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浅野 英之
弁護士
弁護士(第一東京弁護士会所属、登録番号44844)。東京大学法学部卒、東京大学法科大学院修了。

企業側の労働問題を扱う石嵜・山中総合法律事務所、労働者側の法律問題を扱う事務所の労働部門リーダーを経て、弁護士法人浅野総合法律事務所を設立。

不当解雇、未払残業代、セクハラ、パワハラ、労災など、注目を集める労働問題について、「泣き寝入りを許さない」姿勢で、親身に法律相談をお聞きします。

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業務委託でパワハラされたときの対応方法は?適切な相談先も解説

業務委託でも、パワハラに苦しむ人は非常に多いです。

相手の言動の問題を認識していても、指摘するのは業務委託だと難しいものです。仕事をもらう立場では、文句も不満も我慢しがちで、このような上下関係を理由に、パワハラに悩まされる個人事業主やフリーランスからの相談は数多く寄せられています。

しかし、パワハラは決して許されません。業務委託だからといって我慢する理由はなく、発注者に適切な対処を求めるべきです。業務委託を軽視する企業では、通常のパワハラ以上に過激になる危険もあり、放置すればエスカレートします。契約先に相談しても状況が改善されないなら、委託契約を解除したり、責任追及したりといった検討も必要です。

今回は、業務委託でパワハラされたときの対応方法や適切な相談先について、労働問題に強い弁護士が解説します。

この解説のポイント
  • 業務委託でもパワハラは多く、雇用とは異なる理由で弱い立場にある
  • 近年、フリーランス保護法などにより、業務委託のパワハラも問題視される
  • 業務委託のパワハラ被害も、証拠を集めて弁護士に相談することで対応する

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解説の執筆者

弁護士 浅野英之

弁護士(第一東京弁護士会所属、登録番号44844)。東京大学法学部卒、東京大学法科大学院修了。

企業側の労働問題を扱う石嵜・山中総合法律事務所、労働者側の法律問題を扱う事務所の労働部門リーダーを経て、弁護士法人浅野総合法律事務所を設立。

不当解雇、未払残業代、セクハラ、パワハラ、労災など、注目を集める労働問題について、「泣き寝入りを許さない」姿勢で、親身に法律相談をお聞きします。

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業務委託におけるパワハラとは

まず、業務委託におけるパワハラの基礎知識について解説します。

パワハラの定義は「雇用」を前提としている

そもそもパワーハラスメント(パワハラ)は、「パワー(力)」による「ハラスメント(嫌がらせ)」のことです。優位性を利用した嫌がらせのことを指し、法律上は「職場において行われる優越的な関係を背景とした言動であつて、業務上必要かつ相当な範囲を超えたものによりその雇用する労働者の就業環境が害されるもの」と定義されます(労働施策総合推進法30条の2第1項)。パワハラに該当する言動を知るには、厚生労働省の示すパワハラの6類型が参考になります。

ハラスメントの類型と種類(あかるい職場応援団)

業務委託におけるパワハラの意味と問題視される理由

上記のパワハラの定義からすると、業務委託、つまりフリーランスの個人事業主に対する嫌がらせは含まれないと解釈することもできます。「職場」における「雇用する労働者」に対するものを、労働施策総合推進法では狭義のパワハラと定義している一方、業務委託の契約は「委任(準委任)」ないし「請負」であり、「雇用」とは法的な性質が違うからです。

しかし、働き方改革などに代表される近年の就労状況の変化に伴い、「雇用」だけではない多様な働き方が広まった昨今、業務委託で働くフリーランスも力が弱く、守るべき存在であると認識されるようになりました。組織に属していないからこそ保護の弱い面もあり、安心して働ける環境が必要なことは、個人事業主でも変わりはありません。

この問題意識から、近年、特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律(いわゆるフリーランス保護法)が整備され、業務委託でのパワハラも問題であることが明示されました。

特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律14条(業務委託に関して行われる言動に起因する問題に関して講ずべき措置等)

