会社からいきなり呼び出しを受けると、ビビってしまう方も多いでしょう。人事からの呼び出しや、社長から直接の呼び出しなどだと、「解雇」といったよからぬ事態を連想させます。呼び出しに応じて面談した結果、「もう不要だからクビだ」と言い渡されてしまうこともあります。
恐怖から拒否してしまう方もいますが、大切な話は聞いておく方がよいです。不当な処分を下されるにしても、会社の言い分を知っておけば対策が練りやすいからです。一方で、違法なパワハラを受ける予兆がある場合など、拒否すべき理由があるときは明確に説明し、呼び出しを拒絶してください。
今回は、会社から呼び出しを受けたときの適切な対応について、その理由ごとに解説します。急遽の呼び出しを受けた非常事態だからこそ、事前にしっかり準備する必要があります。
- 会社から呼び出しを受ける例には、良いしらせ、悪いしらせのいずれもある
- いずれにせよ、会社からの呼び出しに応じて話を聞き、証拠に残すのが大切
- 会社から呼び出しを受け、解雇されたとき、不当解雇でないかを検討する
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会社から呼び出しを受ける、よくある理由
会社から呼び出しを受けたとき、「何の用か」と不安に思うことでしょう。
まず、よくある会社からの呼び出しの理由にどのようなものがあるかを解説します。理由をあらかじめ予想できれば、呼び出しに応じる際に心の準備ができるので、心当たりを探ってください。
重要な業務を任される
会社の呼び出しが、労働者にとって良い知らせのケースもあります。
重要な業務を任されるとき、会社から呼び出されることがあります。社運をかけた重要なプロジェクトのときなど、社長直々に、秘密裏に社長室へ呼び出される例もあるでしょう。わざわざ呼び出して伝えるのは「他の社員にはまだ秘密だから」という理由の場合もあります。
ハラスメントだと注意される
しかし、やはり会社からの呼び出しというと、悪い知らせのことも多いです。その1つに、呼び出しに応じたら、ハラスメントだと指摘されて注意を受けてしまうケースがあります。
セクハラ、パワハラなどのハラスメントは、加害者に自覚がない例も多いもの。突然呼び出され、注意されて初めて、「自分を嫌っていた人がいる」と知れば、ショックを受けるのも無理ありません。このようなケースは、被害者のプライバシーにも配慮してこっそり別室に呼び出して注意するのが通例なので、会社から呼び出しされる理由となります。
なお、意図せずハラスメントの加害者だと指摘された方は、冤罪の戦い方について以下の解説を参考にしてください。
「セクハラ冤罪の対策」「パワハラ冤罪の適切な対応」の解説
解雇される
最後に、どうしても避けたいのが、呼び出されて解雇を言い渡されるケースです。
会社からの呼び出しを受けるタイミングは、非常に深刻な労働問題が発生していると容易に予想できます。労使関係を終了させる「解雇」は、会社から言い渡される最も重大な処分なので、わざわざ呼び出されるときは、どうしても想定せざるを得ません。
例えば「会社からの評価が低い」「重大なミスを隠している」といったように、解雇される理由に心当たりのある方は、呼び出しに応じる際によく心構えし、弁明の準備をしておきましょう。
なお、解雇を言い渡されたり、退職勧奨されたりするとき、呼び出して別室で行う場面はパワハラが起こりやすい状況です。万が一パワハラの被害に遭ったらすぐ録音できるよう準備しておいてください。
「パワハラの録音」の解説
社長から直接の呼び出しは重要性が高い
会社からの呼び出しのなかでも、社長から直接の呼び出しは、特に重要性が高いと考えられます。そのため、良い方向でも、相当重大な話だろうと想像できますし、悪い話であれば、やはり解雇が頭をよぎるのではないでしょうか。
自分と社長との関係や、社長の性格から、呼び出された理由をある程度推測できることもあります。いずれにせよ、社長から直接呼び出しがあったときは、必ず応じ、きちんと話を聞くのが大切です。悪い話だったとしても、無視してしまっては何の話かも分からず、対策が立てられません。
「ワンマン社長の対策」の解説
会社からの呼び出しを拒否する方法
会社からの呼び出しには、原則として応じた方がよいです。会社で働く以上、業務命令には従わなければならないからです。
そして、急に呼び出しをされれば「悪い話なのでは」と恐怖を感じるでしょうが、悪い話だった場合こそ、会社の言い分をしっかりと聞いて、証拠に残し、速やかに対策を立てる必要があります。そのため、呼び出しに応じておいた方が後々良いケースが多いです。
ただし、例外的に、呼び出しを拒否すべき場合や、断らざるを得ない場合があります。
違法なパワハラを理由に拒否する
呼び出しを拒否すべき1つ目の例は、呼び出しに応じるとパワハラを受ける危険があるときです。例えば、会社から呼び出されて会議室にいったら、上司数名で詰められ、退職を迫られるケースなど。
