「仕事を辞めたいのに辞められない」と悩む方は、速やかに行動に移してください。
上司が怖くて退職を言い出しにくい、人手不足で迷惑をかけそう、退職を拒否されているといった様々な理由で、限界を感じながらも無理して働き続けるケースもあります。
法律上、労働者には退職の自由があり、会社が一方的に退職を拒否したり、脅して引き止めたりすることは認められません。しかし実際は、どうすれば辞められるのかが分からず苦しんでいたり、円満退職を目指すあまりにリスクを恐れて動けなくなったりしている人もいます。
今回は、仕事を辞めたいのに辞められない人に向けて、会社を辞める流れと、違法な引き止めへの対処法について、労働問題に強い弁護士が解説します。
- 仕事を辞められない理由は恐怖心、人手不足、引き止めなど様々ある
- 会社の引き止めや退職拒否は違法であり、法的には退職するのは自由
- 強い引き止めには意思の強さを示し、会社の条件提示にも惑わされない
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仕事を辞めたいのに辞められない理由

はじめに、仕事を辞めたいのに辞められない人によくある理由を解説します。
退職を希望しているはずなのに、「辞められない」と悩んで弁護士に相談する人の中には、自分から心理的なハードルを作り出してしまっている人もいます。以下のような理由・原因が組み合わさると、退職を言い出しにくくなってしまいます。
上司や会社の引き止めが怖い
退職を言い出せない理由として多いのが、「上司や会社が怖い」というケースです。
普段から威圧的な態度だったり、怒鳴られたりしていると、「退職したい」と言い出すこと自体をストレスに感じてしまうのも無理はありません。パワハラ気質の上司から「辞めるのは無責任だ」「裏切り者だ」などと言われていると、強い引き止めを受けることは容易に予想できます。
しかし、退職は労働者の自由であり、社長や上司の機嫌に左右されるものではありません。どうしても直接言い出せない場合、メールや書面、弁護士を介して伝える方法もあります。
「在職強要の違法性」の解説

人手不足で言い出せない
人手不足の職場では、退職を言い出しにくい雰囲気が広がっていることもあります。
責任感が強い人ほど「自分が辞めたら職場が回らない」などと同僚や取引先への影響を気にして辞められなくなりますが、本来、必要な人員を確保することは会社の責任です。可能な範囲で引き継ぎには協力すべきですが、人手不足を理由に退職をあきらめる必要はありません。
無理を続けた結果、体調を崩して休職するなどすれば、かえって大きな迷惑をかけることにもなりかねません。
「人手不足なのに雇わない理由」の解説

退職を拒否されそう
「辞めたいと言っても認めてもらえないのでは」という相談例もあります。
実際、会社から「後任が決まるまで待ってほしい」「今辞められると困る」などと引き止められるケースもありますが、期間の定めのない社員(正社員など)は、法律上、退職の意思表示から2週間が経過すれば辞めることができます(民法627条1項)。
そのため、会社が一方的に「辞めさせない」と決めることはできません。退職届を受け取らない、後任の決定を引き延ばすといった対応をされても、退職は可能です。
損害賠償請求などのトラブルが不安である
退職の申し出が会社の意に沿わない場合、トラブルが起こるおそれがあります。
会社から、「辞めたら損害賠償を請求する」「違約金を払え」と言われて不安になり、会社との揉め事を回避したいという思いから辞める決断を先延ばしにしている人もいます。しかし、退職時に会社から高額な損害賠償を請求されるケースは稀です。また、労働基準法16条は、あらかじめ退職時の違約金や賠償額を定める契約を禁止しています。
一方で、故意に会社に重大な損害を与えたようなケースでは損害賠償請求を受けるおそれがありますが、退職をあきらめる理由にはなりません。
「会社から損害賠償請求されたら?」の解説

