基準法は、労働関係法令の中でも中核的な役割を担っており、「強行法規」であり、労使の合意があっても違反は許されません(労働基準法13条)。

重要な法律であるため、労働基準法違反が発覚すると、法的な責任が生じるのはもちろん、企業の信用は失墜し、採用難や離職の増加、顧客離れ、取引停止などにもつながります。

労働基準法違反を防ぐには、労使それぞれがルールを正確に理解することが必須となります。一部の企業では、法律知識が不足していたり、「他の企業もやっている」「多少の違反は仕方ない」といった甘い認識が根強く残っていたりすることがあります。しかし、短期的に問題がないように見えても、実際は、労働基準法違反は企業にとって大きなリスクとなります。

ブラック企業の特徴と見分け方」の解説

よくある労働基準法違反の具体的な事例

次に、よくある労働基準法違反の具体的な事例について解説します。

労働基準法違反が常態化している職場では、企業だけでなく労働者も、法令違反を当然視していることもあります。具体例を知っておくことが、違反に気付く第一歩となります。

労働時間に関する違反の事例

長時間労働は、労働者の健康に深刻な影響を与えます。

会社は、労働者の健康と安全を守る義務(安全配慮義務)があるため、長時間労働が継続すると、うつ病や適応障害などの精神疾患を引き起こしたり、過労死を招いたりするおそれがあり、企業にとっても大きなリスクとなります。

以下の事例では、長時間労働を理由として、実際に行政指導や送検がされています。

  • ソフトウェア開発業での事例
    特別条項付き36協定に定めた上限(月80時間)を超え、月120時間の違法残業を行わせたことが労働基準監督署の立入調査で発覚し、是正勧告が行われました。
  • 中古車販売業での事例
    海外からの技能実習生に対し、月100時間を超える違法な長時間労働をさせた上に、事実を隠蔽するために虚偽のタイムカードを提出した疑いで、企業と社長が労働基準法違反の容疑で書類送検されました。

長時間労働の問題」の解説

賃金に関する違反の事例

賃金に関する違反の中でも、残業代の未払いは、最もよく問題になる違反事例です。

労働基準法に基づく計算方法で支払われなかったり、固定残業代や管理監督者性、裁量労働制を悪用して未払いを正当化しようとする違反例は後を絶ちません。明示の指示がなくても、暗黙の了解のもとでサービス残業が常態化している企業もあります。

残業代の未払いによる違反は、客観的な資料から発覚しやすく、労働基準監督署による是正勧告や送検の対象となる例が少なくありません。

  • 電気通信工事業での事例
    労働者が「申告書」に記入した超過勤務時間数により賃金計算を行っていたが、PCのログとの乖離、夜間の従業員駐車場の駐車状況、ヒアリング調査の結果などから、賃金不払いの残業が認められたため、労働時間の実態調査を行うよう指導がなされました。

休憩・休日・休暇に関する違反の事例

休憩・休日・休暇に関する違反事例では、年次有給休暇の取得に関するものがよく問題になります。多忙を理由に休暇取得を認めなかったり、申請を事実上妨げたりするケースは少なくありませんが、有給休暇は労働基準法に定められた権利であり、違反となる典型例です。

  • 飲食業での事例
    年10日以上の年休が付与される労働者全員に対して時季指定を怠り、年5日間を取得させなかった疑いがあるとして、飲食業者と同社代表取締役が書類送検されました。

有給休暇を強制的に取得させられた」の解説

労働基準法違反が発覚するきっかけ

労働基準法違反は、隠蔽しようとしても、様々なきっかけで発覚します。労働者の権利意識が高まった昨今は、発覚するリスクは高く、早期の対応が必要となります。

従業員からの申告・内部通報

最もよくある発覚の経路は、従業員からの申告や内部通報です。

長時間労働や未払い残業代といった違反事例は、その職場で働く労働者にとって不利益しかなく、労働基準監督署へ相談するケースが多く見られます。特に、社内の相談窓口や是正の体制が未整備だと、外部の窓口へ直接相談される可能性が高まります。労働基準監督署への通報は匿名でも可能なため、企業に相談せずに突然行われるリスクがあります。

在職中は声を上げにくく、我慢していても、退職後になって未払い残業代を請求する例も多いため、退職者による責任追及から発覚するケースもあります。

労働基準監督署の調査

労働基準監督署は、申告を受けた場合はもちろん、定期的な監督も実施しています。

特に、長時間労働が生じやすい業種や、過去に是正勧告を受けた企業は、調査の対象となりやすい傾向があります。調査では、就業規則やタイムカードなどの資料の提出が求められ、法令違反が発覚すれば助言指導や是正勧告が行われ、悪質な場合には逮捕や送検に至る可能性もあります。