特に、退職勧奨や解雇が目的の呼び出しだと、このような強度のパワハラを受けやすい状況です。したがって、違法なパワハラが理由ならば、会社の呼び出しを拒否すべきです。
「退職強要の対処法」の解説
休日の呼び出しを理由に拒否する
次に、休日の呼び出しを理由に拒否できるケースもあります。会社の業務命令といえど、休日は休むことを保証されていますから、聞かなくてよいのが原則だからです。
どうしても行きたくない会社からの呼び出しが、休日になされるとき、休日の呼び出しだったという理由を付けて断ることができます。
「休日出勤を断る方法」「休みの日に仕事の電話がきた時の対応」の解説
会社から呼び出しを受け、解雇されたときの対応
会社から突然呼び出され、解雇通告を受けてしまうケースは、呼び出しのなかでも最悪です。このような場面では、すぐに私物をまとめ、貸与物を返還して出ていくよう指示されるのが一般的です。上司や同僚に退社の挨拶もさせてもらえず、追い出すかのように締め出されます。
呼び出しを受けて即日解雇されるケースのなかには、不当解雇のケースもあります。不当解雇なら、違法であり、無効ですから、会社と争う必要があります。このような違法行為が行われる呼び出しの際の対応は、次の手順で進めてください。
解雇理由を聞く
会社から呼び出され、すぐに解雇といわれたら、解雇理由を聞くようにしてください。解雇は、解雇権濫用法理により、客観的に合理的な理由がなく、社会通念上相当でない場合には、違法な不当解雇として無効になるからです(労働契約法16条)。
争うためには、正当な解雇理由があったかどうかを判断する必要があるので、「なぜ解雇されたのか」という理由を確認しておく必要があります。労働基準法上、労働者が求めたら、解雇理由を書面で明示する義務が会社にあります(労働基準法22条)。
「解雇理由証明書を請求する方法」の解説
解雇予告手当を請求する
即日解雇をするなら、労働基準法によって解雇予告手当を請求できます。というのも、労働基準法20条では、30日前に解雇予告をするか、足りない日数分の平均賃金に相当する解雇予告手当を払うのが会社の義務とされているからです。
労働基準監督署から解雇予告の除外認定を得れば、予告手当なしの即日解雇もできますが、認定が受けられるのは、労働者側にかなりの悪質性があるケースに限られています。
「解雇予告手当の請求方法」の解説
会社から呼び出しを受けたときの注意点
最後に、会社から呼び出しを受けたときに注意したいポイントを解説します。
親が呼び出しを受けたときの対応
新入社員やバイトの学生などの例で、自分のしたミスについて会社が親を呼び出そうとするケースがあります。「身元保証書を出している」「親も責任をとるべきだ」とった理屈が、会社側の言い分となることが多いでしょう。
しかし、親の呼び出しに応じる必要はありません。仮に、身元保証書を出していることによって損害賠償請求をされるリスクがあったとしても、呼び出しに応じる義務はありません。会社は雇用契約に基づいて労働者に業務命令をすることができますが、その命令権が親に及ばないのは当然です。親は、会社に雇用されているわけではないので、指示される理由はないのです。
無視はしない
どれほど呼び出しに応じるのが嫌でも、無視はしないでください。呼び出し自体が、適法な業務命令として行われたなら、無視していると業務命令違反だといわれてしまいます。
パワハラや休日出勤の拒否のように、呼び出しを断る正当な理由があるなら、きちんと説明を尽くして断るべきです。無視してバックレると、損害賠償請求を受ける危険もあるので注意を要します。
「会社をバックレるリスク」の解説
弁護士に相談して窓口になってもらう
最後に、会社からの呼出しに不穏な気配を感じる場合、弁護士に相談する手が有効です。
弁護士を窓口とする旨を通知した後は、直接のやりとりをしないよう会社に要求できます。弁護士に任せれば、対面による口頭での交渉で不利に進んでしまう危険を避けられます。
「労働問題に強い弁護士の選び方」の解説
まとめ
今回は、会社から呼び出しを受けたときの、労働者側の適切な対応を解説しました。
突然に会社から呼び出されると、ドキッとすることでしょう。心当たりがある方も、ない方も、今回の解説を参考に、よく準備して対策を練ってください。
特に、呼び出しに応じて行ってみたら解雇を言い渡されたときは、弁護士への相談が有効です。
- 会社から呼び出しを受ける例には、良いしらせ、悪いしらせのいずれもある
- いずれにせよ、会社からの呼び出しに応じて話を聞き、証拠に残すのが大切
- 会社から呼び出しを受け、解雇されたとき、不当解雇でないかを検討する
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