会社から「明日から来なくていい」と言われたとき、対応に戸惑うことでしょう。
解雇なのか、それとも一時的な指示に過ぎないのか、意味がはっきりしないとどう行動すべきか迷ってしまいます。「出社しなくていい」と言われても、直ちに有効な解雇とは限りません。感情的な発言や、権限のない上司によるパワハラの可能性もあります。一方で、社長から明確に、「明日から来なくていい」と言われた場合、実質的に解雇を意味するケースもあります。
働く意思があるのに出社を拒まれた場合、解雇だけでなく、給料やパワハラなどの様々な問題が生じます。このような発言を受け、出社しないことを選択した場合に不利になるか、不当解雇として争う余地があるかといった点も検討しなければなりません。
今回は、「明日から来なくていい」と言われたときに考えるべき法的なポイントと、具体的な対応について、労働問題に強い弁護士が解説します。
- 「明日から来なくていい」は様々な意味を含み、即座に解雇とは判断できない
- パワハラや不当解雇となる可能性の高い発言であることを理解して対応すべき
- 出社し、働く意思を示す行動を取り、証拠に残しながら対処するのが適切
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「明日から来なくていい」の法的な意味とは

はじめに、「明日から来なくていい」という言葉の意味を考えましょう。この発言の意味は、法的に整理すれば、次の5つのいずれかに分類されます。
「明日から来なくていい」という発言だけでは様々な意味を含むので、自分の受け取り方だけで判断しないようにしましょう。
注意指導を意味する場合
「明日から来なくていい」という発言が、注意指導を意味する場合があります。
業務でミスをしたり、遅刻や無断欠勤が続いたりして、叱責として発言されるケースです。このような発言に法的な意味はなく、「これからは注意するように」といった程度の意味合いです。
ただし、反省すべき点がある場合も、「明日から来なくていい」という発言は過剰であり、違法なパワハラとなる可能性があります。改善点があるとしても言い方に配慮が必要であり、感情的に叱責するのではなく具体的に問題を指摘すべきだからです。
「パワハラと指導の違い」の解説

休職を意味する場合
「明日から来なくていい」という発言が、法的には休職を意味する場合があります。
休職は、体調不良やケガなどで業務を続けるのが困難な人を、一時的に休ませる制度です。就業規則における休職の要件に該当し、医師の診断書などをもとに適切な休職命令として「明日から来なくていい」と言われたのであれば、従って休養を取るのが適切です。
「休職中の退職の伝え方」の解説

自宅待機命令を意味する場合
「明日から来なくていい」という発言が、自宅待機の命令を意味する場合もあります。
自宅待機命令は、業務命令の一種であり、オフィスに来ずに自宅で待機するよう命じるものです。適切な業務命令である場合、出社することはできません。懲戒解雇になり得る重大な問題を起こした場合、再発防止の観点から、このような発言で自宅待機を命じられるケースがあります。
「自宅待機命令の違法性」の解説

退職勧奨を意味する場合
「明日から来なくていい」という発言が、退職勧奨の一環としてなされる例もあります。
退職勧奨とは、労働者に対して自主的に辞めるよう働きかける行為です。労働者の同意なく退職させることはできないので、辞めるように強要することは違法です。
退職強要に至る場合、違法なパワハラに当たります。「明日から来なくていい」という強い発言で、事実上会社に行くことができなくなったら、それは退職勧奨ではなく、違法な退職強要の程度に至っていると判断することができます。

「退職強要の対処法」の解説

解雇を意味する場合
「明日から来なくていい」という発言を素直に受け止めれば、解雇と考えるのが自然です。会社が一方的に労働契約を解約する意思表示が「解雇」であり、「来なくていい」というのは、まさに一方的に出社を拒絶する意味に受け取れるからです。
ただし、「不当解雇として無効になる」の通り、解雇は法的に制限され、不当解雇として無効になる可能性があります。むしろ、「明日から来なくていい」という発言は「解雇」と受け取られやすいため、会社としてその意図がないなら、労働者にも真意を理解できるよう説明すべきです。
説明なく、ただ「明日から来なくていい」と伝えるのみで、解雇と聞こえかねないようなプレッシャーをかけることは、違法なパワハラとなる可能性が高いと考えられます。
「解雇の意味と法的ルール」の解説