SNSや口コミでの情報発信

近年増加しているのが、SNSや口コミサイトを通じた情報発信による発覚です。

在職している従業員が、労働環境や違反の実態をSNSやインターネット上に投稿し、拡散されて社会問題として表面化するケースがあります。また、元従業員が、転職口コミサイトに書いた実態が広まるケースもあります。このような発覚は、労働基準監督署の調査が入るだけでなく、企業イメージの低下や採用活動への悪影響に直結します。

労働基準法違反の企業の責任

労働基準法に違反した場合、企業には大きな責任があります。

法的な責任は、民事責任・行政責任・刑事責任に分けられます。以下では、それぞれの内容について具体的に解説します。

民事責任

労働基準法違反がある場合、企業は民事的な責任を負います。

例えば、未払い賃金の支払い義務、長時間労働による健康被害やメンタル不調、死亡などの慰謝料や損害賠償の責任、違法なハラスメントを理由とする不法行為責任などが、民事責任の例です。民事責任の内容は、金銭の請求が主となりますが、それだけでなく、社会的な信用が失墜し、採用難や顧客離れ、取引停止といった二次的なリスクにつながります。

残業代請求の裁判例」の解説

行政責任

労働基準法違反に対し、行政機関から一定の措置を講じられることがあります。

典型例が、労働基準監督署による助言指導や是正勧告といった行政指導です。業種によっては、業務停止や許認可の取消しなどもあり得ます。悪質な違反があると、送検に至らない段階でも企業名公表の対象になることもあります。

刑事責任

労働基準法違反の責任の中でも、最も重いのが刑事責任です。

刑事責任の内容は、労働基準法違反によって懲役刑や罰金刑が科されることです。つまり、労働基準法違反は、刑事罰の定められた犯罪行為であるということです。労働基準法違反は、両罰規定により法人(会社)への罰金刑とともに、代表者や役職者が処罰される可能性があります。

送検されて刑事事件化した事例は公表され、裁判所で有罪判決を受けるとメディアで報道されることが多く、企業の社会的信用にも大きな影響を与えます。

具体的な罰則は、「★」をご参照ください。

サービス残業を告発する方法」の解説

労働基準法違反による罰則

次に、労働基準法に違反した場合の罰則について解説します。労働基準法違反に対して定められた主な罰則には、次のようなものがあります。

スクロールできます
違反類型条文罰則
賃金24条(賃金の支払い)  30万円以下の罰金
25条(非常時払)30万円以下の罰金
37条(割増賃金)6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金
労働時間・休憩32条(法定労働時間)、 34条(休日) 、36条(36協定)6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金
有給休暇39条(年次有給休暇)6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金
就業規則作成の義務違反89条(就業規則の作成・届出)30万円以下の罰金

以下では、よくある違反の具体例について解説します。

賃金に関する規定と罰則

賃金に関する規定には、「割増賃金」「賃金支払い」「非常時払い」の3つの労働基準法違反があります。具体的には、以下の通りです。

割増賃金に関する違反

労働基準法37条は、時間外労働・休日労働・深夜労働には割増賃金の支払いが義務付けられており、時間外労働は通常1.25倍(25%割増)、休日労働は1.35倍(35%割増)、深夜労働は1.25倍(25%割増)以上の割増賃金を支払う必要があります。

これらの労働基準法違反に対しては、「6か月以下の懲役または30万円以下の罰金」という刑事罰が定められています。

残業代の計算方法」の解説

賃金支払いに関する違反

労働基準法24条は、賃金の支払いに関するルールを定めており、違反した場合、「30万円以下の罰金」という刑事罰の対象となります。

具体的には、次の賃金支払の5原則を守る必要があります。

  • 通貨払いの原則
    賃金は、通貨で支払う必要があります。労働者の同意があれば金融機関口座に支払うことが可能で、令和5年4月から賃金のデジタル払いが認められています。
  • 直接払いの原則
    賃金は、労働者本人に直接支払う必要があります。中抜き防止のため、仕事の仲介人や代理人に支払うことは認められません。
  • 全額払いの原則
    賃金全額を労働者に支払わなければならず、貸付金や賠償金などの相殺は認められず、天引きや控除も法律の認める範囲に限られます。
  • 毎月1回以上払いの原則
    賃金は、毎月1回以上払う必要があり、まとめ払いは許されません。
  • 一定期日払いの原則
    賃金は、一定の期日を定めて払う必要があります。

