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浅野 英之
弁護士
弁護士(第一東京弁護士会所属、登録番号44844)。東京大学法学部卒、東京大学法科大学院修了。

企業側の労働問題を扱う石嵜・山中総合法律事務所、労働者側の法律問題を扱う事務所の労働部門リーダーを経て、弁護士法人浅野総合法律事務所を設立。

不当解雇、未払残業代、セクハラ、パワハラ、労災など、注目を集める労働問題について、「泣き寝入りを許さない」姿勢で、親身に法律相談をお聞きします。

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休日出勤は拒否できる?強制されたらパワハラ?断る方法も解説

休日なのに会社から出勤を命じられたとき、「休日くらいゆっくり休みたい」というのが本音でしょう。休日は、労動者のリフレッシュのために重要な権利ですが、休日出勤命令を拒否して休むことはできるのでしょうか。週休二日制だと、土日休みのことが多いですが、仕事が多忙だと休日出勤を強要されるケースは跡を絶ちません

相談者

せっかくの休みなんだからゆっくり身体を整えたい

相談者

毎週土日に仕事を入れられる…ふざけるなと思った

休日出勤の強制が違法なら、従う必要はなく、断ることができます。休日に予定があるのに、出勤を勝手に決められたとき、無理やりな休日出社の命令が違法となる可能性は大いにあります。

まずは就業規則を確認し、命令する根拠があるかどうかをチェックしましょう。命令に根拠がないときや、休日出勤を拒否する正当な理由があるときは、出社を断って休むことができ、それ以上の強制は違法なパワハラとなるおそれもあります。

今回は、休日出勤を拒否できる場合と、強制されたときのパワハラへの対処法について、労働問題に強い弁護士が解説します。

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解説の執筆者

弁護士 浅野英之

弁護士(第一東京弁護士会所属、登録番号44844)。東京大学法学部卒、東京大学法科大学院修了。

企業側の労働問題を扱う石嵜・山中総合法律事務所、労働者側の法律問題を扱う事務所の労働部門リーダーを経て、弁護士法人浅野総合法律事務所を設立。

不当解雇、未払残業代、セクハラ、パワハラ、労災など、注目を集める労働問題について、「泣き寝入りを許さない」姿勢で、親身に法律相談をお聞きします。

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休日出勤とは

休日出勤とは、労働義務のない日(休日)に働くよう命じられることを指します。例えば、週休二日制、土日休みの人なら、その土日や祝日に労働するよう強制されるのが、休日出勤命令です。

法的に、「休日」には、法定休日と所定休日の2種類があります。労働基準法35条は、使用者に「毎週少くとも一回」もしくは「四週間を通じ四日以上」の休日を与える義務を課しており、これを「法定休日」と呼びます。これに対し、労働基準法で義務付けられた以外の休日を「所定休日」と呼びます(例えば、土日休みの場合、片方が法定休日、他方が所定休日となります)。

法定休日と所定休日の大きな違いは、法定休日における労働は、35%の割増賃金を支払う義務がある点です(一方で、所定休日の労働は、1週間の労働時間が40時間を超える場合に、25%の割増賃金を支払う義務があるに留まります)。

休日の出勤は、原則として違法です。例外的に、36協定の定めがあるなど、以下の条件を満たした場合に限って、適法に休日労働を命じることができます。

  • 36協定を締結していること
    法定労働時間を超えて働かせたり、休日に出勤させたりする場合、労働基準法36条に基づく労使協定(36協定)を締結し、労働基準監督署に届け出る必要があります。
  • 就業規則か雇用契約書に命令の根拠があること
    休日出勤を命じるには、労働契約に根拠がなければなりません。具体的には、労働契約の内容となる就業規則もしくは雇用契約書に、「休日に出勤を命じることができる」という定めが必要となります。

したがって、労働契約において休日出勤を命じる権限のない場合や、36協定を締結していない会社では、休日労働命令そのものが違法であり、従う必要はありません。なお、上記の条件を満たからといってどのような命令でも許されるわけではなく、労動者の健康に配慮した合理的な命令でなければなりません。

