解雇という重要な処分でも、メールで伝えられるケースがあります。
労働者にとって重大な処分である解雇は、慎重かつ丁寧に進められるべきですが、会社の都合により、メールやLINEなどの手軽な手段で通知されることがあります。これらのツールは日常的な連絡には便利ですが、解雇のような重要な意思表示には適しません。
メールで安易に解雇されるケースは、「不当解雇」のリスクも高まります。というのも、メールで済ませる会社ほど、解雇理由の検討が不十分であることが多いからです。「証拠に残らないようにしよう」という悪質な意図があることもありますが、不当解雇として違法・無効なら、通知手段がメールであっても争うことが可能です。
今回は、メールによって解雇の通知を受け取った際の労働者側の対応について、労働問題に強い弁護士が解説します。
- メールで伝えるのも違法ではないが、解雇を軽視すると不当解雇になりやすい
- メールで解雇通知をされた場合、不当解雇であれば争うことが可能
- メールでも、解雇理由を聞き、証拠データを確実に保存して争う準備をする
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なぜメールで解雇通知されるのか

はじめに、解雇通知がメールでされる理由を解説します。
解雇は、会社からの一方的な労働契約の解約であり、これを伝えるのが「解雇通知」です。突然解雇を通知されると、労働者としても冷静な判断が難しいでしょう。
解雇という重大な処分を伝えることは、労使双方にとって重要なことです。そのため、解雇予告通知書、解雇通知書、解雇理由証明書といった書面が交付されるのが通常です。しかし、実務では、メールやチャット、メッセージで解雇を通知されるケースが少なくありません。
会社側の理由は複数ありますが、その背景には「メールで済ませる方が便利だ」といった解雇を軽く見る考え方があります。
メールの方がストレスが少ない
会社にとって「解雇を伝えるのは気まずい」という気持ちがあります。
対面で解雇を伝えれば、労働者から反論されたり、不当解雇として争われたりするおそれもあり、面と向かって伝えることにリスクを感じる社長も少なくありません。そこで活用されるのが、非対面のコミュニケーションツールであるメールやチャット、メッセージなどです。
対面しない方法であれば、業務連絡の延長として伝えられるため、会社側のストレスは軽減され、コミュニケーションコストは少なくて済みます。しかし、労働者としては、その分解雇が軽く見られていることを意味するため、軽々しい扱いを許すべきではありません。
「解雇通知書を受け取った時の対応」の解説

労働法の理解が不足している
労働法を理解していない企業ほど、メールで解雇通知がされがちです。
労働基準法22条は、労働者が請求した場合、解雇理由を記載した書面(解雇理由証明書)を交付する義務を定めています。そのため、労働者が不当解雇として争うことを検討するケースほど、メールのみで安易に解雇することはできません。解雇理由を正確に把握することは、反論して争うことを検討する労働者にとっては非常に重要です。
したがって、メールで解雇通知された場合でも、労働基準法の根拠をもとに、必ず理由を書面で示すよう求めるべきです。
「解雇理由証明書」の解説

直接の連絡が取れない
労働者と直接の連絡が取れないと、メールで解雇通知をされる理由となります。
典型例が、労働者が音信不通となってバックレたことで、メールによる解雇通知を受けるケースです。この場合、対面や電話、書面といった方法が取れないなら、メールでも仕方ありません。労働者にとっても、セクハラやパワハラなどのハラスメントがあったことで、これ以上社長や上司との連絡を取ることが不可能であるといったケースもあります。
労働者側に横領などの問題行為があって自宅待機を命じられた場合、懲戒解雇の連絡はメールで通知されることが多くあります。この場合でも、自分に非があってもあきらめてはいけません。企業秩序違反の非違行為を理由に懲戒解雇する場合でも、必要なプロセスを踏まなければ違法です。メールで軽々しく通知された場合は、弁明の機会を付与するよう求めるべきです。
「懲戒解雇の手続きの流れ」の解説

メールでの解雇通知も直ちに違法とはならない

メールやLINE、チャットなどでも、会社から労働者への意思表示は到達し、解雇の法的効果が生じます。この意味では、メールでの解雇通知も有効です。
労働者の保護のため、解雇は法的に制限されるものの、「対面で伝えなければならない」というルールはありません。伝える方法がメールやLINEでも、適法かつ有効に解雇できるケースはあり、伝え方だけで解雇が無効になるわけではありません。
しかし、本解説の通り、必ずしも違法でないとしても、不適切な場合は多いです。メールで、解雇通知されたり、解雇予告されたり、「解雇だ」と脅されたりすれば、労働者は「軽く見られた」と感じるでしょうし、「納得いかない」気持ちは理解できます。対面で説明し、質問に回答し、書面でも伝えるといった方法が丁寧であり、解雇という重大な処分に適しています。
したがって、「メールで解雇を伝えること」そのものが違法ではないものの、丁寧さに欠け、その背後にある会社側の意図や検討不足などを合わせて考えれば、不当解雇となる可能性が高いです。労働者としてもメールで通知されたときこそ慎重にチェックし、少しでも不当解雇の疑いがあるなら、労働審判や訴訟といった法定手段で争うことを検討すべきです。
「不当解雇に強い弁護士への相談」の解説