給料未払いで泣き寝入りしないためには?」の解説

非常時払いに関する違反

労働基準法25条は、労働者やその家族等の出産、疾病、災害等の非常の場合の費用として賃金を請求した場合、支払期日前でも、請求時までに行った労働の対価を支払うことを義務付けており、違反した場合は「30万円以下の罰金」という刑事罰の対象となります。

労働時間と休憩に関する規定と罰則

労働時間や休憩に関する規定は、労働者の健康と生活を守るために極めて重要です。そのため、これらの労働基準法違反は、厳しく対処されます。

労働時間に関する違反

労働基準法32条では、法定労働時間(1日8時間・週40時間)を原則とし、これを超える労働を行わせる場合、36協定の締結が必須としています。これに違反した場合、「6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金」という刑事罰が科されます。

また、その前提として労働時間の把握・管理が適正でないことも違反となります。タイムカードの未設置や勤怠管理の不備によって労働時間が把握できないと、未払い残業や過労を招きやすく、重大な法的リスクに繋がりかねません。

労働時間の定義」の解説

休憩時間に関する違反

労働基準法34条では、労働時間が6時間を超える場合は45分、8時間を超える場合は1時間の休憩を、労働者に与えることが義務付けられており、違反した場合、「6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金」という刑事罰の対象となります。

休憩時間を取れなかった場合」の解説

休日に関する違反

労働基準法35条は、少なくとも毎週1日、もしくは、4週間を通じて4日以上の休日を与えることを義務付けており、違反した場合、「6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金」という刑事罰の対象となります。

休日手当」の解説

残業の上限規制に対する違反

36協定を締結した場合でも、時間外労働の上限は「月45時間・年360時間」が原則であり、臨時的な特別の事情がなければこれを超えることができません(労働基準法36条)。臨時的な特別の事情がある場合も、年720時間以下、複数月平均80時間以下、月100時間未満という上限を遵守しなければなりません。

これらに違反した場合は、「6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金」という刑事罰の対象となります。

残業時間の上限」の解説

年次有給休暇に関する規定と罰則

労働基準法39条は、一定の勤続期間を経た労働者に、年次有給休暇を付与する義務を定めています。2019年の法改正で、年10日以上の有給休暇を取得できる労働者には、使用者は最低でも5日間について時季を指定して取得させる義務が課されました。これらに違反した場合、「6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金」という刑事罰の対象となります。

有給休暇を取得する方法」の解説

解雇予告に関する規定と罰則

解雇をする場合は30日前に予告をするか、不足する日数分の平均賃金を解雇予告手当として支払う義務があります(労働基準法20条)。この予告義務や手当の支払いを怠った場合は労働基準法違反となり、「6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金」という刑事罰の対象となります。

産前産後休業などに関する規定と罰則

労働基準法65条は、6週間以内に出産予定の女性が請求した場合に産前休業を与える義務を定め、また、産後8週間を経過しない女性を就業させることを原則として禁止しています。 これらの規定に違反して産前産後休業を取得させない場合や、無理に働かせた場合は労働基準法違反となり、「6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金」という刑事罰が科されます。

就業規則の作成義務違反の罰則

労働基準法89条では、常時10人以上の労働者を使用する事業場において、就業規則の作成と労働基準監督署への届出が義務付けられており、違反した場合は「30万円以下の罰金」という刑事罰の対象となります。

労働基準監督署への申告を理由とする不利益取扱の禁止

労働者には、企業による労働基準法違反の事実を労働基準監督署へ申告する権利が保障されており、申告を行ったことを理由に解雇や減給などの不利益な扱いをすることは厳格に禁止されています。労働基準法違反から労働者を守るための重要な規定であり、これに違反して不利益な取り扱いをした企業には「6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金」という刑事罰が科されます。

労働基準法違反の発覚から罰則までの流れ

次に、労働基準法違反が発覚してから罰則までの流れを解説します。

労働基準法違反は、労働者からの通報などをきっかけに調査が始まり、発覚すると、是正勧告を経て、改善が見られない場合は送検や逮捕に至るケースもあります。

STEP

労働基準監督署の調査

労働基準法違反の疑いがあると、労働基準監督署による調査が行われます。調査のきっかけは、労働者からの通報や内部告発、労働組合・弁護士を通じた通報などです。

労働基準監督署の監督官が事業所に立ち入り、就業規則や労働契約書、労働条件通知書のほか、勤怠記録や賃金台帳、36協定の有無などを詳細に確認します。現場でのヒアリングや社員への事情聴取が行われるケースも少なくありません。虚偽報告や隠蔽があれば、悪質性が高いと判断され、厳しい対応に発展する可能性があります。