1. 特定業務委託事業者は、その行う業務委託に係る特定受託業務従事者に対し当該業務委託に関して行われる次の各号に規定する言動により、当該各号に掲げる状況に至ることのないよう、その者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の必要な措置を講じなければならない。

一 性的な言動に対する特定受託業務従事者の対応によりその者(その者が第二条第一項第二号に掲げる法人の代表者である場合にあっては、当該法人)に係る業務委託の条件について不利益を与え、又は性的な言動により特定受託業務従事者の就業環境を害すること。

二 特定受託業務従事者の妊娠又は出産に関する事由であって厚生労働省令で定めるものに関する言動によりその者の就業環境を害すること。

三 取引上の優越的な関係を背景とした言動であって業務委託に係る業務を遂行する上で必要かつ相当な範囲を超えたものにより特定受託業務従事者の就業環境を害すること。

2. 特定業務委託事業者は、特定受託業務従事者が前項の相談を行ったこと又は特定業務委託事業者による当該相談への対応に協力した際に事実を述べたことを理由として、その者(その者が第二条第一項第二号に掲げる法人の代表者である場合にあっては、当該法人)に対し、業務委託に係る契約の解除その他の不利益な取扱いをしてはならない。

特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律

この条項から分かる通り、労働契約に基づく上下関係はない業務委託でも、「取引上の優越的な関係」が生じることがあります。業務委託におけるパワハラとは、この取引上の優位性を利用して、必要かつ相当な範囲を超えて行われる問題行為です。

使用者が、雇用される労働者より優位な地位にあるのは「給料を払っている」という力関係があり、対立すると重大な収入を失うことを意味するからです。業務委託のフリーランスは、独立した自由な立場にあり、本来は束縛されません。しかし、多くの業務委託者は、特定の企業からの報酬に頼り、契約の打ち切りを恐れ、発注者の言うなりになって働かざるを得ない状況となっています。このような状況では、業務委託でもパワハラの犠牲になってしまいます。

パワハラはなぜ起こるのか」の解説

業務委託でもパワハラは違法になる

業務委託でも、パワハラは違法です。前章の通り、フリーランス保護法によれば、「取引上の優越的な関係を背景とした言動」であって、「必要かつ相当な範囲を超え」「就業環境を害する」行為について、企業は防止する措置を講じなければなりません。

労働者に対するパワハラと同様に「必要性」「相当性」は、①その言動の目的が「指導」などの適切なものであるか、②目的を達成する手段が行き過ぎていないか、という2ステップで検討します。

ただ、このとき大切なポイントが、業務委託で働くフリーランス(個人事業主)は、労働者とは異なり、会社から独立した存在で、本来、使用者の指示を受ける立場にはない、という点です。つまり、個人事業主への逐一の業務指示は予定されておらず、厳しい発言や指導、まして暴力や威圧的な態度などを取れば、労働者にもまして業務委託の方が、違法なパワハラになりやすいです。労働者の場合、パワハラと厳しい指導の区別がよく争点になり、多少行き過ぎても、指導の目的があれば違法性が小さく評価されがちですが、業務委託の場合はそもそも指導をする権限がなく、パワハラであると評価されやすいわけです。

パワハラと指導の違い」の解説

業務委託におけるパワハラの具体例と兆候

次に、業務委託におけるパワハラの具体例について解説します。

業務委託におけるパワハラも、発言や行動の内容は労働者に対するものと共通します。ただ、業務委託に特有のパワハラが起こる場面もあります。業務委託だからこそ生じる危険を見落とすと、自分がパワハラを受けたことに気付きにくくなってしまいます。

しかも、業務委託の立場が「部外者」として軽視されやすく、ケースによっては労働者のパワハラよりも重大なものに発展する傾向にあります。こうした事態を避けるには、業務委託におけるパワハラの類型をよく理解するのが大切です。