メールでの解雇通知が違法となるケース

メールで解雇を伝える方法だけで、直ちに違法となるわけではありません。
しかし、メールでしか伝えないとき、会社は解雇を軽く考えている可能性があります。深刻な処分であるのに、労働者の理解や納得を重視しない会社では、違法な解雇が起こりがちです。不十分な方法でされた処分は、結果的に、その内容についても違法である可能性があります。
適切な手続きが踏まれない
まず、労働基準法は、労働者保護のため、解雇理由を知る権利を定めています。
前述の通り、労働者が請求した場合、解雇理由を記載した書面(解雇理由証明書)の交付が使用者(会社)に義務付けられています(労働基準法22条)。

解雇前であっても、予告された時点から書面の交付が会社の義務となります。書面で説明すべき解雇理由は、「就業規則違反」といった抽象的なものでは不足であり、それに該当する具体的な事情がどのようなものかを詳細に説明する必要があります。
メールによる解雇通知では、理由がきちんと説明されないことがほとんどです。文字数にも限界があり、具体的な事実が詳しく書かれることは少ないでしょう。
「解雇予告を口頭でされたときの対応」の解説

説明できるほどの解雇理由がない
メールなどの非対面のコミュニケーションは、対面や書面による通知に比べてハードルが低く、会社にとってもストレスの少ない手段となります。しかし、これを悪用し、一時の怒りに任せて感情的に解雇しやすいため注意が必要です。
解雇は法律で制限され、解雇権濫用法理により、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない限り、不当解雇として違法・無効となります(労働契約法16条)。

メールで軽々しく伝えられる解雇には、正当な理由がないことが多いです。会社が解雇を甘く見て、事前に理由を準備していないこともあります。書面通知は、労働者に争われないよう入念に時間をかけて準備することが多いですが、メールやLINEだと、その時の感情に任せた不当解雇を招いてしまう傾向があります。
「解雇が無効になる具体例と対応方法」の解説

解雇が相当でない
最後に、解雇が有効となるには、労働者に相当な問題点がなければなりません。
軽微なミスや能力不足で解雇という重大な処分をすれば、不当解雇となります。解雇するほどでないトラブルは、注意指導や懲戒処分、配置転換などの他の手段で解決すべきであり、解雇をすることに社会通念上の相当性がないと考えられるからです。
メールによる解雇通知は、会社にとって心理的なハードルが低いため、さほど重大な問題を起こしていない社員に対しても解雇のメールを送ってしまいがちです。そのため、メールやLINEで解雇を言い渡されたら、「相当性」があるかもチェックしてください。
「懲戒解雇を争うときのポイント」の解説

メールで解雇通知されたときの対処法

次に、メールでクビだと伝えられてしまったとき、労働者側の対処法を解説します。
メールによる解雇通告は突然送られてきますが、事前に対策を知っておけば、冷静に対応できます。伝え方がメールやLINEでも、口頭や書面で伝えられる場合と同じことが当てはまります。
メールでも解雇理由は確認する
まず、メールで解雇を伝えられたら、その理由を明らかにしておくべきです。
「解雇理由がわからない」「なぜ解雇されるか不明」というのでは、解雇を争うことができません。解雇を伝えるのはメールやLINEでも足りますが、解雇理由の説明は書面で行う必要があります。この義務は、労働基準法で定められたものであり、メールで伝えても免除されません。
労働者は、メールで解雇を伝えられたら、それに返信する形で書面による理由説明を求めましょう。この際、解雇理由証明書を求めた記録が残るよう、件名を「解雇理由証明書の請求」といった形に変更するなどの方法で証拠化できます。
「不当解雇の証拠」の解説

不明な点はメールで質問する
解雇について不明点や疑問点があれば、この機会に質問し、説明を求めるべきです。
この際も、送られてきたメールに返信する形で行います。不当解雇として争う場合でも、会社は退職手続きを進めてくるでしょうが、直接対面するのが労働者側にとってもストレスなら、必要な手続きもメールのやり取りで進めることが可能です。
メールで軽々しく解雇する会社ほど、メールにも軽く返信してくれる傾向があります。会社が問題を深刻に捉えていなければ、労働者にとって有利な事情が書かれる可能性もあります。
「正当な解雇理由の例と判断方法」の解説