「明日から来なくていい」は違法となる可能性が高い

「明日から来なくていい」という発言は、違法となる可能性が高いです。言い方が柔らかく、発言時の態度が威圧的でなくても、そもそも発言内容が問題となると考えられます。以下では、この発言のどのような点が違法になりやすいのかを解説します。
違法なパワハラになる
注意指導や休職、自宅待機など、労働契約を終了させる意味ではなく「明日から来なくていい」と発言された例を考えてください。会社側の意図にかかわらず、突然「明日から来なくていい」と言われれば、労働者が「労働契約を終了されるのでは」と不安を抱くのも当然です。
この発言による労働者へのプレッシャーは相当大きいと考えられるので、違法なパワハラになる可能性が高いです。パワハラは、職場での優越的な地位を利用して、業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動によりますが、社長や上司などの立場にある人が「明日から来なくていい」と言うことは、まさにこの要件に該当すると考えられます。

仮に、会社に「解雇」「パワハラ」いずれの意図もないなら、次の伝え方が適切です。
- 問題点を具体的に伝え、どう改善すべきかを指導する。
- 休職要件に該当することと休職期間を伝え、休職命令を発する。
- 今後の懲戒処分のスケジュールを伝え、自宅待機を命じる。
これらの方法であれば、突然に「明日から来なくていい」と言われて理由すら説明されない事態に比べれば、圧力を減らすことができます。違法なパワハラを受けた被害者は、直接の加害者と会社に対して慰謝料を請求できます。
「パワハラの相談先」の解説

不当解雇として無効になる
「明日から来なくていい」という発言が、その言葉の通り、退職勧奨や解雇といった労働契約の終了を意図するケースでも、違法の疑いが強いと言わざるを得ません。解雇は法律で厳しく制限され、解雇権濫用法理により、「客観的に合理的な理由」と「社会通念上の相当性」がなければ不当解雇として無効になるからです(労働契約法16条)。

したがって、「明日から来なくていい」という発言だけで労働者を辞めさせるのは不適切で、不当解雇になる可能性が非常に高いです。有効に解雇するなら、証拠に基づいて事情を精査し、解雇理由証明書を交付するなどの対応が必要です。懲戒解雇など重度の処分の場合、対象者に弁明の機会を付与し、言い分を聴取しなければなりません。
なお、明確に「解雇」という言葉を使わなくても、一方的に辞めさせるのは実質的に解雇を意味します。例えば、次の言葉は、解雇を意味するか、少なくとも退職の強要として違法となります。
- 「明日から来なくていいよ」
- 「もう会社に来るな」
- 「やる気ないなら来なくていいよ」
- 「お前みたいな無能に仕事はないから」
- 「邪魔なのでもう会社に来ないでもらいたい」
「不当解雇に強い弁護士への相談方法」の解説

「明日から来なくていい」発言に関する裁判例
実際に「明日から来なくていい」発言について判断した裁判例もあります。
裁判所では、「明日から来なくていい」という発言について、証拠や証言によって発言内容だけでなく言い方や状況なども総合的に考慮され、その意味が判断されます。
東京地裁平成22年2月26日判決(宝城建設ほか事件)では、「明日から来なくてよい。別の仕事を探しなさい」という発言について、裁判所は解雇の意思表示と解釈しました。そして、解雇理由の説明がないこと、従業員の就業不能が会社代表者の暴行に起因することなどから、解雇は無効とされ、別の企業で就労を開始するまでの賃金請求を認めました。
東京地裁令和4年3月23日判決(ダイワクリエイト事件)では、代表者による「あなたにもうこの会社でしてもらう仕事はない」という発言について、裁判所は解雇の意思表示と認定し、発言以降の労務不提供は会社の責任であって無断欠勤ではないと判断しました。
以上のように、裁判所で争ったケースでも、個別の事案に応じて「事実上の解雇」であると判断される可能性が高いと考えられます。
「明日から来なくていい」と言われたときの適切な対処

「明日から来なくていい」という発言は違法の可能性があるため、いざという場合に備え、労働者側でも適切な対応を理解しておく必要があります。
とりあえず出社すべき
「明日から来なくていい」という発言の意味に迷うなら、まず出社するのが基本です。
意図が分からないと戸惑いますが、解雇を意味する場合でも不当解雇として争えます。退職勧奨を意味するとしても労働者の同意なく辞めさせられません。いずれにせよ、労働者としては、地位の継続を前提とした行動を取るべきであり、出勤を継続するのが原則です。
この発言があっても労働契約は続いている可能性が高く、出社する義務は残っていると考えて対応するのが安全です。なお、出社してもなお「来るなと言っただろう」などと追い返された場合、録音するなどして記録を取ることで、違法性をより明らかにできます。
「パワハラの録音」の解説