業務委託契約の曖昧さが原因で起こるパワハラ

業務委託契約は、その契約内容が曖昧なまま進むことがあります。

例えば、成果物の種類や品質、依頼された業務の範囲や内容が曖昧で、責任の押し付け合いになることもしばしばです。このとき、委託を受けたフリーランス(個人事業主)の立場が弱いと、パワハラに発展します。

契約内容の曖昧さが原因で起こるパワハラには、次の例があります。

  • 当初予定していなかった負荷の高い作業を強要する。
  • 業務に無関係な雑用を強制する。
  • 委託範囲を拡大されたのに適正な報酬を追加しない。
  • 検収基準を曖昧にして納品したと認めない。
  • プライベートな連絡手段を用いるよう強制する。
  • 早朝や深夜など、非常識な時間帯に対応させようとする。
  • 成果物の著作権を主張したが「報酬に含まれている」と反論された。
  • 「要望に答えないなら悪い噂や口コミを流す」と言われた。
  • 要求を拒否すれば契約解除すると脅された。

これらパワハラは、業務委託契約書を作成し、「業務範囲」「検収基準」「対応のルール」などを明記しておけば予防できます。業務委託で働くフリーランス(個人事業主)は、パワハラ的な要求を防ぐため、事前の契約書チェックが欠かせません。

パワハラにあたる言葉一覧」の解説

成果物の不具合や遅延によるトラブル

成果物を納品してもなお、パワハラが続くケースもあります。

求められた品質や数量に達しておらず、契約の内容に適合していないなら、さらに業務を要求するのは正当です。しかし、発注者の中には、その優越的な地位を利用して、合理的な理由なく、わずかな不具合や遅延でも執拗に修正を要求する企業もあります。過度なリテイク、リメイクの要求は、パワハラと評価される可能性が高いです。

このような成果の不足を理由にしたパワハラには、次の例があります。

  • 不具合も遅延もないが、発注者の要望が変わったのを理由に再作成を命じられた。
  • 無制限の修正に応じるよう強く要求された。
  • わずかな納期の遅れで受領を拒否され、報酬を一切支払ってもらえなかった。
  • 「コンセプトに合わない」といった抽象的な理由で作り直しを命じられた。
  • 発注側のミスや非協力的な態度が原因なのに全て委託者の責任にさせられた。
  • ミスの責任を過度に追及された。

価格交渉、値引き交渉に伴うトラブル

業務委託の報酬は、両当事者の合意で決めるのが原則です。発注者と対等な立場とされるからこそ、労働者の給料のように法律上の保護がありません。しかし、優位な立場にある発注者は、無理な価格交渉を強いたり、不当な値引き交渉をしてきたりすることがあります。

価格交渉、値引き交渉のトラブルが、パワハラに発展するのは次のような例です。

  • 「まとめて発注するから半額にするように」といった無茶な要求をされた。
  • 「次もお願いするから」といった不確かな約束で値引きを迫る。
  • 途中までやりかけた仕事なのに、値引きしないなら報酬は払わないと言われた。

発注者と業務委託との関係は、顧客と取引先の関係であるため、いわゆるカスハラとも問題は共通しています。

カスハラの意味と違法性の基準」の解説

契約継続や契約解除、途中解約に伴うトラブル

業務委託契約は、雇用契約に比べて「継続性」「安定性」の保障がありません。

そのため、いずれの当事者にとっても、契約を中途解約しやすい性質があります。具体的には、民法上の委任契約は、いつでも解除できるのが原則で、不利な時期の解除や、受任者の利益をも目的とする場合に限って、解除に伴う損害の賠償請求ができるに留まります(民法651条)。そのため、軽く考えて契約解除をしてくる発注者も少なくなく、次のようなパワハラが横行します。

  • 「文句を言うなら解除する」と脅す。
  • フリーランス(個人事業主)側からの中途解約には多額の違約金が付けられている。
  • 暴言や威圧的な態度によって契約の打ち切りを迫ってくる。
  • これ以上の業務はできないと伝えたらすぐに解除された。