転職先が決まっていない
次の仕事が決まっていないことから、退職に踏み切れない人もいます。
収入が途絶えたり、転職先が見つからなかったりすることへの不安から、退職に慎重になるのは無理もありません。ただ、心身への負担を感じる場合、転職先が決まるまで我慢するのが得策とは限らず、失業保険なども含めて退職・転職の計画を立てるのがおすすめです。
精神的に疲弊して動けない
仕事によるストレスが限界に達し、次の行動が取れない状態になっている人もいます。
強い疲労感や不眠、食欲不振、涙が止まらないといった症状がある場合、精神的に相当追い詰められている危険な状態であり、退職の手続きは進められないことも少なくありません。ただ、この場合、休職を申し出るなどして仕事から距離を取り、回復を優先した方がよいでしょう。
長時間労働やハラスメントなど、業務に起因する場合には、労災申請も検討してください。限界を感じる前に、早めに弁護士にサポートを依頼すべきケースと考えるべきです。
「労災認定基準」の解説

会社を辞めるのは労働者の法律上の権利

「会社が辞めさせてくれない」「退職を認めてもらえない」という悩みを抱える人に理解してほしいのは、法律上、労働者には退職の自由が認められるということです。つまり、そもそも会社に認めてもらったり、同意や承諾をもらったりする必要はありません。
以下では、退職に関するルールと、会社の違法な引き止めについて解説します。
退職の自由について
労働者には、退職の自由が保障されています。
そのため、「辞めたい」と心から思っているなら、法律上は「辞められない」ということはありません。正社員などの無期雇用の場合、退職の意思表示から2週間が経過すれば労働契約が終了します(民法627条)。また、契約社員やアルバイト・パートなどの有期雇用の場合、契約期間中でも「やむを得ない事由」があれば直ちに退職できます。

そして、労働者が辞めたいと伝えた場合、会社がこれを拒むことはできません。
「退職は2週間前に申し出るのが原則」の解説

会社がよく使う「辞められない」理由ごとの反論の方法
一方で、退職を申し出ると、会社から様々な理由で引き止められることがあります。
会社が「辞められない」という理由付けとして使うものには、いくつかのパターンがありますが、いずれも会社側の主張が法的に正しいとは限らないことに注意してください。
- 「後任が決まるまで辞めないでほしい」
→ 退職によって業務に支障が生じないよう、人員補充や業務の平準化といった準備を行うのが会社の責任です。 - 「就業規則では3ヶ月前に申し出る必要がある」
→ 法律上の期限(2週間前)を超え、長期間拘束しようとする就業規則の定めは、公序良俗違反(民法90条)として違法・無効となります。 - 「辞めるなら損害賠償請求する」
→ 単に退職するだけで会社に損害が生じることはなく、不法行為の要件である損害や因果関係の立証は困難であると考えるべきです。 - 「退職届を受理しない」
→ 会社が退職届を受け取らなくても、意思表示が到達すれば退職の効果が生じます。直接受け取ってもらえない場合、内容証明で送付する方法もあります。
「労働問題を弁護士に無料相談する方法」の解説

辞めたいのに辞められないのは違法
以上の通り、退職の自由があるため、退職を妨げるような強い引き止めは違法となります。
つまり、辞めたいのに辞められない状態は違法です。例えば、退職を拒否するだけでなく、以下のような行為を伴う場合は違法性が強く、慰謝料や損害賠償の請求も可能です。
- 退職した場合の不利益を伝えて脅迫する。
- 長時間部屋に閉じ込めて説得する。
- 有給休暇の取得を妨害する。
- 退職届を目の前で破り捨てる。
- 「逃げるのか」「裏切り者だ」などと人格否定の発言をする。
引き止めが強度なときはパワハラであり、違法なハラスメントに該当します。暴言や暴力、威圧的な態度によって退職を妨害するのが典型例です。むしろ、このような違法行為を行う会社であることも、辞めたいと感じる理由の一つになることでしょう。
「パワハラの相談先」の解説