36協定なしの残業は違法」の解説

休日出勤が違法となる場合

休日は、労働者の大切な権利ですから、企業としては休日に労働者を休ませるのが原則です。そして、例外的に休日出勤を求めるにしても適法に進めなければなりません。労働者としては、休日出勤を命じられたとしても、その命令が違法ならば拒否することができます。

36協定がない場合

前章の通り、36協定がない場合には、法定労働時間を超えた労働(残業)や休日出勤を命じることができません。そのため、36協定なしにされた休日出勤の命令は、違法であり、労働者は出勤を拒否することができます。

規模の小さい会社や、労働法の知識のない企業では、労務管理が雑であり、36協定すら存在しない場合があります。休日出勤は当たり前ではなく、むしろ例外的なものなので、よく確認し、36協定が存在しないことが分かったら休日出勤は断るようにしましょう。

36協定違反の罰則と対処法」の解説

就業規則や雇用契約書に命令の根拠がない場合

前章の通り、休日出勤を命令する権利は、会社に必ず与えられているものではなく、労働契約によって初めて付与されるものです。そのため、休日に働くよう命令できる契約上の根拠がなければ、そもそも適法に命じることはできません。「休日は休める」のが原則であり、例外的に働かせるなら、その旨を明記しておく必要があります。

労働契約の内容を示す代表的な書類が、就業規則と雇用契約書です。いずれにも休日命令に関する根拠がない会社では、休日出勤は違法であり、断ることができます。なお、労働契約の内容を定める各規定の優劣は、法令、労働協約、就業規則、雇用契約書の順なので、休日の労働のルールについてもこの順序で確認するようにしてください。

休日出勤中の労災の対処法」の解説

休日出勤を断る正当な理由がある場合

企業側が休日出勤を命じることのできる場合でも、労働者側に正当な理由があるとして、拒否が認められるケースがあります。

業務上の必要性がない場合

休日出勤は、社員の休みを潰すわけですから、相応の理由が必要となります。

したがって、業務上の必要性のない場合には、理由なく休日出勤を強要されるいわれはなく、断ることができます。休みに働かせるわけですから、休日労働には、通常の残業にも増して、高度の必要性が要求されるものと考えられます。

健康被害を生じるおそれがある場合

休日出勤の頻度が多かったり、平日にも長時間労働があったりすると、労働者の負荷が大きすぎて、休日出勤の結果として健康状態が悪化してしまう危険があります。働く人の健康面に配慮せずに命じられた休日出勤は不適切であり、拒否すべきです。

過労が原因で体調を崩していたり、精神疾患になってしまったりする場合、休日出勤を拒否すべきなのはもちろんのこと、休職を申し出るなどして、速やかに休息を取らなければなりません。会社には、労働者を健康で、安全な環境で働かせる義務(安全配慮義務)があるため、労働者の健康に配慮しない休日出勤命令は同義務の違反であり、違法であることが明らかです。

長時間労働の問題点と対策」の解説

労働者の不利益が過大である場合

休日労働を断ることができるかどうかは、会社側の事情(業務上の必要性)と、労働者側の事情(私生活など、仕事以外に優先すべきこと)との比較によって決まります。労使の利害調整で、労働者の不利益が大きすぎる場合は、休日出勤を断ることができます。

例えば、休日労働を断りたい事情には、次の例があります。

  • 冠婚葬祭
    冠婚葬祭は、休日に行うことが多く、日程変更が困難です。そのため、事前に予定されていたなら休日労働はできず、断る理由となります。
  • 病院への通院
    病院への通院は、休みに体調を整える意味でも重要です。通院をキャンセルさせてまで労働させるのは、安全配慮の観点からも問題があります。
  • 育児や介護
    育児や介護は、日常的に発生するため、これだけで拒否する理由にはなりませんが、子供の運動会などのイベントごと、付き添い通院など、日程変更の困難な事情については休日労働を断る理由となります。

以上の重大な予定は、平日に行うのが困難なものが多く、休日にせざるを得ません。全ての休日を労働で埋められてしまうと、たとえ休日手当がもらえたとしても、日常生活に支障が生じてしまいます。

一方で、旅行やデート、買い物といった私用は、休日労働を断る正当な理由とはいえません。それでも休日出社を断りたいなら「休日の半日の出社で対応できないか」「週明けの早朝出社で補えないか」といった対案を出して相談するのがおすすめです。

残業命令の断り方」の解説

休日出勤を強制されたら違法なパワハラになる?