労働者は、一社専属のために弱い立場にあり、給料を失うと生活に困るからこそ法律で保護されてます。多くの発注者から依頼を受ける力の強いフリーランスは別として、実際には、大口の取引先に頼る人も多く、この場合、契約を解除されると困るので、パワハラ的だとしても要求に応じざるを得ないのが実情です。

個人事業主の解雇の違法性」の解説

業務委託の立場が弱い理由

業務委託でのパワハラが通常のパワハラよりも過酷になるおそれがあるのは、業務委託という立場が、非常に弱いことが理由です。ここでは、本来なら独立して誰にも干渉されないはずの業務委託の立場が、なぜ労働者に比べても弱いのか、その理由を解説します。

フリーランスは労働基準法で守られない

フリーランスの立場が労働者よりも弱くなりがちな理由の1つに、「労働基準法の保護を受けられない」点があります。

労働基準法は、最低限の労働条件を定めて労働者を保護する法律であり、その対象は、使用されて賃金を支払われる「労働者」に限定されます(労働基準法9条)。違反すれば罰則も科される厳しい法律ですが、守られるのは労働者のみであり、業務委託のフリーランス(個人事業主)は恩恵を受けられません。

パワハラをする発注者やその社員は、この点を悪用し、「フリーランスなら働き方に配慮する必要はない」と誤解し、軽視します。その結果、劣悪な条件を飲まされてしまいます。

形式は業務委託でも、その実質が労働者に該当するときは、労働関連法令の保護を受け、不当解雇や残業代といった労働者の権利を主張できます。労働者性が認められやすい例として、ほぼ一社専属である、毎日の稼働報告を強制されるといった例が挙げられます。

委託と雇用の区別は、指揮命令や、時間的・場所的拘束の有無といった基準で判断します。この点は、形式は「役員」だが実際は「社員」として扱われ、残業代を請求できる、いわゆる「名ばかり役員」の問題点と共通しています。

名ばかり役員の残業代」の解説

契約の壁によりパワハラされても強く出られない傾向がある

パワハラされても強く出られない傾向がある点も、フリーランスが弱い理由です。なぜなら、いわゆる「契約の壁」があるからです。

本来、契約自由の原則により、契約は、両当事者の約束で自由に条件を定められるのが基本です。労使の力関係は対等でないために、法律や裁判例で労働者が保護され、契約自由の原則が修正されるに過ぎません。そうすると、業務委託で働くフリーランス(個人事業主)の場合は原則に立ち返り、契約は自由、つまり、一方的に契約を解除されたり、低い条件しか提示されなかったりしても、法律で修正されることはありません。

その結果、フリーランスは労働者と違って、毎月定額の収入を得られるわけではなく、事業が軌道に乗らなければ無収入のこともあります。せっかく関係を築けた取引先を失いたくないという一心で、パワハラがあっても自ら身を引いて契約を終了させ、逃げることは困難でしょう。

発注者と受注者という上下関係がある

本来、契約の当事者は対等だと考えられています。しかし、受注者は、発注者の要望に応じて動くしかない受け身な立場です。交渉力や情報力の点でも発注者の方が有利であり、多くの場合は、フリーランスや個人事業主である受注者より、発注者の方が企業規模も大きいです。

労働者のように逐一の指揮命令を受けるわけではないとしても、結局は労使の関係に類似しており、言うことを聞かざるを得ない場面も多いです。業務委託の立場が弱い根本的な原因は、そもそも発注者と受注者という上下関係があるという点にあります。

たとえ業務委託でも、実質が雇用ならば、労働問題と共通します。

労働問題に強い弁護士の選び方」の解説

業務委託でパワハラを受けた場合の対処法

業務委託でパワハラを受けた場合は、早めに専門家に相談し、一人で抱え込まないことが大切です。業務委託でパワハラを受けたときの具体的な対処法について解説します。

パワハラであると理解するのが先決

初めに、争う前提として「パワハラ被害に遭っている」という自覚が必要です。

業務委託で働く人は、社員として組織に属する人より責任感が強く、精神的なストレスに強い傾向があります。その結果、自分の遭遇した状況が「パワハラ」だとは認識していない方もいます。