仕事を辞める前にまず考えるべきポイント

次に、仕事を辞めたいと感じたら、検討すべきポイントについて解説します。
「会社を辞めたい」と思うことは誰しもあり、全く不満のない人の方が少ないでしょう。一時の感情に任せて勢いで辞めてしまう前に、以下の点について検討してください。
なぜ辞めたいのかを整理する
まずは、「自分がなぜ辞めたいのか」を整理することが重要です。
理由を明確にすることで、速やかに退職すべき状況なのか、それとも会社に残って改善の努力をすべきなのかが見えやすくなります。「将来が不安である」といった漠然とした悩みで「退職」という重要な決定をすると、後悔が残るおそれがあります。
辞めたい理由としてよく挙げられるのが、「人間関係の悩み」と「労働条件への不満」です。
いずれも退職理由となり得ますが、ハラスメントではなく相性の問題に過ぎないなら、部署異動や時間の経過によって改善できるケースもあります。また、労働条件への不満から退職を考える人もいますが、必ずしも希望を満たす転職先が見つかるとは限りません。
今すぐ辞めるべきケースもある
これに対し、速やかに辞めるべきケースもあります。
会社に違法な労働問題があるケースが典型例で、暴言や暴力、人格否定など、強度のハラスメントが日常化している場合、すぐに距離を取るべきです。我慢し続けると、「自分が悪い」と思い込んで自尊心が低下し、うつ病や適応障害といった精神疾患を発症してしまう危険があります。
また、次のような違法な状態が続いている場合も、退職を検討すべきです。
- サービス残業が常態化している。
- 最低賃金を下回っている。
- 休憩や休日が満足に取れない。
- 有給休暇を取得できない。
これらの問題は法令違反であり、我慢すべきではありません。このような理由で退職したとしても、決して「甘え」「逃げ」ではありません。
退職後の生活を計画する
退職を決断する際は、その後の生活も計画しておくと安心です。
貯金を確認して、どれくらいの期間の生活費が確保できているかを試算するとともに、失業保険についても要件や支給時期、金額を確認しておきましょう。転職活動が長引く可能性もありますが、3ヶ月分程度の生活費があると安心して会社を辞めることができます。
退職後の生活を安定させるために、在職中に家賃や固定費を見直しておくのもおすすめです。転職活動についても、退職を検討し始めたら早めに情報収集を進めましょう。
「労働問題に強い弁護士の選び方」の解説

会社を辞める基本的な流れ

退職をスムーズに進めるためには、基本的な流れを理解しておくことが重要です。
退職時期を決める
まずは、いつ退職するのかを決めます。
前述の通り、正社員などの無期雇用契約であれば2週間前の申入れにより退職可能ですが、円満退職の場合は、就業規則上の定め(1ヶ月前など)も確認しましょう。また、有給休暇を確実に消化するため、残日数も考慮してください。
退職の意思を伝える
準備が整ったら、会社へ退職の意思を伝えます。
まずは直属の上司へ伝えることが多いですが、社内のルールで人事部などの窓口が指定されている場合はそれに従います。また、上司によるハラスメントがある場合など、直接の連絡が難しいときは、社長や人事に伝えるケースもあります。
退職届を出す
退職の意思表示は、法律上は口頭でも成立します。
そのため、「辞めます」と明確に伝えれば、退職の意思表示として有効です。ただ、「聞いていない」と言われてトラブルになるおそれがあるため、退職届を出しておきましょう。退職願が「辞めたい」という希望を伝えるのに対し、退職届は確定的な意思表示であるため、辞める決意が揺るがない場合には「退職届」を出すのが適切です。
「退職届の書き方と出し方」の解説