出社できなくても働く意思は示す
「明日から来なくていい」と言われても、出社せずに休めば「無断欠勤」とされる危険があります。欠勤している一方で、「明日から来なくていい」という発言は口頭のみで記録がないと、不利に扱われます。最悪の場合、無断欠勤を理由に解雇されるおそれもあります。
会社の嫌がらせやパワハラで事実上出社できなくても、「働く意思がある」と示しておくことは大切です。内容証明で就労意思を示し、証拠化しておきましょう。通知書のテンプレートは、次の文例を参考にしてください。
通知書
◯◯株式会社
代表取締役社長 ◯◯◯◯ 殿
貴社◯◯氏から、20XX年XX月XX日付で「明日から来なくていい」という発言を受けた件について、本書面にて通知いたします。
私から再三、発言の意味を明らかにするよう求めましたが、今のところ貴社から説明はありません。したがって、雇用契約は存続すると考え、本日以降も業務命令に従って就労する意思があることを通知します。
なお一連の発言が解雇を意味するのであれば、不当解雇であると考えられるため、撤回を強く要求します。
【作成日・署名】
以上
発言の証拠を残す
「明日から来なくていい」という発言の意味を明らかにし、責任追及をする前提として、発言があったことを証拠に残さなければなりません。発言の録音が取れるのが理想であり、録音があればその内容だけでなく言い方や語気の強さも証拠に残せます。
すぐに録音できる準備がなかったときは、「明日から来なくていいと言われましたが、納得いきません」とメールするなどして、証拠に残す努力をしましょう。
「パワハラの証拠」の解説

発言の意味を確認する
次に、「明日から来なくていい」という発言の趣旨を確認します。
退職を促そうとする会社からは、合理的な理由が説明されない可能性が高いです。このとき、「発言の意味を質問した」という証拠を残すために、書面やメールで連絡してください。
自分にとって否定的な発言の意味を問いただすのは勇気がいるでしょうが、指示や命令の意味が分からないことの方が問題です。人間関係などに配慮して「聞きにくい」と我慢すれば、退職勧奨に同意したと評価されるリスクもあります。
「パワハラにあたる言葉一覧」の解説

不当解雇なら撤回を求める
「明日から来なくていい」という発言が「解雇」、つまりクビを意味するとき、不当解雇として争い、撤回するよう求めましょう。
不当解雇かどうかの判断は非常に難しいですが、少なくとも「明日から来なくていい」という発言では解雇理由を示しておらず、このような曖昧な言葉で納得させようとするのは「大した理由がないのではないか」と疑うべきです。解雇理由が十分にあるなら、感情的な発言で辞めさせようとするのではなく、理由を説明し、適切な手続きを踏めばよいからです。
交渉で撤回されなければ、労働審判や訴訟などの裁判手続きで解雇の無効を主張しましょう。あわせて、「明日から来なくていい」という発言がパワハラとして違法になるなら、不法行為(民法709条)による慰謝料を請求することもできます。

なお、仮に解雇が有効でも、「明日から会社に来なくていい」と言われ、本当に翌日からクビになるなら、30日分の平均賃金に相当する解雇予告手当を請求できます(労働基準法20条)。
「解雇を撤回させる方法」の解説

「明日から来なくていい」と言われたら、その後はどうなるか

「明日から来なくていい」と、出社を拒否されてしまうと、その後どうなるのか不安が募るでしょう。どのように過ごせばよいのか、といった点について解説します。
会社に行かなくても給料は請求できる
「明日から来なくていい」と言われた場合、会社に行かなくても雇用関係はなくなりません。「明日から来なくていいと言われたから行かない」「帰れと言われたから帰る」というのは、むしろ業務命令に従った対応の結果です。したがって、給料を受け取れるのは当然です。
「「明日から来なくていい」の法的な意味とは」の5つのケースに沿って給料について整理すると、次のように解説できます。
- 注意指導の場合、雇用契約はなくならず、給料が支払われるのは当然です。
- 休職は「無給」と定める会社は多いですが、傷病手当金を受け取ることが可能です。また、業務に起因する場合は労災として保護されます。
- 自宅待機命令の場合、懲戒処分などに該当する責任が明らかになる前については給料が発生するのが原則です。
- 退職勧奨の場合、応じるまでの給料は受け取れます。
- 解雇の場合、不当解雇として争い、勝訴すれば解雇期間中の給料(バックペイ)を請求することができます。
「給料未払いで泣き寝入りしないためには?」の解説