業務委託でパワハラを受けたとき、声をあげずに耐え忍び、仕事を継続してしまいがちです。しかし、被害者が泣き寝入りする理由はありません。パワハラは不法行為(民法709条)であり、違法です。加害者に対し、被った損害の賠償を請求できます。フリーランスだからといってあきらめる理由はありません。今は我慢できても、うつ病など、将来のリスクに繋がる危険もあります。

内容や状況を記録し証拠を集める

パワハラの問題を解決するにあたって必要不可欠なのが、証拠収集です。発注者は、必ずといっていいほどパワハラの事実を否定し、反論してきます。

メールやLINEの履歴はスクリーンショットなどで証拠化し、会話は可能な限り録音を残すことが望ましいです。最近ではリモート会議も多いので、必ず録音を撮っておきましょう。証拠化が難しい場合、暴言や暴力の内容を詳細にメモして、時系列に沿って整理しましょう。

例えば、次のような点を証拠に残しておきましょう。

  • 発注者都合で生じた追加工数を記録する。
  • 追加見積もりを出したことを証拠に残す(追加発注書、見積書など)。
  • 心身に不調が生じたことを証拠化する(診断書など)。

パワハラの証拠集めは、業務委託の個人事業主でも、労働者と共通します。

パワハラの証拠の集め方」の解説

契約先の人事部に相談する

契約先の人事部への相談もご検討ください。

「業務委託にパワハラをする社員がいる」ということは、その会社にとって重大な法律問題です。人事部は懲戒権や人事権を有しているので、適切に対処する会社なら、担当者を変更したり、連絡窓口を置いたりといった方法で、距離を離してくれることが期待できます。

パワハラ気質の社員を野放しにすれば、社内の労働問題に発展するおそれもありますし、対外的にも企業のイメージも低下します。令和6年11月1日以降は、フリーランス保護法の施行により、業務委託へのハラスメント行為についても相談対応のための体制整備など、措置を講じることが義務化されました。そのため、労働者がパワハラ被害を受けたときと同じく、フリーランス(個人事業主)でも、定められた相談担当者に連絡し、対応してもらうことができます。

他方で、部署がない小規模の企業と契約している場合や、社長や会社ぐるみのパワハラに遭った場合、人事部への相談は功を奏しません。その場合は迷わず、弁護士に相談してください。

業務委託契約を解除する

業務委託契約を解除するという方法も選択肢の一つです。

パワハラを黙認するような企業と取引を続ける限り、新たなパワハラに遭うリスクを背負い続けます。業務委託のメリットは、雇用された労働者よりも一企業に依存せず、自由に仕事ができる点にあります。この点を活かす方法が「契約の解除」です。

後にトラブルとなった際は「いつまでの業務の責任を負っていたか」という意味で解除日が争点となることが多いため、内容証明で解除の意思を示すのが適切です。

解除権は、契約に定めた条件を満たす場合に行使できるのが通例ですが、ハラスメントがあった場合、債務が適切に履行されていないともいえるので、解除には正当な理由があります。念のため、解除前の通知期限についても契約書で確認してください。低報酬や、ハラスメントの継続する劣悪な状況で作業させようとする企業からは、速やかに距離を置くべきであり、この点は、社員を辞めさせようとしない会社の辞め方とも共通します。

会社の辞め方」の解説

専門機関に相談する

業務委託のパワハラは、第三者的立ち位置である専門機関に相談するのも有益です。

客観的な意見をもらえるため、納得感を得やすいです。取引先に相談するのが心配なとき、まずは専門機関の意見を聞いておいてください。

業務委託のパワハラの相談先として最適なのが、フリーランス・トラブル110番です。フリーランスが弁護士にワンストップで相談できる窓口として、令和2年11月に設置され、無料で弁護士のアドバイスを受けることができます。