業務引継ぎを行う
退職日までの間に、担当業務の引継ぎを行います。
丁寧な引き継ぎは、無用なトラブルの防止につながります。ただし、過度な引き継ぎを求めて退職を引き延ばすのは不当であり、退職までに可能な範囲で対応すれば足ります。事前に十分な準備をしておけば「会社に迷惑をかける」「残る人に申し訳ない」といった気持ちを整理することができ、思い切って辞められるはずです。
有給休暇を消化する
未消化の有給休暇が残っている場合、退職前に必ず消化しましょう。
有給休暇は労働者の権利であり、会社が取得を拒否することはできません。特に、退職日が決まっている場合、時季変更権を行使して日にちを変更することもできません。退職日までのスケジュールを確認しながら、計画的に有給消化を進めましょう。
備品返却や必要書類の授受を行う
退職時には、会社から貸与されている備品(パソコン、社員証、制服、鍵、名刺など)を返却します。会社データの持ち出しや削除は問題になるリスクがあるため注意してください。また、離職票や源泉徴収票なども忘れず受領しましょう。
「退職したらやることの順番」の解説

辞めさせてもらえないときの対処法

最後に、どうしても辞めさせてもらえない場合の対処法を解説します。
引き止められた場合の対応策
退職を申し出た際に、会社から引き止められることも多いです。辞めたいけど辞められないといった事態に陥らないよう、引き止めへの対応策をあらかじめ考えておきましょう。
- 退職の意思が固いことを伝える
意思が固いことを伝えれば、これ以上の引き止めは難しいと会社に理解してもらうことができます。「キャリアを考えての決断」「次の仕事が決まった」など、具体的な理由を伝えるのが効果的です。 - 条件提示に惑わされない
会社から有利な条件提示をされることがありますが、少しでも心が動いた素振りを見せると、辞められなくなってしまいます。 - 一貫性を持って行動する
「辞めたい」という気持ちに一貫性を持って行動してください。会社からの脅しに屈せず、損害賠償請求や誓約書へのサインなどにも応じてはいけません。迷いを見せると、会社に余計な引き止め材料を与えてしまいます。 - 出社を継続する必要はない
退職の意思表示をした後は、出社命令に従う必要がないこともあります。有給休暇を退職日まで取得できる場合は、出社する必要はありません。
「退職後の競業避止義務」の解説

どうしても辞められないときの最終手段
最後に、どうしても会社が辞めさせてくれないときの最終手段を解説します。
執拗な引き止めに遭う場合、退職届を出して2週間の経過を待ちます。退職届を出したことを記録に残すため、内容証明で送付するのが適切です。そして、退職日までの間は有給消化に充て、残日数が不足する場合には欠勤とします。
会社との対立が激化することが予想されるケースでは、早めに弁護士に相談し、退職の意思表示から代わりに行ってもらうのが効果的です。弁護士を介して、違法な引き止めが続く場合には裁判に訴えられる可能性を示唆することで、会社にあきらめてもらいやすくなります。
「退職代行を弁護士に依頼するメリット」の解説

【まとめ】辞めたいのに辞められない場合

今回は、仕事を辞めたいのに辞められない方に向け、法的なポイントを解説しました。
会社を辞めたいと感じることは誰しもあることで、負い目や後ろめたさを感じる必要はありません。辞めたいのに辞められず、我慢して働き続けると、心身の不調につながるおそれがあります。法律上は、労働者には退職の自由があるため、会社は拒否することができません。
そもそも「辞めたい」と感じながら働いても、十分な成果は出せないでしょう。また、長時間労働やハラスメントなど、問題のある職場は早く離れるべきです。
「上司が怖い」「強く引き止められている」「損害賠償を請求されそう」といった不安や懸念から動けなくなってしまう人もいますが、強い覚悟で進める必要があります。退職届を提出し、有給休暇を消化するなど、適切な手順を踏めば退職は可能です。どうしても辞められないときは、弁護士に退職代行を依頼する方法も有効です。
- 仕事を辞められない理由は恐怖心、人手不足、引き止めなど様々ある
- 会社の引き止めや退職拒否は違法であり、法的には退職するのは自由
- 強い引き止めには意思の強さを示し、会社の条件提示にも惑わされない
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