休日出勤を強制されたら、違法なパワハラになる可能性があります。思い当たる理由がないのに、理不尽に休日を潰されそうになったら、ハラスメントでないかを検討しましょう。

パワハラは、職場における優位性を利用した嫌がらせであり、厚生労働省の発表するパワハラの6類型(①身体的な攻撃、②精神的な攻撃、③人間関係からの切り離し、④過大な要求、⑤過小な要求、⑥個の侵害)が典型例です。違法な休日出勤命令は、「無理して働かせよう」という精神的な圧力を伴うことが多く、パワハラであると判断できる場合があります。業務上の必要性がないにもかかわらず、あなただけ狙い撃ち的に命じられたなら、嫌がらせの意図があるといえます。

違法なパワハラとなるかどうかも、労使双方の事情を比較して判断されます。当然ながら、違法なパワハラであることが明らかになった休日出勤命令は、拒否することができます。

  1. 職場における優位性を利用しているか
    休日出勤の強制は、上司が部下に対して行うものなので、職場の優位性を利用しているといえる場合がほとんどです。
  2. 業務上必要かつ相当な範囲を超えているか
    業務の多忙さなどといった休日労働の必要性に対して、合理的な範囲にとどまるものかどうかを検討してください。拒否すると不利益があるとか、出勤を強く要請されて恐怖を感じるといった場合にまで業務の一環ということはできず、違法なパワハラとなる可能性が高いです。

労働者が正当な理由を示し、明確に拒否したにもかかわらず、その後もなお強制的に休日出勤を命じ続ける場合には、パワハラの悪質性は相当高いといえます。これらのパワハラ的な命令によって精神的苦痛を受けた場合、不法行為(民法709条)に基づいて、慰謝料を請求することができます。

パワハラの相談先」「パワハラと指導の違い」の解説

休日出勤を断る方法

違法な休日出勤は拒否することができるわけですが、断り方には注意が必要です。トラブルにならないよう慎重に進めるべきなので、以下では、休日出勤を断る方法について解説します。

休日出勤の理由を確認する

まず、違法な休日出勤に従ってしまうことを避けるために、命令されたら、その根拠を明確にするよう会社に求めてください。雇用契約書や就業規則を確認して、休日出勤に関するルールがどのようになっているかを確認しましょう。あわせて、なぜ休日出勤をしなければならないのか、その理由や必要性についても説明するよう求めるべきです。

後からトラブルになった場合に備え、休日出勤の理由については書面で回答するように求め、証拠に残しておくのがおすすめです。

裁判で勝つ方法」の解説

予定があることを伝えて調整を試みる

休日出勤の必要性が高い場合でも、前日に言われるなど、突然のケースは問題があります。既に予定があることも多く、勝手に決められた出勤は、現実問題として応じることは難しいでしょう。このようなとき、法律問題になる前に、まずは上司や人事に相談して、調整することができないか、お願いすることも有効な方法です。

一方的に休日出勤を拒否するのではなく、会社との対話の場を設けて、双方の立場を理解しながら事情を共有していけば、妥協案が生まれることもあります。話し合いで円満に解決するためには、感情的にならず、冷静に対応することを心掛けてください。

会社のプライベート干渉の違法性」の解説

労働基準監督署や弁護士に相談する

円満な協議によっては解決できないとき、違法な休日出勤の強制が続くようであれば、労働基準監督署や弁護士といった社外の相談先に連絡するのが賢明です。

労働基準監督署は、労働基準法違反について調査を行い、監督権限を行使する機関です。違法な休日出勤命令は、法定休日を与える義務を定める労働基準法35条や、休日労働についての残業代の支払いを定める労働基準法37条に違反している疑いがあります。