業務委託のパワハラのトラブルは、実質は労働問題といえる場合や、下請けいじめ、人権侵害など、多様な捉え方ができ、隣接する法分野の窓口もまた、相談先の候補に上がります。

【法律問題の全般的な相談】

【労働問題の相談】

  • 労働基準監督署
  • 労働組合
  • 弁護士

【ハラスメントの全般的な相談】

【人権問題の相談】

【取引関係のトラブルに関する相談】

個別の機関ごとにそれぞれ特徴があるため、長所と短所をよく理解して、希望の条件に合った窓口を利用することが大切です。

パワハラの相談先と相談方法」の解説

業務委託がパワハラについて相談できる窓口は弁護士が適切

業務委託でパワハラを受けたとき、相談窓口の中でも最もおすすめなのが、弁護士です。

弁護士は、法律の専門家であり、労働問題はもちろんですが、必ずしも雇用されている労働者の問題でなかったとしても知識と経験に基づいたアドバイスをしてくれます。

労働組合や労働基準監督署が力になれない可能性がある

労働組合は、労働者が主体となって組織する団体で、労働条件の維持や改善などを目的とします。また、労働基準監督署(労基署)は、労働基準法をはじめとした労働法規の違反を取り締まる機関です。いずれも、救済の前提として、労働者を主たる対象としています。

契約が「業務委託契約」だったとしてもあきらめてはいけません。実質を評価し、労働者性が認められることもあります。この場合、労働基準法、労働組合法の「労働者」の定義を満たす場合に限って救済を受けられるため、争いになりやすいです。

労働基準法9条

この法律で「労働者」とは、職業の種類を問わず、事業又は事務所(以下「事業」という。)に使用される者で、賃金を支払われる者をいう。

労働基準法(e-Gov法令検索)

労働組合法3条

この法律で「労働者」とは、職業の種類を問わず、賃金、給料その他これに準ずる収入によつて生活する者をいう。

労働組合法(e-Gov法令検索)

したがって、業務委託のパワハラの問題は、労働組合や労働基準監督署が力になりにくく、相談しても対応してもらえないおそれがあります。

労働組合がない会社の相談先」「労基署が動かないときの対処法」の解説

弁護士への相談の重要性

弁護士は、依頼者本人の利益のために働くため、労働組合や労働基準監督署の欠点をカバーできます。たとえ、相談した人が、法律の定義にあてはまる「労働者」かどうかに争いがある場合でも、その人が困っているならば、力になるために必要なアドバイスをします。

したがって、紛争が激化しやすい業務委託のパワハラの問題では、相談窓口は弁護士が最適です。労働問題の経験豊富な弁護士は、法律の総合的な専門家として、近接する分野の争点も加味しながらアドバイスすることができます。相談先を決める際は、労働問題に関わる可能性も大いにあるので、パワハラに詳しい弁護士を選ぶのがよいでしょう。

業務委託契約前に自己防衛策を徹底するのも大切

業務委託におけるパワハラの多くは、業務委託契約の締結前に対策を講じれば、予防することができます。そもそも業務委託者が発注者と対等なら、嫌な人とは付き合わない、つまり、取引そのものを断ってしまえばパワハラは起きません。

第一に、取引先の選定を疎かにしないことが大切です。

入念に下調べをして損することはありません。良い評判だけに踊らされず、悪い口コミもチェックしましょう。コンプライアンス意識の低い会社との取引は避けてください。社内の労働者へのパワハラ対策すらおろそかにする会社では、ハラスメント気質な社員が野放しになっており、抑止力もないと考えられます。問題が起こっても適切な対処は期待できません。

第二に、妥当な内容の契約を締結することが大切です。

受注者と発注者の中で、受注者の権利だけが制限されていないか、一方的に厳しい義務を負わないか、依頼された業務の範囲が報酬に比べて広すぎないか、といった点を検討してください。心配なときは、契約条項にパワハラの禁止や、万が一ハラスメントが生じたときの解除権、損害賠償請求について契約書に定めを置くのも牽制になります。