労働基準監督署への通報」の解説

STEP

助言指導・是正勧告

調査の結果、労働基準法違反が確認された場合、労働基準監督署は企業に対して段階的な対応を取ります。法令違反まで認められないものの改善が必要な場合、「指導票」を交付して改善すべき内容を伝えます。

明確な労働基準法違反が認められると、「是正勧告書」が交付され、企業は指定された期限までに改善内容をまとめ、是正報告書を提出しなければなりません。是正勧告を受けても対応せず、放置する企業は悪質と判断され、刑事処分に至る可能性があります。

労働基準監督署の是正勧告」の解説

STEP

逮捕・送検手続き

労働基準法違反の内容が重大、かつ、悪質な場合、刑事事件としての対応に発展します。監督官は、検察の指示のもとに捜査を行い、検察庁へ事件を送致(送検)します。被害者となる労働者の告訴によって刑事事件化されるケースもあります。

違反内容によっては、代表者や役職者個人が逮捕されることもあります。

例えば、過労死や過労自殺などの生命に関わる重大事件、長期間かつ多数の悪質な未払い賃金、是正勧告の無視、違反の隠蔽や妨害といったケースは厳しく対処されます。

送検されると、事件は検察に送られ、検察官による捜査と、起訴の判断が行われます。略式命令により罰金処分となったり、重大かつ悪質なケースでは正式起訴されて有罪判決が下ったりすることもあります。

給料未払いは罪になる?」の解説

STEP

企業名公表

労働基準法違反の中でも悪質なものは、企業名公表に至る場合があります。

企業名公表は、厚生労働省が行うもので、送検事例や、社会的に影響力の大きい企業が長時間労働などの重大な違反を複数の事業場で繰り返した場合に行われます。公表内容には、企業・事業場名、所在地、事案の概要などが含まれ、厚生労働省のウェブサイトで公開されます。

一度企業名が公表されると、SNSやニュースサイト、まとめ記事への転載などを通じて、二次的に拡散されます。ネガティブな企業イメージが付くと、社会的な信用は失墜するでしょう。

労働基準法違反による企業名公表」の解説

企業が労働基準法違反を防止する対策は?

労働基準法違反を未然に防ぎ、健全な職場環境を維持するには、企業側の積極的な取り組みが不可欠です。以下では、法令違反を回避するための具体的な対策を解説します。

労働基準法を正しく理解する

労働基準法のルールを遵守する前提として、正しい理解が不可欠です。

経営者や管理職が正確に理解しておかなければ、職場で法令遵守を徹底することはできないでしょう。特に、労働関係法令は頻繁に改正され、重要な裁判例も出されているため、常に最新の情報を把握しておくことが重要となります。

専門知識を得るためには、弁護士に定期的な社内研修を依頼し、知識をアップデートすることが有効であり、自覚のない法令違反を防ぐことができます。

労働時間の管理を徹底する

労働基準法違反で特に多いのが、労働時間の管理の杜撰さを原因とするものです。

未払い残業代や長時間労働などは、客観的な記録による労働時間の管理を徹底すれば防ぐことができます。例えば、タイムカードや勤怠管理システムを導入する方法があります。自己申告に頼ると、実態と乖離しやすいため、客観的な記録に基づいた仕組みを整えることが重要なポイントです。

労働時間管理」の解説

実際の働き方に合わせて定期的に見直す

適切な労務管理は、状況によっても変わることがあります。

そのため、一度体制を整備しただけで満足せず、実際の働き方に合わせて定期的に見直す必要があります。例えば、時代の変化に伴い、リモートワークやテレワークなど、職場外での勤務が一般化したことに伴い、労働時間の管理方法を変更しなければならないことがあります。

現場の状況を把握するには、定期的に従業員との面談やヒアリングを実施し、業務量が適切か、疲労が蓄積していないかを調査する必要があります。隠れた法令違反に早めに気付いて対策するためにも、労働者が相談しやすい環境を整えることが重要となります。

労働者は労働基準法違反をどこに訴える?