より深刻なトラブルに発展してしまった場合には、労働問題に精通した弁護士に相談してください。弁護士なら、法的なアドバイスを提供し、会社と交渉をしたり、裁判によって責任追及をしたりして、労働者の権利を守るサポートをすることができます。

労働問題に強い弁護士の選び方」の解説

休日手当(残業代)を請求する

本解説の通り、休日出勤命令は、拒否できるケースも少なくありません。労務管理の適切になされていない会社では、36協定を結んでいない会社もまだまだ多いです。休日に出社を命じられ、やむを得ず従ってしまう前に、適切な書類がそろっているか確認しておきましょう。

とはいえ、多忙だったり、緊急だったり、仕事の状況次第では休日働くしかないこともあります。このとき、休日労働したら、残業代を請求できます。具体的には、休日手当(休日労働割増賃金)といって、休日に働いた時間数については、通常の賃金の1.35倍の残業代をもらえるという労働基準法のルールに従った請求です。適切な休日手当の支払いのない場合には違法であり、それ以上の出勤の命令は拒否することができます。

休日手当とは

なお、「1週1日もしくは4週4日」の法定休日の労働は1.35倍の残業代。これ以外の所定休日の労働は「1週40時間」の法定労働時間を超えたら1.25倍の残業代となります。例えば、1日8時間労働、週休2日制の労働者は、土曜の出勤は1.25倍、日曜も出勤すれば1.35倍です。

法定休日とは

休日手当の請求」の解説

休日出勤を命じられたときの労働者側の注意点

最後に、休日出勤を命じられたとき、労働者側で注意しておくべきポイントを解説します。

休日出勤が多すぎるときの対応

休日手当を払えば、残業代の点からは問題なくとも、どれだけ休日出勤を命じてもよいことにはなりません。会社は、労働者の健康に配慮して働かせる必要があり、「毎週土日とも仕事で、休日なし」といった働き方は、安全配慮義務に違反して、違法だといえます。

休日出勤を強制された結果、心身の健康を損ねてしまえば、会社の責任であり、労災(業務災害)です。36協定の限度基準には、休日労働も含めた基準があります(次の通り、特別条項があるときは延長できるものの、その際の上限は休日労働の時間も含めて検討されます)。

36協定の上限
  • 原則:月45時間、年360時間
  • 特別条項をつけたときには、年6ヶ月まで、以下の限度で延長可能
    • 年720時間以内
    • (時間外労働と休日労働を合わせ)月100時間未満、2〜6ヶ月平均80時間以内

労災について弁護士に相談すべき理由」の解説

休暇に労働させることはできない

休日と休暇は、似て非なるものなので、区別して理解してください。本解説の通り、休日に労働を命じることはできる場合がある一方で、休暇に労働させることはできません。

いずれも、休むことができる点は共通していますが、休暇のなかには、有給休暇や育児休業、介護休業のように、法律によって休むことが保障されているものもあります。この場合、法律上の権利であることを尊重して、どのような理由でも、休暇中に労働を命じることはできません。なお、有給休暇には時季変更権があるものの、あくまで、業務に支障があるときに休暇を取るタイミングを変更できるだけで、休暇を取らせないようにすることはできません。

休日と休暇の違い」の解説

まとめ

弁護士法人浅野総合法律事務所
弁護士法人浅野総合法律事務所

今回は、休日出勤を強制されてしまったときの適切な対応について解説しました。

休日出勤は労働者にとって大きな負担となることが多く、違法ならば拒否することができます。会社が、社員に対して休日出勤を命じることができるケースには、条件があり、これを満たさない場合は、拒否する正当な理由があるということができます。それでもなお休日出勤を強制しようとするなら、違法なパワハラに該当するおそれもあり、漫然と従ってはいけません。

適切に対処しないと、頻繁な休日労働で酷使され、うつ病になるなど大きな精神的苦痛を負ってしまいます。無理しすぎて倒れる前に、休日出勤の断り方を知っておいてください。休日の出社についてのトラブルが発生した際は、弁護士に相談するのが適切です。あわせて、どうしても出社するしかなかったときの休日手当(残業代)が正しく払われているかも確認しておきましょう。

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