少なくとも、口約束で業務委託を受けることはせず、必ず合意内容を書面にしてください。より万全を期すなら、フリーランス(個人事業主)といえど、弁護士と顧問契約を結び、契約書のリーガルチェックを依頼するのがおすすめです。

パワハラの黙認の違法性」の解説

業務委託のパワハラについて判断した裁判例

最後に、業務委託のパワハラについて判断された裁判例を紹介します。

横浜地裁川崎支部令和3年4月27日判決は、弁護士登録から間もない弁護士が、事務所の経営者から受けたハラスメントの違法性について判断した裁判例です。

【問題となった行為の例】

  • 実際には苦情がなかったのに、苦情の連絡があったと告げて叱責した。
  • 書類の送付ミスを機に、激怒しながら胸ぐらを掴み「嘘つきやろうが」「おめえふざけんじゃねんぞ」などと大声を出し、背後のロッカーに叩きつけ、在室した別の弁護士が間に入ったため暴行をやめた後も、土下座をするよう強い口調で命じた。
  • 依頼者の苦情を機に「テメエどういうことやってんだオラ。何回トラブルばっかり起こしてんだテメエは。どうしていっつもこんなトラブルばっかり起こす」「てめえなんか無資格者にしてやるぞコラ」「てめえの人生奪うことができるぞオラ、懲戒請求で。ここにある始末書全部出すぞ」などと怒号を交えて執拗に叱責を続けた。
  • 被害者が当時交際していた女性弁護士に連絡し、虚偽報告等のミスについて告げた。

裁判所は、両者の関係に照らすと加害者の一連の行動は優越的な立場を利用し、業務の遂行に当たっての適正な指導の範囲を明らかに逸脱していると評価し、違法なハラスメントと判断し、200万円の慰謝料の支払いを命じました。

東京地裁令和4年5月25日判決(アムールほか事件)は、エステの体験記事の執筆を依頼された美容ライターが、サロン代表者から受けたパワハラの違法性について判断しました。

【問題となった行為の例】

  • 執筆記事の質の低さを理由に契約を打ち切ると告げた。
  • プロフェッショナルではないなどのメッセージを送信した。
  • 仕事の質の低さやライターの兼業に不満を述べた。
  • 作業の評価方法について話し合いを求めたが、教えないとわからないのであれば報酬を要求しないでほしいとメッセージを送信された。

裁判所は、代表者の行為について、業務委託契約に基づいて業務をさせたのに、報酬の支払いを正当な理由なく拒むという嫌がらせであり、パワハラであると認めました。他にセクハラがあったことも考慮され、140万円の慰謝料の支払いが認められました。

労働者が裁判で勝つ方法」の解説

【まとめ】業務委託におけるパワハラ

今回は、業務委託でパワハラにあったときの対処法を解説しました。業務委託であってもパワハラは不当な行為だとご理解ください。

パワハラは本来、社内の上下関係によって生じるので、社外だと無関係にも思えます。しかし、業務委託と発注者の間にはパワハラの基礎となる上下、主従の関係が存在します。フリーランスの立場がかえって、パワハラの激化を招くこともあります。

業務委託でパワハラを受けたら、具体的内容や被害状況を説明できるよう、証拠の収集をしてください。フリーランス保護の法律も整備され、契約先の人事部に相談すれば、加害者を別の部署に異動させるなどの配慮が期待できます。被った損害は、加害者本人や、パワハラを黙認した発注者に賠償請求することができます。

業務委託のパワハラの問題も、労働問題に精通した弁護士への相談が適切です。目下の問題への対処法のみならず、パワハラの予防策についてもアドバイスを受けてください。

この解説のポイント
  • 業務委託でもパワハラは多く、雇用とは異なる理由で弱い立場にある
  • 近年、フリーランス保護法などにより、業務委託のパワハラも問題視される
  • 業務委託のパワハラ被害も、証拠を集めて弁護士に相談することで対応する

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