「会社に来なくていい」と言われて退職したら会社都合退職となる
「会社に来なくていい」と言われて退職したら、失業保険の面では会社都合退職となります。退職勧奨に応じて辞めるのは「特定受給資格者」となるからです。ただ、このような発言で、暗に自主退職を促そうとする会社ほど、自己都合退職として扱う傾向があります。
会社都合と自己都合とでは、失業保険を受け取れるタイミングや期間に大きな差があるため、離職理由の誤りについては異議を述べて争うべきです。

会社都合退職による失業保険は、労働者が希望しない時期に辞めざるを得ない場合の手厚い保護となっています。したがって、自ら進んで辞めたわけではなく、「会社に来なくていい」と言われたことがきっかけとなっているなら、会社都合扱いで当然なのです。
「自己都合と会社都合の違い」の解説

「明日から来なくていい」発言に対応するときの注意点

最後に、「明日から来なくていい」という発言への対応で、労働者が注意すべきポイントを解説します。出社を拒否しても焦らず、労働法に基づいた対処を心掛けましょう。
言葉のニュアンスに注意する
「明日から来なくていい」という発言は、そのニュアンスにも注意が必要です。「文字」でなく「発言」だと、言い方や態度によっても意味合いが変わることがあります。
例えば、社長が「明日から来なくていい」と感情的に口走ったが、法的な意味を理解していない事例もあります。真に受けて出社を止めれば、「やる気がない」と低評価を受けます。まだ会社を辞めたくないなら、発言者の真意を推察することが大切です。
「(会社に)来るな」なのか「来なくてよい」なのか、といったニュアンスの差も微妙です。しかし、語尾が少し違うだけでも、実際に発言した人の意図は大きく異なる可能性があります。
「職場のモラハラの特徴と対処法」の解説

人事権があるかどうかを確認する
「明日から来なくていい」という発言は、雇用契約の解消のように聞こえます。しかし、解雇や退職勧奨は、そもそも人事権を有する人にしか行えません。
社長をはじめ、人事権を持つ人がこの発言を直接するなら、解雇の意味かもしれません。しかし、人事権のない上司の発言であれば、単なる嫌がらせやパワハラに過ぎないこともあります。人事権のない上司から「会社に来るな」と言われることに解雇の意味はありません。この場合、発言した上司によく意味を確認し、納得のいかないときは、さらに上位の上司や社長に「◯◯さんから会社に来るなと言われたが、会社として解雇するという意味か」と確認すべきです。
「ブラック上司の特徴と対策」の解説

退職勧奨に同意しないように注意する
「明日から来なくていい」という発言が退職勧奨だったとき、対応には注意を要します。
退職勧奨は、強要に至らない範囲では有効であり、ひとたび同意して合意退職となれば、その後に争うのは容易ではありません。会社から「明日から来なくていい」と言われたからといって出社せず、働く意思すら見せなければ、「同意した」とみなされるおそれがあります。
退職勧奨に応じて退職すれば、会社の提案した条件で辞めることとなります。解雇予告手当は受け取れませんし、解雇を争うこともできません。退職勧奨による退職は本来会社都合退職として失業保険を受け取れますが、会社の中には「自分で辞めたのだから」といった理由で自己都合退職として扱おうとしてくるケースもあります。
いきなり雇用契約を解消されて後悔しないよう、「明日から来なくていい」と言われても、「肯定」「認めた」と受け取られる返事はしないようにしてください。
「退職合意書を強要されたら違法」の解説

【まとめ】「明日から来なくていい」について

今回は、会社から突然「明日から来なくていい」と告げられた場合の対応を解説しました。
この発言は不適切であり、法的にも多くの問題があります。中でも、実質的に解雇を意味する場合、このような伝え方では不当解雇として無効となる可能性が非常に高いと考えられます。
重要なことは、会社の発言をそのまま受け入れてしまわないことです。「明日から来なくていい」と言われたとしても、働きたいと考えるなら出社の意思を示し続けることが重要です。その上で、解雇や退職強要にあたると判断される場合は、直ちに撤回を求めて争う必要があります。
突然の通告に動揺してしまうのは当然ですが、冷静に状況を整理し、法的観点から対応することが、将来の不利益を防ぐ第一歩となります。
- 「明日から来なくていい」は様々な意味を含み、即座に解雇とは判断できない
- パワハラや不当解雇となる可能性の高い発言であることを理解して対応すべき
- 出社し、働く意思を示す行動を取り、証拠に残しながら対処するのが適切
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