弁護士に相談する
メールやLINEで伝えられる解雇ほど、不当解雇となる可能性が高いと考えるべきです。
したがって、解雇をされたら速やかに弁護士に相談するのがおすすめです。弁護士なら、解雇を争うことができるか、どのような証拠を集めるべきかをアドバイスしてくれます。送信されてきたメールは重要な証拠となるため、法律相談時には必ずコピーを持参しましょう。

「労働問題に強い弁護士の選び方」の解説

労働審判・訴訟で不当解雇を争う
メールで通知された解雇が、不当解雇となる可能性が高い場合、法的手続きで争うことを検討してください。不当解雇を争う主な方法には、労働審判、訴訟の2つの手続きがあります。労働審判では、原則3回以内の期日で、簡易、迅速かつ柔軟な解決が期待できるため、「必ず復職したい」といった強い希望がなければ、まずは労働審判を申し立てるのがおすすめです。
「労働問題の種類と解決策」「労働審判の流れ」の解説


メールで解雇通知を受けた労働者側の注意点

最後に、メールで解雇を通知された労働者側の注意点について解説します。
メールによる解雇は、これを争う労働者にとってメリットとなることもあります。メリットを最大限に活かすことが、不当解雇の争いを勝ち抜くポイントとなります。
口頭でのやりとりを減らす
対面でのコミュニケーションは、労働者にとっても心理的負担が大きいでしょう。
相手がワンマン社長だったり、上司からのパワハラがあったりする場合、言いたいことが言えない人も多いはずで、対面しないことは労働者にとってもメリットがあります。
メールで解雇を通知されたら、労働者側もメールで返信し、証拠に残しながらやり取りを進めることができます。メールは、コミュニケーションの手段としてはカジュアルなイメージがありますが、裁判では十分に証拠となります。
「会社をクビになる前兆」の解説

送信メールは熟考して作る
メールによる解雇が不適切なのは、よく考えずに行われることが多いからです。
逆に、熟考して作成されたメールは、記録に残る分、証拠として役立ちます。そのため、メールによる解雇通知に返信する場合、労働者側でメールを軽く考えてはいけません。「メール返信の方が楽」「対面は面倒」などと考えていると、不利なメールを送りかねません。メールとはいえ、書面を作成するのと同じくらいの時間と手間をかけるべきです。
メールの文面は全て証拠に残り、労働者にとって有利にも不利にも使われます。裁判になったとき証拠とされ、軽い気持ちで作ったメールで不利になっては後悔するでしょう。
「裁判で勝つ方法」の解説

会社からのメールは必ず保存する
会社から送信されたメールは重要な証拠となるので、必ず保存しておきましょう。
解雇を言い渡されたことに怒り、削除してしまうのはおすすめできません。LINEやチャットの場合、普段の習慣で何気なく消してしまう方もいますが、証拠が失われてしまいます。
後から不当解雇を争う証拠となるので、メールは必ず保存しましょう。スマホやPC内だけでなく、クラウド上やUSBに保存し、間違って消さないように注意してください。あわせて、自分から会社に送信したメールも保存しておく必要があります。会社に送信するとき、自分のアドレスを同時に「BCC」に入れて送信しておけば、証拠の保存が容易です。
「労働問題を弁護士に無料相談する方法」の解説

【まとめ】メールでの解雇通知の違法性

今回は、メールやLINEなど、簡易な方法による解雇通知について解説しました。
会社が解雇を軽く見ているほど、その伝達手段もメールなどの軽いものとなりがちです。しかし、労働者にとっては重大な処分なので、丁寧に対応し、必要な反論をしなければなりません。
メールだけでも(書面を交付されなくても)、解雇の法的効果は生じます。会社の一方的な意思で労働者が出社できなくなった時点で、どのような伝え方でも「解雇」の性質を有します。そして、その理由が適切でなかったり、相当性がなかったりすれば、不当解雇として争うべきです。
メールでしか行われない解雇通告は、違法・無効となるリスクが高いと言わざるを得ません。一方的な扱いに納得いかない労働者は、ぜひ弁護士に相談してください。
- メールで伝えるのも違法ではないが、解雇を軽視すると不当解雇になりやすい
- メールで解雇通知をされた場合、不当解雇であれば争うことが可能
- メールでも、解雇理由を聞き、証拠データを確実に保存して争う準備をする
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