次に、労働基準法違反の被害に遭った労働者の相談先について解説します。

相談先として代表的なのは、労働基準監督署と弁護士です。自分の力で問題を解決することは難しいため、専門的な機関に相談することで、迅速な解決を目指しましょう。

労働基準監督署に通報する

労働基準監督署への通報は、労働基準法違反を是正する最も基本的な手段です。

全国の都道府県労働局や各地の労働基準監督署では、労働条件に関する違反についての通報を受け付けています。匿名でも可能で、労働者の立場を守りながら手続きを進められます。通報方法は電話、WEBフォーム、来署の3つがあり、証拠となる資料を提出すれば調査がスムーズに進みます。

調査が開始されると、「労働基準法違反が発覚してから罰則までの流れ」のように、企業への立入調査や資料確認、助言指導や是正勧告が行われ、改善されない場合は送検や企業名公表も検討されます。ただし、通報内容が具体的でない場合は調査に着手されないこともあるほか、調査には一定の時間がかかるので、できる限り詳細な情報を提供するのが望ましいです。

労働基準監督署が動かないとき」の解説

弁護士に相談して労働審判・訴訟を行う

労働基準法違反があるとき、弁護士に依頼すれば、被害回復が可能です。

例えば、違法行為に対する是正の要求、未払い賃金の請求、損害賠償の請求などを行うことが可能です。労働基準監督署への通報と並行して進めることができ、特に、多額の未払いがあるときや、過労死などの深刻な事案では、弁護士に相談して民事的にも解決を目指すべきです。

弁護士が関われば真剣に対応せざるを得なくなり、曖昧な態度で濁していた会社にもプレッシャーを与えられます。交渉で解決できない場合、労働審判や訴訟などの手続きも利用できます。被害の拡大を防止し、証拠を確保するためにも、弁護士への相談は早めにしておきましょう。

労働問題に強い弁護士」の解説

労働基準法違反に関するよくある質問

最後に、労働基準法違反に関するよくある質問に回答します。

アルバイトやパートでも労働基準法違反は起こる?

労働基準法違反は、アルバイトやパートでも起こります。

労働基準法9条の「労働者」に該当する社員が保護の対象となるのであり、雇用形態にかかわらず適用されるからです。「アルバイトは残業代不要」「パートだから休憩不要」といった考え方は誤りです。したがって、アルバイトやパート、派遣、契約社員など、正社員以外でも労働基準法違反は違法です。

労働基準法違反があると誰が捕まる?罰則の対象は?

労働基準法違反で処罰される対象は「使用者」が原則です。

労働基準法の条文の多くは「使用者」を義務者としています。「使用者」とは、労働基準法10条で、次の者を指すと定められています。

  • 事業主(事業の主体であり、労働契約の当事者)
  • 事業の経営担当者(社長や理事長など、経営に携わる者)
  • 事業主のために行為をするすべての者(部長、課長、工場長、人事部長など、その事業の労働者に関する事項について権限を持つ管理監督者)

場合によっては、労働者であっても「事業主のために行為をする者」とみなされ、罰則が科されることもあります。

あわせて、「両罰規定」に基づき、使用者が所属する事業主(法人または個人事業主)も罰金刑の対象となります。

労働基準法違反の公訴時効は?

労働基準法違反の罪には、刑事訴訟法に基づく公訴時効が存在します。

「6ヶ月以下の懲役」「30万円以下の罰金」といった刑事罰については、公訴時効は3年と定められています。したがって、労働基準法違反の行為が行われてから3年が経過すると、刑事罰の対象として起訴できず、刑事責任の追及はできなくなります。

なお、公訴時効が完成しても、労働者からの未払い賃金請求などの民事責任は別途残るため、違反の改善が必要であることに変わりはありません。

【まとめ】労働基準法違反について

弁護士法人浅野総合法律事務所
弁護士法人浅野総合法律事務所

今回は、労働基準法違反について、事例や責任・罰則を解説しました。

労働基準法は労働者の権利を守る最低基準を定めた法律であり、その違反は企業の信頼や経営基盤に大きな影響を及ぼす重大な問題です。労働基準法違反があると、民事・行政・刑事上の重大な責任があるため、「知らなかった」では済まされません。

長時間労働や未払い残業代といった労働基準法違反は、業種や企業規模にかかわらず起こりますが、常態化すると違反に気づきにくいものです。違反が発覚した場合、行政指導や罰則が下るだけでなく、社会的信用の失墜も避けられません。企業側は労務管理を徹底して違反を防止すべきであり、労働者としても労働基準監督署や弁護士などの相談先を理解しておきましょう。

よくある違反事例は日常の中に潜んでいます。労働問題で困った際は、できるだけ早めに弁護士に相談してください。

この解説のポイント
  • 労働基準法違反により、企業は民事・行政・刑事上の責任を負うリスクあり
  • よくある事例を知ることで、労働基準法違反に早く気付いて対策を講じられる
  • 労働基準法違反は、労働基準監督署と弁護士に相談することが可能

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